転生少女は元に戻りたい

余暇善伽

文字の大きさ
40 / 56

第39話【軽くですが血の描写があります】

しおりを挟む
 「つ、遂にこの日が来てしまったのか……」
 キャンプから戻った翌日、「悪い、しばらくはまたゴーレムと戦っててくれ」と言い残しカイン達は慌ただしく城を出て行った。
 仕方ないので再びゴーレムと戦い出して一週間ほどしたある日の朝、事件は起きた。
 いつも通り仁より早く起きて髪を解かそうとすると下腹部の鈍痛と股の所に違和感があり、恐る恐る調べてみると股が血が出ていて慌てて目を逸らしてしまった。
 考えられる要因は二つ、一つは昨日も容赦なくゴーレムにぶっ飛ばされたから傷が残っていた説。
 そしてもう一つはあまり考えたくは無いが、女の子特有のが始まった説。
 痛いやら恥ずかしいやら困惑やらでグチャグチャになってる頭を一旦落ち着かせて一個づつできる事を考える。
 「と、とりあえずメイドさんを呼んでどうにかしてもらおう」
 シーツを汚した事も謝らないといけないし、出血が続いてるならその対処もしなければいけない。そうなればメイドを呼ぶのが最善だろうと考えメイドを呼びに寝てる仁を放って部屋を出る。
 「それで初潮が来てたって訳か」
 「まぁそうだったんだけど、もう少しデリカシーって物は無いの?」
 「来て悪いもんでも無いだろ、子供同士でもあるまいし」
 医務室に行ってから食堂に来ると仁が待っていた。待ってくれていたのは良いのだが、その発言にはデリカシーの欠片も無い。
 ただでさえ股の異物感や下腹部に鉄球でも入れられた様な違和感があるのに、これ以上神経を逆撫でするのは止めて欲しいんだが。
 「それに俺だって精通が来てるぞ、これでおあいこだ」
 「いや要らないよそんな情報」
 そんなしょうもない情報を伝えられておあいこと言われてもこっちが困る。確かに来てたのは初耳だったが、その情報を伝えられて僕は一体どうすれば良いのか。
 「まあなんだ、要するに誰にでも来るんだ、そう落ち込むなってこった」
 「まったく、分かったよ僕も不機嫌晒してごめん」
 これでも仁なりに励ましてくれてた様だし、僕も年甲斐もない態度だったのは間違いないのでとりあえず今回はこれで終わりにする。
 「あ、じゃあさお詫びに僕の残り食べない?食欲無くって」
 「前に言われたろ?食べるのも修行の内だって。我慢して食べるんだな」
 そう言って仁は食べてくれない。クソ、許してやらないからなと心の中で悪態を吐きながら結局無理やり全部食べ終えて庭へ向かう。
 「それで、運動自体はできるのか?」
 「激しい運動は控えろって、特にゴーレムと戦うのはダメだってさ」
 後者については元々ワーナーが反対だったからかもしれないが、医者の言うことには大人しく従っておくべきだろう。何かあった時、治してもらえなくても困るし。
 「だから治るまでしばらくは素振りかな」
 「じゃあさ、お前も魔法の訓練して見ないか?」
 この前だって暴発したとは言え魔法自体は出たんだし、頑張れば制御できるだろと仁が誘ってくる。カインにはそんなこと言われてないけど、僕にが来るなんてカインも予想外だろうし良いか。
 「いいけど具体的に何をするつもりなの」
 「俺が前にもらった魔導教本に載ってたんだが、相手に魔力を流して魔力制御を学ぶって方法があるらしいんだ。魔力を使える人間が二人以上いないとできないのが欠点の方法らしいんだが、俺たちなら二人とも魔力が使えるだろ?」
 「分かった分かった、要はそれが試して見たいんでしょ」
 こちらとしてもデメリット自体は無さそうだし、試してみるくらいなら良いだろう。どうせしばらくは素振りくらいしかまともにできないんだし。
 「それでどうすればいいの?」
 「手を繋ぎ合って片方がもう片方に魔力を流すらしい。初めに俺がお前に流してみるぞ」
 そう言って早速両手を手を握られる。
 「お前の手、見た目の割にゴワゴワしてんな」
 「余計なお世話だよ、剣を振ってるんだから当たり前でしょ」
 むしろ本当は見た目の方が筋肉質になって欲しいのだが、やっぱり見た目にはあまり筋肉が無さそうに見える。つまり僕の努力を証明してくれるのは唯一手のひらだけだ。
 「分かったよ、それじゃ流してみるぞ」
 そういうと仁が目を閉じ集中し始める。最初は何も感じなかったが、しばらくすると腕になんか爽やかなミントと言うかキシリトールと言うか、アルコール消毒の液に手を突っ込んで引き上げたような涼しげな感覚が流れ始める。
 「どうだ、なんか感じるか?」
 「なんか腕がスースーしてきたんだけどこれかな?」
 「多分それだろう、試しに一度止めてみるぞ」
 仁がそう言うとさっきのスースーした感覚が段々薄れていく。どうやらこれで合ってたらしい。
 「凄いね、やっぱり感じてる感覚は触覚なのかな?」
 「さぁな、でも魔力がある人間と無い人間で五感が違うとは考えにくいから五感のどれかだろうな」
 それじゃ今度はお前がやってみろと仁に促される。
 「でも突然そう言われても、どうやって流せば良いのか良く分かんないんだけど?」
 「とりあえずこの前暴発して時の感覚をもう一度試してみたらどうだ」
 そう言われてこの前みたくいろんなアニメの事を思い出しつつ両手に集中してみるが、どうやら仁に変化は無いみたいだ。
 「ダメだ、何も感じないぞ」
 「仁が鈍いんじゃない?」
 「お前には言われたくないわ。上手く流せてないんだよ、もっと集中してみろって」
 本当にこんな方法で上手くいくのかな?でも仁がうるさいしとりあえずもう一度やってみるか。
 結局その後あれこれ試行するもこれっぽっちも魔力は送れす、ただただ時間だけが過ぎていく。
 「ダメだな、やっぱり何も感じない」
 「やっぱり仁が鈍いんだって」
 「いや、そんなはずはない。お前ちゃんと魔法の存在を認めてるか?」
 仁に聞かれて思い出してみる。魔法の存在そのものは目で見てしまった以上今更疑ってないが、そう言えばあの時は一応魔法を使えるかどうかを疑うことも止めていた気がする。だが今は魔法どころか方法自体を疑っている状態だ。これがいけないのかもしれない。
 しかし、そんな事で上手くいくのだろうか?いやこの思考がダメなのか?
 「ちょっと、もう一度試してみるね」
 「おう、今度こそ成功させろよ」
 訳が分からなくなって来たのでとりあえず疑うことは全部止めて、できることだけを考えてみる。これでダメなら仁が鈍いんだ。
 手の先に意識を集中して、記憶にあるアニメキャラ達を頼りに火が付くイメージを頭の中に思い描く。
 「おっ、おいなんか暖かいのが来てるぞ!」
 「えっ、ホント!?」
 仁にそう言われ集中が切れた瞬間、ポンッと軽い音を立てて繋いでいる両手に火が灯った。
 「アッチィ!」
 両手が火に包まれた仁が僕の手を乱暴に振り解き手を振り回す。
 「あ、ごめん火が点いちゃった」
 「バカ、ごめんじゃあるか!」
 自分の魔法で生成した水を使って手を冷やしながら仁が怒るが、焦っているからかいつもより水の出が悪く四苦八苦している。
 「どう、手は大丈夫?」
 「この手が大丈夫そうに見えるか?」
 水魔法で冷やす事から回復魔法で治す事に方針を変えた仁が治療中の手を見せつけてくる。
 「ごめんごめん、魔力が来てるって聞いてちょっと集中切れたんだよ。悪気は無かったんだ」
 「それは分かってるが、悪気が無いなら何しても許される訳じゃねぇぞ」
 仁が恨みがましい目でこちらを見てくるが、こちらとしては謝る以外どうする事もできない。大体、仁がやりたいって言い始めたのだからこのくらいのトラブルは想定しておいてほしい。暴発の前科はあるんだし。
 「でも、仁の手が尊い犠牲になってくれたおかげでちょっと分かって来たかも」
 「そりゃよかったな、俺の手も燃えた甲斐があったってんだ」
 そう言いながらやっと回復し終わった手を見せつけてくる。ワーナーやカインの様にみるみるうちにとはいかなくとも、このくらいの軽い怪我なら仁でも治せるようになったのは大きい。
 「それじゃもう一度試してみるか」
 「良いの?また暴発するかもしれないよ?」
 「ちょっと分かって来たんだろ?なら忘れないうちにもっと試しといた方がいいだろ」
 大体そう何度も暴発するんじゃ全然分かってないしなと仁が笑う。
 結局、その日のうちに意図的に魔力の流れを変える方法については分かるようになったが、魔法の意図的な発動には至らないのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...