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水曜日
決戦は水曜日 1
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ケータイのアラームが鳴る。
眠りが浅かったせいか、あたしはすぐにそれを止めることができた。
よかった……。
このままミユキ先生を起こしたくない。
午前四時。
あたしはゆっくりベッドから離れると、カバンを肩にかけて洗濯物をまとめた袋を持ってコッソリ保健室を出ようとした。
「……ん、まだ早いぞ」
「あ、起こしちゃいました?」
「車を出してやる。化粧して髪をセットするまでちょっと待ってろ」
「え、いや、そんな……いいですよ! 洗濯くらい一人で行けますって!」
「時間が問題だ。何のために私が付き添ってると思ってる?」
何だか悪い。申し訳なさすぎるって!
あたしが最初にここに泊まるって言った時、ミユキ先生が「面倒くさい」って言ってたのを思い出した。
あの瞬間からミユキ先生はここまでやる覚悟だったんだ。
食事の世話から着替えから何から何まで……。
今更だけど、あたしすっごい迷惑なヤツだ。
何一つ自分でできないのに、いろんな人を巻き込んでる。
もういい。こんなワガママこれで終わりにしよう。
「瀬戸、電気つけてくれ」
あたしは指示に従う。
「ミユキ先生」
「何だ? 寝起きの顔見んなよ」
「見ません。……すみません。あたし、もう家に帰ります」
「帰る?」
ノソノソとベッドから起き上がったミユキ先生、見るなと言いながら無防備に素顔を晒した。
「結論は出たのか?」
とっさに頷く。
だけども、ミユキ先生にはバレバレだった。
「もう一度訊くぞ。自分が納得する答えは見つけられたのか?」
怖い。
口調は普段のミユキ先生だけど、どう考えても怒ってる。
「瀬戸」
「は、はい……」
「答えろ」
「見つかって……見つかってません」
あたしはその場に崩れ落ちた。
ふがいない。情けなさすぎる。
自分は何をやってもミユキ先生に応えられない。
ミユキ先生に少しでも負担をかけまいとしたところで、あたしが考えてることなんて全部お見通しなんだ……。
「顔を洗ってくる」
あたしを残して、ミユキ先生は静かに保健室を出て行った。
イヤだ!
あたし、このままじゃまた泣いちゃう!
イヤだ! イヤだ! もう泣きたくない!
あたしは先生の後を追った。
一階トイレに入る。
顔を洗ってる先生の隣で、あたしはおもいきり蛇口をひねって自分の顔に水をかけた。
手のひらで掬った水を叩きつけるように目の中に入れた。
気合いを入れるように自分の頬を張って、また掬った水で顔を濡らした。
ミユキ先生は黙ってあたしを見てる。
あたしが何をやるのかを見守っててくれてる。
「……ミユキ先生」
あたしは水を止めて、濡れた顔のまま真正面を向いた。
「すいません! 寝ぼけてました。さっきのは寝言です!」
「瀬戸」
「はい」
「私も寝ぼけていた。よく覚えてない」
そう言って、あたしを優しく抱き寄せてくれた。あたしの方が若干背が高いけど、ミユキ先生の方が何もかも大きく感じる。
「……ジャージ、濡れちゃいますよ?」
「濡れてもかまわん。私達は今からどこへ行くと思う?」
「あ!」
あたしは笑って答える。
「コインランドリーですね」
「正解。早起きしたから腹が減った。洗濯が終わったら朝ワックしよう」
「賛成! オゴってくださいね?」
「何でも頼め。後で山下二等兵に請求するから」
二等兵はやめてあげて。さすがに気の毒すぎ……。
眠りが浅かったせいか、あたしはすぐにそれを止めることができた。
よかった……。
このままミユキ先生を起こしたくない。
午前四時。
あたしはゆっくりベッドから離れると、カバンを肩にかけて洗濯物をまとめた袋を持ってコッソリ保健室を出ようとした。
「……ん、まだ早いぞ」
「あ、起こしちゃいました?」
「車を出してやる。化粧して髪をセットするまでちょっと待ってろ」
「え、いや、そんな……いいですよ! 洗濯くらい一人で行けますって!」
「時間が問題だ。何のために私が付き添ってると思ってる?」
何だか悪い。申し訳なさすぎるって!
あたしが最初にここに泊まるって言った時、ミユキ先生が「面倒くさい」って言ってたのを思い出した。
あの瞬間からミユキ先生はここまでやる覚悟だったんだ。
食事の世話から着替えから何から何まで……。
今更だけど、あたしすっごい迷惑なヤツだ。
何一つ自分でできないのに、いろんな人を巻き込んでる。
もういい。こんなワガママこれで終わりにしよう。
「瀬戸、電気つけてくれ」
あたしは指示に従う。
「ミユキ先生」
「何だ? 寝起きの顔見んなよ」
「見ません。……すみません。あたし、もう家に帰ります」
「帰る?」
ノソノソとベッドから起き上がったミユキ先生、見るなと言いながら無防備に素顔を晒した。
「結論は出たのか?」
とっさに頷く。
だけども、ミユキ先生にはバレバレだった。
「もう一度訊くぞ。自分が納得する答えは見つけられたのか?」
怖い。
口調は普段のミユキ先生だけど、どう考えても怒ってる。
「瀬戸」
「は、はい……」
「答えろ」
「見つかって……見つかってません」
あたしはその場に崩れ落ちた。
ふがいない。情けなさすぎる。
自分は何をやってもミユキ先生に応えられない。
ミユキ先生に少しでも負担をかけまいとしたところで、あたしが考えてることなんて全部お見通しなんだ……。
「顔を洗ってくる」
あたしを残して、ミユキ先生は静かに保健室を出て行った。
イヤだ!
あたし、このままじゃまた泣いちゃう!
イヤだ! イヤだ! もう泣きたくない!
あたしは先生の後を追った。
一階トイレに入る。
顔を洗ってる先生の隣で、あたしはおもいきり蛇口をひねって自分の顔に水をかけた。
手のひらで掬った水を叩きつけるように目の中に入れた。
気合いを入れるように自分の頬を張って、また掬った水で顔を濡らした。
ミユキ先生は黙ってあたしを見てる。
あたしが何をやるのかを見守っててくれてる。
「……ミユキ先生」
あたしは水を止めて、濡れた顔のまま真正面を向いた。
「すいません! 寝ぼけてました。さっきのは寝言です!」
「瀬戸」
「はい」
「私も寝ぼけていた。よく覚えてない」
そう言って、あたしを優しく抱き寄せてくれた。あたしの方が若干背が高いけど、ミユキ先生の方が何もかも大きく感じる。
「……ジャージ、濡れちゃいますよ?」
「濡れてもかまわん。私達は今からどこへ行くと思う?」
「あ!」
あたしは笑って答える。
「コインランドリーですね」
「正解。早起きしたから腹が減った。洗濯が終わったら朝ワックしよう」
「賛成! オゴってくださいね?」
「何でも頼め。後で山下二等兵に請求するから」
二等兵はやめてあげて。さすがに気の毒すぎ……。
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