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第一章
3 成人パーティー
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リビングに行くと家族が僕を待っていた。
「エーデル、成人おめでとう!」
なるほど、家族に対する感情まで記憶にあるのか。
僕(大夢)が知らない人と接しなければならない時、好悪の感情が最初からわかっていれば、エーデルを演じやすく、相手が僕エーデルに対して違和感を持ちにくいだろう。これは、とても助かるな。
テーブルには、記憶にある昨日のご馳走とはまた違って、今日は肉料理が多い。
とりあえず、エーデルっぽくいこう。
「あ、ありがとう! 本当に、キョッ、心から嬉しいよ」
(緊張のあまり、噛んだ)
「さあ、皆席に着け~今日は夜までパーティーだ!」
――エーデルよ。君の父のテンションは最高に高いな、記憶の中でもずっとこの調子だ。
「本当にめでたいわね~! 今日はお肉づくしよ! エーデルはこれから体力をつけないといけないでしょ? あなたの好きな鹿肉料理を作ったの。パパが張り切って大量に狩ってきたのよ」
「なんていったって鹿肉は低カロリーなのに栄養たっぷりだ、体を鍛えるのに最高のご馳走なんだぞ」
本当にすごい量だ、少し引くぐらい。
というか鹿肉?! 鹿って食べられるのか?!
人生で初めてだ。なんか絶滅危惧種じゃなかったっけ? そもそも食べていいのか? 日本じゃないからいいのか? 寄生虫とか大丈夫かな? まあ、鹿肉を食べられるって聞いたことあるような……ないような……
いや、僕のためにここまで準備をしてくれたんだ。ここで引き下がる訳にはいかない。
まずはフォークを持ち、鹿肉をブッ刺す、そして口元へ運ぶ。
ここまでの過程は完璧だ――あとは口の中に……入れろ!
動け! 僕の腕! 家族が輝かしい目で見てるぞ。まるで腕を口から遠ざけるようと引っ張られているのでは? 頭では食べようとしているのに、体が食べるなと言っている。これは俗にいう――拒否反応だ。
「どうしたんだエーデル。食べないのか?」
まずい――変に思われてる。
そうだ! こういう時エーデルは、あの「まじない」を使っていたな。
(これは美味しい……これは美味しい……これはすごく美味しい)
僕は鹿肉を口の中に入れた。そして一噛み……二噛み……三噛み。
「ん……美味しい。すごく美味しいよ」
思ったよりクセもなく、あっさりしていて何個でも食べられそうだ。いや、何頭でも食べられそうなくらい美味しい。
元々鹿肉が美味しいものなのか、エーデルの味覚まで記憶に影響しているのかは、正直わからない。
だが昨日の夜、エーデルが唱えていたまじないは本当に効くんだな、勇気が出た。
(少し借りたぞ。エーデル)
「お兄ちゃん。美味しいね」
……......僕は、幼く優しい声のする方を見た――
……妹だ。名前は――アルメリア・アイビス。エーデルの愛する妹。この感情は記憶だけじゃない。
――僕にもよくわかる。
尊く、愛おしく、守りたい存在。大切な愛する妹。
「百ゆッ、、アルメリア」
「お兄ちゃん」こう呼ばれるのは、久しぶりな気がする。本来ならエーデルが兄として――この席に相応しいのに。
僕は、お兄ちゃんと呼ばれていいのだろうか?
前の人生では残念な兄だった。
それに百合は何処にいるんだろう。百合も、もしかしたら何処かで…そう願う。
百合のことは僕だけが覚えていればいい。
僕という兄なんか忘れて…必ず幸せになってほしい。
僕はここに――相応しくない……
「お兄ちゃん?」
視線の先の妹は――
優しい瞳で僕を見つめるんだな。
僕はもう一度、お兄ちゃんと呼ばれてもいいのか?
僕は君のこと妹として、愛おしく思ってもいいのか…?
「お兄ちゃん、大丈夫だよ。
悲しい顔しないで、まだ鹿肉たくさんあるから」
「…………アッ……アルメリア……ありがとう……」
僕の目には涙が浮かんでいた。それを溢れないようにするのが精一杯で、とても鹿肉のことを考える暇はなかった。
「あら、どうしたの? エーデル。そんな泣きそうな顔をして」
「何でもないよ。本当に美味しくて……涙が出そうだ」
父と母は嬉しそうな笑顔で僕を見ていた。
「よーし! エーデル! もっと食べろ! 何よりお前は体力をつけなきゃいけないからな」
ん? 何故そんなに体力にこだわるんだ?
記憶を辿れ。
頭の中のフィルムを動かした。
剣術……魔力……魔物……クラウスの仕事……?
待てよ? 魔物って実在するのか?!! 本当に何処なんだここ!? 地獄か!? さっきまで天国だったのに?! 地獄なのか!?
そんな国何処にあるんだよ!
駄目だ――記憶だけじゃ頭が追いつかない。これはちゃんと調べないとな。
「明日からもっと剣術を鍛えてやる! なんていったって来月から学校に通うんだからな」
……………。
「……今なんて言った? ガッ……ガッコウ?」
「エーデル、成人おめでとう!」
なるほど、家族に対する感情まで記憶にあるのか。
僕(大夢)が知らない人と接しなければならない時、好悪の感情が最初からわかっていれば、エーデルを演じやすく、相手が僕エーデルに対して違和感を持ちにくいだろう。これは、とても助かるな。
テーブルには、記憶にある昨日のご馳走とはまた違って、今日は肉料理が多い。
とりあえず、エーデルっぽくいこう。
「あ、ありがとう! 本当に、キョッ、心から嬉しいよ」
(緊張のあまり、噛んだ)
「さあ、皆席に着け~今日は夜までパーティーだ!」
――エーデルよ。君の父のテンションは最高に高いな、記憶の中でもずっとこの調子だ。
「本当にめでたいわね~! 今日はお肉づくしよ! エーデルはこれから体力をつけないといけないでしょ? あなたの好きな鹿肉料理を作ったの。パパが張り切って大量に狩ってきたのよ」
「なんていったって鹿肉は低カロリーなのに栄養たっぷりだ、体を鍛えるのに最高のご馳走なんだぞ」
本当にすごい量だ、少し引くぐらい。
というか鹿肉?! 鹿って食べられるのか?!
人生で初めてだ。なんか絶滅危惧種じゃなかったっけ? そもそも食べていいのか? 日本じゃないからいいのか? 寄生虫とか大丈夫かな? まあ、鹿肉を食べられるって聞いたことあるような……ないような……
いや、僕のためにここまで準備をしてくれたんだ。ここで引き下がる訳にはいかない。
まずはフォークを持ち、鹿肉をブッ刺す、そして口元へ運ぶ。
ここまでの過程は完璧だ――あとは口の中に……入れろ!
動け! 僕の腕! 家族が輝かしい目で見てるぞ。まるで腕を口から遠ざけるようと引っ張られているのでは? 頭では食べようとしているのに、体が食べるなと言っている。これは俗にいう――拒否反応だ。
「どうしたんだエーデル。食べないのか?」
まずい――変に思われてる。
そうだ! こういう時エーデルは、あの「まじない」を使っていたな。
(これは美味しい……これは美味しい……これはすごく美味しい)
僕は鹿肉を口の中に入れた。そして一噛み……二噛み……三噛み。
「ん……美味しい。すごく美味しいよ」
思ったよりクセもなく、あっさりしていて何個でも食べられそうだ。いや、何頭でも食べられそうなくらい美味しい。
元々鹿肉が美味しいものなのか、エーデルの味覚まで記憶に影響しているのかは、正直わからない。
だが昨日の夜、エーデルが唱えていたまじないは本当に効くんだな、勇気が出た。
(少し借りたぞ。エーデル)
「お兄ちゃん。美味しいね」
……......僕は、幼く優しい声のする方を見た――
……妹だ。名前は――アルメリア・アイビス。エーデルの愛する妹。この感情は記憶だけじゃない。
――僕にもよくわかる。
尊く、愛おしく、守りたい存在。大切な愛する妹。
「百ゆッ、、アルメリア」
「お兄ちゃん」こう呼ばれるのは、久しぶりな気がする。本来ならエーデルが兄として――この席に相応しいのに。
僕は、お兄ちゃんと呼ばれていいのだろうか?
前の人生では残念な兄だった。
それに百合は何処にいるんだろう。百合も、もしかしたら何処かで…そう願う。
百合のことは僕だけが覚えていればいい。
僕という兄なんか忘れて…必ず幸せになってほしい。
僕はここに――相応しくない……
「お兄ちゃん?」
視線の先の妹は――
優しい瞳で僕を見つめるんだな。
僕はもう一度、お兄ちゃんと呼ばれてもいいのか?
僕は君のこと妹として、愛おしく思ってもいいのか…?
「お兄ちゃん、大丈夫だよ。
悲しい顔しないで、まだ鹿肉たくさんあるから」
「…………アッ……アルメリア……ありがとう……」
僕の目には涙が浮かんでいた。それを溢れないようにするのが精一杯で、とても鹿肉のことを考える暇はなかった。
「あら、どうしたの? エーデル。そんな泣きそうな顔をして」
「何でもないよ。本当に美味しくて……涙が出そうだ」
父と母は嬉しそうな笑顔で僕を見ていた。
「よーし! エーデル! もっと食べろ! 何よりお前は体力をつけなきゃいけないからな」
ん? 何故そんなに体力にこだわるんだ?
記憶を辿れ。
頭の中のフィルムを動かした。
剣術……魔力……魔物……クラウスの仕事……?
待てよ? 魔物って実在するのか?!! 本当に何処なんだここ!? 地獄か!? さっきまで天国だったのに?! 地獄なのか!?
そんな国何処にあるんだよ!
駄目だ――記憶だけじゃ頭が追いつかない。これはちゃんと調べないとな。
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……………。
「……今なんて言った? ガッ……ガッコウ?」
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