僕らが転生した理由 〜異世界転生した先は赤い地球〜神々に弄ばれた人間の物語

空 朱春

文字の大きさ
2 / 23
第一章

1 エーデル:幸せの絶頂

しおりを挟む
 ――目が覚めると、母の腕の中で寝ていた。

「ふあ~、おはようエーデル。早起きね、偉いわ」
 母はエーデルの鼻をツンと人差し指で触った。指先から愛が伝わる。

「一緒に寝るのは今日までだからね。明日はもう十三歳になるんだから、一人で寝なきゃダメよ?」

 部屋には散らかったおもちゃと、積み重なった本が置いてある。いつもと何ら変わりのないエーデルの部屋だ。
 寝起きの身体を起こして、カーテンを開けた。眩し過ぎる朝日に片目を瞑る。
「今日も最高の天気だ!」

(エーデル・アイビス。今日はお前の十二歳最後の年だ、今日という日を、うんと楽しめ!)
 エーデルは自分に気合を入れた。

 部屋を出て階段を駆け足で降り、リビングにあるテーブルの椅子に座った。
 テーブルの上には、パンにベーコン、目玉焼き、そしてコーンスープが用意されていた。父が早起きして朝食を作ってくれたらしい。
「僕の大好きな食べ物ばかりだ! ニンジンも……あるのか……」

「好き嫌いは良くないぞ~。おはようエーデル」
「おはよう! お父さん今日はお仕事休み取れたの?」
「もちろんだとも! なんていったって今日は、うちの大事な長男坊の誕生日前夜祭だ。なんとニ日間も休みだぞ」

 父の仕事は魔物狩りだ。依頼を受け魔物が出没した場所に狩りに行く、そして決して多いとはいえない報酬を貰う。それでも父、クラウスはその仕事一つで家庭を支えている。エーデルが最も尊敬する人だ。
「やったー!じゃあ沢山あそべるね」
 エーデルは満面の笑みを浮かべる。

「そう急ぐなエーデル。剣術の練習忘れてないか?」
「またやるのー?今日くらいやらなくてもいいじゃん。僕、充分強いでしょ?」
「あなた。今日は十二歳最後の日よ、自由に過ごさせてあげたら?」
「しかしだな、剣術というのは、やはり男である以上必須だ。なにより魔物や敵が襲ってきた時、役に立つのは武闘でも魔術でもない。相手を素早く殺せる、剣だ。その為には剣と一体化、剣を体の一部とし、自分と剣を共に鍛えていかなければならな……」
「クラウス」
 母は目の圧で父を黙らせた。

 父は母の尻に敷かれているのだ。その方が夫婦のバランスは取れるという。でもそれ以上に父は母のことが大好きで、言い返せないというのが事実。そこらでは仲のいい夫婦としても有名だ。その子供はもちろん愛情いっぱいに育てられた。そんな夫婦のもとに生まれたのがエーデルだ。

「わかったよ、カルラ。今日は剣術の練習は休みだ!なぁエーデル、パパが言いたかったのは剣とお友達になって、最高の剣士になりなさいということだ」
「わかったよパパ。ありがとう」
「よし、いい子だ」
 そう言うと父はエーデルの頭をクシャクシャに撫でた。

「みんなおはよう」
 目を擦りながらパジャマ姿で登場する彼女は、エーデルの可愛い妹だ。キャラメルの髪色に青いサファイアのような瞳、整った顔立ち、そして可哀想だからと虫1匹も殺せない、優しい性格を持ち合わせている。まさに天使のような妹、その名も――アルメリア・アイビス。

「今日はお兄ちゃんと何をして遊ぼうかな~」
(アルメリアと遊ぶの確定?! 強制なの?! そんなにお兄ちゃんと遊びたいのか、もうだめだ、妹が可愛過ぎる)

「おっと残念だな、アルメリア。お兄ちゃんはパパと遊びたいらしい」
「何それ! 聞いてない! 」
 アルメリアはエーデルに抱きつく。
「まったくもう、三人で遊べばいいでしょ?」
 母が仲裁に入ってくれたおかげで、この後エーデルの取り合いをしながらも、三人で遊んだ。

遊び疲れ家に戻る頃には、もう夕方だった。――楽しい日は時間が経つのが早い。
日が沈みかけて、オレンジが山で少し欠けた茜色の地平線はとても綺麗だ。こんな日が続けばいい。この幸せをずっと感じていたい。

 家の扉を開けリビングに向かうと、テーブルには今まで見たことのない程、豪華な食事が並んでいた。
「うわ~。すごいよ」
 エーデルとアイビスが口を揃えて言う。

「ママ、頑張っちゃった。だってエーデルあなたは明日で成人になるんだもの。それに学校にも通うことになるでしょう?最後に子供でいられる日だから、沢山食べて、幸せいっぱいで成人を迎えてほしくて」
「カルラ。君は本当に素晴らしい母だよ」

 家族四人でテーブルのご馳走を囲い、笑いながら食べるご飯はとても美味しい。明日から大人の仲間入りだ。

 このルピナス王国では十三歳になれば、立派な成人である。その為、十二歳最後の日と、十三歳を迎えた日に家族で祝うという習慣がある。それもあって、この二日間は人生の大イベントだ。友人や親族を呼ぶ家もあるが、それは裕福な家のみで、アイビス家は生活には困ってはないが、決して裕福ではない平民、それでも家族四人で十分幸せに生きてきた。

 幸せとは――お金でも見栄でも人脈でもない、愛なのだ。
学校に行って、沢山学んで、強くなって、この愛する家族を一生守って行きたい。エーデルは心からそう思った。


 エーデルはこの時、まだ知らなかった――
 この幸せを全て・・を失うことになるということを――
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

没落貴族は最果ての港で夢を見る〜政敵の公爵令嬢と手を組み、忘れられた航路を拓いて帝国の海を制覇する〜

namisan
ファンタジー
日本の海運会社に勤めていた男は、事故死し、異世界の没落貴族の三男ミナト・アークライトとして転生した。 かつては王国の海運業を牛耳ったアークライト家も、今や政争に敗れた見る影もない存在。ミナト自身も、厄介払い同然に、寂れた港町「アルトマール」へ名ばかりの代官として追いやられていた。 無気力な日々を過ごしていたある日、前世の海運知識と経験が完全に覚醒する。ミナトは気づいた。魔物が蔓延り、誰もが見捨てたこの港こそ、アークライト家再興の礎となる「宝の山」であると。 前世の知識と、この世界で得た風を読む魔法「風詠み」を武器に、家の再興を決意したミナト。しかし、その矢先、彼の前に最大の障害が現れる。 アークライト家を没落させた政敵、ルクスブルク公爵家の令嬢セラフィーナ。彼女は王命を受け、価値の失われた港を閉鎖するため、監察官としてアルトマールに乗り込んできたのだ。 「このような非効率な施設は、速やかに閉鎖すべきですわ」 家の再興を賭けて港を再生させたい没落貴族と、王国の未来のために港を閉鎖したいエリート令嬢。 立場も思想も水と油の二人が、互いの野望のために手を組むとき、帝国の経済、そして世界の物流は、歴史的な転換点を迎えることになる。 これは、一人の男が知識と魔法で巨大な船団を組織し、帝国の海を制覇するまでの物語。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...