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街が混乱し、俺は泣きそうになる
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目が覚めると、白い天蓋のベッドだった。
天井が高い。
部屋がやたら広い。
ふかふかすぎる。
「……あれ?」
身体を起こそうとして、俺は自分の胸を見る。
──ダンボールだった。
ただし。
昨日までの、
・角が潰れて
・宅配伝票が貼られ
・ガムテープがベタベタな
あの“引っ越し用の箱”じゃない。
色が、少し金色がかっている。
表面には、白い紋様。
角がやたらとシャープで、無駄に神々しい。
なのに、
材質はどう見ても、ダンボール。
「……進化しても箱なの!?」
俺が叫ぶと、
部屋のドアがバンッと開いた。
「起きましたか、“聖遺物殿”!」
ルシアが敬礼してくる。
「その呼び方やめて」
「無理です」
即答だった。
◇
聖騎士団は、俺を“隔離”した。
理由は簡単。
「街に出したらパニックになるから」
……まあ、なるだろうな。
でも。
「いや、俺、飯食べたいんですけど」
「外出許可、下りません」
「じゃあ配達で」
「ダンボールなのに“配達”を頼むのは倫理的に問題があります」
意味わからん。
そんな俺に、団長が言った。
「君の装備は、無意識下で“呪い・毒・悪意”を吸収している」
「え」
「今も、この部屋の空気は“異常なまでに澄んでいる”」
言われてみれば、
変に気分がいい。
神官は言った。
「あなたの箱は、“災厄を集めて無害化する器”です」
「え、俺ってゴミ箱?」
「“方舟”です」
言い直された。
◇
その日の午後。
事件は起きた。
街の方角から、鐘が鳴り響いた。
「……魔獣警報?」
「市街に《瘴気獣》が出ました!」
団内が一斉にざわつく。
ルシアが俺を見る。
「……あなたを出す許可が、下りました」
「いや待って!?
俺まだ箱だよ!?」
◇
街に出た瞬間。
「……あれ何」 「箱が歩いてる」 「箱が、光ってる」
子供が泣いた。
大人が引いた。
犬が吠えた。
俺は心で泣いた。
「なんで俺が一番ホラーなんだよ……」
そして、瘴気獣と遭遇。
黒い霧をまとった、熊みたいな化け物。
周囲の騎士が構える。
「近づくな! 呪いが強すぎる!」
だが。
俺が一歩、前に出た。
……その瞬間。
瘴気獣の霧が、
“掃除機みたいに”俺のダンボールに吸い込まれていく。
ズゴゴゴゴ……!
霧が消える。
瘴気獣、ただの熊になる。
「……くま?」
「……くまですね」
パタン。
熊、気絶。
戦闘、終了。
街、沈黙。
次の瞬間。
「……箱、やばくない?」 「箱が街を救ったぞ」 「箱様だ……」
信仰、発生。
俺、箱なのに。
……
こうして俺は、
“呪いを喰らう方舟”
“歩く聖域”
“街を救った箱様”
という、意味不明な三つ名を背負うことになった。
中身、ただの元ニートなんだけど。
天井が高い。
部屋がやたら広い。
ふかふかすぎる。
「……あれ?」
身体を起こそうとして、俺は自分の胸を見る。
──ダンボールだった。
ただし。
昨日までの、
・角が潰れて
・宅配伝票が貼られ
・ガムテープがベタベタな
あの“引っ越し用の箱”じゃない。
色が、少し金色がかっている。
表面には、白い紋様。
角がやたらとシャープで、無駄に神々しい。
なのに、
材質はどう見ても、ダンボール。
「……進化しても箱なの!?」
俺が叫ぶと、
部屋のドアがバンッと開いた。
「起きましたか、“聖遺物殿”!」
ルシアが敬礼してくる。
「その呼び方やめて」
「無理です」
即答だった。
◇
聖騎士団は、俺を“隔離”した。
理由は簡単。
「街に出したらパニックになるから」
……まあ、なるだろうな。
でも。
「いや、俺、飯食べたいんですけど」
「外出許可、下りません」
「じゃあ配達で」
「ダンボールなのに“配達”を頼むのは倫理的に問題があります」
意味わからん。
そんな俺に、団長が言った。
「君の装備は、無意識下で“呪い・毒・悪意”を吸収している」
「え」
「今も、この部屋の空気は“異常なまでに澄んでいる”」
言われてみれば、
変に気分がいい。
神官は言った。
「あなたの箱は、“災厄を集めて無害化する器”です」
「え、俺ってゴミ箱?」
「“方舟”です」
言い直された。
◇
その日の午後。
事件は起きた。
街の方角から、鐘が鳴り響いた。
「……魔獣警報?」
「市街に《瘴気獣》が出ました!」
団内が一斉にざわつく。
ルシアが俺を見る。
「……あなたを出す許可が、下りました」
「いや待って!?
俺まだ箱だよ!?」
◇
街に出た瞬間。
「……あれ何」 「箱が歩いてる」 「箱が、光ってる」
子供が泣いた。
大人が引いた。
犬が吠えた。
俺は心で泣いた。
「なんで俺が一番ホラーなんだよ……」
そして、瘴気獣と遭遇。
黒い霧をまとった、熊みたいな化け物。
周囲の騎士が構える。
「近づくな! 呪いが強すぎる!」
だが。
俺が一歩、前に出た。
……その瞬間。
瘴気獣の霧が、
“掃除機みたいに”俺のダンボールに吸い込まれていく。
ズゴゴゴゴ……!
霧が消える。
瘴気獣、ただの熊になる。
「……くま?」
「……くまですね」
パタン。
熊、気絶。
戦闘、終了。
街、沈黙。
次の瞬間。
「……箱、やばくない?」 「箱が街を救ったぞ」 「箱様だ……」
信仰、発生。
俺、箱なのに。
……
こうして俺は、
“呪いを喰らう方舟”
“歩く聖域”
“街を救った箱様”
という、意味不明な三つ名を背負うことになった。
中身、ただの元ニートなんだけど。
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