僕らが転生した理由 〜異世界転生した先は赤い地球〜神々に弄ばれた人間の物語

空 朱春

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第一章

2 外国人に転生?!

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「そろそろ寝る時間ね。素敵な夜を過ごしてねエーデル」
 エーデルの額に母はおやすみのキスをした。

 家族パーティーを終え、部屋のベッドに腰を掛ける。
「今日みたいな日が、ずっと続いて欲しいな。十二歳が最後だなんて……涙が出てくるな――エーデル、明日から十三歳だ。頑張れよ」

 エーデルは緊張した時や、勇気を出したい時、怒りを鎮めたい時に声を出して自分に語りかける。ある種の精神統一であり、感情をコントロールして冷静になる。それをすることによって物事を客観的に見ることができるからだ。それがエーデルの目指す人物像だった。

「誰にでも優しく平等に、人が何かを成すことには、必ず理由が付いてくる。何事も、受け入れる心を持ちなさい」という両親の教えの下、賢く、優しい子に育った。

「ありがとう、十二歳までのエーデル。おやすみ」
 そしてエーデルは眠りについた。



 ――目が覚めると、大夢は知らない部屋にいた。
「ここは……」
(僕は死んでないのか?でも確かにあの時――)
 その時ズキンと酷く頭痛がした。頭の中に会ったことのない人や景色が映画のフィルムのように流れてくる。
(これは…なんだ?)
 周りを見渡すと、一枚の写真を見つけた。
(写真が動いている…いや違う、これは鏡だ。写っているのは誰だ?)
 自分が動くと鏡の中の人も動く――鏡の中の人が僕と同じ動作をしている。キャラメル色の髪色に青い瞳――綺麗な顔だな……顔に傷一つない。――まさか、いや、そんなまさか――僕……?
 ――またズキンとさっきよりも酷い頭痛がした。
また映画のフィルムか……いや、これはもっと鮮明に流れてくる。

「――――ゔわぁあああたああああ」
 僕はとてつもない絶望感に駆られ――叫んだ。
頭の中に流れてきたのは、僕の過去だ。忘れていた訳じゃない、思い出さなかった訳でもない。うっかりではなく、わざと……
(考えたくなかったんだよ)

 すると勢いよく部屋のドアが空いた。
「エーデル? どうしたの?」
 女性が慌てた表情で僕に尋ねてきた。
 
 ――この女性は誰だ?
エーデルか……この子のことだな。

 ――僕は少し考えて言う。
「ごめん。怖い夢をみたんだ」
「そうなのね、大丈夫?」
「うん」
「そう、よかったわ。あ、これは伝えなきゃ、成人おめでとうエーデル。下で待ってるわよ」
 女性は僕の額にキスをしてきた。
(うわっ、驚いた。一度、冷静になって頭の中を整理しよう。今キスをしてきた女性はエーデルの母だ。大丈夫だ、大体は理解した)

 まず僕――桑田大夢は転生をしたらしい。
 あまりに非現実的でまだ信じられないが、鏡に映る少年はエーデル・アイビスという子の肉体だ。どういうわけか、この肉体に僕の魂が入り込んだらしい。非現実的過ぎる。だが事実みたいだな。
 窓から見える景色と、エーデルの容姿を見るに、ここは日本ではない。――外国か?

 であればさっきの女性の言葉は理解できた。そして僕も話せる……記憶のせいか。頭痛がした時に流れてきたフィルムのお陰でエーデルの生い立ち、この国の言語、そして今日が十三歳の誕生日。エーデルが成人を迎えたということがわかった。

でもいくつか疑問が残る「――ルピナス王国」こんな国あっただろうか? 確か世界は百九十六カ国、聞いたことのない国だ。エーデルの記憶は、この国の歴史なら出てくるが……そもそも地球ってこんな色だったか? 昔聞いた話では地球は青いだった気がするが……赤いの聞き間違いだったのか? いや、そんなはずはない。まあ、それは後で調べるとして。

 今日は誕生日らしい。昨日の記憶を見るに随分なご馳走だ。それにしても見たことのない料理……味が気になるな。
とりあえず中身が変わったことに気づかれないよう、今を乗り切るしかないな。

 着替えてリビングに行こう。家族とご対面だ!
 こうして、大夢はエーデルを演じる日々が始まった。
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