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アクアマリンの章
1. Ep-18.転移に失敗
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ルゼリアの目に映るのは見慣れない場所だった。
前に視線を向ければ本来であれば長い階段があるはずなのだがそれがない、クリスタルで出来た長い廊下の真ん中でルゼリアは立っていた。辺りを見渡したが此処が何処だかわからない、ただ何処かの外廊下である事はわかる、すぐ隣には庭園が続いていてかなりの大きさのようだ。
普段離宮以外に足を向ける事が少ないルゼリアは離宮以外の事はわからない、不安そうに辺りを見渡す、何故この場所に移動してしまったのだろうか。
辺りを伺ったルゼリアは手に持ったままの転移クリスタルを見つめた。先程の強い輝きを考えればクリスタルの力が暴走したとしか考えられないが今まで一度もこのような現象に遭遇した事がなく何が原因だったのだろう、そう考えたルゼリアだが今は考えるよりも離宮に戻る事が先決だ。
原因を探すのは後でも良い、兎に角今は一刻も早く離宮に戻らねばならず不安ではあるもののもう一度転移のクリスタルを使用する事にした。
もう一度転移のクリスタルを強く握り締めて離宮を思い描く、今度こそ無事に帰れますように、そう願って転移する、だが次に目に付いたのも離宮の物ではなかった。また別の場所に転移したようだが見覚えのない所だった、先程のようにクリスタルで出来た廊下だ。焦ったルゼリアはもう一度転移する、三度目もまた失敗し知らない場所に移動してしまった。再び転移クリスタルを使おうとしたがクリスタルに蓄積されていた魔力が切れてしまったようで反応を見せなくなってしまった、それを見てルゼリアの顔色は悪くなっていく。
『……如何したら良いのでしょう』
不安そうな表情で辺りを伺い人を探すが人の姿が見当たらなかった。
見慣れない場所で不安を抱えながらもルゼリアは彷徨って歩いていればどこかから怒鳴り声が響いてきた。
『っ!?』
怒鳴り声を嫌っているルゼリアは本能的に身を震わせた。怯えながら辺りを見渡すけれど声の主はいない、すると再び怒鳴り声が聞こえる。怯えながらも人に会わなければ此処がどこかも分からず離宮に帰る事も出来ない、ハンカチの入った箱をギュウギュウとポーチに詰め込み念の為に転移のクリスタルをしっかりと握り締めると恐る恐る声のする方へと歩いていった。
庭園を抜ければ小さな森があった、声はその先からしているようでルゼリアは震えながらも一歩一歩前へと進む、耳には相変わらずの怒鳴り声、だがそれ以外にも金属がぶつかり合う音が聞こえる、なんだろうと足を進め背の高い植え込みのような場所を通り抜けた先を見て驚いた。
ルゼリアの目に映るのは大きな広場とそこで剣を振るう騎士達の姿だった。
騎士達が剣同士をぶつけ硬質な音が響いている、そしてその直後に再び怒鳴り声が響く、どうやら怒鳴り声の正体は騎士達の声のようだった。ルゼリアは木々の陰からこっそりとその様子を見つめていた。
ガキンっと言う音を響かせて剣同士がぶつかり日の光が剣に反射してキラキラと光っているように見えた。
騎士の服を見ればある程度の所属はわかる、黒地に淵が水色の服は南方騎士団か西方騎士団だ、白地に淵が水色の服は東方騎士団か北方騎士団になる。だが今は皆一様にラフな動きやすく汚れても良い様な格好をしている、ただ胸元にはそれぞれが所属する騎士団の色の刺繍が施されていて何処の騎士団かは判別できるようだ。
今戦っている二人は片方が黒地の刺繍が施されて、もう片方が白地の刺繍だ、南か西の騎士と北か東の騎士で戦っているのがわかる。木陰に手を置いてから覗くルゼリアはその光景が珍しくてじっと見つめていた。離宮を離れる事自体すくないルゼリアだが騎士達がこうして手合わせをしているのは見る事はない、その為早く姿を表して離宮に戻らなければならないのは分かっているけれど好奇心には勝てなかったようだ。
「よっと、今日は俺の勝ちのようだな、後で奢れよ」
「ちっ、今日は調子が悪かっただけだって」
そう言って手合わせを終えた騎士達が次の騎士達に場所を譲る、次にやって来たのはルゼリアが良く知っているトリノだった。眼鏡のブリッジを指で押し上げながら腰にある片手剣の柄に手を置いている、隣では普段見る事のない南方騎士団第九師団長であるネス・ルティアーノが歩いていた。
優しげな笑みを浮かべているネスはしきりにトリノに話しかけているようだった。
「トリノ、今日の勝負は負けませんよ、今日こそ勝ったら警備場所を代わって下さいね」
「毎回言ってて飽きないのか、いつも負けているのは君だろうに…………」
「負けてませんよ、剣が砕けるからでしょう、それさえなければ俺は貴方には勝てる自信がありますよ」
「…………俺だって負ける気はない」
そう言って二人は位置につくとすらりと剣を抜いた。
トリノの片手剣に比べるとネスはかなり大きな剣を二本持っていてどうやら双剣のようだ。
手合わせが始まればルゼリアは二人の戦いに釘付けになっていた、普段騎士達が戦う姿と言うのはルゼリアは見る事はない。守られてはいるけれど今見ているような戦い方は一度として見せていない、その為か二人が戦っている姿はとても綺麗だとさえ思えてしまう。
『凄いです』
金属音がぶつかり合う音も凄いけれど無駄のない二人の動きに驚きを隠せないでいる、もう一つ付け加えるとすればネスの戦い方も興味が引かれていた。剣を振るう前のネスはとても穏やかで優しそうだった、だが今戦っているネスはとても好戦的のように見える。
「オラ!!!しっかり避けろよっと!!」
口調が先程と違うようで本当に先程の青年だったのだろうかと言う気にさせられる。
しばらく戦っていたがガキンっと音を立てて剣同士がぶつかりビシっと嫌な音が響く、二人が離れればネスは、あーあと言いながら持っていた剣を見ている。
ルゼリアも剣を見れば遠目からその剣に亀裂が入っているのが見えた。
「ま~たヒビが入った」
「はあ…………これで何本目だ、怪力馬鹿め」
トリノは剣を鞘に収めている。どうやら毎回こうやって剣をダメにしているようだ。
ネスも亀裂の入った剣を鞘に収めると今日で3本目ですっと戦う前の口調に戻っていた。
「団長に絞られてくる事だな」
「いやいや、まだ一本ありますから、壊れるまでやりましょう」
壊れる事が前提のようなネスの言い方にトリノは断るとは言うけれど逃げるのですかっと煽られてむすっとした表情で勝負を受けている。意外とトリノは熱くなりやすい様だ、珍しいものを見ましたっと再び二人の手合わせを見ていたルゼリアの耳に一際大きな声が聞こえた。
別の場所へと視線を向けると自分と同じぐらいの大剣を軽々と持ったレクターが一人の騎士に剣を突きつけていた。既に勝負が決まっているのだろう、息切れを起している騎士にレクターはにんまり笑いながらだらしがないなと笑っている。
「よっしゃ!次来い次!!」
「レクター師団長………………もう無理、休ませてください」
「甘えんなって、それでも第八師団の俺の部下か!?さあ、ドンとぶつかって来いって」
体力馬鹿に付き合えるわけがないと部下の騎士達は文句を言っているようだがレクターらしいその発言にルゼリアはついクスっと笑ってしまった。部下全員が拒否したのを見たレクターは仕方ねえなっと呟くと辺りを一度見渡した、そうして何かを発見した様子で服に白と水色の刺繍が施されている騎士に声をかけた。
「よ、ガリオン、俺と勝負しようぜ、南方と東方、どちらか強いか勝負!」
「…………貴方は元気すぎる、いつ見ても暑苦しいですよ、それに俺は既に戦った後で無理でしょう」
「固い事言うなって、な?やろうぜ」
やれやれと言いながらガリオンと呼ばれた青年は剣を手にとってレクターの前に移動していて、ガリオンを見たルゼリアは確かっと記憶を探る。ガリオン・オルフェイクはシュネの孫に当たる青年の筈だ、貴族階級であるシュネには何人もの孫がいて彼はその一人だ。滅多に話す事はなく、シュネと違ってルゼリアを嫌っている一人だったはずだ。
二人が戦い出せば激しい金属音が響いていく、大剣を自由自在に操っているレクターの攻撃をガリオンは只管受け流している、と言っても計算しているのだろう、最低限の剣の動きでレクターの攻撃を受け流しているのだ。
強いなっと言いながらもレクターが楽しげに剣を振るう、そんな二人の姿を騎士達は声援を送っていた。
離宮に戻らねばと思っていたルゼリアは騎士達の手合わせを見ている内にすっかりと自分の状況を忘れてしまっていた。騎士達の腕前に凄いと思いながらも時間が経つのも忘れてただ騎士達の手合わせを隠れて見続けている。
「ったく、お前のその受け流しは面倒だろ」
「貴方の馬鹿力をまともに受けたら腕が折れますよ」
未だに戦い続けるレクター達、トリノ達の方は残ったネスの剣が砕けてしまい勝負は終わっているようだ。
「さっさと倒れてくれっての!」
渾身の力を込めたレクターの攻撃はガリオンに避けられてしまう、レクターの力の篭った剣が地面にぶつかれば轟音が轟く、どれだけの力が篭っているのかと手に汗にぎりながら見つめるルゼリアに気付く事なく騎士達は戦っていたがガリオンの動きが変わった。
「俺とて東方騎士団第三師団長ですからね、南方騎士団の方々に負ける訳には行かないんです、貴方こそ倒れてください」
「言うねえ?俺達南と西、お前達北と東の騎士団は昔から競い合ってるからな、俺も負けてやるわけにはいかねえんだわ」
空気を裂きながらもレクターの大剣はガリオンを狙う、ガリオンはちっと舌打ちしながらも距離を取ろうとするがレクターはそれを許さなかった。体力では断然レクターが上でこのままではガリオンは不利になってしまう、それを認めたのかガリオンは、ではっと告げると片方の手を差し出した、それを見たレクターは、げっ!?と声を上げて後ろに飛び退いたがその直後に光がレクターの剣に直撃した。
どうやらガリオンは魔法を使ったようだ、強い衝撃で後ろに押されながらもレクターは剣で魔法を弾いた、軌道が逸れた魔法は後ろの方で四散している。
「てめえ!汚ねえぞ!正々堂々と戦えって!」
「ご冗談を、俺の方が体力が少ないんだ、あのまま剣だけで戦えば膝を付くのは目に見えている、言ったでしょう?俺も負ける訳にはいかないと、それにこの手合わせは俺達の腕を磨く事が目的だ、魔法を禁止されているわけではないでしょう?」
そう言って再びガリオンはレクターに向けて魔法を放った。
竜は魔力も高く魔法を使える固体が殆どだ、といっても竜の力を持たないルゼリアは全く使えない。
離宮にいる間は決して見る事がない魔法を見てルゼリアはやはり竜というのは凄いと改めて思い知る。
ガリオンが再びレクターに魔法を放つ、避けていたレクターだがいい気になるなよっと僅かに声を低くして言うと地面を踏みしめながら大剣を魔法に当てた。そのまま渾身の力を込めて魔法を剣で跳ね返せばガリオンは馬鹿力過ぎるでしょうと言って跳ね返された魔法を避けた。
打ち返されガリオンに避けられた魔法はあろう事かルゼリアの方へと向かってきてしまう、対応する事が出来ないルゼリアはその場から離れなければならず木陰から身を乗り出せば誰かが、おいっと言っているのが耳につく、
ルゼリアの身体能力では魔法から完全に逃げる事が出来ず魔法はルゼリアに襲い掛かっていった。
前に視線を向ければ本来であれば長い階段があるはずなのだがそれがない、クリスタルで出来た長い廊下の真ん中でルゼリアは立っていた。辺りを見渡したが此処が何処だかわからない、ただ何処かの外廊下である事はわかる、すぐ隣には庭園が続いていてかなりの大きさのようだ。
普段離宮以外に足を向ける事が少ないルゼリアは離宮以外の事はわからない、不安そうに辺りを見渡す、何故この場所に移動してしまったのだろうか。
辺りを伺ったルゼリアは手に持ったままの転移クリスタルを見つめた。先程の強い輝きを考えればクリスタルの力が暴走したとしか考えられないが今まで一度もこのような現象に遭遇した事がなく何が原因だったのだろう、そう考えたルゼリアだが今は考えるよりも離宮に戻る事が先決だ。
原因を探すのは後でも良い、兎に角今は一刻も早く離宮に戻らねばならず不安ではあるもののもう一度転移のクリスタルを使用する事にした。
もう一度転移のクリスタルを強く握り締めて離宮を思い描く、今度こそ無事に帰れますように、そう願って転移する、だが次に目に付いたのも離宮の物ではなかった。また別の場所に転移したようだが見覚えのない所だった、先程のようにクリスタルで出来た廊下だ。焦ったルゼリアはもう一度転移する、三度目もまた失敗し知らない場所に移動してしまった。再び転移クリスタルを使おうとしたがクリスタルに蓄積されていた魔力が切れてしまったようで反応を見せなくなってしまった、それを見てルゼリアの顔色は悪くなっていく。
『……如何したら良いのでしょう』
不安そうな表情で辺りを伺い人を探すが人の姿が見当たらなかった。
見慣れない場所で不安を抱えながらもルゼリアは彷徨って歩いていればどこかから怒鳴り声が響いてきた。
『っ!?』
怒鳴り声を嫌っているルゼリアは本能的に身を震わせた。怯えながら辺りを見渡すけれど声の主はいない、すると再び怒鳴り声が聞こえる。怯えながらも人に会わなければ此処がどこかも分からず離宮に帰る事も出来ない、ハンカチの入った箱をギュウギュウとポーチに詰め込み念の為に転移のクリスタルをしっかりと握り締めると恐る恐る声のする方へと歩いていった。
庭園を抜ければ小さな森があった、声はその先からしているようでルゼリアは震えながらも一歩一歩前へと進む、耳には相変わらずの怒鳴り声、だがそれ以外にも金属がぶつかり合う音が聞こえる、なんだろうと足を進め背の高い植え込みのような場所を通り抜けた先を見て驚いた。
ルゼリアの目に映るのは大きな広場とそこで剣を振るう騎士達の姿だった。
騎士達が剣同士をぶつけ硬質な音が響いている、そしてその直後に再び怒鳴り声が響く、どうやら怒鳴り声の正体は騎士達の声のようだった。ルゼリアは木々の陰からこっそりとその様子を見つめていた。
ガキンっと言う音を響かせて剣同士がぶつかり日の光が剣に反射してキラキラと光っているように見えた。
騎士の服を見ればある程度の所属はわかる、黒地に淵が水色の服は南方騎士団か西方騎士団だ、白地に淵が水色の服は東方騎士団か北方騎士団になる。だが今は皆一様にラフな動きやすく汚れても良い様な格好をしている、ただ胸元にはそれぞれが所属する騎士団の色の刺繍が施されていて何処の騎士団かは判別できるようだ。
今戦っている二人は片方が黒地の刺繍が施されて、もう片方が白地の刺繍だ、南か西の騎士と北か東の騎士で戦っているのがわかる。木陰に手を置いてから覗くルゼリアはその光景が珍しくてじっと見つめていた。離宮を離れる事自体すくないルゼリアだが騎士達がこうして手合わせをしているのは見る事はない、その為早く姿を表して離宮に戻らなければならないのは分かっているけれど好奇心には勝てなかったようだ。
「よっと、今日は俺の勝ちのようだな、後で奢れよ」
「ちっ、今日は調子が悪かっただけだって」
そう言って手合わせを終えた騎士達が次の騎士達に場所を譲る、次にやって来たのはルゼリアが良く知っているトリノだった。眼鏡のブリッジを指で押し上げながら腰にある片手剣の柄に手を置いている、隣では普段見る事のない南方騎士団第九師団長であるネス・ルティアーノが歩いていた。
優しげな笑みを浮かべているネスはしきりにトリノに話しかけているようだった。
「トリノ、今日の勝負は負けませんよ、今日こそ勝ったら警備場所を代わって下さいね」
「毎回言ってて飽きないのか、いつも負けているのは君だろうに…………」
「負けてませんよ、剣が砕けるからでしょう、それさえなければ俺は貴方には勝てる自信がありますよ」
「…………俺だって負ける気はない」
そう言って二人は位置につくとすらりと剣を抜いた。
トリノの片手剣に比べるとネスはかなり大きな剣を二本持っていてどうやら双剣のようだ。
手合わせが始まればルゼリアは二人の戦いに釘付けになっていた、普段騎士達が戦う姿と言うのはルゼリアは見る事はない。守られてはいるけれど今見ているような戦い方は一度として見せていない、その為か二人が戦っている姿はとても綺麗だとさえ思えてしまう。
『凄いです』
金属音がぶつかり合う音も凄いけれど無駄のない二人の動きに驚きを隠せないでいる、もう一つ付け加えるとすればネスの戦い方も興味が引かれていた。剣を振るう前のネスはとても穏やかで優しそうだった、だが今戦っているネスはとても好戦的のように見える。
「オラ!!!しっかり避けろよっと!!」
口調が先程と違うようで本当に先程の青年だったのだろうかと言う気にさせられる。
しばらく戦っていたがガキンっと音を立てて剣同士がぶつかりビシっと嫌な音が響く、二人が離れればネスは、あーあと言いながら持っていた剣を見ている。
ルゼリアも剣を見れば遠目からその剣に亀裂が入っているのが見えた。
「ま~たヒビが入った」
「はあ…………これで何本目だ、怪力馬鹿め」
トリノは剣を鞘に収めている。どうやら毎回こうやって剣をダメにしているようだ。
ネスも亀裂の入った剣を鞘に収めると今日で3本目ですっと戦う前の口調に戻っていた。
「団長に絞られてくる事だな」
「いやいや、まだ一本ありますから、壊れるまでやりましょう」
壊れる事が前提のようなネスの言い方にトリノは断るとは言うけれど逃げるのですかっと煽られてむすっとした表情で勝負を受けている。意外とトリノは熱くなりやすい様だ、珍しいものを見ましたっと再び二人の手合わせを見ていたルゼリアの耳に一際大きな声が聞こえた。
別の場所へと視線を向けると自分と同じぐらいの大剣を軽々と持ったレクターが一人の騎士に剣を突きつけていた。既に勝負が決まっているのだろう、息切れを起している騎士にレクターはにんまり笑いながらだらしがないなと笑っている。
「よっしゃ!次来い次!!」
「レクター師団長………………もう無理、休ませてください」
「甘えんなって、それでも第八師団の俺の部下か!?さあ、ドンとぶつかって来いって」
体力馬鹿に付き合えるわけがないと部下の騎士達は文句を言っているようだがレクターらしいその発言にルゼリアはついクスっと笑ってしまった。部下全員が拒否したのを見たレクターは仕方ねえなっと呟くと辺りを一度見渡した、そうして何かを発見した様子で服に白と水色の刺繍が施されている騎士に声をかけた。
「よ、ガリオン、俺と勝負しようぜ、南方と東方、どちらか強いか勝負!」
「…………貴方は元気すぎる、いつ見ても暑苦しいですよ、それに俺は既に戦った後で無理でしょう」
「固い事言うなって、な?やろうぜ」
やれやれと言いながらガリオンと呼ばれた青年は剣を手にとってレクターの前に移動していて、ガリオンを見たルゼリアは確かっと記憶を探る。ガリオン・オルフェイクはシュネの孫に当たる青年の筈だ、貴族階級であるシュネには何人もの孫がいて彼はその一人だ。滅多に話す事はなく、シュネと違ってルゼリアを嫌っている一人だったはずだ。
二人が戦い出せば激しい金属音が響いていく、大剣を自由自在に操っているレクターの攻撃をガリオンは只管受け流している、と言っても計算しているのだろう、最低限の剣の動きでレクターの攻撃を受け流しているのだ。
強いなっと言いながらもレクターが楽しげに剣を振るう、そんな二人の姿を騎士達は声援を送っていた。
離宮に戻らねばと思っていたルゼリアは騎士達の手合わせを見ている内にすっかりと自分の状況を忘れてしまっていた。騎士達の腕前に凄いと思いながらも時間が経つのも忘れてただ騎士達の手合わせを隠れて見続けている。
「ったく、お前のその受け流しは面倒だろ」
「貴方の馬鹿力をまともに受けたら腕が折れますよ」
未だに戦い続けるレクター達、トリノ達の方は残ったネスの剣が砕けてしまい勝負は終わっているようだ。
「さっさと倒れてくれっての!」
渾身の力を込めたレクターの攻撃はガリオンに避けられてしまう、レクターの力の篭った剣が地面にぶつかれば轟音が轟く、どれだけの力が篭っているのかと手に汗にぎりながら見つめるルゼリアに気付く事なく騎士達は戦っていたがガリオンの動きが変わった。
「俺とて東方騎士団第三師団長ですからね、南方騎士団の方々に負ける訳には行かないんです、貴方こそ倒れてください」
「言うねえ?俺達南と西、お前達北と東の騎士団は昔から競い合ってるからな、俺も負けてやるわけにはいかねえんだわ」
空気を裂きながらもレクターの大剣はガリオンを狙う、ガリオンはちっと舌打ちしながらも距離を取ろうとするがレクターはそれを許さなかった。体力では断然レクターが上でこのままではガリオンは不利になってしまう、それを認めたのかガリオンは、ではっと告げると片方の手を差し出した、それを見たレクターは、げっ!?と声を上げて後ろに飛び退いたがその直後に光がレクターの剣に直撃した。
どうやらガリオンは魔法を使ったようだ、強い衝撃で後ろに押されながらもレクターは剣で魔法を弾いた、軌道が逸れた魔法は後ろの方で四散している。
「てめえ!汚ねえぞ!正々堂々と戦えって!」
「ご冗談を、俺の方が体力が少ないんだ、あのまま剣だけで戦えば膝を付くのは目に見えている、言ったでしょう?俺も負ける訳にはいかないと、それにこの手合わせは俺達の腕を磨く事が目的だ、魔法を禁止されているわけではないでしょう?」
そう言って再びガリオンはレクターに向けて魔法を放った。
竜は魔力も高く魔法を使える固体が殆どだ、といっても竜の力を持たないルゼリアは全く使えない。
離宮にいる間は決して見る事がない魔法を見てルゼリアはやはり竜というのは凄いと改めて思い知る。
ガリオンが再びレクターに魔法を放つ、避けていたレクターだがいい気になるなよっと僅かに声を低くして言うと地面を踏みしめながら大剣を魔法に当てた。そのまま渾身の力を込めて魔法を剣で跳ね返せばガリオンは馬鹿力過ぎるでしょうと言って跳ね返された魔法を避けた。
打ち返されガリオンに避けられた魔法はあろう事かルゼリアの方へと向かってきてしまう、対応する事が出来ないルゼリアはその場から離れなければならず木陰から身を乗り出せば誰かが、おいっと言っているのが耳につく、
ルゼリアの身体能力では魔法から完全に逃げる事が出来ず魔法はルゼリアに襲い掛かっていった。
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