【完結】売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と期限付き契約を交わす

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)

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7.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師のせいで情緒不安定に陥る

7-2.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師のせいで情緒不安定に陥る

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とはいえ敵対者がいなくなれば、歪んだ自分と向き合わざるを得なくなる。
担ぎ込まれた保健室で、心底俺は己に恥じ入っていた。

「フェロモンの暴発は、サキュバスの防衛本能が原因だね。今は治まってるよ」

クピド先生が窓を全開にして診察しているが、既に症状は残っていなかった。
だが掛けてしまった迷惑は消えず、俺は深々と頭を下げる。

「ごめんカリタス、迷惑掛けて。他の魔物に取られるのが怖くて、おかしくなった」
「保護を前提とする生き方なのだから、むしろ自然だ。気に病まないでくれ」

沈鬱に猛省する俺に対し、カリタスはあまり気にしないように慰めてくる。
けれど彼が気に入っていた場所を、俺は潰してしまったかもしれない。

(それに他のお客さんにも影響があったかもしれない分、あの魔物よりも悪質だ)

クピド先生も俺寄りの意見で、問題は終わっていないと考えている。
特に今回は風評被害ではなく、実際に起こしてしまった事件だったから。

「でも騒動の話が流れてるのはまずくない? フェロモンが暴発したのは事実だし」
「元々私達は、碌でもない風評に付き纏われている。今回も無視を決め込むだけだ」

カリタスは平然と言い切るが、俺は不安を拭い去る事ができない。
一時の妬みに囚われて、取り返しのつかない事態を招いてしまっていた。



数日もしない間に、喫茶店での事件は校内に流布されていた。
けれど今回は虚言じゃないから、内心でも反論することができない。

『あの後天性サキュバス、遂に本性を現したらしいな』
『公衆の面前で、フェロモンを撒き散らしたらしい。店員が巻き添えだとか』
『色気のない人形のようだと思っていたが、中身は爛れた魔性――』

カリタスに抱き上げられて移動している間も、誹謗中傷が流れ込んでくる。
けれど途中で深く抱き込まれ、周囲の音が聞こえ辛くなった。

「耳を傾けるな、リベラ。あんな奴らの戯言を聞く必要はない」
「分かってるけど、今回は俺のせいだから。少し敏感になってる」

カリタスが鋭い視線を投げ掛け、更に魔力で威圧して黙らせる。
しかし今度は頭の中で、俺への悪口が反響していた。

『あの魔物では、主人と釣り合わないでしょう。毎日花束を贈られてるらしいけど』
『服や菓子を貢がれ、さぞ勘違いした生活をしているんでしょうね。淫売風情が』
『今は恋人気取りだが、いずれ捨てられるだろう。その時を楽しみに待てばいい』

もはや現実と幻聴の区別もつかず、精神が為す術もなく削られていく。
無害を証明する事もできず、俺は蹲ることしか出来なかった。



部屋に戻っても俺は落ち着かず、カリタスと離れた寝台の端に座り込む。
だが彼は再び距離を縮め、視線を合わせるように屈み込んできた。 

「リベラ、触れてもいいか。魔力供給を行えば、少しは落ち着くかもしれない」
「さっき花から貰ったから平気、…… ううん、やっぱ頼んでいい?」

魔力は充分に摂取出来ているが、想い人の囁きの前に正論は無力だった。
不安定な精神と繋がる症状を考慮すれば、今は離れていた方が安全なのに。

(カリタスに優しくされると、胸が痛くなる。離れる勇気が作れない)

けれど俺の意思とは裏腹に、体は彼に引き寄せられてしまう。
せめてもの抵抗で腕は伸ばさずにいたが、軽く抱き寄せられて意味がなくなった。

「カリタス、俺から触ってもいい? 変な所は触らないし、すぐやめるから」
「リベラなら、幾らでも触れてくれて構わない。全て委ねよう」

快く許可を貰った俺は、恐る恐る彼の肩に手を伸ばす。
でも普段は触れられるばかりだから、それ以上の動き方が分からなくなる。

(カリタス、両手を広げて待っててくれてる。でもどうしたら、喜んでくれるかな)

俺の言葉を尊重したカリタスは、静かに行動を待ち続けている。
反射的に動かないようにか、服の端を固く握り締めていた。

「迷っているなら、頭を撫でてくれ。機会がなかったから、心に残っている」
「なら膝枕もしていい? そっちの方が楽だし、カリタスも休めると思う」 

互いの距離感を不器用に測りながら、俺達は触れ合いを深めていく。
すると性的な関わりもないのに、俺の心は満たされ始めてしまう。

「もちろん、リベラのしたいようにしてくれれば良い」

俺の膝の上に転がったカリタスは、上目遣いになると幼く見える。
警戒心もなく微笑んでいるのを見ると、胸の奥が締め付けられた。

「そこまで無防備で大丈夫? 後天性サキュバスなんか敵じゃないだろうけど」
「逆だ。淫魔であろうと、リベラになら身を委ねて問題ないと考えている」

カリタスが臆面もなく断言するから、今度は俺の方が狼狽えてしまう。
そんな信頼を得られる人間じゃないと、分かっているはずなのに。

「じゃあなんで、他の魔物に笑いかけてたの。俺、ずっと気になってるんだけど」

不釣り合いな嫉妬を抱えて、それを制御すらできない未熟な人間未満。
今以上の情を乞う浅ましさを、永遠に止められないままでいる。
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