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第九章 人間奮戦激闘編
五
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僕がその場に参加できたのは、ただ悪魔側に人間と交渉する存在がいなかったからだ。
もちろん、連合軍の使者も、同盟軍の使者も、僕が現れた時には驚いていた。もちろん僕のことを知っているのではなく、悪魔側の使者の一人に人間がいたからだ。
連合軍と悪魔軍の睨み合いに、同盟軍が加わる、という構図が唐突に出現した時、僕はレムとメムに外交活動を行うことを進言した。
彼らも最初こそ人間との交渉など不可能だと思っていたようだけど、それではただ目の前で、連合軍と同盟軍がどこかで折り合いをつけ、協力するのを眺めているだけになる。
当然、彼らにも悪魔が何らかの妥協案を出すとは思っていないだろうし、連合軍は同盟軍と交渉し、同盟軍は連合軍と交渉する、という可能性しか頭にないわけだ。
だから僕はまず、実際に戦火を交えていない同盟軍と交渉することを勧めた。
連合軍と交渉するのはその時点では早い。なにせ、連合軍は悪魔軍を押しているのだ。自分たちが優位に立っている相手に対し、何かを譲歩することほどバカらしいことはない。
レムとメムは、他にも悪魔の指揮官を集めて議論を始めたけど、これにはさすがに僕も学んでいた。
悪魔たちは議論が好きだが、結論を先送りにする傾向にある。
今はそんな悠長にことを構えている場合ではない。
キロに承認を得ただけで、僕は人語を完璧に理解する悪魔一体だけを連れて、密かに同盟軍の陣地に乗り込んだ。
もちろん、正式な使者ではない。
同盟軍に加わっている悪魔がいるのなら、そこを通じて、下準備もできた。でもそんな情報を確認する暇も、下準備の暇すらもない、と僕は認識していた。
同盟軍の歩哨が僕たちを発見した。そこで僕は必死にまずその歩哨をなだめ、冷静に話を聞ける状態に持って行った。これが第一の関門。
第二の関門は、その歩哨を通じて、同盟軍の下士官と面会させてもらうこと。この時点で失敗すれば敵中で孤立する、というか、煮るなり焼くなり、同盟軍の自由で、逃れる術はない。
下士官は僕たちを引見し、こちらの意図を質問し始めた。もちろん、周囲を兵士数人が囲んでいる。
ただ、下士官の口調からは、敵意はそれほど感じなかった。
僕たちがただ二人きりで、敵陣にやってきたことが彼の信頼の下地になったようだ。
「書状のようなものはあるか?」
下士官のその一言が、僕にとっては最大の収穫だった。
僕は僕自身が書いた書状を彼に手渡した。用意してあったもので、僕の署名もあるけど、その前にキロの署名がある。
書状にその場で目を通した下士官が、
「連合軍と我々と悪魔たち、三者で協議をしたい?」
つぶやいて、胡乱げにこちらを見る。僕は頷いた。
「なぜ、悪魔を倒してはいけない?」
その下士官の言葉は、想定していたうちの一つである。
「悪魔にとってのみ利がある話ではありません。連合軍がこのまま悪魔たちを押しやり、領地を広げれば、やがて同盟軍にとっても脅威となるでしょう」
「この密林をどうやって領地に変える? 開墾だけで何年とかかるはずだ」
「私は連合の支配域で生活していましたが、民間の探索士は大勢いますし、経済も順調に活発化しています。時間さえあれば、国力を高めるのは難しくない。人間、物資、資金、全てが既に揃っています。足りないのは土地だけなのです」
その言葉を聞いて、下士官がそっぽを向いた。
失敗したか。そう思った。
「良いだろう」
突然のその言葉と同時に、彼が書状を丁寧に折りたたむと近くにいた部下に手渡した。そしてこちらを見る。
「我々も連合軍との交渉を既に進めている。場合によっては、この話はなかったことにされる。それでも上層部にこの書状は渡しておく。お前たちと通信を取るにはどうしたらいい?」
感動したと言ってもいい。
この下士官は、僕たちを信じ始めている。
僕は通信のための合図や目印、位置などを決めた。下士官の部下がそれを記録している。
僕たちが去ろうとすると、下士官が不思議そうに言った。
「お前はどうして悪魔のためにそこまでやっているんだ? 本当に人間か?」
僕は真面目な顔で頭を下げた。
「私にも、主義主張というものがあります」
「人間と敵対する主義主張か?」
「人間と敵対するわけではありません」
下士官が身ぶりで僕たちを追い出した。
背後から襲われないかそわそわしながら、僕たちが同盟軍の陣地を離れ、そのまま鉄槌隊の陣地に戻ることになった。追撃や追跡は、なかったようだ。
待ち構えていたキロに報告すると、彼女は即座にレムの元へ自ら出向いて行った。どうやらキロは、僕の独断を肩代わりしてくれようとしているらしい。
キロのはその夜は陣地に帰ってこなかった。
翌朝、隊の悪魔たちが落ち着かない様子でいる中、憔悴した顔でキロが戻ってきた。
木の間に渡したハンモックに上がると、そのまま眠ってしまった。起せる雰囲気ではなく、仕方なく僕も悪魔たちも、彼女が目覚めるのを待った。
遠くで連合軍の鬨の声が消えてきて、そこでキロが目覚めた。声が遠いのを確認し、ハンモックから降りる。
「アルスはいるか」
彼女が僕を呼んだので、すぐに駆け寄った。こちらを彼女が睨んでくる。
「私の立場は極めて悪くなった。お前のせいだ」
「つまり、受け入れられなかった?」
「受け入れたよ」
バシッとキロが僕の肩を叩く。
「レムたちはもう後へは引けないと判断して、交渉を行うことで決定した。今度は交渉役が選ばれているだろう。今朝の時点では、お前が選ばれるかは微妙だが、しかし、お前は人間だからな、必要とされるはずだ。全く、大した奴だよ」
もう一度、今度は僕の腕を叩いてくる。
そうか、としか僕は言えなかった。そんな僕に、キロが笑みを見せる。いつもの剛毅な笑みだった。
「私には交渉なんてことはよくわからない。悪魔は人間と血を流して戦うことはあっても、言葉で戦ったことはない。お前がその最初の一歩を手助けするんだ」
やっぱり僕は頷くことしかできなかった。
その日の夕方、レムの元から僕に使者が来て、会議に参加するように命じられた。
会議が行われている悪魔軍の司令部には、レムとメム、あと五体の悪魔がいた。二人ほどがこちらを射るように見てくる。それを無視して、僕も席に着いた。
レムが進行役を務めて、連合軍と同盟軍との交渉について細部が話し合われていく。
悪魔たちはまず、何を要求するべきかも、話しているので驚いた。これではいつまで経っても、話が進まない。
僕は横槍を入れるように割り込んで、いくつかのことをはっきりさせた。
まずは戦闘状態を解消し、停戦、そして休戦状態に持っていくこと。
そのためには失った領地の一部、あるいは大部分を差し出すことになること。
この二点は絶対に必要だった。
悪魔たちは第一項目すらも容認できないようで、僕に敵意を向けている二人が激しく反論した。要は、人間たちが憎い、彼らは侵略者であり正当性がない、という理屈のようだった。
「彼らは悪魔たちに勝っているのです」僕は根気強く説いた。「そして人間の認識では、勝って得たものは、自分たちのものです。逆に言えば、負ければ何かを失うのです。そして負けてしまえば、何の主張もできません」
二人が激怒して何事か、悪魔の言語でまくし立てるのを、メムがなだめる。僕は言葉を続け、どうにか説得を試みた。
「いずれ敵対関係が解消され、平和が訪れれば、領土の問題は意味がなくなるとも言えます。もちろん、そのためには人間と悪魔という大きな違い、大きすぎる違いを、何らかの形で乗り越える必要がある。そして今回の交渉は、その壁を乗り越える、最初の一歩になる可能性がある」
僕が言い終わると、悪魔たちは早口の悪魔言語でやり取りを始めた。僕は聞くのに徹して、彼らの理屈を理解しようとした。
レムと彼女に従う悪魔たちは僕の提案を支持し、二人がそれと真っ向から反対してやり取りしている。
彼らの議論は果てしなく続き、休憩を挟み、もう一回休憩があり、次に昼食を挟み、また休憩を挟み、その上もう一回の休憩がある。
ついに夕食になろうかとなり、僕はさすがに頭に来た。
「あんたたちは」
彼らが全員でこちらを見た。僕は悪魔言語で言っていた。
「どうしたいんだ? 目の前に敵がいる。それも大きすぎる敵だ。それなのに、長々とここで話し合って、延々と身内で口論とは、馬鹿げている。僕が連合軍だったら、さっさと同盟軍と意思疎通して、可能なら協力し、不可能なら手を出さないように約束させて、悪魔どもを蹴散らすだろう。あんたたちは人間が大挙して押し寄せてきて、今から交渉します、とでも主張するのか? 間抜け以外の何物でもない。その時にはこちらは大打撃を受け、また後退か? 部隊を整えて、もう一回対峙して、今度こそ交渉しましょう、か? その時、どれくらいの交渉ができる? いつ交渉するのが最善かと考えれば、答えは一つしかない。たった今だ。この先はないんだ」
悪魔たちは揃って沈黙した。呆気にとられた顔で、こちらを見ている。
「今、決めてくれ。交渉するのか、しないのか。どういう方針でいくか。今まで丸一日、あんた方はお話し合いをしてきたんだろう。そろそろ結論が出る頃合いだ。どうかな」
まだ悪魔たちは黙っている。今はそれぞれに視線を向け合っている。人間風情が意見し始めた、と思っているのか、それとも、僕をこの場から追い出す意志を確認しているかは、わからない。
僕は彼らを一人ずつ、順繰りに睨みつけて言った。
最後にレムを強く睨み、僕は立ち上がった。
「夕食の休憩でも取るんでしょうね、あんた方は。人間たちが夕食の間は攻めてこない礼儀正しさを持ってると思うのなら、そうすればいい」
念を押して、僕は司令部を出て、鉄槌隊へ戻ることにした。
夕闇が周囲にたれ込める中、僕はキロの元に戻った。
「何か気に食わない事があったようだね」
彼女はそう声をかけてきたけど、僕には返事をする気力はなかった。自分のハンモックに上がって、身動きせず、息を詰めて、僕は夜を過ごした。
結果は朝になる前に届いた。深夜だった。
伝令が僕を呼ぶので即座に起き上がり、出迎えた。伝令の指示は簡潔だった。
「アルス殿を交渉役に任命し、補佐を二人ほどつけるそうです」
「人語に堪能な奴を選んでほしいね」
「もちろんです。アルス殿が任命してもいいとのことですが、如何しますか?」
僕は知り合いの悪魔の中でも人間に好意的で、かつ、若い悪魔を選んだ。若いと言っても五十年は生きているような悪魔だけど。
若いということは、多分、それだけ思考も柔軟だろう、という僕の人間観から来るのだけど、正直、悪魔がどうなのかは、わからない。それを言ったら人間だって、僕の視点から見て若い方が少しは頭が柔らかいかな、という程度の認識だけど。
彼らの任命と同時に、僕の役職をはっきりさせるように、伝令に伝えさせた。
深夜でも、もう眠っているような余地はない。最小限の明かりを用意して、僕は書状を書き始めた。とにかく、連合軍と同盟軍が共同歩調をとり始めたが最後、悪魔軍に勝ち目はない。
連合軍との連絡はほとんど不可能だから、まずは同盟軍とやり取りをして、そこから連合軍と交渉することになる。
そのために、同盟軍と太いパイプを用意しなくてはならない。いきなりは無理だ。まずは例の下士官と、その上官から味方にする必要がある。
ただ、あまりに時間がない。僕一人の知恵で、どうにかなるとも思えなかった。
シリュウがいれば、と少しだけ思った。彼は戦いを得意とするけど、でも、僕とは違う視点で、状況を見ただろう。
その代わりではないけれど、僕は数人の親しい悪魔を呼んで、書状を書きながら、彼らに議論させた。
また議論だ。ただ、今回は少し趣旨が異なる。
僕が議論させたのは、悪魔が何か人間に譲歩できるものを持っているか、だった。
出てきた意見は最初こそ、弱いものだった。停戦、魔法に関する技術の共有、契約者として人間を強化する、といった、妥当か、あるいは異質な発想だ。
僕は黙って聞いていた。すると、一人の悪魔が進んだ意見を口にした。
悪魔を労働力として提供する、というのである。
悪魔の中でも下級悪魔は今ではただ人間に狩られているだけだが、悪魔軍の一部であるように、上級悪魔の指示には従うのである。
細かな細工はできないが、土木作業などの中でも単純なこと、つまり力仕事には向いているし、数も多い。
交渉材料になりそうだな、と僕は思った。
僕自身が同盟軍の下士官に言ったように、連合側には領地拡大の全ての要素がある。人、物、金だ。おそらく同盟側にも同じものがあるだろう。
ただ、人という要素には、いくつかの側面がある。
まず数。人間の数はいきなり増えることはない。
次に対価。人間は何かをするように命じられれば、対価を求める。大きければ歓喜して発奮するが、小さければ落胆し、効率が下がる。
それを悪魔が解消するというのだ。
下級悪魔は黒の領域に無数にいる。そして彼らには欲というものがほとんどないようだ。知能が低いということもあるが、まずは食欲と睡眠欲が主らしい。
つまり衣食住を保証すれば、人間の労働を、人間よりも安価でこなすことができる。
僕は議論を聞きながら、そのことも書状に書いてみた。まだ詳細は詰めることができないが、悪魔が労働力の一部を担える、と書いておく。
ただ、これはすぐには進まないだろうとも思っていた。人間は悪魔に恐怖を感じているし、理解できる存在とも思っていない節がある。
僕のように彼らの中に混じってみれば、しっかりした自我を持ち、善悪の基準を持ち、喜怒哀楽があり、人間と重なる部分も多いとわかる。でもこれをいきなり理解するのは、不可能だ。
議論は明け方を過ぎ、それぞれに軽食を食べつつ、続けられた。中断はない。僕も書状を書きに書いた。
昼前になって伝令が再びやってきて、
「アルス殿は、交渉委任官、いう役職になりました」
と、伝えてくれた。
僕は書状の署名の前に、次々と「交渉委任官」という役職を書き加え、その書状をまとめた。
悪魔たちがこちらを見るので、僕は彼らを見回した。
僕が副官に任命した二人を含む、七人の若い悪魔たち。
「今から同盟軍を取り込みにかかる。期限は五日とする。その間、可能な限り同盟軍と密にやり取りする。すでに連絡の手段の最低限は決まっているけど、どうなるかはわからない。命がけと言ってもいい。でも、これは命を賭けるに値する仕事だ」
悪魔たちが緊張した面持ちで、頷いた。
書状を持った悪魔が出入りし始める。鉄槌隊の指揮所は、突然に情報拠点に早変わりした。
最初は半日で一通のやり取り。翌日には一日に四通まで増えた。
状況もわかる。連合軍と同盟軍の交渉はすでに始まっていて、お互いに意見をぶつけている段階。悪魔軍の動きはどうにか間に合った形だった。
同盟軍の下士官から中隊指揮官へ話が通り、その中隊指揮官から、同盟軍の大隊指揮官の幕僚へと話が進んでいく。
ただそこで停滞が起きた。三日目の通信は一日に六通のやり取り。しかし展開はない。
連合軍との交渉が優先されているのかもしれない、と僕は考えた。
ただ、もう僕には発想がない。
僕の意図は、悪魔、同盟、連合での三者の協議しかない。そのために同盟と連合が結ぶのを回避する道が唯一だ。
交渉を始めて四日目。ここで同盟軍から思わぬ返事が来た。
悪魔軍が同盟軍を攻撃することはないのか、確認する内容だった。
レムの顔を思い浮かべつつ、僕は即座に、三者協議が成立すれば、悪魔軍は同盟軍と剣を交えるつもりはない、と書き送った。
今度は返事が来るまで、長い間があった。
交渉開始から五日目。
同盟軍は連合軍に三者会談を申し入れる、と伝えてきた。
悪魔軍とは比べ物にならない、即断即決だった。
「これは、どうなったのですか?」
副官の悪魔が尋ねてくる。僕は首を撫でた。
「首の皮一枚で、僕たちが雪崩と化した人間に蹂躙されなくなった、ということ」
「凄いことじゃないですか!」
「まだ分からない。まだ、ね」
それからの一週間で、同盟軍の外交官は連合軍との交渉の末、僕の書いた書状を連合軍に届けることに成功した。
結果、三者が睨み合ってから一ヶ月も経たずに、この三者の代表が顔を会わせる機会が成立した。
そしてその場に僕は悪魔側の代表として参加し、両者の代表に驚愕を持って迎えられたわけである。
もちろん、連合軍の使者も、同盟軍の使者も、僕が現れた時には驚いていた。もちろん僕のことを知っているのではなく、悪魔側の使者の一人に人間がいたからだ。
連合軍と悪魔軍の睨み合いに、同盟軍が加わる、という構図が唐突に出現した時、僕はレムとメムに外交活動を行うことを進言した。
彼らも最初こそ人間との交渉など不可能だと思っていたようだけど、それではただ目の前で、連合軍と同盟軍がどこかで折り合いをつけ、協力するのを眺めているだけになる。
当然、彼らにも悪魔が何らかの妥協案を出すとは思っていないだろうし、連合軍は同盟軍と交渉し、同盟軍は連合軍と交渉する、という可能性しか頭にないわけだ。
だから僕はまず、実際に戦火を交えていない同盟軍と交渉することを勧めた。
連合軍と交渉するのはその時点では早い。なにせ、連合軍は悪魔軍を押しているのだ。自分たちが優位に立っている相手に対し、何かを譲歩することほどバカらしいことはない。
レムとメムは、他にも悪魔の指揮官を集めて議論を始めたけど、これにはさすがに僕も学んでいた。
悪魔たちは議論が好きだが、結論を先送りにする傾向にある。
今はそんな悠長にことを構えている場合ではない。
キロに承認を得ただけで、僕は人語を完璧に理解する悪魔一体だけを連れて、密かに同盟軍の陣地に乗り込んだ。
もちろん、正式な使者ではない。
同盟軍に加わっている悪魔がいるのなら、そこを通じて、下準備もできた。でもそんな情報を確認する暇も、下準備の暇すらもない、と僕は認識していた。
同盟軍の歩哨が僕たちを発見した。そこで僕は必死にまずその歩哨をなだめ、冷静に話を聞ける状態に持って行った。これが第一の関門。
第二の関門は、その歩哨を通じて、同盟軍の下士官と面会させてもらうこと。この時点で失敗すれば敵中で孤立する、というか、煮るなり焼くなり、同盟軍の自由で、逃れる術はない。
下士官は僕たちを引見し、こちらの意図を質問し始めた。もちろん、周囲を兵士数人が囲んでいる。
ただ、下士官の口調からは、敵意はそれほど感じなかった。
僕たちがただ二人きりで、敵陣にやってきたことが彼の信頼の下地になったようだ。
「書状のようなものはあるか?」
下士官のその一言が、僕にとっては最大の収穫だった。
僕は僕自身が書いた書状を彼に手渡した。用意してあったもので、僕の署名もあるけど、その前にキロの署名がある。
書状にその場で目を通した下士官が、
「連合軍と我々と悪魔たち、三者で協議をしたい?」
つぶやいて、胡乱げにこちらを見る。僕は頷いた。
「なぜ、悪魔を倒してはいけない?」
その下士官の言葉は、想定していたうちの一つである。
「悪魔にとってのみ利がある話ではありません。連合軍がこのまま悪魔たちを押しやり、領地を広げれば、やがて同盟軍にとっても脅威となるでしょう」
「この密林をどうやって領地に変える? 開墾だけで何年とかかるはずだ」
「私は連合の支配域で生活していましたが、民間の探索士は大勢いますし、経済も順調に活発化しています。時間さえあれば、国力を高めるのは難しくない。人間、物資、資金、全てが既に揃っています。足りないのは土地だけなのです」
その言葉を聞いて、下士官がそっぽを向いた。
失敗したか。そう思った。
「良いだろう」
突然のその言葉と同時に、彼が書状を丁寧に折りたたむと近くにいた部下に手渡した。そしてこちらを見る。
「我々も連合軍との交渉を既に進めている。場合によっては、この話はなかったことにされる。それでも上層部にこの書状は渡しておく。お前たちと通信を取るにはどうしたらいい?」
感動したと言ってもいい。
この下士官は、僕たちを信じ始めている。
僕は通信のための合図や目印、位置などを決めた。下士官の部下がそれを記録している。
僕たちが去ろうとすると、下士官が不思議そうに言った。
「お前はどうして悪魔のためにそこまでやっているんだ? 本当に人間か?」
僕は真面目な顔で頭を下げた。
「私にも、主義主張というものがあります」
「人間と敵対する主義主張か?」
「人間と敵対するわけではありません」
下士官が身ぶりで僕たちを追い出した。
背後から襲われないかそわそわしながら、僕たちが同盟軍の陣地を離れ、そのまま鉄槌隊の陣地に戻ることになった。追撃や追跡は、なかったようだ。
待ち構えていたキロに報告すると、彼女は即座にレムの元へ自ら出向いて行った。どうやらキロは、僕の独断を肩代わりしてくれようとしているらしい。
キロのはその夜は陣地に帰ってこなかった。
翌朝、隊の悪魔たちが落ち着かない様子でいる中、憔悴した顔でキロが戻ってきた。
木の間に渡したハンモックに上がると、そのまま眠ってしまった。起せる雰囲気ではなく、仕方なく僕も悪魔たちも、彼女が目覚めるのを待った。
遠くで連合軍の鬨の声が消えてきて、そこでキロが目覚めた。声が遠いのを確認し、ハンモックから降りる。
「アルスはいるか」
彼女が僕を呼んだので、すぐに駆け寄った。こちらを彼女が睨んでくる。
「私の立場は極めて悪くなった。お前のせいだ」
「つまり、受け入れられなかった?」
「受け入れたよ」
バシッとキロが僕の肩を叩く。
「レムたちはもう後へは引けないと判断して、交渉を行うことで決定した。今度は交渉役が選ばれているだろう。今朝の時点では、お前が選ばれるかは微妙だが、しかし、お前は人間だからな、必要とされるはずだ。全く、大した奴だよ」
もう一度、今度は僕の腕を叩いてくる。
そうか、としか僕は言えなかった。そんな僕に、キロが笑みを見せる。いつもの剛毅な笑みだった。
「私には交渉なんてことはよくわからない。悪魔は人間と血を流して戦うことはあっても、言葉で戦ったことはない。お前がその最初の一歩を手助けするんだ」
やっぱり僕は頷くことしかできなかった。
その日の夕方、レムの元から僕に使者が来て、会議に参加するように命じられた。
会議が行われている悪魔軍の司令部には、レムとメム、あと五体の悪魔がいた。二人ほどがこちらを射るように見てくる。それを無視して、僕も席に着いた。
レムが進行役を務めて、連合軍と同盟軍との交渉について細部が話し合われていく。
悪魔たちはまず、何を要求するべきかも、話しているので驚いた。これではいつまで経っても、話が進まない。
僕は横槍を入れるように割り込んで、いくつかのことをはっきりさせた。
まずは戦闘状態を解消し、停戦、そして休戦状態に持っていくこと。
そのためには失った領地の一部、あるいは大部分を差し出すことになること。
この二点は絶対に必要だった。
悪魔たちは第一項目すらも容認できないようで、僕に敵意を向けている二人が激しく反論した。要は、人間たちが憎い、彼らは侵略者であり正当性がない、という理屈のようだった。
「彼らは悪魔たちに勝っているのです」僕は根気強く説いた。「そして人間の認識では、勝って得たものは、自分たちのものです。逆に言えば、負ければ何かを失うのです。そして負けてしまえば、何の主張もできません」
二人が激怒して何事か、悪魔の言語でまくし立てるのを、メムがなだめる。僕は言葉を続け、どうにか説得を試みた。
「いずれ敵対関係が解消され、平和が訪れれば、領土の問題は意味がなくなるとも言えます。もちろん、そのためには人間と悪魔という大きな違い、大きすぎる違いを、何らかの形で乗り越える必要がある。そして今回の交渉は、その壁を乗り越える、最初の一歩になる可能性がある」
僕が言い終わると、悪魔たちは早口の悪魔言語でやり取りを始めた。僕は聞くのに徹して、彼らの理屈を理解しようとした。
レムと彼女に従う悪魔たちは僕の提案を支持し、二人がそれと真っ向から反対してやり取りしている。
彼らの議論は果てしなく続き、休憩を挟み、もう一回休憩があり、次に昼食を挟み、また休憩を挟み、その上もう一回の休憩がある。
ついに夕食になろうかとなり、僕はさすがに頭に来た。
「あんたたちは」
彼らが全員でこちらを見た。僕は悪魔言語で言っていた。
「どうしたいんだ? 目の前に敵がいる。それも大きすぎる敵だ。それなのに、長々とここで話し合って、延々と身内で口論とは、馬鹿げている。僕が連合軍だったら、さっさと同盟軍と意思疎通して、可能なら協力し、不可能なら手を出さないように約束させて、悪魔どもを蹴散らすだろう。あんたたちは人間が大挙して押し寄せてきて、今から交渉します、とでも主張するのか? 間抜け以外の何物でもない。その時にはこちらは大打撃を受け、また後退か? 部隊を整えて、もう一回対峙して、今度こそ交渉しましょう、か? その時、どれくらいの交渉ができる? いつ交渉するのが最善かと考えれば、答えは一つしかない。たった今だ。この先はないんだ」
悪魔たちは揃って沈黙した。呆気にとられた顔で、こちらを見ている。
「今、決めてくれ。交渉するのか、しないのか。どういう方針でいくか。今まで丸一日、あんた方はお話し合いをしてきたんだろう。そろそろ結論が出る頃合いだ。どうかな」
まだ悪魔たちは黙っている。今はそれぞれに視線を向け合っている。人間風情が意見し始めた、と思っているのか、それとも、僕をこの場から追い出す意志を確認しているかは、わからない。
僕は彼らを一人ずつ、順繰りに睨みつけて言った。
最後にレムを強く睨み、僕は立ち上がった。
「夕食の休憩でも取るんでしょうね、あんた方は。人間たちが夕食の間は攻めてこない礼儀正しさを持ってると思うのなら、そうすればいい」
念を押して、僕は司令部を出て、鉄槌隊へ戻ることにした。
夕闇が周囲にたれ込める中、僕はキロの元に戻った。
「何か気に食わない事があったようだね」
彼女はそう声をかけてきたけど、僕には返事をする気力はなかった。自分のハンモックに上がって、身動きせず、息を詰めて、僕は夜を過ごした。
結果は朝になる前に届いた。深夜だった。
伝令が僕を呼ぶので即座に起き上がり、出迎えた。伝令の指示は簡潔だった。
「アルス殿を交渉役に任命し、補佐を二人ほどつけるそうです」
「人語に堪能な奴を選んでほしいね」
「もちろんです。アルス殿が任命してもいいとのことですが、如何しますか?」
僕は知り合いの悪魔の中でも人間に好意的で、かつ、若い悪魔を選んだ。若いと言っても五十年は生きているような悪魔だけど。
若いということは、多分、それだけ思考も柔軟だろう、という僕の人間観から来るのだけど、正直、悪魔がどうなのかは、わからない。それを言ったら人間だって、僕の視点から見て若い方が少しは頭が柔らかいかな、という程度の認識だけど。
彼らの任命と同時に、僕の役職をはっきりさせるように、伝令に伝えさせた。
深夜でも、もう眠っているような余地はない。最小限の明かりを用意して、僕は書状を書き始めた。とにかく、連合軍と同盟軍が共同歩調をとり始めたが最後、悪魔軍に勝ち目はない。
連合軍との連絡はほとんど不可能だから、まずは同盟軍とやり取りをして、そこから連合軍と交渉することになる。
そのために、同盟軍と太いパイプを用意しなくてはならない。いきなりは無理だ。まずは例の下士官と、その上官から味方にする必要がある。
ただ、あまりに時間がない。僕一人の知恵で、どうにかなるとも思えなかった。
シリュウがいれば、と少しだけ思った。彼は戦いを得意とするけど、でも、僕とは違う視点で、状況を見ただろう。
その代わりではないけれど、僕は数人の親しい悪魔を呼んで、書状を書きながら、彼らに議論させた。
また議論だ。ただ、今回は少し趣旨が異なる。
僕が議論させたのは、悪魔が何か人間に譲歩できるものを持っているか、だった。
出てきた意見は最初こそ、弱いものだった。停戦、魔法に関する技術の共有、契約者として人間を強化する、といった、妥当か、あるいは異質な発想だ。
僕は黙って聞いていた。すると、一人の悪魔が進んだ意見を口にした。
悪魔を労働力として提供する、というのである。
悪魔の中でも下級悪魔は今ではただ人間に狩られているだけだが、悪魔軍の一部であるように、上級悪魔の指示には従うのである。
細かな細工はできないが、土木作業などの中でも単純なこと、つまり力仕事には向いているし、数も多い。
交渉材料になりそうだな、と僕は思った。
僕自身が同盟軍の下士官に言ったように、連合側には領地拡大の全ての要素がある。人、物、金だ。おそらく同盟側にも同じものがあるだろう。
ただ、人という要素には、いくつかの側面がある。
まず数。人間の数はいきなり増えることはない。
次に対価。人間は何かをするように命じられれば、対価を求める。大きければ歓喜して発奮するが、小さければ落胆し、効率が下がる。
それを悪魔が解消するというのだ。
下級悪魔は黒の領域に無数にいる。そして彼らには欲というものがほとんどないようだ。知能が低いということもあるが、まずは食欲と睡眠欲が主らしい。
つまり衣食住を保証すれば、人間の労働を、人間よりも安価でこなすことができる。
僕は議論を聞きながら、そのことも書状に書いてみた。まだ詳細は詰めることができないが、悪魔が労働力の一部を担える、と書いておく。
ただ、これはすぐには進まないだろうとも思っていた。人間は悪魔に恐怖を感じているし、理解できる存在とも思っていない節がある。
僕のように彼らの中に混じってみれば、しっかりした自我を持ち、善悪の基準を持ち、喜怒哀楽があり、人間と重なる部分も多いとわかる。でもこれをいきなり理解するのは、不可能だ。
議論は明け方を過ぎ、それぞれに軽食を食べつつ、続けられた。中断はない。僕も書状を書きに書いた。
昼前になって伝令が再びやってきて、
「アルス殿は、交渉委任官、いう役職になりました」
と、伝えてくれた。
僕は書状の署名の前に、次々と「交渉委任官」という役職を書き加え、その書状をまとめた。
悪魔たちがこちらを見るので、僕は彼らを見回した。
僕が副官に任命した二人を含む、七人の若い悪魔たち。
「今から同盟軍を取り込みにかかる。期限は五日とする。その間、可能な限り同盟軍と密にやり取りする。すでに連絡の手段の最低限は決まっているけど、どうなるかはわからない。命がけと言ってもいい。でも、これは命を賭けるに値する仕事だ」
悪魔たちが緊張した面持ちで、頷いた。
書状を持った悪魔が出入りし始める。鉄槌隊の指揮所は、突然に情報拠点に早変わりした。
最初は半日で一通のやり取り。翌日には一日に四通まで増えた。
状況もわかる。連合軍と同盟軍の交渉はすでに始まっていて、お互いに意見をぶつけている段階。悪魔軍の動きはどうにか間に合った形だった。
同盟軍の下士官から中隊指揮官へ話が通り、その中隊指揮官から、同盟軍の大隊指揮官の幕僚へと話が進んでいく。
ただそこで停滞が起きた。三日目の通信は一日に六通のやり取り。しかし展開はない。
連合軍との交渉が優先されているのかもしれない、と僕は考えた。
ただ、もう僕には発想がない。
僕の意図は、悪魔、同盟、連合での三者の協議しかない。そのために同盟と連合が結ぶのを回避する道が唯一だ。
交渉を始めて四日目。ここで同盟軍から思わぬ返事が来た。
悪魔軍が同盟軍を攻撃することはないのか、確認する内容だった。
レムの顔を思い浮かべつつ、僕は即座に、三者協議が成立すれば、悪魔軍は同盟軍と剣を交えるつもりはない、と書き送った。
今度は返事が来るまで、長い間があった。
交渉開始から五日目。
同盟軍は連合軍に三者会談を申し入れる、と伝えてきた。
悪魔軍とは比べ物にならない、即断即決だった。
「これは、どうなったのですか?」
副官の悪魔が尋ねてくる。僕は首を撫でた。
「首の皮一枚で、僕たちが雪崩と化した人間に蹂躙されなくなった、ということ」
「凄いことじゃないですか!」
「まだ分からない。まだ、ね」
それからの一週間で、同盟軍の外交官は連合軍との交渉の末、僕の書いた書状を連合軍に届けることに成功した。
結果、三者が睨み合ってから一ヶ月も経たずに、この三者の代表が顔を会わせる機会が成立した。
そしてその場に僕は悪魔側の代表として参加し、両者の代表に驚愕を持って迎えられたわけである。
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