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8.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師への姿を選択する
8-1.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師への姿を選択する
しおりを挟む「君は生徒を避難させてくれ。こちらの不手際ですまないが、頼まれてくれるか」
「あ、あぁ。魔物が暴れたなんて珍しくもない、野次馬だけは押さえつけておこう」
カリタスが俺を隠すように立ち塞がり、事態の隠滅を図ろうと声を上げている。
自身の手に負えないと判断した監督生も頷き、従魔を伴って撤退した。
「ようやく二人きりになれたな、リベラ。怪我の手当がしたい、大人しくしてくれ」
「もう俺に構わないで。違法な事に手を染めたの、分かってるでしょ」
だが俺は抱えようとする彼の腕を突き放し、距離を取って向き合った。
正直満身創痍だが、彼の善意をこれ以上利用したくなかった。
「それに他者の魔力に反応して、攻撃的になってる。だから早く離れてよ!」
そう言いながらも獣の本能に操られた爪が、カリタスに狙いを定めている。
既に制御権は俺から離れているが、……それでいいのかもしれない。
(どんなに俺が強くなろうと、カリタスが負けるなんて有り得ないんだから)
魔物に堕ちた相手だろうが、服従魔法を操る彼なら容易く処分できる。
悪行に染まった愚か者には、裁きを与えるのが最適解のはずなのに。
「なんで抵抗しないの!? カリタスなら、俺なんか相手にならないでしょ!?」
「制圧できる力があっても、するかどうかは別だ。君に、それはしたくない」
暴威を振るう攻撃こそ受け流すが、それ以上の素振りは見せてこない。
反撃する気配すら現れず、彼の傷ばかりが増えていく。
(俺を庇ってるんだ。一度の抵抗が、致命傷になるって思い込んでるから)
魔物化した肉体は並みの人間より強く、悍ましい外見からもそれは察せるはず。
けれどカリタスの心には、未だ虚弱な淫魔が棲み着いてしまっていた。
(そして俺も、攻撃本能を止められない。カリタスを排除すべき敵と認識してる)
かと言って一方的に攻撃している俺が有利な訳でもなく、体は傷つき始めていた。
肉体の大部分は変異しているが、頭部と胴体は未だ人型を保っている。
だからこそ魔物の四肢が拒絶反応を起こし、激痛が悲鳴を生んでいた。
(カリタスも、随分消耗してる。このままじゃ共倒れだ)
俺を殺せば全てが解決するのに、彼は泣き声交じりの断末魔に屈していた。
傷つける力など持たないそれは、ただ痛みを訴える残響なのに。
――そして事態が終息する間もなく、潜んでいた悪意が来訪する。
「やっぱり面白ぇ事になってやがんな。あん時、世話焼いといて大正解だったぜ」
哄笑に顔を上げると、校舎の窓からヴァントスは俺達を見下ろしていた。
仕掛けていた罠が、惨憺たる結果を生んだと聞いて動き出したのだろう。
「ヴァントス、やはりお前がこの状況を引き起こしたのか!」
「違うよ。血を欲したのは、俺自身だ」
カリタスは怒りをヴァントスに向けているが、それは誤った解釈だった。
悪意による手引きこそ行われたが、破滅の原因は俺の因果応報でしかない。
「オレとしちゃ、相討ちになりゃ一番手間が省けるんだがな。まぁ充分か」
(魔道具を握ったヴァントスが、近づいてくる。でも、拘束用じゃない)
普段ヴァントスは鎖や枷を模した魔道具を携えているが、今は羽根筆を持っていた。
先端からは魔力を含む液体が滴り落ち、羽根の色を染め上げている。
「まさかリベラの魔法契約を上書きするつもりか!? ふざけるな、……ぐぁっ!」
「校内最強のテメェでも、疲弊し過ぎればオレでも抑え込める。ざまぁねぇな」
立ち塞がろうとするカリタスを一蹴し、ヴァントスは悠然と歩み寄ってくる。
動きに精彩を欠いた爪は掴まれ、俺も地面に引き倒された。
「人間の体も捨てたもんじゃねぇな。魔力は雑魚だが、道具で補えるのは悪くねぇ」
(破けた服を剥がされて、容赦なく眺められる。怖い、何が目的なの)
ヴァントスに性的な興奮を感じられない分、研ぎ澄まされた視線が浮き彫りになる。
見るに堪えない混じり物の体を、彼は解剖するように冷たく観察していた。
「やっぱり後天性サキュバスじゃ碌な価値はねぇが、進化種としては上出来か」
(首を掴まれて、羽根筆の魔道具が体を滑っていく。息が、苦しい)
強制的な上書きに契約が抗っているのか、首に刻まれた魔力痕が熱を帯びていく。
だが羽根筆は容赦なく契約印を描き、俺の体を書き換えてくる。
(刻まれた約束が、無理矢理塗り替えられ、嫌だ、けど敵わない)
カリタスが伸ばした腕は踏みつけられ、救いに代わる事はない。
でも彼には、こんな痛みを与えられる所以など存在しないのに。
「再契約で、主人を書き換えてやる。カリタス相手なら、盾としても使え……!?」
(振り回した爪が、首を裂いた。血が噴き出して、ヴァントスが崩れ落ちていく)
確かにカリタスは、自身を脅かさない契約者が必要だった。
けどその人は、俺であってはならなかったんだ。
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