1,310 / 1,317
卒業後
1309 星暦558年 桃の月 11日 書類作業
しおりを挟む
「今年は初めて事務作業を委託しているから、想定外な問題がないかを確認するために何もやって貰っていないかの如く全部自分たちでやって同じ結果が出るか試そう」
朝食後、工房でお茶を飲もうとソファに座った俺とシャルロにアレクが宣言した。
「え、それじゃあキーナ達を雇った意味がなくないか?」
人を雇ったんだから作業量が減らなきゃ意味がないだろうに。
今までと同じことをやるんじゃ雇った給与分だけ損じゃないか。
「今年は作業が減らないが、来年以降は無作為に適当にテストするだけで済ませられるようになれば、仕事量がぐっと減るだろう?
最初はやり方を間違って覚えていないかとかを確認する必要があるから、今までと同じ作業をしっかりやった方が良いんだ」
アレクがポットに茶葉を入れながら答えた。
あ~。
まあ、最初にやり方を間違って覚えていたら、意味がないよなぁ。
「だけど、今までは適当に机の引き出しに突っ込んでいた領収書とかをアレクが整理していたのを足し合わせて報告書を作っていたと思うけど、その整理する作業自体はもうキーナ達がやっているんだよね?
だとしたら、この整理作業が間違っていた場合はどうやってそれを見つけるの?」
シャルロが尋ねる。
だよなぁ。
新規商品を開発して、それを特許申請してシェフィート商会とかに販売権利を売りつける際の契約書のまとめとか整理も重要な作業だが、今の時期だったら重要なのは国税局へ提出する収支報告書だ。
あれの一番面倒な部分って領収書をちゃんと正しく集めて集計する事だと思うが、集計自体が終わっているんだったらその足し合わせの計算を確認する程度は流石に間違えないんじゃないか?
まあ、ここで態と間違えて横領とかしているようだったら質が悪いから、要確認ではあるだろうが。
と言うか、考えてみたら販売権利を売りつける際の契約書のまとめとか管理とか整理に関してはどうやってチェックするのか、後で聞いた方が良いよな。
こっちに関しては殆ど気にしていなかったわ。
一応外部の法律の専門家に契約書自体は確認してもらっている筈だが、締結した後の契約書自体の管理をしっかりやっているかのチェックは微妙な気がする。
それはさておき。
「定期的に発生する費用に関してはちゃんと年間通してすべての領収書があるかを日付を確認すれば分かる筈。
あとは、前年度や2年前の資料と比較して、説明できない増減がないか確認するのが一番だろうな」
アレクが教えてくれた。
うわ~。
かえって今までより、作業が増えてないか?
でもまあ、確かに領収書の整理自体が奇麗に出来ているから楽っちゃあ楽な筈だが。
「毎年何を開発したかなんて同じじゃないから収入とかもその年その年で違うし、経費も違うし、遊びに行く時期も違うから単純に比較できないと思うけど。
まあ、何をやっていたかをしっかり確認したら何とか出来るかな?
普通に領収書を整理して足していくよりは面白いかもだね?」
シャルロがちょっと考えてから言った。
「そうか~?
と言うか、誰かが横領しているとか脱税しているって分かっていてその間違い探しとか誤魔化し探しをするなら面白いかも知れないが、間違いがない可能性の方が高いのにそれを探すって只管空しい作業な気がするんだけど」
裏帳簿探しで隠し場所を発見しようと家の壁や床をしっかりじっくり確認して回る方がまだやりがいがありそうだ。
たとえキーナ達が詐欺をしているとしても、流石にこの家へ隠し場所を作って裏帳簿をしまっているとは思えないから探しても意味がないけど。
「前もって、いつ遊びに出て行ったか、何を特許登録したか、それの契約でどのくらい儲かったかを特許契約とかお土産の品から逆算していって、実際の結果とどのくらいずれるかを見てみるのも面白いもんだぞ?」
アレクが言った。
……そうなんだ。
ちょっと俺には理解できない考え方だが、まあ自分の収益だもんな。
どんな開発をしたらどのくらい儲かってどのくらい支出があったか、細かい集計をしなくても大体目安が立てられるようになったら後々楽が出来るかもだし、ここで頑張るか。
……アレクってそんな面倒そうなことを今までずっとやってきたのか??
朝食後、工房でお茶を飲もうとソファに座った俺とシャルロにアレクが宣言した。
「え、それじゃあキーナ達を雇った意味がなくないか?」
人を雇ったんだから作業量が減らなきゃ意味がないだろうに。
今までと同じことをやるんじゃ雇った給与分だけ損じゃないか。
「今年は作業が減らないが、来年以降は無作為に適当にテストするだけで済ませられるようになれば、仕事量がぐっと減るだろう?
最初はやり方を間違って覚えていないかとかを確認する必要があるから、今までと同じ作業をしっかりやった方が良いんだ」
アレクがポットに茶葉を入れながら答えた。
あ~。
まあ、最初にやり方を間違って覚えていたら、意味がないよなぁ。
「だけど、今までは適当に机の引き出しに突っ込んでいた領収書とかをアレクが整理していたのを足し合わせて報告書を作っていたと思うけど、その整理する作業自体はもうキーナ達がやっているんだよね?
だとしたら、この整理作業が間違っていた場合はどうやってそれを見つけるの?」
シャルロが尋ねる。
だよなぁ。
新規商品を開発して、それを特許申請してシェフィート商会とかに販売権利を売りつける際の契約書のまとめとか整理も重要な作業だが、今の時期だったら重要なのは国税局へ提出する収支報告書だ。
あれの一番面倒な部分って領収書をちゃんと正しく集めて集計する事だと思うが、集計自体が終わっているんだったらその足し合わせの計算を確認する程度は流石に間違えないんじゃないか?
まあ、ここで態と間違えて横領とかしているようだったら質が悪いから、要確認ではあるだろうが。
と言うか、考えてみたら販売権利を売りつける際の契約書のまとめとか管理とか整理に関してはどうやってチェックするのか、後で聞いた方が良いよな。
こっちに関しては殆ど気にしていなかったわ。
一応外部の法律の専門家に契約書自体は確認してもらっている筈だが、締結した後の契約書自体の管理をしっかりやっているかのチェックは微妙な気がする。
それはさておき。
「定期的に発生する費用に関してはちゃんと年間通してすべての領収書があるかを日付を確認すれば分かる筈。
あとは、前年度や2年前の資料と比較して、説明できない増減がないか確認するのが一番だろうな」
アレクが教えてくれた。
うわ~。
かえって今までより、作業が増えてないか?
でもまあ、確かに領収書の整理自体が奇麗に出来ているから楽っちゃあ楽な筈だが。
「毎年何を開発したかなんて同じじゃないから収入とかもその年その年で違うし、経費も違うし、遊びに行く時期も違うから単純に比較できないと思うけど。
まあ、何をやっていたかをしっかり確認したら何とか出来るかな?
普通に領収書を整理して足していくよりは面白いかもだね?」
シャルロがちょっと考えてから言った。
「そうか~?
と言うか、誰かが横領しているとか脱税しているって分かっていてその間違い探しとか誤魔化し探しをするなら面白いかも知れないが、間違いがない可能性の方が高いのにそれを探すって只管空しい作業な気がするんだけど」
裏帳簿探しで隠し場所を発見しようと家の壁や床をしっかりじっくり確認して回る方がまだやりがいがありそうだ。
たとえキーナ達が詐欺をしているとしても、流石にこの家へ隠し場所を作って裏帳簿をしまっているとは思えないから探しても意味がないけど。
「前もって、いつ遊びに出て行ったか、何を特許登録したか、それの契約でどのくらい儲かったかを特許契約とかお土産の品から逆算していって、実際の結果とどのくらいずれるかを見てみるのも面白いもんだぞ?」
アレクが言った。
……そうなんだ。
ちょっと俺には理解できない考え方だが、まあ自分の収益だもんな。
どんな開発をしたらどのくらい儲かってどのくらい支出があったか、細かい集計をしなくても大体目安が立てられるようになったら後々楽が出来るかもだし、ここで頑張るか。
……アレクってそんな面倒そうなことを今までずっとやってきたのか??
11
あなたにおすすめの小説
元公務員、辺境ギルドの受付になる 〜『受理』と『却下』スキルで無自覚に無双していたら、伝説の職員と勘違いされて俺の定時退勤が危うい件〜
☆ほしい
ファンタジー
市役所で働く安定志向の公務員、志摩恭平(しまきょうへい)は、ある日突然、勇者召喚に巻き込まれて異世界へ。
しかし、与えられたスキルは『受理』と『却下』という、戦闘には全く役立ちそうにない地味なものだった。
「使えない」と判断された恭平は、国から追放され、流れ着いた辺境の街で冒険者ギルドの受付職員という天職を見つける。
書類仕事と定時退勤。前世と変わらぬ平穏な日々が続くはずだった。
だが、彼のスキルはとんでもない隠れた効果を持っていた。
高難易度依頼の書類に『却下』の判を押せば依頼自体が消滅し、新米冒険者のパーティ登録を『受理』すれば一時的に能力が向上する。
本人は事務処理をしているだけのつもりが、いつしか「彼の受付を通った者は必ず成功する」「彼に睨まれたモンスターは消滅する」という噂が広まっていく。
その結果、静かだった辺境ギルドには腕利きの冒険者が集い始め、恭平の定時退勤は日々脅かされていくのだった。
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【短編】追放した仲間が行方不明!?
mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。
※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。
診断書を提出してください。
柊
ファンタジー
元々平民で人格者であった祖父が男爵位を賜ったことにより、「成金の偽善者」と陰口を叩かれるセドリック・トリエ。
それは婚約者である伯爵令嬢カテリーナ・ラドゥメグも例外ではなく、神経をすり減らす日々を送っていた。
そいてラドゥメグ伯爵家を訪れたセドリックと、父クレマンが切り出したことは……。
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。
【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。
西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ?
なぜです、お父様?
彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。
「じゃあ、家を出ていきます」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる