転生少女は元に戻りたい

余暇善伽

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第9話

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修行が始まって数日が経った。僕達の体は元に戻りそうにもにない。相変わらず僕は基礎体力作りに走ったり素振りをさせられて、仁は首から下を地面に埋められていた。
 でもそんな中で少し変化があった。
 「風よ!」
 仁がそう叫ぶとハンディ扇風機の弱くらいの風が吹き抜ける。そう、遂に仁は魔法を習得したのだ。と言ってもまだこれが最大出力だが。
 「ふぅ~涼しい」
 僕はそれを受けて涼む。仁本人は必死の形相で力んでいるのだが、あいにく吹く風に変化はない。ただ柔らかなそよ風が吹き付けるだけだ。
 「アスカ、お前はあんまり休憩するなよ。修行の意味が薄れるからな」
 カインからの訓練の意味は数日経つと分かり始めてきた。僕の訓練は基礎体力を作りながら、同時に体力の限界まで体を動かすことで体力を魔力で補おうとするのを引き出そうとしているものらしい。
 そして仁が首から下を埋められていたのは自然に対して魔力で干渉する訓練の為、自然になるべく多く触れ合うためだったらしい。
 仁の方は早くも目に見えた結果が出てるのに対して、僕の方は毎日蓄魔石に触らせてもらってもまだ魔力がなんなのかよく分かっていない。ただ、体を動かす才能については認められたし、そんなに焦ってはない。
 「ほらほら、明日は訓練できないからな。今日のうち頑張っとけよ」
 カインから檄が飛ぶ。でも明日は訓練できないって何があるんだろ?
 「明日訓練できないって何かあるんですか?」
 「あれ、言ってなかったか?明日は日曜学校だろ、お前達の着替えも城に住んでる人たちから貰ったお下がりばかりだし、お昼からは買い出しにも行かないとな。お前達も生活雑貨とか欲しいだろうし」
 どうやら僕達が今着ている服は誰かのお下がりだったらしい。通りでサイズが合わなかったはずだ。
 「風よ!」
 仁はどうやら人の話を聞いていないらしい。必死に魔法を出そうとしているが今度は空振りしている。
 「ジン、力んでばっかりじゃ出るもんも出ないぞ!もう一度埋められたいか!」
 カインから指摘が入る。因みにカインも魔法は使えるらしく、僕達にも何度か手本を見せてくれた。
 「アスカ、お前はもっと右足に意識を持て!」
 仁のことを見ていると思ったら、続け様に僕のところにも叱責が飛んでくる。どうやらカインの視野はかなり広いらしい。
 「ほら、後一時間、集中!」
 「「はい!」」
 
 訓練が終わり、訓練より疲れる二日に一回の入浴が終わると僅かながら自由時間になる。因みに、お風呂が沸かされない日は各々桶にぬるま湯を用意して体を拭くことで代用する。僕は毎日これでいいと言ったらやっぱりシアンさんに怒られてしまった。
 「風よ!」
 「凄い凄い、風吹いたよ!」
 最近のこの時間帯はロバートが仁の言いつけを守って毎日遊びに来ている。少しずつ一緒にいることも慣れてきたのもあってか普通に話せるようになった。貴族の子と僕達が普通に話していているのが良いことか悪いことかは分からないが。
 「二人は明日日曜学校に外の教会に行くんでしょ?いいな~」
 「あれ、ロバート君は日曜学校に行かないの?」
 「僕はお城の礼拝堂でみんなと一緒に受けるから、お城の外には行かないんだ」
 どうやらお城の中にも礼拝堂があるらしい。僕達からしたらそもそも何教かすら良く分かってないから、日曜学校なんて行きたくもないのだが。
 「とりあえず、日曜学校のおかげで明日は修行を免れるから良いか~」
 ベッドの上で伸びをすると全身の筋肉が攣ろうと準備を始めるのが分かる。
 「怠惰だなお前は」
 「仁にだけは言われたくないかな」
 そもそも僕は巻き込まれて修行を受けているのに、真面目に受けているだけ褒めて欲しい。まぁ嘘を吐いてる罪悪感とかこの世界で暮らしていく方法がないから仕方なくではあるんだけど。
 「それじゃあ僕はそろそろ部屋に戻るね。明日はお城の外の事聞かせてよ?」
 「分かった、おやすみなさい」
 挨拶を交わすとロバートは出ていく。
 「でも日曜学校があるってことは今日は土曜日だったんだね」
 「まぁそう言うことになるわな」
 この部屋には時計はあるがカレンダーは無く、日付はよく分かっていなかった。そもそも過ごしやすい気温の日が続いてるけど、今は何月なのだろうか?と言うかこの世界も一年は十二ヶ月なのだろうか?
 まぁ考えても答えは出なさそうなので諦める。明日城下町に出るのならその時カレンダーくらいは置いてあるだろう。
 「あれ、そう言えば僕達ってこの世界のお金持ってないよね?」
 「今まで城の中で必要なかったが、明日は必要になるな。まぁ必要な分くらいカインが出してくれるだろ」
 仁は既にカインに集る気満々だ。とは言え、今の僕達にお金を工面する方法がある訳でも無いので必要となったらカインに頼むしかない。
 (いつかお返ししないとなぁ)
 そう思いながらもう重たい目を閉じ、床に就くのだった。
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