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卒業後
1310 星暦558年 桃の月 11日 書類作業(2)
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「まずは過去2年分の収支報告書とその詳細の計算書に目を通して、定期的に入る支出と収入を列記しよう」
ドン!ドン!と束ねた書類の山を工房の作業机の上に置きながらアレクが言った。
「うへぇぇ。
もう一度それ全部に目を通すのか?」
「まあ、去年の分をじっくり見て、一昨年のはざっと目を通して何か違いがあるかを確認する程度でもいいかな」
『どうという事はないだろう?』と言いたげな顔でアレクが言った。
いやぁ、そんな沢山数字を見たら、俺は多分目が回ると思うぞ。
「じゃあ、シャルロが目を通して、大きな費用とか定期的に出る費用を読み上げてくれよ!
俺がそれを列記するから!」
分業して作業する方が効率的だ。
「いやいや、繰り返し出ている費用かの判断は個人差があるから、別々に見た方が良い。
なんだったら、シャルロが去年、ウィルが一昨年のにしっかり目を通して、見終わったらお互いのを比較してみたらどうだ?」
アレクが俺の提案を却下した。
ちっ。
でも、少なくとも2年分を見る代わりに1年分で済みそうか。
「じゃあ、僕のはこっちだね~」
特にアレクに反論することなく、シャルロがあっさり書類を一山引き取った。
はぁぁぁ。
まあ、こんだけこき使われるのも、騙されていない証拠だと思って我慢するか。
アレクが横領していたら、報告書関係は全部任せておけと言って俺たちを甘やかすふりをして数字から引き離すだろう。
信頼しているから、このまま任せたい!
とは言え、任せすぎって云うのは相手に『あ、そう。確認する気がないならちょっとネコババしちゃおうかな』と思わせる最初の一歩だからなぁ。
しょうがない。
元々、どう考えても事務作業関係はアレクが割を食っているからな。少しは俺たちも作業に参加しないと。
という事で、一昨年の書類の山を手に取る。
収支報告書自体をぱらぱらとめくると、見覚えのある項目がずらずらと出てくる。
家賃。
家事委託費。
原料購入費。
魔術院会費。
弁護士契約相談料。
収入の方はシェフィート商会からの契約金というのと特許使用料と言うのが大きく、特許使用料は魔術院からもちょっとはある。
まあ、基本的に俺たちが作ったのってシェフィート商会ががっつり作って売っているから、他の工房や商家が真似をしようとして特許を使うのも多少はあるものの割合的にはシェフィート商会が圧倒的に多い。
さて、詳細の確認だな。
家賃に関しては毎月定額なので、紙にそれを書いておく。
家事委託費はパディン夫人の毎月の給与と、時々頼むメイドや庭の手入れの金額が日付と何をやったのかを書いた明細書と一緒にあった。
あれ、家事委託費って近所の農家や雑貨屋や王都の店に払った金額も入っているのか。
……そうか、食料を買ったのも入っているんだな、そういえば。
毎月比較的同じような金額が並んでいるが、緑の月に妙に大きくがっつり出費がある。
ああ!
沈没船探しに遊びに行った時のか。
船で料理する用に纏めて港の傍で買ったし、保存しやすいのを多く買ったから高くなったんだな。
へぇぇ、こう見るとやっぱ村の農家から直接買うと大分と割安になっているんだなぁ。
今までは単に請求書をまとめたのとアレクが集計した計算書の支出が合致しているかしか見ていなかったから、特定の月の出費が他より大きいかどうかなんて気にしたことがなかった。
よく見ると、農家からの購入も季節によってちょっと違う。
まあ、考えてみたら冬は収穫があまりないから、その前に秋に多めに買っているんだな。あと、美味しいチーズが売り出される時期なんかには沢山買い集めているっぽい。
領収書をめくって確認したら、意外と色々面白い情報が読み取れるな。
家事委託費は詳細を見ていくと中々面白かったが、面白いだけで特に間違いや違いを見つけられる訳ではない。
取り敢えず次に行くか。
原料購入費。
捲っていくと魔石購入費とか、実験用に買った鍋とか金属とか木材の請求書や詳細を書いた紙が出てきた。
あ~。
これって何を作ったか確認しないとどのくらい必要かとか分からんな。
第一、金属とか木材は適当に足りなくなった時に買い足しているから開発した物や時期と一致するとも限らないからなぁ。
あとで何を開発したか見て、どういう流れになりやすいのか確認しよう。
一回ごとの出費は原料費購入関連が一番大きいからな。
魔術院の会費は俺もいくらか分かっているから、それの3人分ってことで問題はない。
弁護士との契約相談料はちょっと不規則だが、その開発の商品販売・特許使用契約かが書いてあるので想定外な物はない。
とは言え、これも何を開発したかを確認しないとだけど。
一応、契約書の相談ごとに商品名を書き出しておこう。
シェフィート商会からの契約金とかと一致するはずだし。
これって案件ごとにそれなりに値段が違うが、ぼったくられていないかはどうやって分かるんだろ?
ドン!ドン!と束ねた書類の山を工房の作業机の上に置きながらアレクが言った。
「うへぇぇ。
もう一度それ全部に目を通すのか?」
「まあ、去年の分をじっくり見て、一昨年のはざっと目を通して何か違いがあるかを確認する程度でもいいかな」
『どうという事はないだろう?』と言いたげな顔でアレクが言った。
いやぁ、そんな沢山数字を見たら、俺は多分目が回ると思うぞ。
「じゃあ、シャルロが目を通して、大きな費用とか定期的に出る費用を読み上げてくれよ!
俺がそれを列記するから!」
分業して作業する方が効率的だ。
「いやいや、繰り返し出ている費用かの判断は個人差があるから、別々に見た方が良い。
なんだったら、シャルロが去年、ウィルが一昨年のにしっかり目を通して、見終わったらお互いのを比較してみたらどうだ?」
アレクが俺の提案を却下した。
ちっ。
でも、少なくとも2年分を見る代わりに1年分で済みそうか。
「じゃあ、僕のはこっちだね~」
特にアレクに反論することなく、シャルロがあっさり書類を一山引き取った。
はぁぁぁ。
まあ、こんだけこき使われるのも、騙されていない証拠だと思って我慢するか。
アレクが横領していたら、報告書関係は全部任せておけと言って俺たちを甘やかすふりをして数字から引き離すだろう。
信頼しているから、このまま任せたい!
とは言え、任せすぎって云うのは相手に『あ、そう。確認する気がないならちょっとネコババしちゃおうかな』と思わせる最初の一歩だからなぁ。
しょうがない。
元々、どう考えても事務作業関係はアレクが割を食っているからな。少しは俺たちも作業に参加しないと。
という事で、一昨年の書類の山を手に取る。
収支報告書自体をぱらぱらとめくると、見覚えのある項目がずらずらと出てくる。
家賃。
家事委託費。
原料購入費。
魔術院会費。
弁護士契約相談料。
収入の方はシェフィート商会からの契約金というのと特許使用料と言うのが大きく、特許使用料は魔術院からもちょっとはある。
まあ、基本的に俺たちが作ったのってシェフィート商会ががっつり作って売っているから、他の工房や商家が真似をしようとして特許を使うのも多少はあるものの割合的にはシェフィート商会が圧倒的に多い。
さて、詳細の確認だな。
家賃に関しては毎月定額なので、紙にそれを書いておく。
家事委託費はパディン夫人の毎月の給与と、時々頼むメイドや庭の手入れの金額が日付と何をやったのかを書いた明細書と一緒にあった。
あれ、家事委託費って近所の農家や雑貨屋や王都の店に払った金額も入っているのか。
……そうか、食料を買ったのも入っているんだな、そういえば。
毎月比較的同じような金額が並んでいるが、緑の月に妙に大きくがっつり出費がある。
ああ!
沈没船探しに遊びに行った時のか。
船で料理する用に纏めて港の傍で買ったし、保存しやすいのを多く買ったから高くなったんだな。
へぇぇ、こう見るとやっぱ村の農家から直接買うと大分と割安になっているんだなぁ。
今までは単に請求書をまとめたのとアレクが集計した計算書の支出が合致しているかしか見ていなかったから、特定の月の出費が他より大きいかどうかなんて気にしたことがなかった。
よく見ると、農家からの購入も季節によってちょっと違う。
まあ、考えてみたら冬は収穫があまりないから、その前に秋に多めに買っているんだな。あと、美味しいチーズが売り出される時期なんかには沢山買い集めているっぽい。
領収書をめくって確認したら、意外と色々面白い情報が読み取れるな。
家事委託費は詳細を見ていくと中々面白かったが、面白いだけで特に間違いや違いを見つけられる訳ではない。
取り敢えず次に行くか。
原料購入費。
捲っていくと魔石購入費とか、実験用に買った鍋とか金属とか木材の請求書や詳細を書いた紙が出てきた。
あ~。
これって何を作ったか確認しないとどのくらい必要かとか分からんな。
第一、金属とか木材は適当に足りなくなった時に買い足しているから開発した物や時期と一致するとも限らないからなぁ。
あとで何を開発したか見て、どういう流れになりやすいのか確認しよう。
一回ごとの出費は原料費購入関連が一番大きいからな。
魔術院の会費は俺もいくらか分かっているから、それの3人分ってことで問題はない。
弁護士との契約相談料はちょっと不規則だが、その開発の商品販売・特許使用契約かが書いてあるので想定外な物はない。
とは言え、これも何を開発したかを確認しないとだけど。
一応、契約書の相談ごとに商品名を書き出しておこう。
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これって案件ごとにそれなりに値段が違うが、ぼったくられていないかはどうやって分かるんだろ?
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