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42~43 Side 唯 02話
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ホント言うと、もうちょっと突っ込んで訊きたかったんだけど、蔵元さんから「NG」の視線が飛んできた。
これ以上突っ込むと給料だとか休日に響きそうだからお口チャック……。
秋斗さん取り扱い説明書としてもっとも信頼のおける蔵元さんの言葉だけはしっかり聞く。
社長は本当にぴったりな人間を秋斗さんにつけたと思う。
「社長」という人にはS職の連続昇級をしたときに一度面接で会ったくらい。
はっきりいってどんな人なのかは不明。
それでも、この会社の社長をしていて、さらには秋斗さんに蔵元さんを抜擢するくらいには頭の切れる人なんだろうな。
何にでも適材適所ってあると思うけど、会社ともなると業務に大きく関わってくる。
警備会社でいうならば、現場向きなのかエンジニア向きなのかに始まり、指導に向く人間向かない人間。人のフォローがうまい人間スタンドプレーが得意な人間。
あれこれあるけど、ジャストな人事にアッパレです。
そんな中、自分にも新人研修なんてものが近いうちに振られるということを思い出した。
通常業務をこなしながらやれと言うのだから鬼だと思う。
俺の仕事量ってかなり多いほうだと自負してるんだけど、そこにヒヨコ投入ってどういうこと?
でも、どうせやるなら面白い子用意してくれないかな。
俺、楽しめることしかがんばれないんだよね。だから、つまらない子が来たら超適当な研修しそう。
何も性格のいい真面目な子を用意してくれって言ってるわけじゃなくて、教え甲斐のある子やいじり甲斐のある子。それでOK。
そんな話をしたら、
「責任持って唯レベルに育て上げるなら、そういった人材を用意しないでもない」
蔵元さんが約束してくれた。
蔵元さん、期待してますからね?
俺はひとりそんなことを考え、あとの三人は無言だったところに相馬先生が出てきた。
「鍼打っといたから、あとは遅くならないうちに適当に帰れや」
あんちゃんに声をかけ、長い腕をジャケットにガスッ、と通して図書室を出ていった。
「俺さ、今日初めてまともな格好をした相馬先生を見たんだけど、あれって間違いなくイケメンさんの類だよね?」
ポロリと零した俺の言葉は誰も拾ってくれなかった。
仕事部屋に戻ると、秋斗さんが早速リィに声をかけていた。
「さ、翠葉ちゃん帰ろうか」
リィは思い出したかのように、さっき女の子から受け取った手紙を差し出す。
「これ、茜先輩からです」
秋斗さんは躊躇せずにそれを受け取った。
「ありがとう、あとで読むよ。で、服なんだけど……。隣で着替える? マンションまでは俺が車で送るから寒いってことはないと思うけど」
神様もびっくりな話題のすり替えよう。
お見事です。
「あ、えと……」
俺のいるところからだと秋斗さんの後ろ姿しか見えないわけだけど、その顔には極上の甘い笑顔を貼り付けていると予想。
いや、違うな。
貼り付けているわけじゃなくて、自然とその顔になっちゃうんだろうな。
「車あたためておくから、その上に俺のジャケット羽織って出てきちゃいな」
壁にかけてあった自分のジャケットをリィの肩にかけて――……この人、自分はどうするつもりなんだろう?
今、秋斗さんが着ているのは厚地でもなんでもない普通の白シャツ。十月とはいえ、その格好じゃこの時間は寒いと思う。
「テーブルにカモミールティーがあるよ。猫舌さんにも飲みやすい温度だから、ゆっくり飲んでから出ておいで」
秋斗さんはノートパソコンを片手に部屋を出ていった。
「うーわ……おっとこ前っ」
俺なんて長袖Tシャツに半袖のシャツを重ねて厚地のジャケット着用ですがっ!?
あんちゃんですら、シャツの上に一枚Vネックのカーディガンを着ている。
秋斗さん、男前なのは結構なんですが、いい格好しいなのも結構なんですが、あなたが風邪をひいた際にお鉢が回ってきて困るのは俺と蔵元さんであることをお忘れずに――
背後からリィの声がして振り返ると、リィはカップを手で包みじっとそれを見ていた。
リィが口にしたのは「わかりやすい優しさとわかりづらい優しさ」。
なんて的を射た言葉なんだろう。
誰のことを言っているのかがバレバレ。
でも、その「わかりやすい優しさ」と「わかりづらい優しさ」をリィの中ではどう結論付けたのかな。
俺はそれが知りたいよ。
俺たちはリィがお茶を飲み終えると、戸締りの確認をして図書棟を出た。
俺とあんちゃんが前を歩き、その後ろを蔵元さんとリィが歩いている。
話の内容は他愛もないことで、「寒くなりましたね」「風邪をひかれませんように」――こんな感じのもの。
駐車場に着き後部座席と助手席のどちらに座ろうかリィを見ると、「何?」と言う顔をして見つめ返された。
リィが立つ位置は後部座席のドアの前。しかも、運転席の真後ろ……イコール秋斗さんサイド。
間違っても向こうに回って助手席に座ろうという選択の余地はないらしい。
これは不可抗力です――
心の中で念じつつ助手席のドアを開けると、予想を一ミリも裏切らず、秋斗さんに迷惑そうな顔をされた。
だーかーらっっっ、不可抗力だってばっっっ!
物事うまく誘導できるときとそうでない場合があることをぜひ知っていただきたいっ。
俺は少しばかり肩身の狭い思いをしながら助手席におさまった。
後部座席にあんちゃんとリィが乗り込んですぐのこと。リィが、
「蒼兄、どうしよう……」
その言葉に秋斗さんは車の発進をやめた。
「どうした?」
あんちゃんがリィの顔を覗き込む。
「今日ね、ツカサと携帯を交換していたのだけど、ツカサの携帯持ってきちゃった」
「あ、バイタルが見られるように?」
俺が訊くとリィは頷いた。
Yes、司っちっ! 俺の心のオアシス、いじれる人間大歓迎っ!
「じゃぁさ、この携帯からかけるといいよ」
俺は得意げに自分の携帯をリィに押し付けた。
「ほら、それ司っちのだからさ、それから発信すると司っちの通話料になっちゃうじゃん?」
もっともらしい理由というより、かなり適当な理由を口にしたわけだけど、素直なリィは「そっか」って顔で納得してしまった。
そんなところもかわいいよね。
「早く電話して安心させてあげなよ!」
「うん……」
リィの番号はリダイヤルに入っているけど、そんなことも思いつかなかったのか、リィはひとつひとつ自分の番号を押し始めた。
暗い車内に携帯のディスプレイが浮き上がって見える。
番号はすでに押し終わっているはずなのに、いつまでたっても通話ボタンを押そうとしない。
「翠葉、おまえ大丈夫か……? 一気に心拍数上がったけど」
「……電話、苦手だから……」
そんな会話に秋斗さんへ視線を向ける。
秋斗さんは自分の胸ポケットを右手で押さえていた。その手が、わずかではあるが規則的に動く。
自分の手の震えではなく、リィの鼓動……。
通常そんな機能はないはずだけど、この人のことだ。自分の携帯のみにオプションをつけたのだろう。
そんな車内にコール音が鳴り出し、途切れたときには「何」という司っちの不機嫌オーラ全開の声が響いた。
これ以上突っ込むと給料だとか休日に響きそうだからお口チャック……。
秋斗さん取り扱い説明書としてもっとも信頼のおける蔵元さんの言葉だけはしっかり聞く。
社長は本当にぴったりな人間を秋斗さんにつけたと思う。
「社長」という人にはS職の連続昇級をしたときに一度面接で会ったくらい。
はっきりいってどんな人なのかは不明。
それでも、この会社の社長をしていて、さらには秋斗さんに蔵元さんを抜擢するくらいには頭の切れる人なんだろうな。
何にでも適材適所ってあると思うけど、会社ともなると業務に大きく関わってくる。
警備会社でいうならば、現場向きなのかエンジニア向きなのかに始まり、指導に向く人間向かない人間。人のフォローがうまい人間スタンドプレーが得意な人間。
あれこれあるけど、ジャストな人事にアッパレです。
そんな中、自分にも新人研修なんてものが近いうちに振られるということを思い出した。
通常業務をこなしながらやれと言うのだから鬼だと思う。
俺の仕事量ってかなり多いほうだと自負してるんだけど、そこにヒヨコ投入ってどういうこと?
でも、どうせやるなら面白い子用意してくれないかな。
俺、楽しめることしかがんばれないんだよね。だから、つまらない子が来たら超適当な研修しそう。
何も性格のいい真面目な子を用意してくれって言ってるわけじゃなくて、教え甲斐のある子やいじり甲斐のある子。それでOK。
そんな話をしたら、
「責任持って唯レベルに育て上げるなら、そういった人材を用意しないでもない」
蔵元さんが約束してくれた。
蔵元さん、期待してますからね?
俺はひとりそんなことを考え、あとの三人は無言だったところに相馬先生が出てきた。
「鍼打っといたから、あとは遅くならないうちに適当に帰れや」
あんちゃんに声をかけ、長い腕をジャケットにガスッ、と通して図書室を出ていった。
「俺さ、今日初めてまともな格好をした相馬先生を見たんだけど、あれって間違いなくイケメンさんの類だよね?」
ポロリと零した俺の言葉は誰も拾ってくれなかった。
仕事部屋に戻ると、秋斗さんが早速リィに声をかけていた。
「さ、翠葉ちゃん帰ろうか」
リィは思い出したかのように、さっき女の子から受け取った手紙を差し出す。
「これ、茜先輩からです」
秋斗さんは躊躇せずにそれを受け取った。
「ありがとう、あとで読むよ。で、服なんだけど……。隣で着替える? マンションまでは俺が車で送るから寒いってことはないと思うけど」
神様もびっくりな話題のすり替えよう。
お見事です。
「あ、えと……」
俺のいるところからだと秋斗さんの後ろ姿しか見えないわけだけど、その顔には極上の甘い笑顔を貼り付けていると予想。
いや、違うな。
貼り付けているわけじゃなくて、自然とその顔になっちゃうんだろうな。
「車あたためておくから、その上に俺のジャケット羽織って出てきちゃいな」
壁にかけてあった自分のジャケットをリィの肩にかけて――……この人、自分はどうするつもりなんだろう?
今、秋斗さんが着ているのは厚地でもなんでもない普通の白シャツ。十月とはいえ、その格好じゃこの時間は寒いと思う。
「テーブルにカモミールティーがあるよ。猫舌さんにも飲みやすい温度だから、ゆっくり飲んでから出ておいで」
秋斗さんはノートパソコンを片手に部屋を出ていった。
「うーわ……おっとこ前っ」
俺なんて長袖Tシャツに半袖のシャツを重ねて厚地のジャケット着用ですがっ!?
あんちゃんですら、シャツの上に一枚Vネックのカーディガンを着ている。
秋斗さん、男前なのは結構なんですが、いい格好しいなのも結構なんですが、あなたが風邪をひいた際にお鉢が回ってきて困るのは俺と蔵元さんであることをお忘れずに――
背後からリィの声がして振り返ると、リィはカップを手で包みじっとそれを見ていた。
リィが口にしたのは「わかりやすい優しさとわかりづらい優しさ」。
なんて的を射た言葉なんだろう。
誰のことを言っているのかがバレバレ。
でも、その「わかりやすい優しさ」と「わかりづらい優しさ」をリィの中ではどう結論付けたのかな。
俺はそれが知りたいよ。
俺たちはリィがお茶を飲み終えると、戸締りの確認をして図書棟を出た。
俺とあんちゃんが前を歩き、その後ろを蔵元さんとリィが歩いている。
話の内容は他愛もないことで、「寒くなりましたね」「風邪をひかれませんように」――こんな感じのもの。
駐車場に着き後部座席と助手席のどちらに座ろうかリィを見ると、「何?」と言う顔をして見つめ返された。
リィが立つ位置は後部座席のドアの前。しかも、運転席の真後ろ……イコール秋斗さんサイド。
間違っても向こうに回って助手席に座ろうという選択の余地はないらしい。
これは不可抗力です――
心の中で念じつつ助手席のドアを開けると、予想を一ミリも裏切らず、秋斗さんに迷惑そうな顔をされた。
だーかーらっっっ、不可抗力だってばっっっ!
物事うまく誘導できるときとそうでない場合があることをぜひ知っていただきたいっ。
俺は少しばかり肩身の狭い思いをしながら助手席におさまった。
後部座席にあんちゃんとリィが乗り込んですぐのこと。リィが、
「蒼兄、どうしよう……」
その言葉に秋斗さんは車の発進をやめた。
「どうした?」
あんちゃんがリィの顔を覗き込む。
「今日ね、ツカサと携帯を交換していたのだけど、ツカサの携帯持ってきちゃった」
「あ、バイタルが見られるように?」
俺が訊くとリィは頷いた。
Yes、司っちっ! 俺の心のオアシス、いじれる人間大歓迎っ!
「じゃぁさ、この携帯からかけるといいよ」
俺は得意げに自分の携帯をリィに押し付けた。
「ほら、それ司っちのだからさ、それから発信すると司っちの通話料になっちゃうじゃん?」
もっともらしい理由というより、かなり適当な理由を口にしたわけだけど、素直なリィは「そっか」って顔で納得してしまった。
そんなところもかわいいよね。
「早く電話して安心させてあげなよ!」
「うん……」
リィの番号はリダイヤルに入っているけど、そんなことも思いつかなかったのか、リィはひとつひとつ自分の番号を押し始めた。
暗い車内に携帯のディスプレイが浮き上がって見える。
番号はすでに押し終わっているはずなのに、いつまでたっても通話ボタンを押そうとしない。
「翠葉、おまえ大丈夫か……? 一気に心拍数上がったけど」
「……電話、苦手だから……」
そんな会話に秋斗さんへ視線を向ける。
秋斗さんは自分の胸ポケットを右手で押さえていた。その手が、わずかではあるが規則的に動く。
自分の手の震えではなく、リィの鼓動……。
通常そんな機能はないはずだけど、この人のことだ。自分の携帯のみにオプションをつけたのだろう。
そんな車内にコール音が鳴り出し、途切れたときには「何」という司っちの不機嫌オーラ全開の声が響いた。
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