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第3章 空間が足んない
空間が足んない 7
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夜になった。
今から猫助と熊パンダ人間を捜しに行くのは危なすぎる。
コンビニ店員のクリェーシェルさん以上にエロいハーフ・サキュバスが夜の街をウヨウヨ徘徊してるだろうし、僕の白いのもMAXまで回復してる。……もうお漏らしはごめんだ。
向こうの世界はどうなってるかな?
咲柚さん、きっと心配してるだろう。いや、怒ってるかな。どっちにしろ無断外泊なんてしたことないから僕自身不安でいっぱいだ。
いいや! それもこれも全部横山さんが悪いんだ! タップリ叱られて減給にでもなればいい。
……それとも、これはやっぱり咲柚さんの差し金なのか? 横山さんの独断でここまでするとは思えないし。
さてと、現実に返ろう。
ここはクリェーシェルさんの部屋で間取りはたったの四畳半、それにユニットバスと簡易キッチンがあるだけ。
そしてこんな狭い場所にクリェーシェルさんとヘンリーさん、それに僕と花子さんの四人が泊まることになる。
空間が足んない。
せめて、ヘンリーさんは自宅のダンボールハウスへ帰ってほしい。守り神の花子さんがいるんだし、もう心配いらないだろ?
花子さんは僕にとってのリップアーマー最強版だ。
彼女の放つニオイはいかなる(ハーフ)サキュバスの魔の手からも守ってくれる。
逆に言えば、僕の童貞を狙うクリェーシェルさんにとって花子さんは忌々しい存在になる筈だけど、決して邪険に扱ったりしなかった。
コンビニから盗んできたという曰くつきのカップやきそばを花子さんにも振る舞ってたし。
花子さんはそれを無言でがっついてる。
よほど腹が空いてたんだろうが、いい加減レンズの割れた眼鏡は外したらどうだろう? 割ってしまった僕が言うのも何だけど。
カップやきそばを平らげた僕達は、食後の節分豆をみんなでつまんで食べる。
「いいんですか? コレ食べると性欲抑えられますよ?」
「てやんでぇ! こんな豆如きでオレの暴れ肉棒が抑えられっかよ! チャンチャラおかしいぜぃ!」
でも、フニャチンなんだろ? フニャチンのハーフ・インキュバスなんて聞いたこともない。
「明日はどこを捜すの?」
風呂上がりのクリェーシェルさん、バスタオルを体に巻きつけただけの格好でそう訊ねてくる。何を着てもいやらしい。
グレープフルーツのような胸の谷間を見ただけで僕の中の小さな僕が硬く大きくメタモルフォーゼしそうだったが、花子さんの澄ました顔を見たら一瞬で元の鞘に収まった。助かる!
僕はその亜熱帯原産の柑橘類から目を背けるようにして答える。
「見当もつきません。……花子さん、猫助と連絡取れないんですか?」
「無理です。魔界、スマホ使えませんから」
花子さんは小指を立てながら節分豆をつまんでおちょぼ口で食べる。つまんでる右手がそうなるのはわかるけど、膝に置いてる左手までどうして小指が立つんだ?
「猫助は向こうからこっちに近づいてくるのを待つとして……その熊パンダ人間はどこにいるかわかるんじゃないですか? 蜂蜜と蜜蝋のある場所に行けばすぐ見つかる筈です」
ところが、花子さんはかぶりを振る。
「その蜂蜜と蜜蝋がどこにあるかがわかんないんです。その方の勘……嗅覚だけが頼りなので」
嗅覚か。さすが熊パンダ人間だ。
「それって市販されてないんですか?」
「それだと効果がないんです。店頭に並んでいる商品だと不純物が濾過されてしまっているので」
「不純物?」
「率直に言えば蜜蜂の糞です」
何てこった!
普段、僕達が唇に塗ってるリップアーマーにはそんな物が混じってたのか! 知らぬが仏だ。
あ、そう言えばリップアーマー持ってきてないや。ますます花子さんの元から離れられない。
三人の女の子に危害はないけど、少なくとも僕は早急にこの世界を離れなきゃ童貞狩りに遭ってしまう。
そのためにも三人の女の子を見つけなきゃな……。
「とにかく手掛かりがなさすぎる。……花子さん、何かその熊パンダ人間の見た目的な特徴とかないんですか? ちょっとしたことでいいんですけど」
ダメ元で訊いてみる。
「特徴……えー、そうですね」
花子さん、リップアーマー不要の唇に人差し指を当てて考えてる。
「しいて言えば……」
「しいて言えば?」
「両目の周りを黒く塗ってるくらいです」
は……? それってパンダっぽくってこと?
「それに……」
「それに?」
「パンダ柄のモコモコしたジャンプスーツを着用してますね。おなかと背中にそれぞれ漢字で『熊』の文字、それと実際に笹は食べられないので、しょっちゅう仙台名産の笹の形をした蒲鉾ばかり食べてます。……これくらいでしょうか?」
特徴アリアリじゃないか!
それって、「あたしが熊パンダ人間です」ってプラカード掲げて歩いてるに等しいじゃん!
やる! 明日中に絶対に捜し出してみせる!
今から猫助と熊パンダ人間を捜しに行くのは危なすぎる。
コンビニ店員のクリェーシェルさん以上にエロいハーフ・サキュバスが夜の街をウヨウヨ徘徊してるだろうし、僕の白いのもMAXまで回復してる。……もうお漏らしはごめんだ。
向こうの世界はどうなってるかな?
咲柚さん、きっと心配してるだろう。いや、怒ってるかな。どっちにしろ無断外泊なんてしたことないから僕自身不安でいっぱいだ。
いいや! それもこれも全部横山さんが悪いんだ! タップリ叱られて減給にでもなればいい。
……それとも、これはやっぱり咲柚さんの差し金なのか? 横山さんの独断でここまでするとは思えないし。
さてと、現実に返ろう。
ここはクリェーシェルさんの部屋で間取りはたったの四畳半、それにユニットバスと簡易キッチンがあるだけ。
そしてこんな狭い場所にクリェーシェルさんとヘンリーさん、それに僕と花子さんの四人が泊まることになる。
空間が足んない。
せめて、ヘンリーさんは自宅のダンボールハウスへ帰ってほしい。守り神の花子さんがいるんだし、もう心配いらないだろ?
花子さんは僕にとってのリップアーマー最強版だ。
彼女の放つニオイはいかなる(ハーフ)サキュバスの魔の手からも守ってくれる。
逆に言えば、僕の童貞を狙うクリェーシェルさんにとって花子さんは忌々しい存在になる筈だけど、決して邪険に扱ったりしなかった。
コンビニから盗んできたという曰くつきのカップやきそばを花子さんにも振る舞ってたし。
花子さんはそれを無言でがっついてる。
よほど腹が空いてたんだろうが、いい加減レンズの割れた眼鏡は外したらどうだろう? 割ってしまった僕が言うのも何だけど。
カップやきそばを平らげた僕達は、食後の節分豆をみんなでつまんで食べる。
「いいんですか? コレ食べると性欲抑えられますよ?」
「てやんでぇ! こんな豆如きでオレの暴れ肉棒が抑えられっかよ! チャンチャラおかしいぜぃ!」
でも、フニャチンなんだろ? フニャチンのハーフ・インキュバスなんて聞いたこともない。
「明日はどこを捜すの?」
風呂上がりのクリェーシェルさん、バスタオルを体に巻きつけただけの格好でそう訊ねてくる。何を着てもいやらしい。
グレープフルーツのような胸の谷間を見ただけで僕の中の小さな僕が硬く大きくメタモルフォーゼしそうだったが、花子さんの澄ました顔を見たら一瞬で元の鞘に収まった。助かる!
僕はその亜熱帯原産の柑橘類から目を背けるようにして答える。
「見当もつきません。……花子さん、猫助と連絡取れないんですか?」
「無理です。魔界、スマホ使えませんから」
花子さんは小指を立てながら節分豆をつまんでおちょぼ口で食べる。つまんでる右手がそうなるのはわかるけど、膝に置いてる左手までどうして小指が立つんだ?
「猫助は向こうからこっちに近づいてくるのを待つとして……その熊パンダ人間はどこにいるかわかるんじゃないですか? 蜂蜜と蜜蝋のある場所に行けばすぐ見つかる筈です」
ところが、花子さんはかぶりを振る。
「その蜂蜜と蜜蝋がどこにあるかがわかんないんです。その方の勘……嗅覚だけが頼りなので」
嗅覚か。さすが熊パンダ人間だ。
「それって市販されてないんですか?」
「それだと効果がないんです。店頭に並んでいる商品だと不純物が濾過されてしまっているので」
「不純物?」
「率直に言えば蜜蜂の糞です」
何てこった!
普段、僕達が唇に塗ってるリップアーマーにはそんな物が混じってたのか! 知らぬが仏だ。
あ、そう言えばリップアーマー持ってきてないや。ますます花子さんの元から離れられない。
三人の女の子に危害はないけど、少なくとも僕は早急にこの世界を離れなきゃ童貞狩りに遭ってしまう。
そのためにも三人の女の子を見つけなきゃな……。
「とにかく手掛かりがなさすぎる。……花子さん、何かその熊パンダ人間の見た目的な特徴とかないんですか? ちょっとしたことでいいんですけど」
ダメ元で訊いてみる。
「特徴……えー、そうですね」
花子さん、リップアーマー不要の唇に人差し指を当てて考えてる。
「しいて言えば……」
「しいて言えば?」
「両目の周りを黒く塗ってるくらいです」
は……? それってパンダっぽくってこと?
「それに……」
「それに?」
「パンダ柄のモコモコしたジャンプスーツを着用してますね。おなかと背中にそれぞれ漢字で『熊』の文字、それと実際に笹は食べられないので、しょっちゅう仙台名産の笹の形をした蒲鉾ばかり食べてます。……これくらいでしょうか?」
特徴アリアリじゃないか!
それって、「あたしが熊パンダ人間です」ってプラカード掲げて歩いてるに等しいじゃん!
やる! 明日中に絶対に捜し出してみせる!
応援ありがとうございます!
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