シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

1158 星暦558年 青の月 30日 海底探索(13)

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「はい、これお土産。
あと、これのうちどれか気に入ったのもお土産にあげる」
シェイラにノルダスで買った革の肩掛け鞄と寄木細工の小物入れを渡し、最後に蚤市場《フリーマーケット》で買った木彫りの像をローテーブルの上に並べて出して見せた。

「これも北国の特産品なの??」
中々躍動的で迫力満点な熊をシェイラが手に取る。

え、それが良かった??
可愛い猫や犬のと家鴨まで買ってみたのに。

「なんか僻地の集落の人たちが冬ごもりしている間に彫るんだって。
昔からの伝統でそれなりに家によって特徴があるから歴史的な面白さもあるらしいんだけど・・・詳しい事は知らない」
何だったら次の夏にでもまた遊びに行ってもいいしね。

長い休みを取れるならその僻地の集落まで行ってみても面白いかも?
前もってその集落の事を知っている人間に首都で会えるよう手配するのは難しそうだが、あの売り出してた爺さんはいつも蚤市場《フリーマーケット》に出店しているって話だったから、集落の場所は教えてくれるだろう。
と言うか、あの爺さん本人もその集落の人間の可能性が高そうだ。

「面白いわね。
この熊も躍動感があって凄い迫力だけど・・・一つだけ選ぶんだったらこっちの猫のを貰って良い?」
シェイラがテーブルの上で足を上げてお腹の辺を舐めている猫の像を手に取った。

「おう、好きなのを選んでくれ」
あの熊なんかはスタルノへのお土産に良さげじゃないかな?
学院長は犬で、ドリアーナの皆に纏めて家鴨でどうだろ?

・・・料理に使う家鴨の像なんぞあったら、捌きにくいかもだが。

「で、何かまた凄い歴史のある沈没船を見つけたりしたの?」
シェイラが尋ねる。

「うんにゃ。
流石に東大陸まで行って海底を探すのは時間が掛かりすぎるかな~ってことでそのまま北から戻って来る航路の海底を探しながら戻ってきたが、沈んでいるのの殆どが漁船だった。
そこそこ大きい漁船もあったけど、漁船じゃあ中はほぼ何も残ってないし、漁船の変遷を調べたらそれはそれで面白いかもだが引き上げて売れるようなもんじゃあない」
俺たちの中では誰も漁船の歴史的変遷に興味がある人間は居なかったし。

「あら。
珍しいわね、貴方たちが何も海で見つけないなんて」
シェイラが指摘した。

「いや、何も見つけなかった訳じゃあない・・・かな。
ケヴァール子爵の船を見つけた。
本人も船員も中に居なかったけど」
取り敢えず、あの船は甥の方に売りつけられないか、アレクが交渉することになっている。

それなりに爵位継承で忙しいだろうから、話を持ち掛けるのはもう少ししてからになるんだろうが。

「ケヴァール子爵と言ったら相続問題で揉めている家よね?
・・・遺言書が出てきたの?
子爵が行方不明になってからまだそれ程年月は経っていないから、防水加工をしっかりしてある金庫にでも入れて持ち歩いていたなら海底に沈んでいても読める状態だったんじゃない?」
シェイラが鋭く指摘した。

「正解~。
遺言書自体は開封しなかったけど、一緒に金庫に入っていた家令宛ての手紙では、甥が相続できなかったもしくは拒否した場合は爵位を王家に返上するって書いてあったらしいね。
で、王都に帰ってからシャルロの兄貴経由で故子爵の甥と息子を法務大臣が呼び出したらあっさり出てきて、甥への爵位と遺産ほぼ全ての相続がその場で決まった」
一応息子への生活費っぽい少額の資金の定期的な支払いも遺言書には書いてあったが・・・表に出て来たからには、あの息子のほうは近いうちに殺されるだろうなぁ。

つうか、しっかり暗殺《アサッシン》ギルドに護衛されている甥はまだしも、がっつりやらかした息子の方は代理人が出て来るかと思っていたのにあっさり本人が顔を出したのにはびっくりだよな。

自分が恨まれているって自覚が無いらしい。
もしかして、王宮側の遺言書破棄を頼んだ相手の一族が巻き添えを食らって没落したって知らないのかね??
それとも、自分まで辿られないと思っているのか。

俺らが見つけた遺言書が最新版で有効だって言うのを確認した後、法務大臣の立会いの下に読み上げられて、自分はどう転んでも爵位を継げないと知って大騒ぎしたらしいが。
甥が死んでも継承辞退しても、絶対に爵位が行かないと分かっている息子に対する役所の対応は非常に冷たいものだったらしく、あっという間に遺言書の内容の有効性も確認されて爵位継承が確定したとシャルロが言っていた。

甥の方も、流石に自分が相続拒否したら爵位を王家へ返上すると聞いて、一族の歴史が~とか考えて諦めて相続することにしたらしい。

まあ、本人が陶磁器作りに集中して家令に領地の運営を任せるのも有りかもだし。
陶磁器づくりに金を掛け過ぎなければそれもありだろう。

ケヴァール子爵領に陶磁器に向いた土があるのかは知らんが。

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