【完結】売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と期限付き契約を交わす

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)

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8.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師への姿を選択する

8-2.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師への姿を選択する

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「リベラ、無事か!?  ……どこを出血した、酷く血塗れだ!」
「俺の、血じゃない。それより、人が来る前に逃げて」

俺を濡らしているのは血溜まりに倒れたヴァントスで、もう少しも動かない。
つまりこの惨状を発見されれば、処分が下されるのは間違いなかった。

(峠を越えたのか、魔物化は治まった。けど俺は、自分の意志で他者を傷つけた)

この悲惨な光景は確かに自分が作り出したものだから、絶対に言い逃れはできない。
だがカリタスを巻き込まないよう距離を取っても、彼は駆け寄ってきてしまう。

「カリタス、なんで抱き上げてるの!? 下ろして、今なら間に合うから!」
「断る、教師が来る前に一度身を隠そう。ヴァントスも、彼らが回収するはずだ」

そして彼の服にも容赦なく血が付着し、惨事の関係者に仕立て上げていく。
共犯者に擬態したカリタスは俺を抱え、校舎の奥深くへと攫っていった。



廊下に立ち並ぶ怪しい出店を通り抜け、俺達は使われていない部屋に雪崩れ込む。
刺激臭が立ち込めているから、違法薬や酒を嗜む者の隠れ家なのかもしれない。

(闇市の近くにある空き教室だ。ここなら、異形の魔物を抱えてても目立たない)

部屋の外には様子のおかしい魔物が徘徊しているが、それは目隠しにも使える。
荒い呼吸を繰り返すカリタスは、ようやく腰を下ろして息を整えていた。

「クピドに診せるまで、耐えてくれリベラ。いや闇市で、薬を探した方がいいか」
「俺より、自分の怪我を気にしてよ。っていうか、なんで服従魔法使わなかったの」

拘束する腕から抜け出そうと俺は藻掻くが、より強く抱き締められて抜け出せない。
彼の服には俺がつけた傷の血も滲み、後戻りできない状態に陥っていた。

(自己嫌悪で、心が滅茶苦茶だ。でも服従魔法を使えば、俺は逆らえなかったのに)

俺がどれだけ拒絶しても、容易く従える方法がカリタスにはあった。
代償を求めない力は、彼の願いを簡単に叶えられたのに。

「リベラに、あの魔法は使わない。倫理からではなく、私が嫌われたくないからだ」
(確かにあの魔法は、心身に恐怖を残す。半分が人である俺も、例外じゃない)

服従魔法は魔物に対して正しい効果を発揮するが、人間には嫌悪感しか与えない。
そして行動を強制できる代わりに、信頼や好感を犠牲にする諸刃の剣でもあった。

「けどその魔法があれば、感情だって踏み倒せるでしょ。全部、思い通りじゃん」
「確かに服従魔法を使えば、抵抗を無視することは可能だ。だが私の本意ではない」

カリタスは俺を抱き締めたまま、頬に触れて優しく撫でてくる。
その感触で、俺は泣いていることに初めて気がついた。

「最初はリベラを、契約の為の従魔として見ていた。弱く、扱いやすい存在だと」
「正しいよ。その考えを利用して、俺も契約するって決めたんだから」

俺の涙を指で拭いながら、カリタスは隠していた心情を吐露する。
それは俺ですら知らなかった本音で、彼の行動原理でもあった。

「だが卒業後の話をした時、後ろ向きの未来を祝福してくれたことが嬉しかった」
「そんな大層な事じゃないってば。別に、当たり前の願いなんだから」

カリタスは他者を遠ざけすぎて、些細な同情にも好意を抱くようになっていた。
だから俺は自惚れないようにしていたのに、彼の方が深く心を蝕まれている。

「それに祝祭で服従魔法を行使した時に、君だけが駆けつけてくれた。怯えもせず」
「カリタスが好んで、無理矢理従わせる人じゃないって知ってただけだよ」

善意で人々を鎮圧した時ですら、彼は数少ない友人にも誤解されてしまっていた。
それを慰めたのは事実だけど、過ごした時間から内情を知っていただけなのに。

「違う。病で弱い姿を見せた時も、過去の罪を知った時も否定しないでくれた」
「そういう言葉が、俺を勘違いさせるんだって。なんで分かってくれないの」

彼の好意は同情と責任感から出来ていると誰もが知り、不釣り合いだと評してきた。
なのに正当な評価を歯牙にも掛けず、カリタスは俺だけを見つめ続けている。

(壁際で迫られて、逃げ場がない。怖くはないけど、どうしていいのか分からない)

端正な表情を余裕なく崩して、カリタスは俺に顔を近づけていく。
けれど唇が重なり合う直前、目を見開いて動きを止めた。

「思い違いなど、させる気はない。……だが続きは、帰ってからにしよう」
(地響きみたいな、大量の足音が聞こえる。尋常じゃない数の、魔物の気配も)

いつの間にか徘徊する魔物は消え、それらが集約されていることに気づく。
俺を抱えたカリタスが部屋から飛び出し、階段を駆け上がる。

――すると吹き抜けから、大広間を圧迫する魔物の群れが目に映った。

「中心地に、ヴァントスがいるな。だが魔力の保有量が尋常じゃない」

階下で蠢く魔物達の隙間から、カリタスはヴァントスの姿を見つけていた。
だが唯一の人影が襲われることはなく、崇めるように付き従われている。

「あれは貴族の館で見た、魔王の姿そのものだ」
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