桜の旅人

星名雪子

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あとがき

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この作品を思いついたのは7年以上も前のことでした。当時、私は様々なストレスを抱えており、少しでも心を癒したいと、自然の風景を映像に収めたヒーリング系のブルーレイをレンタルして繰り返し見ていました。桜がテーマの作品を見ていると、その中に大量の花を散らしている桜の映像がありました。青空の下を舞う花吹雪の映像はとても美しく、画面を通して桜の美しさに魅了されました。この風景を物語で表現できたら、と思いついたのが「桜の旅人」でした。

作品を書く上で、桜について色々調べましたが、実はヤヨイ様にはモデルとなった桜がいます。山梨県に生息している樹齢二千年の老木で、こちらは今なお元気に頑張っています。それはこの桜の生命力はもちろんのこと、お世話をしている沢山の人々の支えがあってこそなのだなと色々な記事を読んで感じました。桜にとって、それだけ人間と環境は重要なものなのだという事がわかります。

今はこのご時世で花見が中止になっています。が、以前は花見の季節になると環境問題が話題に上り、その度に桜が汚されていないか私は密かに心配をしていました。桜は自分の下で大騒ぎをする彼らのことを一体どう思っているのだろう?そんな気持ちから「桜の声が聞こえる青年」というアイデアが浮かびました。

その青年・野樹咲人は耳が聞こえない、という障害を持っています。実は私も「難聴者」です。しかし、重度難聴である咲人とは違って、私は軽度~中度の難聴。「聞こえにくい」というだけで声自体は聞こえるので、咲人に比べると環境は恵まれているのかもしれません。が、やはり不便を感じることも多く悩みは尽きません。障害に負けず、それを一生懸命に乗り越えていく強さを表現したいという思いがあり、それをこの作品に込めました。

作中で咲人が言っていますが、

「人は誰かの為にと思えば自分でも驚くぐらい大きな力が湧いてくる。姿は違うけれど、人間にも桜にも命がある。どんな事でもいいから誰かの力になりたい、恩返しがしたい、と思うことはとても素晴らしいこと」

日々の生活の中でも大なり小なり「誰かのため」と思えば頑張れることが沢山あるはずです。「あの人のために苦手な料理を頑張ろう」とか「あの時、助けてくれたあの人に何か恩返しがしたい」とか。

人間も植物も動物も皆、支え合って生きている。この作品を書きながら「生きていく上で一番大事なこと」を改めて思い起こすことができたように思います。物語を通してこの思いを少しでもお伝え出来たら幸いです。

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
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