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2.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と同居生活を始める
2-5.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と同居生活を始める
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熱に囚われた魔物の視線は俺を捕らえ、ゆっくりと距離を詰めてくる。
だが逃げなければと頭では理解しているのに、体が硬直して動かない。
(なに、なに目的で俺を見てるの。違う、そんなこと考えてる場合じゃない)
俺は恐怖で力が入らず、足が縺れた挙句にへたり込んでしまった。
後退ろうにも手は滑り、視界が滲んで魔物の姿すら曖昧になる。
(体が動かない。喉が引きつって声も出ないし、足も震えてる)
その様子を見逃してくれる訳もなく、魔物は喜々として襲い掛かってきた。
俺を乱暴に押し倒し、鋭い爪でシャツをズタズタに引き裂いてくる。
(すぐに殺す気はないみたいだけど、魔物に押し潰されて逃げられない! 痛い!)
全体重を掛けて圧し掛かられ、服の隙間から生暖かい舌で体を舐めまわされる。
痛みと不快感で涙が零れるが、下手な抵抗は反撃を生む可能性もあった。
(しかも俺を押し倒した魔物から、強い匂いがする! もしかして発情してる!?)
思考を侵食するような刺激臭が漂い始め、魔物の目から理性が消えていく。
そして首筋を咥えられ、木陰に引きずり込まれかけた瞬間。
「そこまでだ、《退散しろ》」
「……カリ、タス」
覚えのある魔力が周囲を塗り替え、魔物は驚いて俺の上から飛び退いた。
だがそれに留まらず、勢いよく巨体が宙に浮かび上がる。
(カリタスが、魔物を放り投げてくれたんだ。服従魔法も使ってる)
魔物は空中で体勢を立て直し、カリタスに威嚇しながら距離を取った。
だがその尻尾は丸まっており、明らかに怯えを滲ませている。
(でもあの細腕で、よく自分より大きな獣を退かせられたな)
カリタスは背丈こそ高いが、筋骨隆々といった体つきではない。
しかし恐怖など微塵も見せず、強者の余裕すら漂わせていた。
「っていうかカリタス、その血塗れのって獣の角? まさか頭から引き抜いたの?」
「投げたついでに、捻り取った。角は武器と同義だから、これで理解するだろう」
赤く塗れたカリタスの手には、立派に伸び切った角が掲げ上げられている。
だが根元から折られたそれは強い圧を掛けられ、断末魔を叫んでいた。
「自分がなにと、対峙しているかを」
遂に握り込まれた角は粉砕され、魔物は完全に戦意を失って走り去っていく。
そして茂みに逃げ込んだのを確認すると、カリタスは俺の方へと足を向けてきた。
「角を失った獣は標的にされ、長くは生きられない。戻ってくることもないだろう」
「そ、っか。……ありがとう、カリタス」
俺は取り繕ったお礼を言うが、どうしても彼と目を合わすことができない。
当然罪悪感もあるが、彼の声に非難の色が混じっていたから。
「それより何故一人で出て行った。間に合わなかったら、最悪死んでいたぞ」
「だって俺、取り返しのつかないことをしたんだよ。机の上、見たでしょ」
もう逃げることはできず、俺は消え入りそうな声で罪を白状する。
だがカリタスは責めるでもなく、不思議そうに首を傾げていた。
「机に、なにか置いていたか? 空の部屋を見て、すぐに飛び出してきたんだが」
「じゃあ今、白状するよ。部屋に置かれていた花を、枯らしちゃったんだ」
しかしそこまで言っても思い当たる節がないようで、カリタスは更に困惑していた。
でも俺は間違いなく花を枯らしたし、それが他人の物だとは到底思えない。
「あったか、そのようなもの? いや、魔法薬学の授業で使う素材のことか」
「なら、尚更ごめん。良い匂いがしたから近づいて、触っちゃったんだ」
ようやく思い出した様子を見るに、あまり重要な物ではなかったのかもしれない。
けど何も言わず逃げた事に関しては、言い逃れることができなかった。
「なるほど、顔色が良くなっているのはそれが理由か。花の魔力を吸収したんだな」
「言い訳だけど、こんなことになると思ってなかったんだ。……っうわ」
カリタスは納得するように数度頷いた後、そっと俺の体を抱き上げた。
驚いて一瞬暴れかけたが、彼は動じることもなく歩き始める。
「状況は把握した、部屋に戻って待機してくれ。それと私は、少し出かけてくる」
「うん、好きにしていいよ。…………罰は、ちゃんと受けるから」
最後は小さくて聞こえなかったかもしれないが、どうにか自分の意思を口にする。
もう信頼して貰えるとは思っていないから、後は彼の裁量に任せるしかなかった。
そして部屋に連れ戻されたが、カリタスは宣言通りすぐに出て行ってしまった。
一人残された俺は罰の事を考えて、静かに壁へもたれ掛かっている。
(躾け用の道具を買ってくるのかな、それとも競売場に返品の連絡を入れているか)
魔物に襲われた時に怪我はしてないから、手当の用意をしているとは考えられない。
であれば折檻の準備をしているか、愛想が尽きて関係を破棄しようとしているのか。
(でも、もう俺にできることはない。良い人だったのに、自分で逃げたんだから)
彼は良い主人でいてくれたけど、俺は信じられないくらい酷い従魔だった。
もう悔いたって遅いけど、嗚咽を堪えることもできやしない。
「戻ったから、顔を上げてくれリベラ。……なぜ泣いている?」
だからカリタスが部屋に戻ってきた事にも、しばらく気づかない有様だった。
彼は狼狽えながらも頭を撫でてくれたが、心の中は荒れ果てる一方だ。
だが逃げなければと頭では理解しているのに、体が硬直して動かない。
(なに、なに目的で俺を見てるの。違う、そんなこと考えてる場合じゃない)
俺は恐怖で力が入らず、足が縺れた挙句にへたり込んでしまった。
後退ろうにも手は滑り、視界が滲んで魔物の姿すら曖昧になる。
(体が動かない。喉が引きつって声も出ないし、足も震えてる)
その様子を見逃してくれる訳もなく、魔物は喜々として襲い掛かってきた。
俺を乱暴に押し倒し、鋭い爪でシャツをズタズタに引き裂いてくる。
(すぐに殺す気はないみたいだけど、魔物に押し潰されて逃げられない! 痛い!)
全体重を掛けて圧し掛かられ、服の隙間から生暖かい舌で体を舐めまわされる。
痛みと不快感で涙が零れるが、下手な抵抗は反撃を生む可能性もあった。
(しかも俺を押し倒した魔物から、強い匂いがする! もしかして発情してる!?)
思考を侵食するような刺激臭が漂い始め、魔物の目から理性が消えていく。
そして首筋を咥えられ、木陰に引きずり込まれかけた瞬間。
「そこまでだ、《退散しろ》」
「……カリ、タス」
覚えのある魔力が周囲を塗り替え、魔物は驚いて俺の上から飛び退いた。
だがそれに留まらず、勢いよく巨体が宙に浮かび上がる。
(カリタスが、魔物を放り投げてくれたんだ。服従魔法も使ってる)
魔物は空中で体勢を立て直し、カリタスに威嚇しながら距離を取った。
だがその尻尾は丸まっており、明らかに怯えを滲ませている。
(でもあの細腕で、よく自分より大きな獣を退かせられたな)
カリタスは背丈こそ高いが、筋骨隆々といった体つきではない。
しかし恐怖など微塵も見せず、強者の余裕すら漂わせていた。
「っていうかカリタス、その血塗れのって獣の角? まさか頭から引き抜いたの?」
「投げたついでに、捻り取った。角は武器と同義だから、これで理解するだろう」
赤く塗れたカリタスの手には、立派に伸び切った角が掲げ上げられている。
だが根元から折られたそれは強い圧を掛けられ、断末魔を叫んでいた。
「自分がなにと、対峙しているかを」
遂に握り込まれた角は粉砕され、魔物は完全に戦意を失って走り去っていく。
そして茂みに逃げ込んだのを確認すると、カリタスは俺の方へと足を向けてきた。
「角を失った獣は標的にされ、長くは生きられない。戻ってくることもないだろう」
「そ、っか。……ありがとう、カリタス」
俺は取り繕ったお礼を言うが、どうしても彼と目を合わすことができない。
当然罪悪感もあるが、彼の声に非難の色が混じっていたから。
「それより何故一人で出て行った。間に合わなかったら、最悪死んでいたぞ」
「だって俺、取り返しのつかないことをしたんだよ。机の上、見たでしょ」
もう逃げることはできず、俺は消え入りそうな声で罪を白状する。
だがカリタスは責めるでもなく、不思議そうに首を傾げていた。
「机に、なにか置いていたか? 空の部屋を見て、すぐに飛び出してきたんだが」
「じゃあ今、白状するよ。部屋に置かれていた花を、枯らしちゃったんだ」
しかしそこまで言っても思い当たる節がないようで、カリタスは更に困惑していた。
でも俺は間違いなく花を枯らしたし、それが他人の物だとは到底思えない。
「あったか、そのようなもの? いや、魔法薬学の授業で使う素材のことか」
「なら、尚更ごめん。良い匂いがしたから近づいて、触っちゃったんだ」
ようやく思い出した様子を見るに、あまり重要な物ではなかったのかもしれない。
けど何も言わず逃げた事に関しては、言い逃れることができなかった。
「なるほど、顔色が良くなっているのはそれが理由か。花の魔力を吸収したんだな」
「言い訳だけど、こんなことになると思ってなかったんだ。……っうわ」
カリタスは納得するように数度頷いた後、そっと俺の体を抱き上げた。
驚いて一瞬暴れかけたが、彼は動じることもなく歩き始める。
「状況は把握した、部屋に戻って待機してくれ。それと私は、少し出かけてくる」
「うん、好きにしていいよ。…………罰は、ちゃんと受けるから」
最後は小さくて聞こえなかったかもしれないが、どうにか自分の意思を口にする。
もう信頼して貰えるとは思っていないから、後は彼の裁量に任せるしかなかった。
そして部屋に連れ戻されたが、カリタスは宣言通りすぐに出て行ってしまった。
一人残された俺は罰の事を考えて、静かに壁へもたれ掛かっている。
(躾け用の道具を買ってくるのかな、それとも競売場に返品の連絡を入れているか)
魔物に襲われた時に怪我はしてないから、手当の用意をしているとは考えられない。
であれば折檻の準備をしているか、愛想が尽きて関係を破棄しようとしているのか。
(でも、もう俺にできることはない。良い人だったのに、自分で逃げたんだから)
彼は良い主人でいてくれたけど、俺は信じられないくらい酷い従魔だった。
もう悔いたって遅いけど、嗚咽を堪えることもできやしない。
「戻ったから、顔を上げてくれリベラ。……なぜ泣いている?」
だからカリタスが部屋に戻ってきた事にも、しばらく気づかない有様だった。
彼は狼狽えながらも頭を撫でてくれたが、心の中は荒れ果てる一方だ。
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