1 / 56
第0話
しおりを挟む
「はぁ~あ」
今週の疲れと変わり映えしない日常への飽きにも近い感情がため息となって金曜日の駅の喧騒に消える。
別に、朝起きて飯食って働いて飯食って風呂入って寝る現状に大きな不満がある訳ではない。
『事実は小説よりも奇なり』なんて言葉もあったりするが、このローテーションは現代人のほぼ全てに当て嵌まるだろう。たまになんらかの出会いやイベントがそこに挟まったとしても、圧倒的多数の普通の日々に希釈されていく筈だ。
決してそれが不幸な訳ではない。殆どの人が同じ日常を繰り返し、成長し次第に老いて逝く。一握り波瀾万丈な人生を歩む人もいるだろうが、そんなのはほんの一握りであり、一般人にとっては変わらない退屈な日常こそがかけがえの無いものなのだろう。
なんて自分に言い聞かせるように思考してみては、またため息が溢れる。波乱万丈の人生がいいとは言わないが、毎日日にちやりたくもなければやり甲斐もない仕事で頭を下げる生活を続けるのもそれはそれでキツいものがある。
ピロリン♪
そんな何かを考えてるようで何も考えていないままで列車を待っていると、スマホに一つの通知が届いた。
『よう、どうせ今日も暇してるだろ?面白いものが手に入ったから今夜うちに来いよ。あと、今日親いないからついでに晩飯買ってきてくれ』
通知を見ると幼馴染の仁から、連絡系アプリに誘ってるのかパシッてるのか分からない一文が届いていた。腹立たしい文面なのだが、暇なのは否定できないのがまた悲しい。
「なんかムカつくけどまぁいいか、ちょっと寄って帰ってみよ」
この選択が後にとんでもない出来事の引き金となるのだが、この時の僕はそんなこと知る由も無く仁の家に向かうことにした。
いつもの駅で列車を降り、近くのコンビニで買い物をしてから歩き、我が家の隣に建つ仁の家のインターホンを押す。
「よう、来たな」
程なく玄関が開き、中から中肉中背の男が出てくる。顔立ちは普通くらいなのだが、身なりに気を使ってないのがすぐ分かる無精髭と、薄汚れたバカTには働いたら負けの一文と非常に残念な出立ちだ。
「仁の言う面白い物にはあまり期待してないけど、明日も暇だしたまにはいいかなって」
「いや、今回のはマジですごいんだって、見せてやるから早く上がってこいよ」
仁に促されて部屋へとお邪魔すると、今度は見慣れたオカルトグッズの山が出迎えてくれる。壁に掛けられた謎の面たちがこちらを見ているようでまるで心が落ち着かない。
「まぁ適当に座ってくれよ」
床に散らばっている謎のグッズを適当に押し除けて座る仁に倣い、僕も適当に自分の場所を確保して座る。
「相変わらず散らかすだけ散らかして、変なもの集める前にたまには掃除したらどうなの」
「どこに何があるかは分かるし、片付けてもどうせまた散らかるんだからこれでいいんだよ。それより今度のは凄いから見てみろって」
そう言うと仁はガラクタの山の中から一冊の本を取り出してきた。装丁は傷みが激しいことが一目で分かるような状態だが、作り自体は革でしっかり作られている。表紙や背表紙に何も書いてないことを除けばただのボロボロな本に見えるがこれのどこが凄いのだろうか?
「見ろ、これが世にも珍しい開かない魔導書だ!」
(はぁ、まただよ…)
仁は昔から変わり者で、頭は良いのにオカルト、とりわけ魔法という言葉に目が無く、子供の頃からこういう訳分からない物を集めては部屋の肥やしにしていた。
「仁、落ち着いて考えてみてよ?表紙も背表紙何も書いてない上に開かないのにどうして魔導書って分かってるのさ?」
仁の表情が固まリ、手から本が滑り落ちる。普段の仁ならばそのくらい気付けるはずなのだが、恐らく魔導書という響きに浮かれてしまったのだろう。
「ねぇ仁、仁がこういう変な物集めたり魔法使いになりたいってのは馬鹿にしないけどさ、僕たちもそろそろ良い大人なんだし、買う前には一呼吸入れて冷静に判断する癖くらいはつけようよ」
「いや、でも、開かないのは本当なんだよ!」
諦めきれないのか仁が食い下がる。確かに本が開かないのは不思議だけど、大方何かで貼り付いて固まってるとか、本によく似た小物入れとかそういうオチなのではなかろうか?というか…
「そもそもその本、開きかかってない?」
「あれ、マジでか?てかなんだこの光⁉︎」
開きかけた本の隙間から光が溢れる。やっぱり本じゃなくて玩具か何かだったんじゃないか?とか考えてるうちに溢れでる光がどんどん強くなる。
「ね、ねぇ仁、この光は一体何⁉︎」
「凄いぞ、こいつはもしかすると本物の!」
既に仁には僕の声など届いて無いようで、視線は本のような何かに釘付けになっている。
そうこうしてるうちに光は部屋いっぱいに広がり、僕達は光の中に飲み込まれ、そのまま僕の意識は途絶えた。
今週の疲れと変わり映えしない日常への飽きにも近い感情がため息となって金曜日の駅の喧騒に消える。
別に、朝起きて飯食って働いて飯食って風呂入って寝る現状に大きな不満がある訳ではない。
『事実は小説よりも奇なり』なんて言葉もあったりするが、このローテーションは現代人のほぼ全てに当て嵌まるだろう。たまになんらかの出会いやイベントがそこに挟まったとしても、圧倒的多数の普通の日々に希釈されていく筈だ。
決してそれが不幸な訳ではない。殆どの人が同じ日常を繰り返し、成長し次第に老いて逝く。一握り波瀾万丈な人生を歩む人もいるだろうが、そんなのはほんの一握りであり、一般人にとっては変わらない退屈な日常こそがかけがえの無いものなのだろう。
なんて自分に言い聞かせるように思考してみては、またため息が溢れる。波乱万丈の人生がいいとは言わないが、毎日日にちやりたくもなければやり甲斐もない仕事で頭を下げる生活を続けるのもそれはそれでキツいものがある。
ピロリン♪
そんな何かを考えてるようで何も考えていないままで列車を待っていると、スマホに一つの通知が届いた。
『よう、どうせ今日も暇してるだろ?面白いものが手に入ったから今夜うちに来いよ。あと、今日親いないからついでに晩飯買ってきてくれ』
通知を見ると幼馴染の仁から、連絡系アプリに誘ってるのかパシッてるのか分からない一文が届いていた。腹立たしい文面なのだが、暇なのは否定できないのがまた悲しい。
「なんかムカつくけどまぁいいか、ちょっと寄って帰ってみよ」
この選択が後にとんでもない出来事の引き金となるのだが、この時の僕はそんなこと知る由も無く仁の家に向かうことにした。
いつもの駅で列車を降り、近くのコンビニで買い物をしてから歩き、我が家の隣に建つ仁の家のインターホンを押す。
「よう、来たな」
程なく玄関が開き、中から中肉中背の男が出てくる。顔立ちは普通くらいなのだが、身なりに気を使ってないのがすぐ分かる無精髭と、薄汚れたバカTには働いたら負けの一文と非常に残念な出立ちだ。
「仁の言う面白い物にはあまり期待してないけど、明日も暇だしたまにはいいかなって」
「いや、今回のはマジですごいんだって、見せてやるから早く上がってこいよ」
仁に促されて部屋へとお邪魔すると、今度は見慣れたオカルトグッズの山が出迎えてくれる。壁に掛けられた謎の面たちがこちらを見ているようでまるで心が落ち着かない。
「まぁ適当に座ってくれよ」
床に散らばっている謎のグッズを適当に押し除けて座る仁に倣い、僕も適当に自分の場所を確保して座る。
「相変わらず散らかすだけ散らかして、変なもの集める前にたまには掃除したらどうなの」
「どこに何があるかは分かるし、片付けてもどうせまた散らかるんだからこれでいいんだよ。それより今度のは凄いから見てみろって」
そう言うと仁はガラクタの山の中から一冊の本を取り出してきた。装丁は傷みが激しいことが一目で分かるような状態だが、作り自体は革でしっかり作られている。表紙や背表紙に何も書いてないことを除けばただのボロボロな本に見えるがこれのどこが凄いのだろうか?
「見ろ、これが世にも珍しい開かない魔導書だ!」
(はぁ、まただよ…)
仁は昔から変わり者で、頭は良いのにオカルト、とりわけ魔法という言葉に目が無く、子供の頃からこういう訳分からない物を集めては部屋の肥やしにしていた。
「仁、落ち着いて考えてみてよ?表紙も背表紙何も書いてない上に開かないのにどうして魔導書って分かってるのさ?」
仁の表情が固まリ、手から本が滑り落ちる。普段の仁ならばそのくらい気付けるはずなのだが、恐らく魔導書という響きに浮かれてしまったのだろう。
「ねぇ仁、仁がこういう変な物集めたり魔法使いになりたいってのは馬鹿にしないけどさ、僕たちもそろそろ良い大人なんだし、買う前には一呼吸入れて冷静に判断する癖くらいはつけようよ」
「いや、でも、開かないのは本当なんだよ!」
諦めきれないのか仁が食い下がる。確かに本が開かないのは不思議だけど、大方何かで貼り付いて固まってるとか、本によく似た小物入れとかそういうオチなのではなかろうか?というか…
「そもそもその本、開きかかってない?」
「あれ、マジでか?てかなんだこの光⁉︎」
開きかけた本の隙間から光が溢れる。やっぱり本じゃなくて玩具か何かだったんじゃないか?とか考えてるうちに溢れでる光がどんどん強くなる。
「ね、ねぇ仁、この光は一体何⁉︎」
「凄いぞ、こいつはもしかすると本物の!」
既に仁には僕の声など届いて無いようで、視線は本のような何かに釘付けになっている。
そうこうしてるうちに光は部屋いっぱいに広がり、僕達は光の中に飲み込まれ、そのまま僕の意識は途絶えた。
10
あなたにおすすめの小説
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?
山咲莉亜
ファンタジー
ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。
だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。
趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?
ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。
※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる