転生少女は元に戻りたい

余暇善伽

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第55話

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 暗く埃くさい空間には僕以外誰もおらず、よく目を凝らしてみれば周りには何に使うのか分からない大道具などが埃を被ったまま置かれている。彼らは長い間日の目を見ていないようだ。
 ここは恐らく長く使われていない倉庫の一つだろう。学校が広くて古いので校内にはそういう倉庫がいくつか存在する。
 (クソ、油断はしてなかったのに)
 声が出せないように口を布で塞がれているので心の中で悪態を吐く。
 どうやら僕は気絶していたらしく、気がついたらこの場所に閉じ込められていた。足は縛られていないが、腕は後ろで縛られた上木製の壁に固定されているので動こうにも動けない。
 (さて、ここからどうしようか)
 助けを呼ぼうにも口を縛られているし、壁を蹴って誰かを呼ぶにもここがどこかよく分からない以上効果は期待できない。それに僕を誘拐した奴らがどこにいるかも分からない以上、下手なことはするべきじゃ無いだろう。
 縄を魔法で焼こうにも魔法は手のひらからしか出せたことがないが、縛られている位置が手首なので焼くのも無理。
 仁たちが探してくれてはいるだろうが目撃者もいない状態だったし、見つけてもらえるのをただ待ってるんじゃいつになるか分からない。
 「こっちは何も無いがどうだ、そっちは何か異変あるか?」
 「こっちも何も起きてないぜ」
 「よし、後十分だこのまま警戒を続けよう」
 他にできることがないのでどうするか考えながら聞き耳を立ててたら、外からそんな会話が聞こえてくる。恐らく僕を攫った奴らの会話だ、誘拐犯たちがそばにいると言うことはまだ五時にはなっていないということだろう。
 せっかく人目がないところで誘拐したんだ、もし五時になっているなら誰かに怪しい所を見られる前に僕を捨てて行方をくらましてるはずだ。
 (だとすると、後十分ってのは五時までのタイムリミットのことか?)
 気絶したまま五時を迎えなかったのは幸いかもしれないが、どちらにせよこのままじゃ何もできずに五時を迎える事になる。ロバートの為にもそれは避けたいし、何よりこんなことで負けるのは悔しい。
 残り時間は十分。手は繋がれていて逃げられない、でも救助を待つんじゃいつになるか分からない。どうやったらこの状況を打開できるのか。
 (方法は一つしかないか……)
 そもそも不慣れな上、口が縛られているので出るか怪しいが魔法を使って繋がれている壁ごとぶっ飛ばして逃げる。これしか方法は無いだろう。
 例え逃げ損ねても大穴さえ開けてしまえば見つかるのも時間の問題のはずだ。
 ただ問題は山ほどある。そもそも魔法が出るのかとか、そんなことをする良心の呵責とか、腕を繋がれた先が大きく残ってしまったらどうするのかとか、もし向こうに人がいたら巻き込んでしまうとか。
 しかし、他に方法がないのだからそんなことを考えていても仕方がない。後はここで黙ってタイムリミットを待つしか僕に残された道はないのだ。
 それより一番の問題は魔法がちゃんと出てくれるかどうかだ。
 縛られた腕をできるだけ伸ばし壁に手のひらを押し付けて手のひらに神経を集中させる。狙って出せたことは今のところ無いけど、落ち着いてやればきっと出せると自分に言い聞かせる。
 手のひらに意識と魔力をできる限り集中し、頭の中で壁ごと吹っ飛ばすイメージをゆっくりじっくり確立させる。
 「はへほ!」
 集中が頂点に達したと思った瞬間縛られた口で叫ぶと、ドガァン!という爆音と共に体が吹き飛ばされる。
 自分で起こしておきながら一瞬何が起きたのか分からなくなるくらいの大爆発が起き、壁に大穴が開く。ちょっとやりすぎたかもしれない。
 「おい、今の音はなんだ!早く扉を開けろ!」
 「急かすな、この扉鍵が古いんだよ!」
 外からはさっきの会話の主たちの慌てた声が聞こえてくる。どうやら魔法が出た余韻に浸る時間や悠長に転がっている暇は無いらしい。
 腕は後ろで縛られたまま、爆発でできた穴を身体能力強化魔法を使って全速力で走り抜け、そのまま倉庫と距離を取る。
 後ろから追いかけてくる人たちがどの程度の速度を出せるか分からない以上、今のうちに距離を確保するに越したことはない。
 周りを見てみると突然の爆発に騒然としている中、両手を縛られた僕が煙を突っ切って走っていくのを何人かが驚いた顔で見ているが、その相手をする暇は無いのでそのまま無視して走り抜ける。
 校舎の配置から見慣れた冒険者学科がある区画だと分かったので、速度を落とさずそのままグラウンドまで向かう。
 途中爆発音を聞いた生徒や教師、貴族科用の防衛隊が現場に駆けつけるのとすれ違い、後ろで腕を縛られたままの奇異な格好で走ってるせいで何度か呼び止められたが面倒なので挨拶だけして傍を走り抜ける。
 どうにかグラウンドに駆け込むと、僕の姿が見えたからか集まっていた群衆がわっと沸く。どうやら僕たちの決闘の話はだいぶ広まっていたようだ。
 その群衆の真ん中では事情を説明してくれていたのか安堵した顔のペロとロバート、それに対して顔を青ざめさせているクロトが見える。
 「お待たせクロト君、約束通り逃げずに来たよ」
 両手を縛られたまま群衆の中を通り抜けクロトの正面に立つ。
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