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【第零部 そらいろ ~天色事変~】

言葉とタミの出会い

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 タミは人間の世界にある妖モノたちしか入ることが出来ない森で空を飛ぶ練習をしていた。高い木に登っては飛び、落下する。それを何度も繰り返す。タミはある程度の怪我であれば自身の治癒能力で回復することが出来るため、地面に落ちて木に登るまでには怪我は回復してしまう。

「どうすれば、飛べるんだろう?」とタミが木の上に登り空を見上げていると「ふふ。羽を動かさないと飛べないんじゃないかな」と声が聞こえてくる。

 木の下には深い海のような青い瞳、夕日のような黄金色の髪の男の子がクスクスと笑いながら立っていた。

「え? 誰?」
「やあ! 僕は言葉ことは。君は妖モノだね? 僕は人間だけど、君たちが見えるんだ。君はなんでそんなに飛びたいの」

「この雨を降らしているヤツ・・って妖モノを探さないといけないの」
「へえ、この雨をずっと降らしているアメフリのことか」
「ヤツの名前はアメフリっていうのね! ねぇ、言葉はアメフリがどこにいるか知っているの?」

「いや、知らない。けど、大人たち……妖モノたちが探しているのは知っているよ」
「なんかね、そのアメフリって心がみえないんだって。だから探すのが難しいみたいなの」とタミはふぅと溜息をつく。


「心? あ、そうか。その桜色の髪は……ハノイのところの子だね」
「え? 母上のこと知っているの?」

「うん。ハノイとはもう随分と長い付き合いさ」
「うーん? 言葉も私くらいの子供だよね?」と首を傾げるタミ。

 言葉はニッコリとして「僕は思うんだ。きっとね、誰にでもココロはあると。相手の気持ちになって考えてみて。その人が今どんな思いでいるかを」
言葉は人差し指を立て唇に当て「キミニナラデキルヨ」と言って指で文字のような陣を描く。

 言葉は言音の息子で“言の葉”という妖力と想いを込めた言葉をコトダマとして発し、その言葉通りの未来を引き寄せる能力を持つ。もちろん100%の能力ではなく、未来を引き寄せるという曖昧な能力で相手のもつ力によって実現率が変わるものである。

 森の上から大きな風が吹き小さな竜巻が下りてくる。竜巻がヒュっと消えると同時にヨナが現れる。

「父上! おかえりなさい」とタミはヨナに向かって走っていき勢いよく飛びつく。
「ただいま」とヨナはタミを優しくと抱きしめる。

「あれ? 母上は?」
「母上は力を使い果たしてしまって。今は安全なところでお休みをしているよ」

「そうよね、あのままでは母上が……」
「心配させてしまったね」
 タミはヨナの胸に顔を埋め、ヨナはタミをぎゅっと強く抱きしめる。

「そうだ! 父上! あのね、今ね。人間の男の子に飛び方とアメフリの探し方を教えてもらったの。あとね、誰にでも感情はあるって。だから、アメフリにもココロはあるって。きっとね、アメフリは寂しいんだと思うの。だって、こんなにも雨の日ばかりってことは悲しくて泣いているんだと思うから。だから一番、悲しいって思っている人の想いを探せばいいんじゃないかな」

 ヨナはタミの言葉に驚き、そして微笑む。
「タミは優しい子だね」とタミの頭を撫でると照れくさそうに「えへへ」と頬を桜色に染めて喜ぶ。撫でられるのが嬉しくて頭を突き上げて撫でのおかわりをする。

「母上がお休みするなら私が探してみるね」
「……無理はするなよ」

「うん!」
 タミは目を閉じ、指を組み、アメフリのことを想う。
「想いの力よ、答えて。とっても悲しくて泣いている妖モノはどこにいますか」

“誰だ? この声は……童か? お主、想いの力が使えるのか”と姿は見えないがどこからか声が聞こえてくる。

「え? 誰?」とタミはキョロキョロと声の主を探す。
「タミ?」とヨナはタミの様子を伺う。

“タミというのだな。タミよ。この声はお前にしか聞こえていない。お前の頭に直接話しているからだ。だから話す時は声ではなく頭で考えるのだ”

“そうなのね。わかったわ。えっと……あなたは……“
“おれの名はカミだ。想いの力を手助けする者だ”

“カミ様?”
“そうだ。想いの力は等価交換だ。知らぬのか”

“想いの力はね、今はじめてやってみたの。想いの力はね、母上から教えてもらった”
“母……ああ、ハノイか。そうか。妖モノの居場所を知りたいという願いであれば、少しの妖力でいいだろう。よし、その願い、叶えてやろう”

 タミの脳裏に今いる場所からアメフリがいる場所への道のり、アメフリが籠っている深い森の中にある洞窟が映りだされる。

「父上! わかったわ!」
 タミがヨナにアメフリの場所を伝えると、ヨナはタミを背中から抱きかかえ、空高く飛んでいく。
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