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2.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と同居生活を始める
2-6.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と同居生活を始める
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「俺との契約、解消するんでしょ。お仕置き道具を買ってきたのなら、それも」
「違う、そんなことはしない! 薬学科に駆け込んできただけだ!」
涙声で俺が喋り出すと、彼は珍しく声を荒らげて否定した。
そして色鮮やかな花の束を、そっと前に差し出してくる。
「こんな大きな花束、わざわざ俺に用意してくれたの? でも、俺なんかに」
「リベラに渡す為に買ってきた。だから遠慮せず、受け取ってほしい」
彼の持つ花は瑞々しさに満ちていて、俺に贈られるには勿体ない代物だった。
しかも大輪を束ねた物だから、買う時にも注目を集めてしまっただろう。
「ごめんね、酷い買い物させて。自分の世話もできない、男サキュバスなんて」
「君が思う程、負担にはなっていない。だから自分を追い詰めないでくれ」
自虐的に俯く俺に対して、カリタスは優しく諭すように言葉を続けてくる。
けどそれを受け取る資格があるとは思えず、慰めすら素直に喜べない。
「それより、花束は受け取ってくれないのか。頑張って選んできたんだが」
「自分に貰う価値があるとは思えないんだ、なにも返せないから」
俺だって本当はこの人に応えたいけれど、体質どころか心根だって酷く脆い。
競売場から救い出して貰ったのに、謝りもせず逃げて、また助けられた。
だから自分が悪いのは分かっている、なのに謝る事さえ未だできやしない。
「ならば報酬の前払いだと考えてほしい。君に頑張って貰うのは、これからだ」
「本当に俺が、役に立つと思ってるの? 貴方なら全部一人でできるでしょ!」
カリタスは俺が必要だというけど、役に立つ場面が少しも思い浮かばない。
彼は寂しがりという感じでもないから、責任感で手放せないのであれば。
「他に良い魔物は、沢山いるじゃん! こんな泣き喚く、面倒なのじゃなくて!」
「私に必要なのは強大な魔物でも、美しい魔物でもない。私を脅かさない者だ」
せめて後腐れがないように必死に突き放そうとするが、彼は首を振って否定する。
確かにその条件なら俺は適合するし、嘘をついているとは思えないけど。
「どうしたら信用してくれる? 疑われたままでは、私も助けることができない」
(そうだ、俺の行動はずっと矛盾している。救ってほしい癖に、相手を拒んでいる)
勝手に怯えて、窮地に陥るようなことばかりして、口を開けば拒絶の言葉ばかり。
せめて上手に媚びられれば、少しはマシな行動ができたのかもしれないけど。
(でも良い人だからこそ、欠点だらけの自分を渡したくもないとも思う)
カリタスが求める条件に俺は合致してるけど、それも最低限当て嵌まっているだけ。
弱くとも心が強い従魔は他にもいるだろうし、俺じゃなきゃいけない理由もない。
「せめて話して、伝えてくれないか。でなければ見当違いのことばかりしてしまう」
「貴方に不足はないよ。俺は失望されて、捨てられるのが怖いだけ」
一番の問題は彼が尽くしてくれても、無駄にし続けてしまう俺自身にある。
だからこんな奴に、彼が時間を捧げる価値など絶対にない。
……けど彼が望むなら、その不安すら言葉にすべきなんだろう。
「食事も碌に食べれなくて、借りた服も血で汚して、せ、精神的にもおかしいし」
「意図せず体質が変わったの当然だ。日常生活にも支障が出ているのだから」
嗚咽交じりで聞きにくい言葉を、カリタスは丁寧に拾って返してくれる。
その姿に更に心臓が苦しくなって、隠していた本音が零れ出てきた。
「でもこんな俺を買ってくれたんだから貴方の役に立ち、違う、価値が欲しいんだ」
「……価値? なんのことを言っているんだ、リベラ」
今までの取り繕いではない雰囲気を察知したのか、カリタスが眉間に皺を寄せる。
けれど決壊した俺の口は、言葉が溢れて止められなくなってしまっていた。
「一人で生きていけないなら、せめて必要とされたい。その為なら、俺、頑張るよ」
「っ待て、なにをしようとしている!?」
瞳に溜まっていた涙を強引に拭った俺は、カリタスに飛びついて押し倒そうとする。
当然体格差で失敗するが、不意を突かれた彼は逃げ遅れてしまった。
「サキュバスができることなんて、一つしかないでしょ」
「違う、そんなことはしない! 薬学科に駆け込んできただけだ!」
涙声で俺が喋り出すと、彼は珍しく声を荒らげて否定した。
そして色鮮やかな花の束を、そっと前に差し出してくる。
「こんな大きな花束、わざわざ俺に用意してくれたの? でも、俺なんかに」
「リベラに渡す為に買ってきた。だから遠慮せず、受け取ってほしい」
彼の持つ花は瑞々しさに満ちていて、俺に贈られるには勿体ない代物だった。
しかも大輪を束ねた物だから、買う時にも注目を集めてしまっただろう。
「ごめんね、酷い買い物させて。自分の世話もできない、男サキュバスなんて」
「君が思う程、負担にはなっていない。だから自分を追い詰めないでくれ」
自虐的に俯く俺に対して、カリタスは優しく諭すように言葉を続けてくる。
けどそれを受け取る資格があるとは思えず、慰めすら素直に喜べない。
「それより、花束は受け取ってくれないのか。頑張って選んできたんだが」
「自分に貰う価値があるとは思えないんだ、なにも返せないから」
俺だって本当はこの人に応えたいけれど、体質どころか心根だって酷く脆い。
競売場から救い出して貰ったのに、謝りもせず逃げて、また助けられた。
だから自分が悪いのは分かっている、なのに謝る事さえ未だできやしない。
「ならば報酬の前払いだと考えてほしい。君に頑張って貰うのは、これからだ」
「本当に俺が、役に立つと思ってるの? 貴方なら全部一人でできるでしょ!」
カリタスは俺が必要だというけど、役に立つ場面が少しも思い浮かばない。
彼は寂しがりという感じでもないから、責任感で手放せないのであれば。
「他に良い魔物は、沢山いるじゃん! こんな泣き喚く、面倒なのじゃなくて!」
「私に必要なのは強大な魔物でも、美しい魔物でもない。私を脅かさない者だ」
せめて後腐れがないように必死に突き放そうとするが、彼は首を振って否定する。
確かにその条件なら俺は適合するし、嘘をついているとは思えないけど。
「どうしたら信用してくれる? 疑われたままでは、私も助けることができない」
(そうだ、俺の行動はずっと矛盾している。救ってほしい癖に、相手を拒んでいる)
勝手に怯えて、窮地に陥るようなことばかりして、口を開けば拒絶の言葉ばかり。
せめて上手に媚びられれば、少しはマシな行動ができたのかもしれないけど。
(でも良い人だからこそ、欠点だらけの自分を渡したくもないとも思う)
カリタスが求める条件に俺は合致してるけど、それも最低限当て嵌まっているだけ。
弱くとも心が強い従魔は他にもいるだろうし、俺じゃなきゃいけない理由もない。
「せめて話して、伝えてくれないか。でなければ見当違いのことばかりしてしまう」
「貴方に不足はないよ。俺は失望されて、捨てられるのが怖いだけ」
一番の問題は彼が尽くしてくれても、無駄にし続けてしまう俺自身にある。
だからこんな奴に、彼が時間を捧げる価値など絶対にない。
……けど彼が望むなら、その不安すら言葉にすべきなんだろう。
「食事も碌に食べれなくて、借りた服も血で汚して、せ、精神的にもおかしいし」
「意図せず体質が変わったの当然だ。日常生活にも支障が出ているのだから」
嗚咽交じりで聞きにくい言葉を、カリタスは丁寧に拾って返してくれる。
その姿に更に心臓が苦しくなって、隠していた本音が零れ出てきた。
「でもこんな俺を買ってくれたんだから貴方の役に立ち、違う、価値が欲しいんだ」
「……価値? なんのことを言っているんだ、リベラ」
今までの取り繕いではない雰囲気を察知したのか、カリタスが眉間に皺を寄せる。
けれど決壊した俺の口は、言葉が溢れて止められなくなってしまっていた。
「一人で生きていけないなら、せめて必要とされたい。その為なら、俺、頑張るよ」
「っ待て、なにをしようとしている!?」
瞳に溜まっていた涙を強引に拭った俺は、カリタスに飛びついて押し倒そうとする。
当然体格差で失敗するが、不意を突かれた彼は逃げ遅れてしまった。
「サキュバスができることなんて、一つしかないでしょ」
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