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火曜日
傷心で火曜日 2
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早いかなと思ってたけど、もう正門は開いてた。早出の職員も大変だ。
当然、学生用の駐輪場には一台も自転車が止まってない。
ぶっちぎりの一番乗りだ。
そこで、あたしは気づいた。
ノン様は八月に新キャプテンになったばかり。
そのノン様が部室の鍵を持ってる。
彼女が来てないってことは部室に入れないし着替えもできない。
せっかく早く来たけど、このまま待ちぼうけか。
いや、確か職員室に行ったら予備の鍵があるはずだ。
取りに行こうと思ったけど、メンドイからやめた。
どうせ今日はロクに動けないだろうし、みんなが来るまで制服のまま汗かかない程度に柔軟でもやっとこう。
校庭の隅っこにバッグを置く。
背後にある校舎の垂れ幕……いつまで吊ってるんだ?
祝 インターハイ出場 水泳部 100メートルバタフライ 瀬戸入果(2年)
いい加減恥ずかしい。
関東大会終わってから二ヶ月ずっとあのまま放置。
しかも本番は犬掻きゴールで失格だぞ。
さすがに体育祭までには撤去するだろうけどさ。
そこでガム噛みながら前屈やった瞬間、またも昨夜の吐き気が襲ってきた。
下向いたのがいけなかった?
もう胃袋空っぽなのに。
……うげぇ、気持ち悪いよぉ。
ポテチと牛丼、もうトラウマで食べらんない。
理不尽だ。
何であたしがこんなツライ思いしなきゃなんないの?
そもそも、母さんがフツーの時間に晩ごはん作ってくれてたら、あんな大量のポテチなんか食べなかったし。
どうせ、小田急で麻布のセニョールに逢いに行ったんだろ。
あたしが勉学に勤しんでる最中に、母さんは真っ赤なワンピ着て特急ロマンスカー乗ってロマンスか?
あ、やべ。無意識でツンドラっちゃった……。
とりあえず、ポテチと牛丼に罪はない。
パエリアとスパニッシュ・オムレツ作って人妻すけこますドンファン・ジジイの方が断然悪い。
あとさ、昨夜から吐き気ばっか気になってたけど、実は頭痛もけっこうひどかったりする。
痛み止め飲んだ方がいいかな? 正直、水も飲みたくないんだよね。
あー、ダルい。
学校でゲロ吐くって絶対NGだよ。
まして、プールで吐いたりしたら一生の汚点だわ。
どうしよ……。
部室の前でみんなが来るまで休んどくか。
学校来たら家のこと忘れられると思ってたけど、この吐き気のせいで全然忘れらんない。今日授業と部活終わったら、またあの家に帰らなきゃなんないのか。
悪夢だわ。
いや、夢ならまだいい。
覆せない現実だからタチ悪い。
部室前まで何とか移動して、カバンを枕にそのまま横になる。
硬いコンクリートなのに家のベッドよりずっと寝心地がいい。ヒンヤリしてるし、母さんが起こしに来ないのは何よりだ。
母さん、いつ出てくんだろ? もう家のキッチンで料理することもないんだろな。
いつかは作り方を教えてもらうはずだった母さん特製のロールキャベツ、あたしが作って父さんに食べてもらうことももうなくなっちゃったんだね。
……寂しいな。
あのキッチン、これからだんだんユミコの色に染まってくんだ。
そこで洋物アニメの着メロが鳴る。レリゴーレリゴーのやつ。
何てタイミング……母さんからだ。しかも電話かよ!
メールくらいなら見てあげるのに。写メでありのままの姿見せてあげるのに。
グロッキーになって部室前で横たわる今のこのあたしをね。
でも、会話だけはガチないし!
耳触りでウザいから電源切ったった。
目を瞑る。
頭の中がグルグル回ってる。
空腹でおなかがぐぅと鳴るのに、胸がムカムカして食事を拒絶してる。
ガム噛んでると余計に気分が悪くなってきた。
もうダメだ。
あたし、こんなとこで最期を迎えるんだ。
でも、それも悪くない。
悩みや苦しみから解放されるもんね。
第五の選択、自殺。死んじゃおう。
……でも、まだ死にたくない。
死ぬ前に一度でいいから、オシャレなオープンテラスのお店で未来の彼氏とイチャイチャデートしてみたい。
横浜の夜景見ながら初めてキスしてさ、朝までずっと手をつないで二人の将来について語り合うの。
モコモコの白いワンコタン飼って、二人で手をつなぎながら散歩するんだ。
家賃十万くらいの部屋を借りて、あたしと彼氏と愛犬メレンゲとダブルベッドで仲良く"川"の字で寝ちゃったりする。……ん、あたしと彼氏の間が犬じゃ"川"の字は微妙?
まあ、いいや。そこまで拘ってないし。
そんでね、フカフカのベッドで朝までイチャイチャしてさ、時々キスして、またイチャイチャして……
「イルたん。イルたんてば!」
「……んあ?」
気がつくと、心配そうな顔であたしを揺り起こすキャプテン紀子が目に入った。
「ノン様……」
「ノン様じゃないよ! どしたの? こんなとこで倒れてたらビックリするじゃん。口からガム出てるし」
ホントだ。あたしはポケットの包み紙でそれを隠す。
よく見るとノン様以外に親友二人、それに少し離れて一年も三人いた。
……ああ、よかった。男子いなくて。
「おはよぉ……。今何時?」
「まだ七時過ぎたところ。イルたん、何時に来たの?」
「んー、二時間くらい前?」
ノン様と景子と美鈴、顔を見合わせて驚いてる。
「何で? そんなに早く来てここで寝るんだったら、家で寝てた方がいいじゃん」
美鈴の指摘は尤もだ。
あたしは座ったまんま答える。
「気分悪くてさ。マジ吐きそっす」
「じゃあ、無理して朝練来なくてもよかったのに」
「休んじゃらんないよ。もうすぐシーズン終わっちゃうし、それまでには泳げる体に戻したいもんね。……いつやるか?」
「今でしょ!」
あたし含めてギャハギャハ笑う四人。
つられて一年も控えめに笑う。まだイケるのかコレ?
笑うと少しマシになった。
「何で吐きそうなの? ツワリ?」
美鈴の発言にあたしも乗る。
「今がピークでさ。無性に酸っぱいのほしい。誰か柑橘系の食べ物持ってない?」
「柑橘系? 制汗スプレーならあるよ」
「ソレ食えねーし」
「吸えば?」
「じゃ、ちょうだい」
立ち上がろうとすると、足元がふらついた。
「大丈夫?」
ノン様と景子が助けてくれる。
大丈夫と、あたしは頷いた。
「マジのマジでヤバいんじゃない? 顔、真っ青だよ」
「えー、こんだけ日焼けしてんのに?」
「不思議と青く見える」
「んー、確かに気持ちはブルーだけどさぁ」
「生理はもう過ぎたよね?」
「ん。もしかして想像妊娠かも」
「去年、ウチのチワワも想像妊娠したよ。発情期が過ぎたら治まったけど」
「イルたん、発情してんの?」
「美鈴のチワワと一緒にすんな!」
いつものような品のない会話で気丈に振る舞うも、やっぱりキレが悪い。
自分でそう感じるくらいだから、周りの子にもそう見られてる。
ノン様が深刻な顔であたしの両頬に手を添える。
「イルたん、やっぱ無理しちゃってるよ? 朝練はもういいからさ」
「あ! あたし、ミユキ先生見たよ」
景子がそう言うと、ノン様は「それだ!」と食いつく。
「じゃあ、保健室行こ。一年! 誰でもいいから、あたしについて来て」
さすがキャプテン。統率力がハンパない。
三人の一年は誰があたしに付き添うかを争ってる。
う~む……。
恥ずかしい話、あたしは一年の女子から神みたいに慕われてる。「カッコイイです」とか「素敵です」とか……よくわからん。
男装してるわけでもないのに何故ゆえ女子にモテるのだ? 同じ一年でも男子からは「ウミブタ先輩」扱いなのに。
当然、学生用の駐輪場には一台も自転車が止まってない。
ぶっちぎりの一番乗りだ。
そこで、あたしは気づいた。
ノン様は八月に新キャプテンになったばかり。
そのノン様が部室の鍵を持ってる。
彼女が来てないってことは部室に入れないし着替えもできない。
せっかく早く来たけど、このまま待ちぼうけか。
いや、確か職員室に行ったら予備の鍵があるはずだ。
取りに行こうと思ったけど、メンドイからやめた。
どうせ今日はロクに動けないだろうし、みんなが来るまで制服のまま汗かかない程度に柔軟でもやっとこう。
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背後にある校舎の垂れ幕……いつまで吊ってるんだ?
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いい加減恥ずかしい。
関東大会終わってから二ヶ月ずっとあのまま放置。
しかも本番は犬掻きゴールで失格だぞ。
さすがに体育祭までには撤去するだろうけどさ。
そこでガム噛みながら前屈やった瞬間、またも昨夜の吐き気が襲ってきた。
下向いたのがいけなかった?
もう胃袋空っぽなのに。
……うげぇ、気持ち悪いよぉ。
ポテチと牛丼、もうトラウマで食べらんない。
理不尽だ。
何であたしがこんなツライ思いしなきゃなんないの?
そもそも、母さんがフツーの時間に晩ごはん作ってくれてたら、あんな大量のポテチなんか食べなかったし。
どうせ、小田急で麻布のセニョールに逢いに行ったんだろ。
あたしが勉学に勤しんでる最中に、母さんは真っ赤なワンピ着て特急ロマンスカー乗ってロマンスか?
あ、やべ。無意識でツンドラっちゃった……。
とりあえず、ポテチと牛丼に罪はない。
パエリアとスパニッシュ・オムレツ作って人妻すけこますドンファン・ジジイの方が断然悪い。
あとさ、昨夜から吐き気ばっか気になってたけど、実は頭痛もけっこうひどかったりする。
痛み止め飲んだ方がいいかな? 正直、水も飲みたくないんだよね。
あー、ダルい。
学校でゲロ吐くって絶対NGだよ。
まして、プールで吐いたりしたら一生の汚点だわ。
どうしよ……。
部室の前でみんなが来るまで休んどくか。
学校来たら家のこと忘れられると思ってたけど、この吐き気のせいで全然忘れらんない。今日授業と部活終わったら、またあの家に帰らなきゃなんないのか。
悪夢だわ。
いや、夢ならまだいい。
覆せない現実だからタチ悪い。
部室前まで何とか移動して、カバンを枕にそのまま横になる。
硬いコンクリートなのに家のベッドよりずっと寝心地がいい。ヒンヤリしてるし、母さんが起こしに来ないのは何よりだ。
母さん、いつ出てくんだろ? もう家のキッチンで料理することもないんだろな。
いつかは作り方を教えてもらうはずだった母さん特製のロールキャベツ、あたしが作って父さんに食べてもらうことももうなくなっちゃったんだね。
……寂しいな。
あのキッチン、これからだんだんユミコの色に染まってくんだ。
そこで洋物アニメの着メロが鳴る。レリゴーレリゴーのやつ。
何てタイミング……母さんからだ。しかも電話かよ!
メールくらいなら見てあげるのに。写メでありのままの姿見せてあげるのに。
グロッキーになって部室前で横たわる今のこのあたしをね。
でも、会話だけはガチないし!
耳触りでウザいから電源切ったった。
目を瞑る。
頭の中がグルグル回ってる。
空腹でおなかがぐぅと鳴るのに、胸がムカムカして食事を拒絶してる。
ガム噛んでると余計に気分が悪くなってきた。
もうダメだ。
あたし、こんなとこで最期を迎えるんだ。
でも、それも悪くない。
悩みや苦しみから解放されるもんね。
第五の選択、自殺。死んじゃおう。
……でも、まだ死にたくない。
死ぬ前に一度でいいから、オシャレなオープンテラスのお店で未来の彼氏とイチャイチャデートしてみたい。
横浜の夜景見ながら初めてキスしてさ、朝までずっと手をつないで二人の将来について語り合うの。
モコモコの白いワンコタン飼って、二人で手をつなぎながら散歩するんだ。
家賃十万くらいの部屋を借りて、あたしと彼氏と愛犬メレンゲとダブルベッドで仲良く"川"の字で寝ちゃったりする。……ん、あたしと彼氏の間が犬じゃ"川"の字は微妙?
まあ、いいや。そこまで拘ってないし。
そんでね、フカフカのベッドで朝までイチャイチャしてさ、時々キスして、またイチャイチャして……
「イルたん。イルたんてば!」
「……んあ?」
気がつくと、心配そうな顔であたしを揺り起こすキャプテン紀子が目に入った。
「ノン様……」
「ノン様じゃないよ! どしたの? こんなとこで倒れてたらビックリするじゃん。口からガム出てるし」
ホントだ。あたしはポケットの包み紙でそれを隠す。
よく見るとノン様以外に親友二人、それに少し離れて一年も三人いた。
……ああ、よかった。男子いなくて。
「おはよぉ……。今何時?」
「まだ七時過ぎたところ。イルたん、何時に来たの?」
「んー、二時間くらい前?」
ノン様と景子と美鈴、顔を見合わせて驚いてる。
「何で? そんなに早く来てここで寝るんだったら、家で寝てた方がいいじゃん」
美鈴の指摘は尤もだ。
あたしは座ったまんま答える。
「気分悪くてさ。マジ吐きそっす」
「じゃあ、無理して朝練来なくてもよかったのに」
「休んじゃらんないよ。もうすぐシーズン終わっちゃうし、それまでには泳げる体に戻したいもんね。……いつやるか?」
「今でしょ!」
あたし含めてギャハギャハ笑う四人。
つられて一年も控えめに笑う。まだイケるのかコレ?
笑うと少しマシになった。
「何で吐きそうなの? ツワリ?」
美鈴の発言にあたしも乗る。
「今がピークでさ。無性に酸っぱいのほしい。誰か柑橘系の食べ物持ってない?」
「柑橘系? 制汗スプレーならあるよ」
「ソレ食えねーし」
「吸えば?」
「じゃ、ちょうだい」
立ち上がろうとすると、足元がふらついた。
「大丈夫?」
ノン様と景子が助けてくれる。
大丈夫と、あたしは頷いた。
「マジのマジでヤバいんじゃない? 顔、真っ青だよ」
「えー、こんだけ日焼けしてんのに?」
「不思議と青く見える」
「んー、確かに気持ちはブルーだけどさぁ」
「生理はもう過ぎたよね?」
「ん。もしかして想像妊娠かも」
「去年、ウチのチワワも想像妊娠したよ。発情期が過ぎたら治まったけど」
「イルたん、発情してんの?」
「美鈴のチワワと一緒にすんな!」
いつものような品のない会話で気丈に振る舞うも、やっぱりキレが悪い。
自分でそう感じるくらいだから、周りの子にもそう見られてる。
ノン様が深刻な顔であたしの両頬に手を添える。
「イルたん、やっぱ無理しちゃってるよ? 朝練はもういいからさ」
「あ! あたし、ミユキ先生見たよ」
景子がそう言うと、ノン様は「それだ!」と食いつく。
「じゃあ、保健室行こ。一年! 誰でもいいから、あたしについて来て」
さすがキャプテン。統率力がハンパない。
三人の一年は誰があたしに付き添うかを争ってる。
う~む……。
恥ずかしい話、あたしは一年の女子から神みたいに慕われてる。「カッコイイです」とか「素敵です」とか……よくわからん。
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