王家から追放された貴族の次男、レアスキルを授かったので成り上がることにした【クラス“陰キャ”】

時沢秋水

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命懸けの奪還

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 衛兵に連れられたベルが城から出てきた。ベルは手錠をかけられ二つの漆黒の鎖で衛兵から引っ張られている。
 
 この漆黒の鎖はスキルと魔法の発動を封じることができる。
 
 ベルの前後左右は馬に乗った四人の衛兵に囲まれている。衛兵の黒い腕章から国王軍の大佐であることがわかる。

「やはり、この護衛の中からのベル奪還は困難だね、予定通り処刑場となる高台で奪還作戦を実行しよう」

 俺とソラは急いで高台に先回りした。高台の周辺は国王軍が厳戒態勢を敷いていたが俺の〈学級閉鎖クローズ〉で難なく突破した。

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学級閉鎖クローズ〉:消費MP80 残MP:645/725
------------------------------ 
 
 高台の階段を昇ると頂上からは街の広場全体を一望でき、広場は多くの見物人で溢れていた。
 国王軍としては立ち入り禁止のダンジョンに足を踏み入れると、どういう目に遭うかを民衆に示す絶好の機会だ。

「この見せしめの為の処刑は絶対に阻止すべきだな」
「そうだね、必ず救いだそう」
 
 国王軍に連れられたベルが処刑場に姿を現した。ベルの表情は穏やかだが、どこか足取りは重く感じた。
 
 俺の読み通り高台には必要最低限の人数しか昇ってこない。鎌を持った処刑執行人とベルを縛る鎖を持つ衛兵の二人だ。
 
 俺とソラは高台の隅でベルの到着を待った。高台に上がってくると衛兵がベルを処刑台に固定し始めた。

 まだ我慢だ。今は動くべきでない。
 
 ベルが膝をつき首を垂れた状態で固定されて、鎌を持った処刑執行人が処刑台に近づくと広場の民衆がどっと沸いた。

 すると衛兵の二人がベルから離れた。

 今だ、この瞬間しかない!
 
 俺はベルに近づき処刑台に触れてから、煙玉を破裂させて煙幕を張った。
 
 敵の視界を奪ってから〈学級閉鎖クローズ〉を解除した。
 
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 土魔法・砂塵時代 消費MP:140 残MP:505/725
 ----------------------------
 
 俺は砂塵時代の効果でベルを拘束する処刑台を砂に変えると再び〈学級閉鎖クローズ〉を発動してソラとベルの手を握り高台の隅に移動した。

「ベル、助けにきたぜ!」
「な、なんて大それたことを……ありがとう」

 ベルは瞳を潤ませて言った。

「とにかく今は俺の手を握っていてほしい、俺が透明になれるスキルを使ってるから、煙幕が消えても俺たちの居場所はばれない」
「了解!」

 煙幕がはれていくとベルがいなくなった事に民衆は大パニックになり、国王軍の衛兵も動揺を隠せないでいた。
 
 俺達3人はこの隙に乗じて高台の階段を一気に駆け下りた。

「うろたえるな国王軍、すぐに高台の階段を塞げ!ベルが何かしらのスキルを発動しただけだ。おそらくは透明になれるスキルだが、ヤツはまだ高台にいるはずだ」
「司令官の言う通りだ。探索系のスキルをフルに使ってヤツを捜すぞ」

 俺のスキル〈学級閉鎖クローズ〉は存在感を消せるが実体を消せない。故に袋小路にされると逃げ場を失う。

「まずいな、階段の出口を閉じられて逃げ道を塞がれた」
「そうか、なら私のスキルの出番だな」

 そう言うとベルはスキルを発動させた。

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〈移動玄関〉 消費MP:50 残MP:330/380
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《ベルのスキルである移動玄関は瞬間移動ができる。手のひらから放たれる肉眼では見えない光線で入り口と出口のゲートを設置して発動する。ゲートを設置できるのは地面や物体上に限られており空中には設置できない。ゲートで移動できるのは最長で200mであり、出口から脱出すると自然消滅する》

 ベルは塔の壁に長方形の光り輝く入り口を作った。

「二人共、この入り口に入って」

 俺とソラが中に入ると広場の横にあった建物の壁から出てきた。

「私のスキルはこんな感じで瞬間移動できるんだ。さっき煙幕が消えた時に出口のゲートを作っておいた」
「凄いよ、ベルのスキルについて詳しく聞きたいな」
「構わないけど、私は君のスキルのが知りたいよ。国王軍が誰も気づけないとなると透明になれるとかいう次元ではないからな」

「二人共、それより早くこの街をでましょう」


 俺たちは都市アラゴルを去ると平原の木陰で一息ついた。

 ベルを改めて見ると凛としたクールな女の子であり、可愛らしい女の子であるソラとは異なった特徴がある。

「ところでベル、ぜひとも君をパーティに加えたいんだがどうだ?」
「もちろん加入させてもらう。命の恩人の誘いを断る訳がない」

 こうして俺はベルを仲間にすることに成功した!
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