転生少女は元に戻りたい

余暇善伽

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第32話

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 「これが王立学校…」
 試験まで残り2日の朝、僕達はアルコーズ王立学校に試験会場の下見に来ていた。
 「想像してたより更にデカいな」
 「歴史も学科数も学力も生徒数も何もかも国一番の学校だからな」
 カインに先導されて歩いてきたが、建物自体は既に宿から見えていた建物だった。正面にはお城のような大きな建物が建ち、その後ろには複数の大きな建屋が並んでいる感じは学校は学校でも大学の方がイメージに近いかもしれない。
 しかし、制服はあるようで門の向こう側には黒い制服の男子生徒や黒セーラーの女子生徒の姿が見える。時々白い制服の生徒も混ざっているが彼らも学生なのだろう。
 僕達が正門に近寄ると脇の小さな建物からガタイのいい守衛が一人駆け寄ってくる、どうやら一般人の入出場を管理しているようだ。カインが身分証を見せながら手続きするとムキムキの守衛の態度が心なしか良くなる。
 「本日はどういったご用件でしょうか?」
 「明後日の冒険者学科の入試会場の下見ついでに学校見学だ」
 「かしこまりました、それでは皆さんこちらのピンバッジをお付け下さい。お帰りの際はここを含めた東西南北の四つの門の内、いずれかにこのピンバッジをお返しください」
 そう言って小さなピンバッジを渡されたので胸元につける。入管証みたいなものだろうか?
 「明後日の一般入試会場は向かって右手奥に見えるB棟、実技科目は敷地中央のグラウンドになります。もし不明な点がございましたら看板等もございますのでご活用下さい」
 教えてくれた守衛に軽く礼を言い正門の中に入ると、ここまでで既に目立っていたのか門の中で話題の的になっているのが分かる。しかし、聞き慣れたリズムのチャイムが鳴ると蜘蛛の子を散らすようにみんなどこかへ消えてしまった。
 「さて、まずは入試会場のB棟を見に行くか」
 そう言って歩き始めるカインに着いて歩き始める。
 「なぁカイン、このピンバッジってなんなんだ?」
 「そのピンバッジはマジックアイテムだ。特殊な水晶を使うと一定範囲内でバッジがどこにあるか特定できるようになっているから、こういう施設の入管証なんかに良く使われるんだ」
 外すと不審者扱いされることになるから外すんじゃないぞとカインが釘を刺してくる。それにしても便利なものがあるもんだ。
 「他にもマジックアイテムってあるんですか?」
 「あるぞ、例えばここまで乗ってきた魔導列車も広い意味ではマジックアイテムだ。ただこのピンバッジみたいな小さくて簡易的な物はともかく、多くのマジックアイテムは古代文明の遺産を修理したり加工しないと手に入らないがな。そういうのも冒険者の仕事さ」
 そんな話をしながら結構な距離を歩き、入試が行われるB棟を見て回る。歩いて回ってるとは言え、同じ敷地内なのに広すぎて結構時間がかかる。
 「それにしてもめちゃくちゃに広いし建物の一つ一つもデカいな。学校というより学園都市みたいじゃねえか」
 仁の悪態に言い得て妙かもなとカインが笑う。
 「この学校は生徒や教員を含めて千人を超える人が集まっているからな、並の村より人が多いし大きくもなるさ」
 そんな話しをしながら次に中央にあるというグラウンドを見に行く。と言っても大きすぎて既に建物たちの隙間からその一部は見えている。
 近くまで来てみると、巨大なグラウンドでは授業をしているのか剣や槍といった武器を持った集団がいる。傍には観覧席も付いていて、上からグラウンドを見れるようになっているようだ。また外れには武道場のようなものも見える。あそこもきっと何かするところなのだろう。
 「ここも広いね」
 「こりゃ一周1kmはありそうだな」
 「明後日はここで入試があるんだ、しっかり道を覚えとけよ?」
 大きさにばかり目がいってる僕達をカインが注意してくる。でも、目標一つ一つが大きすぎてそう簡単には迷子にならないと思う。
 グラウンドを見ていると笛の音が鳴り、さっきの武装集団が一斉に二手に動き出す。
 「ありゃ騎士科の授業だろうな」
 「見ただけで分かんのか?」
 「全体行動を必要とする学科は他に無いだろうからな」
 二つの塊が一定の距離を取って止まると、今度は激しくぶつかり合いを始める。統率が取れていて見ている分には壮観だ。
 しばらく武装集団を眺めてから、その後は冒険者学科が入ってる棟や図書館、寮などを見て回った。この国で一番の歴史があると言われるだけあって、基本的にどの棟も年季が入っている。
 「お前たちも合格すれば来年の春からここに泊まり込むことになる、しっかりイメージしとけよ。まぁ城よりは生活しにくいだろうがな」
 そういってカインが笑う。確かに城の暮らしは(お風呂等一部を除いて)快適だった。それに比べてさっき見てきた寮も古い建物のようだったし、集団生活になる以上ここでの生活は快適とは言い難いだろう。
 「大丈夫だろ、多分」
 「またそんな根拠の無いこと言って、誰かに起こしてもらわないと起きられない癖に」
 元々遅刻の常習犯だったのに一体どこからこの自信が湧いてくるのか。
 やいやい言い合いながら必要なところは一通り見て回り、さっきの守衛にピンバッジを返して外に出る。
 「思ったより時間かからなかったな、昼飯食って王都散策でもするか?」
 「賛成、俺本屋見てえ」
 「僕も賛成、ホテルに帰っても特にする事もないし」
 決まりだなとカインが歩き出すのについて歩く。
 仮にも受験生なのにこんな事していて良いのか?という思いが無いわけではないが、歴史以外は大丈夫だろうしどうにかなるよね。
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