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卒業後
1308 星暦558年 桃の月 10日 保存(29)
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「あら、じゃあ次は発酵促進器の研究になるの?」
結局保存庫の改造版の開発は諦めたと森でランチを食べながらシェイラに教えたらそう言われた。
今回の休憩日はシェイラが色々と書類仕事の最後の仕上げがあるから王都まで遊びに戻る暇はないとの事なので、俺がヴァルージャに遊びに来た。
ツァレスに署名させて歴史学会に提出する今年分の報告書の最終確認をしなくちゃいけないらしい。
海賊船の調査はまだやりたいことが残っているらしいが、あちらは年末か年初に王都へ行った際に見せてね!と言われている。
なので今日は朝食後に発掘現場にあるテント(かなり補強されて殆ど小屋になっている)で色々と書類を確認しているシェイラに付き合って雑談をしていたのだが、ランチはちょっと森の中を気分転換に散策した上でもってきたバスケットに入れていたサンドイッチなどを食べている。
ちょっとした保温効果を付けた結界を張れば、今の時期でも森の日向だったら中々いい感じに静かな時間を楽しめて良い。
自然の中というのはそれ程好きではないが、たまに散策して普段と違った環境を楽しみながら二人きりの時間を過ごすのも悪くはない。
「そうだな。
どうも保存させる機能の方は瘴気が出ないようにした魔術回路だったら魔石消費量とか腐敗遅延効果とかを考えると現行の保存器《フリッジ》に勝てるのを作れなかった」
瘴気ありの魔術回路だったら中々魔石消費量が節約できたんだよねぇ。
あれってマジでどういう事なんだろう?
瘴気って時間の流れに干渉する効果があるのか? ある意味、腐敗が更に酷くなっても不思議じゃないイメージだが。
「へぇぇ?
その瘴気って大した量じゃないんでしょ? 東大陸では使っていて人が異形になっちゃったなんて問題はないようだし?」
シェイラが尋ねる。
「さあ?
あちらは呪器の扱いに慣れているからな。
何か瘴気の副作用を相殺する手段があるのか、もしくは副作用が表に出る前にお互い殺しあっているのか、いまいち不明だからな。
どちらにせよ生きている対象に使うのだったら王立研究所でやれって取り込まれるぞと学院長に警告されたからね。
物の保存だけに使うのを開発できても瘴気入りじゃないとダメとなると、長時間保存して瘴気をたっぷり吸収したチーズとか肉とかを食べたらどうなるかなんてちょっと怖くて実験しにくいし、精霊に嫌がられるって話だからね。
俺たちは諦めた」
既存の魔具として特に問題ない保存器《フリッジ》があるから、それを超える物にしなくちゃならないというのは中々ハードルが高かった。
「ふうん?
じゃあ、その王立研究所は大丈夫なの?」
シェイラが尋ねる。
「一応学院長経由で警告は伝えたし、それを聞いて闇の神の神殿に相談に行ったらしい」
「あら、頭でっかちな魔術師や魔具研究者の集まりなあそこの集団がちょっと危険があるかもってだけで大人しく相談に行くなんて、珍しいわね」
シェイラが意外そうに言った。
おやま。王立研究所って意外と評判が悪いな?
「研究所の上が、王宮の傍で瘴気を大量に発生させるかもしれない研究なんぞされては困るってことで、問題が起きたらそれを何とか出来るのかとかを確認するために神殿へ研究者と試作品を引きずって行ったらしい」
つうか、王立研究所って上に良識のあるん人間がいたんだな?
ちょっと意外。あそこの評判って意外とぶっ飛んでいるから。
「まあ、攫った人間を大人しく拘束させるために使うのではなく、病人や怪我人の延命のために使おうと考えているとなると、通常よりも弱った状態の対象者に使うことになるから、瘴気の副作用がより早く、顕著に出るかもだし、王宮の傍で魔獣なんかが発生したら大問題だしってことで責任問題になる前にちゃんと相談することにしたんでしょうね。
で? 相談結果は?」
シェイラがミートパイに手を伸ばしながら聞いてきた。
「精神的な汚染程度ならまだしも、肉体が変異し始めたら元に戻すのは無理だぞって警告されたらしい」
はっきりと手を出すなとは言われなかったらしいが。
ある意味、体が変異しない程度だったら実験するのも闇の神様的にはありなのかな?
先に精霊がプチっと研究所か試作品を叩き壊すかもだが。
「そっかぁ。
発酵促進器にはそういう問題はないのね?」
シェイラが尋ねる。
「多分?
使い道と費用が見合うものを作れるかはまだ不明だが」
今までになかった魔具だからどの程度の費用だったら買う価値があるのか、そこら辺の費用対効果の目安すら不明だからなぁ。
まあ、まずは使える物を作れるかだよな。
結局保存庫の改造版の開発は諦めたと森でランチを食べながらシェイラに教えたらそう言われた。
今回の休憩日はシェイラが色々と書類仕事の最後の仕上げがあるから王都まで遊びに戻る暇はないとの事なので、俺がヴァルージャに遊びに来た。
ツァレスに署名させて歴史学会に提出する今年分の報告書の最終確認をしなくちゃいけないらしい。
海賊船の調査はまだやりたいことが残っているらしいが、あちらは年末か年初に王都へ行った際に見せてね!と言われている。
なので今日は朝食後に発掘現場にあるテント(かなり補強されて殆ど小屋になっている)で色々と書類を確認しているシェイラに付き合って雑談をしていたのだが、ランチはちょっと森の中を気分転換に散策した上でもってきたバスケットに入れていたサンドイッチなどを食べている。
ちょっとした保温効果を付けた結界を張れば、今の時期でも森の日向だったら中々いい感じに静かな時間を楽しめて良い。
自然の中というのはそれ程好きではないが、たまに散策して普段と違った環境を楽しみながら二人きりの時間を過ごすのも悪くはない。
「そうだな。
どうも保存させる機能の方は瘴気が出ないようにした魔術回路だったら魔石消費量とか腐敗遅延効果とかを考えると現行の保存器《フリッジ》に勝てるのを作れなかった」
瘴気ありの魔術回路だったら中々魔石消費量が節約できたんだよねぇ。
あれってマジでどういう事なんだろう?
瘴気って時間の流れに干渉する効果があるのか? ある意味、腐敗が更に酷くなっても不思議じゃないイメージだが。
「へぇぇ?
その瘴気って大した量じゃないんでしょ? 東大陸では使っていて人が異形になっちゃったなんて問題はないようだし?」
シェイラが尋ねる。
「さあ?
あちらは呪器の扱いに慣れているからな。
何か瘴気の副作用を相殺する手段があるのか、もしくは副作用が表に出る前にお互い殺しあっているのか、いまいち不明だからな。
どちらにせよ生きている対象に使うのだったら王立研究所でやれって取り込まれるぞと学院長に警告されたからね。
物の保存だけに使うのを開発できても瘴気入りじゃないとダメとなると、長時間保存して瘴気をたっぷり吸収したチーズとか肉とかを食べたらどうなるかなんてちょっと怖くて実験しにくいし、精霊に嫌がられるって話だからね。
俺たちは諦めた」
既存の魔具として特に問題ない保存器《フリッジ》があるから、それを超える物にしなくちゃならないというのは中々ハードルが高かった。
「ふうん?
じゃあ、その王立研究所は大丈夫なの?」
シェイラが尋ねる。
「一応学院長経由で警告は伝えたし、それを聞いて闇の神の神殿に相談に行ったらしい」
「あら、頭でっかちな魔術師や魔具研究者の集まりなあそこの集団がちょっと危険があるかもってだけで大人しく相談に行くなんて、珍しいわね」
シェイラが意外そうに言った。
おやま。王立研究所って意外と評判が悪いな?
「研究所の上が、王宮の傍で瘴気を大量に発生させるかもしれない研究なんぞされては困るってことで、問題が起きたらそれを何とか出来るのかとかを確認するために神殿へ研究者と試作品を引きずって行ったらしい」
つうか、王立研究所って上に良識のあるん人間がいたんだな?
ちょっと意外。あそこの評判って意外とぶっ飛んでいるから。
「まあ、攫った人間を大人しく拘束させるために使うのではなく、病人や怪我人の延命のために使おうと考えているとなると、通常よりも弱った状態の対象者に使うことになるから、瘴気の副作用がより早く、顕著に出るかもだし、王宮の傍で魔獣なんかが発生したら大問題だしってことで責任問題になる前にちゃんと相談することにしたんでしょうね。
で? 相談結果は?」
シェイラがミートパイに手を伸ばしながら聞いてきた。
「精神的な汚染程度ならまだしも、肉体が変異し始めたら元に戻すのは無理だぞって警告されたらしい」
はっきりと手を出すなとは言われなかったらしいが。
ある意味、体が変異しない程度だったら実験するのも闇の神様的にはありなのかな?
先に精霊がプチっと研究所か試作品を叩き壊すかもだが。
「そっかぁ。
発酵促進器にはそういう問題はないのね?」
シェイラが尋ねる。
「多分?
使い道と費用が見合うものを作れるかはまだ不明だが」
今までになかった魔具だからどの程度の費用だったら買う価値があるのか、そこら辺の費用対効果の目安すら不明だからなぁ。
まあ、まずは使える物を作れるかだよな。
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