【完結】売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と期限付き契約を交わす

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)

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6.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と祝祭に参加する

6-4.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と祝祭に参加する

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戦えない俺たちは布製の砦に潜り、その隙間から外部の様子を窺っていた。
救いの手が現れた事により、生徒も落ち着きを取り戻し始めている。

「サボリ魔くんは、お客さんたちの誘導をしてね。魔物は僕が処理するから」
「……服従魔法を一般人に使うのは、禁忌だ。だが他に手段はないか」

そして仮面越しに目配せをしながら、クピド先生は迷わず指示を出していく。
対してカリタスは躊躇いを見せたが、やがて諦めたように頷いた。

そして前に出たクピド先生の姿が、眩い光に包まれて曖昧になっていく。

(クピド先生の背後に、また白い羽と光の冠が見える。あ、冠が拡大して、何かが「見ちゃダメ、リベラちゃん!」)

彼の頭上に現れた光冠の穴からは、狂気的に輝く何かが覗いていた。
禍々しさはないが、悍ましい程の神聖が降臨しかけている。

(指の隙間から、何かが見えた。目が痛い、頭の中が掻き回されてるみたいだ!)

直視は生存本能が拒否し、覗く者の正体を掴むことは叶わない。
だが白く染まった目の裏に、突如として影が現れた。

「……もう目を開けて大丈夫だ。神の権能は、人の認知に耐え得るものではない」
(クピド先生のお付きの人たちが、透明な幕を魔法で作ってる。いつの間に)

瞬く視界を抑えて瞼を持ち上げると、周囲には認識緩和の魔法が展開されていた。
避難所の周りには教師陣が並び、生徒を守るように結界を張っている。

とはいえ完全に守り切る事はできず、光の影響を受けた人は倒れてしまっていた。

「クピド、どうかしてるわ! 影響が大きすぎて、みんな気絶してるじゃない!」
「記憶改竄魔法を施して帰すから、大差ない。既に魔物も自壊した」

確かに魔物の鎮圧は完遂され、祝祭への被害は最小限で済んでいた。
しかしその光景は血に染まり、遺骸で埋め尽くされた地獄と化している。

(魔物が、自身を喰らっている。でも精神系魔法は、っまだ悲鳴が聞こえる!?)

だが碌に考える時間もないまま、再び絶叫が響き渡って思考を中断させられる。
顔を上げると混乱した人々が事態の終息に気づかず、遂に発狂し始めていた。

「先頭集団が押されて、制御不能になってるわ! これ、大怪我に繋がるわよ!」

魔物の鎮圧を伝える声は悲鳴で掻き消され、恐怖だけが加速していく。
――しかし今度は、後ろに控えていたカリタスが動き出した。

「ほら、お仕事だよカリタス。頑張ってね」
「……承知した、仕方ない」

仮面を隔てた言葉に従ってはいるが、最後まで彼の表情は苦々しいものだった。
だが覚悟を決めたのか、彼は暴走する集団の前に躍り出る。

(カリタスが武器を手放して、長鞭を握った。それを逃げ惑う人たちに向けて――)

服従魔法は既に見慣れたものだったが、人間に行使する機会は殆どなかった。
そして今回は、魔法に触れた事すらない民間人も混ざっている。

「《這いつくばれ》、そして《立ち上がるな》。自身と他者を守る為に」
(鞭が地面を抉って、魔法が音によって拡散される。人が、蹲っていく)

服従を強いる魔法が人々の耳に届き、次々と行動の自由を奪っていく。
それは保護の為の強制だったが、動転した人々には正しい判断が下せない。

「……リベラちゃんは、従魔だから怖くないのね。アタシは、ちょっとキツいわ」
「ディコラルタさん、大丈夫!? 顔、真っ青だよ!?」

そして魔法の影響は暴走集団だけに留まらず、避難所にまで及んでいた。
カリタスの魔力に親しんだ俺は無事だが、彼らは口元を抑えている。

「主従関係を刻み込まれてるみたいで、嫌いなのよね。やだ、本当に気持ち悪い」
(目も開けていられないんだ、ディコラルタさん。なにか、俺にできることは)

ディコラルタさんを支えようとして、耐え切れず一緒に倒れ込んでしまう。
幸いカリタスが駆け付け、すぐに引き上げてくれようとしたが。

「リベラ、ディコラルタ、無事か!? 怪我は、どこか不調はないか!?」
「アタシは少し、休ませて貰うわ。じゃないとアンタに、敵意を向けると思う」

ふらつくディコラルタさんは、肩を貸そうとするカリタスを押し留める。
その表情には嫌悪が滲み、近づくことすら言外に拒否していた。

「……承知した。リベラを守ってくれたこと、感謝する」

カリタスは素直に身を引き、ディコラルタさんの言葉に従って身を離す。
だが理性を破壊された彼は、その配慮すら汲むことができなかった。

「アンタに礼を言われる筋合いないわよ、それより早く行かせて頂戴!」
(ディコラルタさん、神経質になってる。カリタスも落ち込んでるし)

ディコラルタさんが足早に去り、人々が遠巻きに怯える中、彼だけが取り残される。
その光景が辛過ぎて、俺は考える間もなく叫び出していた。

「カリタス、守ってくれてありがとう! 何もできなかったけど、俺は無事だよ!」

そのまま腰に抱き着いて見上げると、俯いていた瞳が揺れるのが見えた。
少し遅れてから彼は跪き、ゆっくりと俺の頬に触れてくる。

「……リベラ、抱き締めさせてくれ。どこかの影で、少しだけで良いんだ」

そして彼は立ち上がり、抱き上げた俺を連れてふらふらと歩き出す。
救われたはずの人々は、化け物を見たかのように後ずさっていた。
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