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4.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と授業に参加する
4-2.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と授業に参加する
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カリタスが駆け出すと、ヴァントスの背後から竜のような魔物が現れる。
しかし黒い帯で全身を覆われ、正しい姿は把握できなかった。
(ヴァントスの魔物、正気じゃない。拘束具で殆ど姿が見えないのに殺気が凄い!)
魔物の正体は分からないが、全方位に唸り声を上げて威嚇を撒き散らしている。
先程の小さい魔物も怯え、尻尾を丸めながら主人にしがみついていた。
「強力な種族を連れているが、傷だらけだな。虐待によって調教を行ったのか」
「一番手っ取り早くて、確実だからな。オラ行け、八つ裂きにしろ!」
破れかけた翼を不気味に揺らす魔物は、胴体を地に這わせて突進してくる。
しかしその軌道はカリタスに向かわず、弧を描いて終着点をずらしていた。
(っ俺の方に来る! 逃げないと、でも足が震えて)
明確に弱い獲物から潰そうと、俺を狙って来ているのを頭では理解している。
しかし虚弱な体は硬直し、逃走するどころか声も出せない。
――だが魔物が辿り着くより速く、カリタスが振り向いて鞭を振るった。
「恐怖による支配は、質が高ければ簡単に塗り替えられるぞ。《跪け》!」
短鞭から強い破裂音が発生し、そこにカリタスの魔力が乗って魔物に襲い掛かる。
すると魔物は攻撃されたわけでもないのに、膝をついて大人しくなった。
「サボリ魔のクセに強ぇ服従魔法を使いやがる! オイ、誰に牙を向けてんだ!」
(ヴァントスの魔力、拘束具に集まってる。魔道具で行動強制してるのか)
魔物の本能はカリタスに隷属しているが、体はヴァントスへ忠誠を強要されていた。
主導権の奪い合いに苦しむ声が響き渡るが、徐々にその動きも鈍くなっていく。
「ついでにその拘束具も解いてやろう、《解放せよ》」
「あっ、ふざけんなテメェ! っクソ、言うこと聞け!」
カリタスが再度短鞭を振るうと、拘束具は古い布が解けるように床に落ちた。
解放された敵意はヴァントスに向かい、彼は距離を取ろうと後ずさるが。
「支配権を失ったわけだが、まだ戦うか? 勝敗はまだ決定していないが」
「……そこまで馬鹿じゃねぇよ、降参だ」
カリタスが淡々と確認すると、ヴァントスは悔しさを滲ませながら両手を挙げた。
竜は完全に元の主人を見限って、救世主であるカリタスに擦り寄っている。
「リベラ、戦闘が終了した。もう体を強張らせなくて大丈夫だ」
「あ、ありがとう。でも俺、本当になにもできなくて」
そして駄々を捏ねる魔物を教師に預け、カリタスが俺の元に走ってきてくれた。
だが俺は震えてただけで、気づいたら全てが終わっていて。
(戦力として期待されてないのは分かってる。けど無価値じゃいつか捨てられる)
覚悟だけは固めたけど、遂に模擬戦闘の場に立っても戦い方は思いつかなかった。
けれど俺を責めもせず、いつも通りにカリタスは抱き上げてくれる。
「君がいなければ、私は授業に参加できなかった。充分、契約は果たされている」
額をくっつけて囁く様子は、普段のカリタスからは想像できないほど甘やかだ。
様子を見守っていた生徒たちも、彼の変わりように目を見開いている。
――けれど抱き上げられた肩越しに、ふらりと蠢く影が見えた。
「だからそんな、自分を責めないでくれ。君は役割を果たしたんだ」
(あれ、カリタスの後ろでなんか動いて)
魔物は既に保護されているが、まだ野放しの奴が一人残っている。
それは長い髪を振り乱し、足音を殺して忍び寄ってきていた。
「油断したなぁ、カリタス! まだ教師の判定は降りちゃいねぇぞ!」
死角から走り出したヴァントスが鎖を振り回し、背後から不意打ちを仕掛けてきた。
魔物の対応に追われていた教師は、事態に気づいて終了の鐘を鳴らそうとする。
が、あと一歩間に合わない。
(まずい、カリタスが奇襲される!)
咄嗟にカリタスを庇おうと、俺は目の前の頭を抱き締める。
しかし予想に反して、ヴァントスの鎖は振り下ろされなかった。
「あぁ、同感だ。故に《お前を拘束する》」
カリタスが鎖を掴んで魔力を通し、服従魔法を言葉のみで行使する。
すると鎖がヴァントスに絡みつき、蛇のように縛り上げた。
「クソ、なんでテメェだけ強ぇ服従魔法を使えるんだよ! 同じ人間だろうが!」
「血筋が偶然、強く発現しただけだ。大した理由ではない」
ヴァントスは力づくで拘束を解こうとするが、痩身だから悲しい程に力不足だ。
しかしカリタスへの異常な憎悪から、呪詛を吐きながらも抗い続けている。
「努力もしてねぇ癖に、才能だけのクズ野郎が! 勉強もしてねぇ奴が、なんで」
「私は卒業資格を取得しに来てるだけだ、前提が相違している」
喚き散らすヴァントスに、先程の甘さを霧散させたカリタスは淡々と返す。
対照的に対立する二人だったが、幕引きのきっかけは教室外から訪れた。
「それでまだ戦う気か? 私は一向に構「はーい、やめやめ。もうお終いだよー」」
気の抜けた声と共にクピド先生が顔を出し、服従魔法を解くように促してくる。
カリタスが拘束を緩めると、ヴァントスは足を踏み鳴らしながら退場していった。
「クピド、仲裁しにでも来たのか。もう実質的な勝敗は決まっているが」
「いや、治療目的だよ。けど人の体で立ち向かうなんて無茶だなぁ」
微笑みながらクピド先生が周囲を見渡すが、途中で興味を失ったように目を伏せる。
先程まで戦っていた魔物は、確かに教師によって応急処置されているが。
「でも怪我人、いなくなっちゃったね。じゃあ僕は戻るよ、ばいばーい」
(やっぱりクピド先生、生徒や魔物を心配してる感じがしないな)
仮面で見えづらくはあるが、よく見ると冷たく抜け落ちたような瞳をしている。
笑顔も作り物めいていて、一度気づくと違和感が拭えなくなってしまった。
(それにさっきの言い方だと、ヴァントス個人を心配して来たみたいだった)
治療を施されたとはいえ、傷ついた魔物を校医は診察すべきだった。
だが本人は既に教室を去り、その姿はどこにも見当たらなかった。
しかし黒い帯で全身を覆われ、正しい姿は把握できなかった。
(ヴァントスの魔物、正気じゃない。拘束具で殆ど姿が見えないのに殺気が凄い!)
魔物の正体は分からないが、全方位に唸り声を上げて威嚇を撒き散らしている。
先程の小さい魔物も怯え、尻尾を丸めながら主人にしがみついていた。
「強力な種族を連れているが、傷だらけだな。虐待によって調教を行ったのか」
「一番手っ取り早くて、確実だからな。オラ行け、八つ裂きにしろ!」
破れかけた翼を不気味に揺らす魔物は、胴体を地に這わせて突進してくる。
しかしその軌道はカリタスに向かわず、弧を描いて終着点をずらしていた。
(っ俺の方に来る! 逃げないと、でも足が震えて)
明確に弱い獲物から潰そうと、俺を狙って来ているのを頭では理解している。
しかし虚弱な体は硬直し、逃走するどころか声も出せない。
――だが魔物が辿り着くより速く、カリタスが振り向いて鞭を振るった。
「恐怖による支配は、質が高ければ簡単に塗り替えられるぞ。《跪け》!」
短鞭から強い破裂音が発生し、そこにカリタスの魔力が乗って魔物に襲い掛かる。
すると魔物は攻撃されたわけでもないのに、膝をついて大人しくなった。
「サボリ魔のクセに強ぇ服従魔法を使いやがる! オイ、誰に牙を向けてんだ!」
(ヴァントスの魔力、拘束具に集まってる。魔道具で行動強制してるのか)
魔物の本能はカリタスに隷属しているが、体はヴァントスへ忠誠を強要されていた。
主導権の奪い合いに苦しむ声が響き渡るが、徐々にその動きも鈍くなっていく。
「ついでにその拘束具も解いてやろう、《解放せよ》」
「あっ、ふざけんなテメェ! っクソ、言うこと聞け!」
カリタスが再度短鞭を振るうと、拘束具は古い布が解けるように床に落ちた。
解放された敵意はヴァントスに向かい、彼は距離を取ろうと後ずさるが。
「支配権を失ったわけだが、まだ戦うか? 勝敗はまだ決定していないが」
「……そこまで馬鹿じゃねぇよ、降参だ」
カリタスが淡々と確認すると、ヴァントスは悔しさを滲ませながら両手を挙げた。
竜は完全に元の主人を見限って、救世主であるカリタスに擦り寄っている。
「リベラ、戦闘が終了した。もう体を強張らせなくて大丈夫だ」
「あ、ありがとう。でも俺、本当になにもできなくて」
そして駄々を捏ねる魔物を教師に預け、カリタスが俺の元に走ってきてくれた。
だが俺は震えてただけで、気づいたら全てが終わっていて。
(戦力として期待されてないのは分かってる。けど無価値じゃいつか捨てられる)
覚悟だけは固めたけど、遂に模擬戦闘の場に立っても戦い方は思いつかなかった。
けれど俺を責めもせず、いつも通りにカリタスは抱き上げてくれる。
「君がいなければ、私は授業に参加できなかった。充分、契約は果たされている」
額をくっつけて囁く様子は、普段のカリタスからは想像できないほど甘やかだ。
様子を見守っていた生徒たちも、彼の変わりように目を見開いている。
――けれど抱き上げられた肩越しに、ふらりと蠢く影が見えた。
「だからそんな、自分を責めないでくれ。君は役割を果たしたんだ」
(あれ、カリタスの後ろでなんか動いて)
魔物は既に保護されているが、まだ野放しの奴が一人残っている。
それは長い髪を振り乱し、足音を殺して忍び寄ってきていた。
「油断したなぁ、カリタス! まだ教師の判定は降りちゃいねぇぞ!」
死角から走り出したヴァントスが鎖を振り回し、背後から不意打ちを仕掛けてきた。
魔物の対応に追われていた教師は、事態に気づいて終了の鐘を鳴らそうとする。
が、あと一歩間に合わない。
(まずい、カリタスが奇襲される!)
咄嗟にカリタスを庇おうと、俺は目の前の頭を抱き締める。
しかし予想に反して、ヴァントスの鎖は振り下ろされなかった。
「あぁ、同感だ。故に《お前を拘束する》」
カリタスが鎖を掴んで魔力を通し、服従魔法を言葉のみで行使する。
すると鎖がヴァントスに絡みつき、蛇のように縛り上げた。
「クソ、なんでテメェだけ強ぇ服従魔法を使えるんだよ! 同じ人間だろうが!」
「血筋が偶然、強く発現しただけだ。大した理由ではない」
ヴァントスは力づくで拘束を解こうとするが、痩身だから悲しい程に力不足だ。
しかしカリタスへの異常な憎悪から、呪詛を吐きながらも抗い続けている。
「努力もしてねぇ癖に、才能だけのクズ野郎が! 勉強もしてねぇ奴が、なんで」
「私は卒業資格を取得しに来てるだけだ、前提が相違している」
喚き散らすヴァントスに、先程の甘さを霧散させたカリタスは淡々と返す。
対照的に対立する二人だったが、幕引きのきっかけは教室外から訪れた。
「それでまだ戦う気か? 私は一向に構「はーい、やめやめ。もうお終いだよー」」
気の抜けた声と共にクピド先生が顔を出し、服従魔法を解くように促してくる。
カリタスが拘束を緩めると、ヴァントスは足を踏み鳴らしながら退場していった。
「クピド、仲裁しにでも来たのか。もう実質的な勝敗は決まっているが」
「いや、治療目的だよ。けど人の体で立ち向かうなんて無茶だなぁ」
微笑みながらクピド先生が周囲を見渡すが、途中で興味を失ったように目を伏せる。
先程まで戦っていた魔物は、確かに教師によって応急処置されているが。
「でも怪我人、いなくなっちゃったね。じゃあ僕は戻るよ、ばいばーい」
(やっぱりクピド先生、生徒や魔物を心配してる感じがしないな)
仮面で見えづらくはあるが、よく見ると冷たく抜け落ちたような瞳をしている。
笑顔も作り物めいていて、一度気づくと違和感が拭えなくなってしまった。
(それにさっきの言い方だと、ヴァントス個人を心配して来たみたいだった)
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