1 / 23
プロローグ
しおりを挟む
(走れ――
――走れもっと走れ。
――もっと動け僕の足。
アイツらに追いつかれたら終わる――今度こそ死ぬ)
止む気配のない雨の中、大夢は走り続けた。
(とにかく奴らを巻かないと、左だな)
走った先は行き止まりの路地裏だった。
(まずい。行き止まりだ)
黒い奴らが雨音を立て、近づいてくる。
「おい。疲れさせんなよ、ゴミが」
胸ぐらを掴まれ、顔を上げる、横目で拳が左から近づいてくるのが見えた。その瞬間――衝撃と共に脳が震えた。
次は正面から三発。
――ポキッ
(ああ、これ鼻逝ったな。痛い、とてつもなく痛い)
大夢はあまりの痛さに座り込もうとするが、腹に1発蹴りを喰らった。
「ッハア」
(息が……)
「お前、先生にチクっただろ?」
「何のことだよ」
「俺らは胃もたれしてるから、病院代貰っただけだろ?それに殴ってたって?」
「僕は言ってない!」
「じゃあ、誰が言ったんだよ。そもそもお前の顔が気持ち悪いから胃もたれするんだよ」
そう、僕はいじめの被害者だ。コイツらはいじめの加害者
事の発端は、僕の笑顔が気持ち悪いと、女子が悲鳴を上げた事だった。
大夢の顔には傷がある。これは五年前、十三歳の時の交通事故によって、残った後遺症だ。
右目から口まで十針縫った大きな切り傷、年数が経つにつれ古傷になったが、笑うと引き攣るこの顔は、気色が悪いらしい。
――僕だってこんな顔になりたくてなったわけじゃない、普通がよかった。それにしても毎回殴られて、蹴られてるのに、この痛み慣れないな。死ぬのかな? 今日なのか? なんでよりによって今日なんだ。ハハッ、言い残すことは無いな。
気がつくと、頬に水が当たっていた。暫く気絶をしていたようだ。雨が上がる様子はない、僕は無理矢理身体を起こした。
「死ななかったんだ。痛、これ折れたの鼻だけじゃなさそうだな」
ふと、視線を向けた先に制服を着た女子が、こちらを見て立っていた。手には花束をもっている。
(誰だ?目が腫れてよく見えない、赤いカーネーションを持っているのか?もしかして……)
「百合ゆりか?」
「……お兄ちゃん。大丈夫?」
駆け寄って来たのは桑田百合――僕の妹だ。
「いつからいたんだ? アイツらと出くわさなかったか?」
「今来た。倒れている人がお兄ちゃんだなんて思いもしなかったよ」
「そうか、百合が無事ならよかった」
僕は引き攣った笑顔を百合に向けた。
「病院いく?」
「大丈夫だ、なんとか。早く行こう」
「どう見ても重症に見えるんだけど。とりあえず血を拭こう」
百合は優しい。僕とは容姿も性格も正反対で、皆から好かれ、誰とでも仲良くできる。天使のような、自慢の妹だ。
バスに揺られ辿り着いた先は、お墓だ。
五年前の今日、六月六日は大夢と百合が事故に遭った日、そして事故によって両親が亡くなった日つまり――命日だ。
あの日遊園地からの帰り、山道を降っていると突然風が強くなり、雨で見通しが悪くなった。落雷により車が横転し、崖から落ちた。両親は即死、僕と百合に後遺症を残す程の大きな事故だった。警察は運転していた父が落雷によりパニックを起こし、ハンドル操作不適として処理をした。警察曰く、落雷による事故はよくあることだと。
だが僕は納得がいかなかった。事故直前、確かに何かが変だった。ただの自然災害による事故ではなく、奇妙な音と共に、目に見えない何・か・が意図的に襲ってくるような感覚。
――あの時の恐怖は今でも忘れられない。
「そういえば、あの日も雨だったね」
「覚えてるのか? 百合はまだ十歳だっただろう」
「なんとなく覚えているよ」
十三歳の僕でもあまりに生々しい体験だった。目の前が赤く染まり、まるでジェットコースターに乗ったように体は宙に浮いたと思えば、叩きつけられるような強い衝撃を受けた。
それによって百合は事故前後の記憶の一部を失った、記憶障害だ。幸い日常生活を送ることに支障はないが、あまりにも――
僕らは失った命が大きすぎた。
「お兄ちゃんお線香つけたよ、でも雨で消えちゃいそう」
両親のお墓の前に屈んで手を合わせた。
「父さん、母さん。もう直ぐそっち行くからね」
「またそれ?もうやめてって言ってるでしょ」
「別にいいだろう。言うだけタダなんだから」
「聞いててこっちが気分悪くなるの」
「百合、どうしたんだ?」
「何が?」
「そんな怒らなくてもいいだろう?」
百合は普段怒ることのない、どちらかと言うと穏やかな性格なのに今日は様子がおかしい。
「当たり前のことを言っているのよ。そんなに死にたいの?」
「――そうだな。一緒にお父さんとお母さんのところ会いに行こうか?」
「呆れた」
僕は少しおふざけの度が過ぎたようだ。百合は黙り込み、黙々とお供え物を片付け始めた。
(命日にお墓の前で喧嘩するなんて親不孝なことをしたな。それにしても、毎回のことなのに怒るなんて初めてだ)
「――帰ろう」
僕が口を開いたその時、途端に風の流れが変わった。
(なんだ?)
木々は大きく揺れ、立っていることが困難になるくらい強い雨風。
――それにどこかからか聞こえる、大きな何かが動くような不気味な音ーー気味が悪い。
(この音はーー人の声か?
――待てよ。これってあの時の、五年前の事故の時と似ている)
嫌な予感がした。
聞いた事のある音、見覚えのある天候、全身が奮い立つ感覚、全て覚えている。
(もしかしたら、いや、確実に来る。もうすぐ、落ちてくる)
百合が口を開いた。
「ねぇ......これって…...」
「百合ッ、急いで帰ろう」
百合の腕を引っ張ろうとするが、百合は耳を塞ぎ、腰を抜かして座り込んだ。
「百合ッ、頼む! 立ってくれ」
「もう遅いよ」
「ゆりっ!」
「ねえ、お兄ちゃん。◯◯◯◯◯?」
――――その瞬間雷が落ちた。
突如、目の前が明るくなったかと思うと、一瞬にして衝撃が走り、何かに押さえ込まれるかのように、地面に倒れた。
(何で……雷に撃たれたんだよな……百合は?)
百合はピクリとも動かない。
雷に打たれ衝撃が酷く、僕は辛うじて意識はあるが長くは持たないだろうと理解した。
(ああ……これ無理なやつだ……首が動かない……腕が……痛過ぎる。まあいい、どうせいつ死んでもいい人生だった。願いが叶ったってことだろ。百合は…もう逝ったのか?そういえば最後なんて言ったんだ? 最後だってのに……これから大人になって、勉強して、恋愛して、金稼いで、百合はもっと自由を得るって、幸せになれるって思ってたのに……)
意識は徐々に遠退いていく。
(ごめんな、百合。お兄ちゃん。色々と間違えた……またな――)
百合は既に死んでいた。大夢はほんの少し意識があったものの、ゆっくりと息を引き取った。
その日、世界でも初と言われるほど、大きな雷が落ちた。
世間はそれを「神が怒ったのだ」と騒いだ。
記録――二〇二四年六月六日 桑田大夢 桑田百合
落雷により 計二名 ――死亡
――走れもっと走れ。
――もっと動け僕の足。
アイツらに追いつかれたら終わる――今度こそ死ぬ)
止む気配のない雨の中、大夢は走り続けた。
(とにかく奴らを巻かないと、左だな)
走った先は行き止まりの路地裏だった。
(まずい。行き止まりだ)
黒い奴らが雨音を立て、近づいてくる。
「おい。疲れさせんなよ、ゴミが」
胸ぐらを掴まれ、顔を上げる、横目で拳が左から近づいてくるのが見えた。その瞬間――衝撃と共に脳が震えた。
次は正面から三発。
――ポキッ
(ああ、これ鼻逝ったな。痛い、とてつもなく痛い)
大夢はあまりの痛さに座り込もうとするが、腹に1発蹴りを喰らった。
「ッハア」
(息が……)
「お前、先生にチクっただろ?」
「何のことだよ」
「俺らは胃もたれしてるから、病院代貰っただけだろ?それに殴ってたって?」
「僕は言ってない!」
「じゃあ、誰が言ったんだよ。そもそもお前の顔が気持ち悪いから胃もたれするんだよ」
そう、僕はいじめの被害者だ。コイツらはいじめの加害者
事の発端は、僕の笑顔が気持ち悪いと、女子が悲鳴を上げた事だった。
大夢の顔には傷がある。これは五年前、十三歳の時の交通事故によって、残った後遺症だ。
右目から口まで十針縫った大きな切り傷、年数が経つにつれ古傷になったが、笑うと引き攣るこの顔は、気色が悪いらしい。
――僕だってこんな顔になりたくてなったわけじゃない、普通がよかった。それにしても毎回殴られて、蹴られてるのに、この痛み慣れないな。死ぬのかな? 今日なのか? なんでよりによって今日なんだ。ハハッ、言い残すことは無いな。
気がつくと、頬に水が当たっていた。暫く気絶をしていたようだ。雨が上がる様子はない、僕は無理矢理身体を起こした。
「死ななかったんだ。痛、これ折れたの鼻だけじゃなさそうだな」
ふと、視線を向けた先に制服を着た女子が、こちらを見て立っていた。手には花束をもっている。
(誰だ?目が腫れてよく見えない、赤いカーネーションを持っているのか?もしかして……)
「百合ゆりか?」
「……お兄ちゃん。大丈夫?」
駆け寄って来たのは桑田百合――僕の妹だ。
「いつからいたんだ? アイツらと出くわさなかったか?」
「今来た。倒れている人がお兄ちゃんだなんて思いもしなかったよ」
「そうか、百合が無事ならよかった」
僕は引き攣った笑顔を百合に向けた。
「病院いく?」
「大丈夫だ、なんとか。早く行こう」
「どう見ても重症に見えるんだけど。とりあえず血を拭こう」
百合は優しい。僕とは容姿も性格も正反対で、皆から好かれ、誰とでも仲良くできる。天使のような、自慢の妹だ。
バスに揺られ辿り着いた先は、お墓だ。
五年前の今日、六月六日は大夢と百合が事故に遭った日、そして事故によって両親が亡くなった日つまり――命日だ。
あの日遊園地からの帰り、山道を降っていると突然風が強くなり、雨で見通しが悪くなった。落雷により車が横転し、崖から落ちた。両親は即死、僕と百合に後遺症を残す程の大きな事故だった。警察は運転していた父が落雷によりパニックを起こし、ハンドル操作不適として処理をした。警察曰く、落雷による事故はよくあることだと。
だが僕は納得がいかなかった。事故直前、確かに何かが変だった。ただの自然災害による事故ではなく、奇妙な音と共に、目に見えない何・か・が意図的に襲ってくるような感覚。
――あの時の恐怖は今でも忘れられない。
「そういえば、あの日も雨だったね」
「覚えてるのか? 百合はまだ十歳だっただろう」
「なんとなく覚えているよ」
十三歳の僕でもあまりに生々しい体験だった。目の前が赤く染まり、まるでジェットコースターに乗ったように体は宙に浮いたと思えば、叩きつけられるような強い衝撃を受けた。
それによって百合は事故前後の記憶の一部を失った、記憶障害だ。幸い日常生活を送ることに支障はないが、あまりにも――
僕らは失った命が大きすぎた。
「お兄ちゃんお線香つけたよ、でも雨で消えちゃいそう」
両親のお墓の前に屈んで手を合わせた。
「父さん、母さん。もう直ぐそっち行くからね」
「またそれ?もうやめてって言ってるでしょ」
「別にいいだろう。言うだけタダなんだから」
「聞いててこっちが気分悪くなるの」
「百合、どうしたんだ?」
「何が?」
「そんな怒らなくてもいいだろう?」
百合は普段怒ることのない、どちらかと言うと穏やかな性格なのに今日は様子がおかしい。
「当たり前のことを言っているのよ。そんなに死にたいの?」
「――そうだな。一緒にお父さんとお母さんのところ会いに行こうか?」
「呆れた」
僕は少しおふざけの度が過ぎたようだ。百合は黙り込み、黙々とお供え物を片付け始めた。
(命日にお墓の前で喧嘩するなんて親不孝なことをしたな。それにしても、毎回のことなのに怒るなんて初めてだ)
「――帰ろう」
僕が口を開いたその時、途端に風の流れが変わった。
(なんだ?)
木々は大きく揺れ、立っていることが困難になるくらい強い雨風。
――それにどこかからか聞こえる、大きな何かが動くような不気味な音ーー気味が悪い。
(この音はーー人の声か?
――待てよ。これってあの時の、五年前の事故の時と似ている)
嫌な予感がした。
聞いた事のある音、見覚えのある天候、全身が奮い立つ感覚、全て覚えている。
(もしかしたら、いや、確実に来る。もうすぐ、落ちてくる)
百合が口を開いた。
「ねぇ......これって…...」
「百合ッ、急いで帰ろう」
百合の腕を引っ張ろうとするが、百合は耳を塞ぎ、腰を抜かして座り込んだ。
「百合ッ、頼む! 立ってくれ」
「もう遅いよ」
「ゆりっ!」
「ねえ、お兄ちゃん。◯◯◯◯◯?」
――――その瞬間雷が落ちた。
突如、目の前が明るくなったかと思うと、一瞬にして衝撃が走り、何かに押さえ込まれるかのように、地面に倒れた。
(何で……雷に撃たれたんだよな……百合は?)
百合はピクリとも動かない。
雷に打たれ衝撃が酷く、僕は辛うじて意識はあるが長くは持たないだろうと理解した。
(ああ……これ無理なやつだ……首が動かない……腕が……痛過ぎる。まあいい、どうせいつ死んでもいい人生だった。願いが叶ったってことだろ。百合は…もう逝ったのか?そういえば最後なんて言ったんだ? 最後だってのに……これから大人になって、勉強して、恋愛して、金稼いで、百合はもっと自由を得るって、幸せになれるって思ってたのに……)
意識は徐々に遠退いていく。
(ごめんな、百合。お兄ちゃん。色々と間違えた……またな――)
百合は既に死んでいた。大夢はほんの少し意識があったものの、ゆっくりと息を引き取った。
その日、世界でも初と言われるほど、大きな雷が落ちた。
世間はそれを「神が怒ったのだ」と騒いだ。
記録――二〇二四年六月六日 桑田大夢 桑田百合
落雷により 計二名 ――死亡
1
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる