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第12章 物足んねえ
物足んねえ 4
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「大鴉が……?」
そう訊き返したのは小園じゃなく、先導守だった。
「信じられんな。事実ならばそれは越権行為だ。鴉王を育て、その鴉王が海に沈んだ時点で大鴉は役儀を果たし終えたのだからな」
「嘘は言わねーよ。『いまだリデリアを統べる者は現れず、辛抱堪らず自ら新王候補を発掘する旅に出ました。私が目をつけた第一号がそなたです』とな。多島海への行き方までは教えてくんなかったが。そこまで喋っておきながら『後は自力で見つけろ』だとよ」
「オマエの発言は我を不快にさせるが、まあよかろう。でしゃばったロートル大鴉が野猿を一匹連れて来た……それだけだ。どれ、オマエ達の死に場所を提供してやろう」
ケッ、せいぜい今のうちにほざいてろ!
「今より【リデリア再興戦】のルールを説明してやる」
先導守の話をまとめるとこうだ。
・777の島に分裂したリデリア大陸を再び統一した者が、鴉王に代わって正式にリデリア王となる。
・各々の島にはかつて鴉王が愛した女の魂が、今は”舵輪”に姿を変えて島主を待っている。
・海戦中、島は軍艦化されている(面積は実際の島の大きさと異なる)。
・争い中に島主が死ぬば、舵輪は新たな島主を先導守に求めることができる。
・戦いを終わらせる唯一の手段は、敵の舵輪を破壊することである。
・戦いに勝利した暁には、相手の軍艦を吸収できる。
・軍艦の最低レベルは個体を表す”1”。吸収すれば相手のレベル数をそのまま上乗せする。最高レベル777(=リデリア大陸)で全ての海戦が終了。
・吸収した度合いによって軍艦の戦力(速度・強度)も増していくが、あくまで攻撃は島主及び従者の能力のみで行わなければならない。※軍艦に主砲・副砲・魚雷等の装備は搭載されない。
・従者が島主を裏切り、自ら島主を名乗ってもよい。ただし、舵輪がそれを認めなければ、先導守から別の島主が派遣される。
・海戦を終わらせリデリア大陸を復活させた覇者は、それまで連れ添った舵輪を妃に迎えることができる。勿論、舵輪はその時点で人間の姿に戻される。
ざっくりまとめると以上だ。
要するに軍艦は単なる移動手段で、勝負を決めるのは島主(艦長?)含めた乗組員の力量次第ってワケだな。
面白いじゃん! これで思う存分暴れられるじゃねーか。
「そうなると、できるだけ大きな船に乗れば有利ってことだな? オイ、銅鐸野郎。大きな船に島主の空きはねーのか?」
「タイミングが悪かったな。いいのが一つあったが、それは先程の者達が選んでいった」
「な……ッ? もしかしてグミ野郎かよ! 忌々しい野郎だな」
「……拓海様ってば、いろんな意味でもってないですよね? あたしが強運を呼ぶ招き猫ならよかったのですが」
「黙れッ、元短足猫の死体掻き集め野郎が!」
黒リータ、生意気にも不服そうな顔で俺を見やがる。
「少なくとも、あたしは”野郎”ではありません。おっぱい揉んだクセに」
――ブチッ!
「あぁン? 何ならテメーのその巨乳使って思うがままパ○ズ○してやろーかッ!?」
「拓海様、お待ちください」
できもしないクセに早漏が、という切れ長の目で俺を窘めやがる小園。……コレって考え過ぎだろうか?
「大きな船には、それだけ他の船から合流した乗組員もいるのではないでしょうか?」
「それがどうした?」
小園はコホンと咳一つ。
「強力な戦力がありながら島主に空きがあるということは……島主は戦死したのではなく、軍艦内で叛乱があったと考えるべきでしょう」
「某も小園殿に同意するでござる」
何だ? オマエらさっきから仲良いな。
「この海戦が長引く理由、某にはわかってきたでござるよ。戦を経て味方を得ても所詮は烏合の衆……新たに加わった者は外様扱いを受け、なおかつ主を討ち取った者に勤仕する……武士としてこれ以上の屈辱はござらん」
「それなら、自分が亡き主君に代わり……ってことかよ」
まあな。誰にも好かれる人望・カリスマがなきゃ、さっきまで敵だった猛者共を束ねるなんてできねーもん。
黒リータに言われるまでもない。ああ、確かにもってねーよ。認めてやる!
「猿ももっているじゃないか」
俺の心を読んだ先導守がクククと不気味に笑いやがる。
「何がだよ?」
「優秀な部下だ。オマエにはもったいないくらいだな」
「あたしは」「オメーじゃねえッ!」
「……拓海様、ツッコミも早い」
「もって何だよ!! オイ、黒リータ、命令だ。ここを出るまで一切喋るな。オメーのせいでさっきから話が進まねーんだ!」
「わかりまし」「喋んなっつってんだろッ!!!」
部屋の片隅にカサカサと摺り足移動でガックリ肩を落とす黒リータ、さすがにいじけたか。
「……つーかよ、小園、白衛門。最初からいらなくねーか? そんなの」
「人望でござるか?」
「人望もだけどよ。なあ、白衛門。どうして叛乱なんて起きるかわかるか?」
白衛門と小園が顔を見合わせるも、二人から答えは出ず。
「んじゃ、教えてやるよ。まず、戦するよなあ? 目障りな島主殺すよなあ? 敵の舵輪壊して軍艦吸収するよなあ? ……で、他にまだやること思いつかねーか?」
「ま、まさか!?」
白衛門に続いて、小園も信じられないという顔で俺を見る。
「み、皆殺しッ?」
「ああ、子分なんてオメーらがいれば十分だ。そもそも、余計なヤツらまで乗船を許すから叛乱なんて起きんだよ」
「で、ですが、私達だけで777もの軍艦を……」
「できるさ」
俺は自信タップリに言う。
「そのための”ティッシュマスター”だからよ」
そう訊き返したのは小園じゃなく、先導守だった。
「信じられんな。事実ならばそれは越権行為だ。鴉王を育て、その鴉王が海に沈んだ時点で大鴉は役儀を果たし終えたのだからな」
「嘘は言わねーよ。『いまだリデリアを統べる者は現れず、辛抱堪らず自ら新王候補を発掘する旅に出ました。私が目をつけた第一号がそなたです』とな。多島海への行き方までは教えてくんなかったが。そこまで喋っておきながら『後は自力で見つけろ』だとよ」
「オマエの発言は我を不快にさせるが、まあよかろう。でしゃばったロートル大鴉が野猿を一匹連れて来た……それだけだ。どれ、オマエ達の死に場所を提供してやろう」
ケッ、せいぜい今のうちにほざいてろ!
「今より【リデリア再興戦】のルールを説明してやる」
先導守の話をまとめるとこうだ。
・777の島に分裂したリデリア大陸を再び統一した者が、鴉王に代わって正式にリデリア王となる。
・各々の島にはかつて鴉王が愛した女の魂が、今は”舵輪”に姿を変えて島主を待っている。
・海戦中、島は軍艦化されている(面積は実際の島の大きさと異なる)。
・争い中に島主が死ぬば、舵輪は新たな島主を先導守に求めることができる。
・戦いを終わらせる唯一の手段は、敵の舵輪を破壊することである。
・戦いに勝利した暁には、相手の軍艦を吸収できる。
・軍艦の最低レベルは個体を表す”1”。吸収すれば相手のレベル数をそのまま上乗せする。最高レベル777(=リデリア大陸)で全ての海戦が終了。
・吸収した度合いによって軍艦の戦力(速度・強度)も増していくが、あくまで攻撃は島主及び従者の能力のみで行わなければならない。※軍艦に主砲・副砲・魚雷等の装備は搭載されない。
・従者が島主を裏切り、自ら島主を名乗ってもよい。ただし、舵輪がそれを認めなければ、先導守から別の島主が派遣される。
・海戦を終わらせリデリア大陸を復活させた覇者は、それまで連れ添った舵輪を妃に迎えることができる。勿論、舵輪はその時点で人間の姿に戻される。
ざっくりまとめると以上だ。
要するに軍艦は単なる移動手段で、勝負を決めるのは島主(艦長?)含めた乗組員の力量次第ってワケだな。
面白いじゃん! これで思う存分暴れられるじゃねーか。
「そうなると、できるだけ大きな船に乗れば有利ってことだな? オイ、銅鐸野郎。大きな船に島主の空きはねーのか?」
「タイミングが悪かったな。いいのが一つあったが、それは先程の者達が選んでいった」
「な……ッ? もしかしてグミ野郎かよ! 忌々しい野郎だな」
「……拓海様ってば、いろんな意味でもってないですよね? あたしが強運を呼ぶ招き猫ならよかったのですが」
「黙れッ、元短足猫の死体掻き集め野郎が!」
黒リータ、生意気にも不服そうな顔で俺を見やがる。
「少なくとも、あたしは”野郎”ではありません。おっぱい揉んだクセに」
――ブチッ!
「あぁン? 何ならテメーのその巨乳使って思うがままパ○ズ○してやろーかッ!?」
「拓海様、お待ちください」
できもしないクセに早漏が、という切れ長の目で俺を窘めやがる小園。……コレって考え過ぎだろうか?
「大きな船には、それだけ他の船から合流した乗組員もいるのではないでしょうか?」
「それがどうした?」
小園はコホンと咳一つ。
「強力な戦力がありながら島主に空きがあるということは……島主は戦死したのではなく、軍艦内で叛乱があったと考えるべきでしょう」
「某も小園殿に同意するでござる」
何だ? オマエらさっきから仲良いな。
「この海戦が長引く理由、某にはわかってきたでござるよ。戦を経て味方を得ても所詮は烏合の衆……新たに加わった者は外様扱いを受け、なおかつ主を討ち取った者に勤仕する……武士としてこれ以上の屈辱はござらん」
「それなら、自分が亡き主君に代わり……ってことかよ」
まあな。誰にも好かれる人望・カリスマがなきゃ、さっきまで敵だった猛者共を束ねるなんてできねーもん。
黒リータに言われるまでもない。ああ、確かにもってねーよ。認めてやる!
「猿ももっているじゃないか」
俺の心を読んだ先導守がクククと不気味に笑いやがる。
「何がだよ?」
「優秀な部下だ。オマエにはもったいないくらいだな」
「あたしは」「オメーじゃねえッ!」
「……拓海様、ツッコミも早い」
「もって何だよ!! オイ、黒リータ、命令だ。ここを出るまで一切喋るな。オメーのせいでさっきから話が進まねーんだ!」
「わかりまし」「喋んなっつってんだろッ!!!」
部屋の片隅にカサカサと摺り足移動でガックリ肩を落とす黒リータ、さすがにいじけたか。
「……つーかよ、小園、白衛門。最初からいらなくねーか? そんなの」
「人望でござるか?」
「人望もだけどよ。なあ、白衛門。どうして叛乱なんて起きるかわかるか?」
白衛門と小園が顔を見合わせるも、二人から答えは出ず。
「んじゃ、教えてやるよ。まず、戦するよなあ? 目障りな島主殺すよなあ? 敵の舵輪壊して軍艦吸収するよなあ? ……で、他にまだやること思いつかねーか?」
「ま、まさか!?」
白衛門に続いて、小園も信じられないという顔で俺を見る。
「み、皆殺しッ?」
「ああ、子分なんてオメーらがいれば十分だ。そもそも、余計なヤツらまで乗船を許すから叛乱なんて起きんだよ」
「で、ですが、私達だけで777もの軍艦を……」
「できるさ」
俺は自信タップリに言う。
「そのための”ティッシュマスター”だからよ」
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