竜の騎士と水のルゼリア

月城

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アクアマリンの章

1. Ep-14.視察の終わり

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 怪我を負って治療を終えた竜達は匂いに釣られるようにして炊き出しが行われている大樹の近くに集まっていた。
騎士やルゼリアは一人一人に料理を手渡していき竜達はそれを食べていく。
追加の食材で作った鍋も仕上がっていてかなりの量があり問題はないだろう、
炊き出しを食べている竜達は最初こそ辛そうな顔をしていたけれど料理を食べると表情が変わっていくのがわかる、魚を頬張りトロミの付いたスープを飲み干せば少なからず顔色がよくなっている。
木陰では炊き出しをする予定だった孤児院の子供達も美味しそうに食べていた。
大きな魚にかぶりつく姿はとても可愛らしい、代わる代わる医者達も料理を食べにきていてルゼリアはお疲れ様ですと料理を差し出していく。

「姫様の料理を食べれるとはありがたい話です」

『誰にでも作れる簡単な料理ですよ』

 十分です、そう言って医者達は料理を凄い速さで食べるとまた治療の為に戻っていく。

『トリノ、騎士達にも休憩は必要です、お料理を食べるように言ってください』

 頷いたトリノは駆けて行きルゼリアも息を吐き出す、そのまま視線は先程怒って離れてしまったレクターを探す。
すると遠くからアリシアに小突かれるように歩いてくるレクターの姿があった、どうやらアリシアが探しにいってくれたようだ。
ルゼリアの近くまで戻ってきたレクターは頭をガシガシ掻きながら護衛を放棄して離れた事を謝罪している。
気にしていないと首を振ってからルゼリアは騎士達の分の……木屑が混入してしまった料理を木の器によそって差し出した。

 トリノも何人かの騎士達を連れて戻ってくる、事前にアリシアのせいで木屑が入ってしまった事は説明を受けているようでルゼリアは騎士達に料理を差し出す度にごめんなさいねと謝っている。

「アリシア、お前、姫さんに謝らせてんじゃねえよ」

「なっ、私だって反省していますわ、貴方こそ姫君から離れて馬鹿じゃないんですの!?」

 言い争いをしようと二人をトリノが止める。そんなトリノとアリシアにもルゼリアは料理を差し出した。
代わる代わる騎士達が料理を受け取り食べていく、木屑はほぼ取り除かれている為に気にするような事はないようだ。
美味いっと食べ進める騎士達を見ながらシュネはいつ出てくるのだろうと心配になった。
ルゼリアにとってシュネは家族のようなものだった、幼い頃からルゼリアの側にいてルゼリアを育ててくれた竜だ、
まだ元気とはいえルゼリアの事で心配を掛けさせている事も知っている為に無理をしていないかと不安になる。
そんなルゼリアの不安をよそに一息つけにシュネが姿を現せばルゼリアはほっと安堵する。

「姫様、お側を離れてすみません」

『いいえ、問題ありません、シュネ、料理を食べてください』

「そうですわね、ゆっくり食べさせていただこうかしら」

『はい、味の方は美味しいと思います』

 ルゼリアは料理をシュネに渡した、シュネはいい香りですねと言いながらアリシアを見た。

「アリシア、向こうで私と食べながら少し話をしましょうか」

 料理を美味しそうに食べていたアリシアはぎくりと体を強張らせた。
そうしてシュネに引っ張られるようにして少し離れた場所に行くと説教が始まる、それを見たルゼリアはオロオロしながら声を掛けた方がいいのかと考えたがレクターに今近づくと巻き込まれますよっと言われ心の中でごめんなさいと呟きながらルゼリアはアリシアから視線を逸らした。

 炊き出しが終わりに近づきつつあった。
治療の終えた竜達は美味しい料理を食べて一先ず落ち着いた様子だ、子供達の多くも膨れたお腹をぽんぽんと叩いている。

「なあ、姫さんは食べなくて良いのかよ」

 心配そうに声をかけるレクターに座っていたルゼリアは頷いた、何度も味見をしていたのでお腹は一杯になっている、魚は食べてはいないけれど十分のようだ。

「ふーん、それにしても中々美味かったな、木屑入りだったけど」

「レクター!!しつこいですわよ!」

 アリシアの様子を見てルゼリアはクスクス笑う、その姿を見てレクターは、わははと笑った。
大地がぐらりと揺れたのはその時だった、座っていたルゼリアの体が揺れれば近くに居たトリノが咄嗟にルゼリアを引寄せて腕の中に守る、
そんなトリノの肩にレクターが手を置いて支えた、ルゼリアの身を幾重にも守ればすぐに地震は収まった。
怯えるようにしながらルゼリアはトリノの服を掴めば医療施設からは何人もの竜達が飛び出してきている。

「姫様!!」

 シュネが飛び出しルゼリアの名を呼んだ、ルゼリアは小さく震えてはいたけれどトリノの腕の中から手を出して此処にいる事を知らせる。

「姫様、ご無事ですか」

 駆け寄ってきたシュネはトリノの腕に守られているルゼリアの心配をするがルゼリアは平気ですと頷いている。

「…………ご無事でなによりです」

 安堵しているシュネはそのままトリノとレクターを見つめよく姫様を守りましたねっと褒めていた。

『怪我をした人はいませんか?子供達は大丈夫ですか?』

 見てまいります、そう言って騎士達が駆けて行った。

「最近は大地が揺れる回数が増えてまいりましたね」

 そうですねっとルゼリアは頷いた。此処最近アルヴァーニ王国では地震が多発している。
大きい地震ではないが小さな揺れが一日に何度も起こる場合もあった、崩落事故もこれらの地震が少なからず影響している筈だ。

「姫様、そろそろ城に戻りませんと」

 まだ鍋は残っている、ルゼリアがでもっと言うけれどシュネは駄目ですと首を横に振った。

「姫様、本来であれば炊き出しも中止するところでした、ですが安全第一という約束で続行いたしました。
ですが大地が揺れれば御身に危険が迫る可能性がある事をご理解ください、後の事は騎士達に任せ姫様は城に戻るべきです」

 ルゼリアの身の安全を第一と考えるシュネの言葉に師団長達も同意をしているようだ。
もう少し炊き出しや孤児院の子供達と時間を過ごしたかったルゼリアだがこれ以上は我侭は言えず渋々頷いた。
医長や神父に戻る事を告げればそれがいいでしょうと二人とも頷いている。

「ルゼリア様にも多大な感謝を、王は…………王家はまだ我等を見放してはいない事にほっとしております」

『当然です、民がいてこそ王があるのです…………僅かな力しかなれない僕を許してください』

「許すも何もルゼリア様のお陰で貧困層の多くの民が命を助けられて子供達も育つ事が出来るのです」

 医長の言葉にルゼリアはありがとうと告げて頭を下げた。
そのまま怪我人や患者達、孤児院の子供たちにも帰る事を告げれば皆名残惜しそうに挨拶をしてくれた、
そんな民達に別れを告げて、後の事を騎士に任せルゼリアは帰路に付いた。
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