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今後の為に
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「人、じゃない? それは性格的とか道徳的な意味で、ですか?」
「違う、確かに人の形をとっているが根本的に生物学的に人間とは異なるということじゃ」
生物学的に人間ではない、にも関わらず人の姿をしている。という事はつまり妖怪あるいは幽霊に分類されるということだろうか。
そこまでわかっているという事はアマテラスは犯人に心当たりがあるのだろう。しかもそれだけでは無い、私はアマテラスがこんなに慌てている様子を今まで見たことがない。相当事態は深刻なのかもしれない。
「鬼龍院白夜。現界、異界どちらをとっても屈指の格闘家。なのじゃが……」
「格闘家? だって被害者は切られたんじゃないんですか?」
「そうなのじゃ、姿形からして鬼龍院白夜には違いないはずなのじゃ……」
格闘家が刀を使う。そんなことがあるのだろうか。いやそんな考えはきっと偏見だとは思うけれど、それでもどこか違和感が残る。
「そう鬼龍院一族は代々は拳法一筋じゃった。納得は出来んのじゃが、だとしても切った奴が相当な腕であるというのは確かじゃ」
切った犯人が鬼龍院だとしてもそうじゃないにしても脅威であることに変わりはないということである。
「それでその鬼龍院っていうのはどれくらい危険なんですか?」
接点がなかったのだからどんな人物なのかといった情報が何もない。このご時世情報の多さがものを言う、敵を知り味方を知れば百戦危うからずとも言う。知っておいて損はないだろう、何より何とも言えない嫌な予感がするのだ。
というかそもそもどうしてこんな事になっているの?
「奴は妾達にとっては大したことないのじゃが、今の花撫にとっては脅威でしかないのじゃ」
まぁ、当然だろう、神様それも最高神よりも強いものなどがあるはずがない。というか今回の件は神の力でどうにかできないのだろうか。
「残念じゃが、それは出来んのじゃ。そういう決まりなのじゃ」
それもそうか、毎回毎回何かが起こる度に神が力を行使していては何も成長がない。
「……ちなみにもしも戦うことになった場合いの勝率はどれくらいなんですか?」
「限りなくゼロじゃ。逃げる方が賢明じゃ」
迷いなく神がここまで言う存在。鬼龍院白夜、無闇に関わらない方が良さそうだ。どうも命がいくつあっても足りそうになさそうな気配を背中に感じる。こちらから関係を持たなければ今まで通り関わり合うこともないのだろうし。
「……そうもいかんのじゃ」
「ど、どういうことですか?」
こちらから関わらなければ、接点を持たなければいいのではないだろうか。
「そう単純でもないのじゃ。何故やつはこの神社の周辺に出没しているのか、考えてみるのじゃ」
う~ん、まずもって用がないところにはわざわざ赴かない。それは人間も妖怪も幽霊だって同じはず、つまり何らかの目的があるということ。そしてそれのためには神社の周辺に出没する必要がある。いや、目的は神社周辺ではなくて神社自体?
「その通りじゃ。そしてより正確にいうなら花撫、お主が今回の標的じゃ」
「わ、私ですか?」
いや、なんで? 標的にされるような事なんて一切していない。目立つようなことも何もしてない。というか逆に何をしたのだろう。
「確かに花撫が関わっているのではない、花撫という存在が大きく関わっておるのじゃ」
私は関わってはいないのに私の存在が関わっている。全くもって理解が及ばない。
「それは一体……」
「そのままの意味じゃ。この世界において力を持っているがどこにも属さない存在、それが今の花撫の立ち位置じゃ。奴らは花撫を得るためにコソコソ神社の周辺を嗅ぎ回っておるのじゃ。その力を自分達の陣営に取り込むためにの」
どういうことなのだろう、今まで別にそれらしい前兆があった訳でもない。特にこれといって目立ったことは本当に無いし、別に普通の巫女では無いだろうか。そもそもどうして私を引き込む必要性があるのだろうか。
「……普通の巫女は霊術など使えないのじゃ」
さらっと衝撃の事実が告げられた。今まで使えて当然だったし何より周りにも使える人は沢山、たくさん……いると思うのだけれど。とういかじゃあなんで私には扱えてるのだろうか?
「じゃから、扱うだけの力が花撫にはあるのじゃ」
「なんで私なんですか?」
「……さあ、なんでじゃろうな」
わかりやすい神様である。顔に感情がそのまま出てきている。これなら心を読めなくても何かを隠しているということは誰でも分かる。まぁ、隠し事のできない性格なのだろう。それはいいことなのだけれど、しかしこの様子ではきっとこれ以上何を聞いても教えてはくれないだろう。私に言えない何かを隠しているのは確かなんだろうけど……。
「それで、そもそもなんで私が狙われるなんて事態になっちゃっているんですか?」
「うむ、まず説明しておくと三界というのは分かるじゃろ?」
「はい、現界、異界、冥界の総称ですよね」
現界はつまり今私がいるこの世界。現世だったりこの世と言われるところ。
異界は妖怪、精霊などが住む世界、とは言っても異界の種類は多種多様で完全に現界から隔離されているものから密接しているものなどがあるらしい。次いで程度に説明しておくと鈴蘭が住む屋敷も異界に該当する。そして一般的にはこの世の影に存在すると言われている。
冥界というのは言わずと知れたあの世のことで、黄泉、冥土、隠世とも呼ばれるところ、しかし隠世に関しては少し微妙なところで異界でもあり冥界でもあるような場所を指すためあまり使われることはない。現界、異界が生前の世界に対して死後の世界でそこには幽霊がいる。というか生きた人間は冥界にはいくことができない。どうも妖怪は違うらしいのだけれど真相は分からない。
「うむ、その通りじゃ。そして現界は除いた異界と冥界にはそれぞれ派閥なるものが存在するのじゃ、それぞれ妖怪、幽霊、仙人、精霊そしてその中にもいくつか派閥が内在している。大きなところは主に8つ、今その中のいくつかの派閥関係が非常に良くないのじゃ。それも綺麗に2陣営に分かれておるのじゃ」
厄介この上ないのじゃ、と首を振るアマテラス。
つまり、先日鈴蘭が言っていた周囲が妙にやかましいというのはこの事だったということである。
「ちなみに鈴蘭もそのどれかの派閥に入っているんですか?」
「いや、あやつも花撫と同じでどこにも所属しとらん」
つまり、やかましい理由は彼女がどこにも所属していないからということである。とどのつまり勧誘だ。とは言ってもこんなにくだらないことに首を突っ込みたくない気持ちはよく分かる。私も同じ立場ならというか現に関わりは避けようとしている。
悲しいことにどう頑張っても避けられそうにないのだけれど……。
「そう言えば現界には派閥がないんですか?」
それこそ、他の2つよりもかなりの数の派閥、グループが存在していると思うのだけれど。
「現界は言うまでもなく人間が大半というかほぼ全てを支配しておるじゃろ、人間という種族がひとつの大きな派閥になっているのじゃ。妖怪や幽霊がそこに入り込む隙間は少ないのじゃ」
何となく状況が理解出来てきた。つまり、そのギスギスした派閥問題を円滑にどうにかするための打開策が私という訳だ。力があるものが頂点に立てばそれだけでまとめあげることが出来る、おそらくそう考えたのだろう。
そしてなんでそれぞれの派閥が私を欲しがるのか。その理由はとても簡単に想像出来る。きっとそれは派閥をまとめあげた後にそれでも優劣が生じるから。そして誰もが誰よりも優位に立ちたいと思う。だからこそ私を自分の派閥に組み込もうと躍起になっているのだ。結局最初から何も進んでいない、でもどうやら彼らはそのことに気が付いていないのだろう。いや気づいていても引くことができない、そんな状況なのかもしれない。
「……どうにか出来ないんですか?」
「すまんのじゃ、もう少し早ければ対策が取れていたのかもしれんのじゃが……」
つまり手詰まり、未来は既に動き出し、動いた未来はどうとやらというやつだろう。
これに関しては誰が悪いというのはないような気がする。元々それぞれの派閥は仲がいい訳では無いのだ。そこに原因があるだろうしそれ以外にもきっと要因は存在している。そもそもグループが複数あれば大抵どこかは仲が良くないのはこの世界では常識である。必ず利害の対立がありそれは図らずともいじめや差別へと発展する。むしろいざこざがなく全てが円滑に進むなんてこと自体が有り得ない。そんなのただの夢物語だろう。
そしてたまたま今回関係最悪なところに私が現れたから、それを使っていざこざをなくしたい、あわよくばほかの派閥を潰してやろうと考えたのではないだろうか。でも、力に頼るしか無くなった今、どうやってもそれを止めるのは力である。それこそ戦争のなくならない根本にあるものだ。本当にややこしく面倒臭く迷惑なものである。
「それで私は結局どうすればいいんですか?」
「選択肢は3つある。1つは花撫がどこかの派閥に属すること、2つ目はどこにも属さず全ての派閥と渡り合うこと、3つ目はどこかで隠れ暮らすこと。それが主に上げられる」
避けるべきは1つ目と3つ目。1つ目はどこについたとしても二界を巻き込んだ全面戦争になる、最悪現界にすら影響が及びかねない。3つ目はそれこそ死ぬまで逃げ続けることになる。ただでさえ人間よりも寿命が長いのだ、簡単なことでは諦めないだろう。そもそもどこの派閥も諦める訳にはいかないのだろうから。
そうなると2つ目ということになるのだけれど一介の巫女に一派閥と渡り合えるだけの力はない。何と言っても二界をまとめているような派閥たちなのだ、これは詰みというやつだ。どう転ぼうが待っているのは競争という戦争のみ。これが運命の強制というものなのだろうか。
一体私はどうすればいいのだろうか。
「私抜きで随分と面白そうなことやってるんだね」
そこに颯爽と現れたのは救世主……。
***
「ふ~ん、そうかそうか……」
そうして一から鈴蘭に説明したのだったのだが。
「鈴蘭、怒ってる?」
普段の彼女からは想像もできないような不愉快といったオーラのようなものを感じる。こうモヤモヤと黒い霧が立ち込めるような感じ。
仲間はずれのようになってしまったのが問題だろうか。
「いや、そこじゃなくて、この戦争には何を言われても参加しないと思っていたけれどたった今気が変わった。私の花撫に手を出そうものなら文字通り原子レベルまで分解してやる」
いつから私は鈴蘭の所有物になっていたのだろうか。
しかし鈴蘭は冗談じゃなく物体を原子レベルまだ分解することができるから、というか本当に分解しそうだからとても怖い。今の状態なら魔王のように歪んだ笑顔で「許して欲しいのならば死んで償え」とか言ってそうである。どちらにせよ死ぬしかないとはなんとも鬼畜である。
「そんなことはしないさ。何も言わせるつもりないし。さて、まずしなくちゃいけないことがある。そう花撫の能力底上げプラス固有能力の発現だ!」
しれっとさらっととんでもないことを当然のように言い放つ。少なくとも今の状態ならかっこいいと言うのに……。
「ん? 固有能力?」
いや、能力の底上げはまだわかる、でも問題なのは後半の部分。固有能力はそれこそ仙人レベルの強さを保持しなければ発現しない。少なくとも今の私では力不足もいいところ。そもそも仙人レベルの力など手に入れようとして手に入るものでもない。
「大丈夫、素体は問題ないから1ヶ月くらいでなんとかなる」
1ヶ月修行した程度で手に入るものなのだろうか。それはそれで驚きなのだがそんな悠長なことをしていても大丈夫なのだろうか。それこそ戦争が始まったり、私の身柄が狙われたりしないのだろうか。
「それに関しては問題ない。今はどこの勢力も拮抗しているだろうからこの状態で戦争を吹っ掛けるバカはいないさ、それに狙われたら狙った事を後悔させてやるまでさ」
どうやら話はその方向で決まりそうである。そして何より今日の鈴蘭はなんか恐ろしい。もう絶対に敵に回しちゃいけないな、と何度も思った。
そして当然ながら私には拒否権はないのだ。こういう時こそ憲法が役に立たなければいけないのに……。
「はぁぁ~……」
何でこんな面倒臭いことばかりに巻き込まれるのだろう、もうそれこそが私の固有能力なのではないだろうか。何1つメリットがないけれど……。
「……というかどうしてここに?」
「違う、確かに人の形をとっているが根本的に生物学的に人間とは異なるということじゃ」
生物学的に人間ではない、にも関わらず人の姿をしている。という事はつまり妖怪あるいは幽霊に分類されるということだろうか。
そこまでわかっているという事はアマテラスは犯人に心当たりがあるのだろう。しかもそれだけでは無い、私はアマテラスがこんなに慌てている様子を今まで見たことがない。相当事態は深刻なのかもしれない。
「鬼龍院白夜。現界、異界どちらをとっても屈指の格闘家。なのじゃが……」
「格闘家? だって被害者は切られたんじゃないんですか?」
「そうなのじゃ、姿形からして鬼龍院白夜には違いないはずなのじゃ……」
格闘家が刀を使う。そんなことがあるのだろうか。いやそんな考えはきっと偏見だとは思うけれど、それでもどこか違和感が残る。
「そう鬼龍院一族は代々は拳法一筋じゃった。納得は出来んのじゃが、だとしても切った奴が相当な腕であるというのは確かじゃ」
切った犯人が鬼龍院だとしてもそうじゃないにしても脅威であることに変わりはないということである。
「それでその鬼龍院っていうのはどれくらい危険なんですか?」
接点がなかったのだからどんな人物なのかといった情報が何もない。このご時世情報の多さがものを言う、敵を知り味方を知れば百戦危うからずとも言う。知っておいて損はないだろう、何より何とも言えない嫌な予感がするのだ。
というかそもそもどうしてこんな事になっているの?
「奴は妾達にとっては大したことないのじゃが、今の花撫にとっては脅威でしかないのじゃ」
まぁ、当然だろう、神様それも最高神よりも強いものなどがあるはずがない。というか今回の件は神の力でどうにかできないのだろうか。
「残念じゃが、それは出来んのじゃ。そういう決まりなのじゃ」
それもそうか、毎回毎回何かが起こる度に神が力を行使していては何も成長がない。
「……ちなみにもしも戦うことになった場合いの勝率はどれくらいなんですか?」
「限りなくゼロじゃ。逃げる方が賢明じゃ」
迷いなく神がここまで言う存在。鬼龍院白夜、無闇に関わらない方が良さそうだ。どうも命がいくつあっても足りそうになさそうな気配を背中に感じる。こちらから関係を持たなければ今まで通り関わり合うこともないのだろうし。
「……そうもいかんのじゃ」
「ど、どういうことですか?」
こちらから関わらなければ、接点を持たなければいいのではないだろうか。
「そう単純でもないのじゃ。何故やつはこの神社の周辺に出没しているのか、考えてみるのじゃ」
う~ん、まずもって用がないところにはわざわざ赴かない。それは人間も妖怪も幽霊だって同じはず、つまり何らかの目的があるということ。そしてそれのためには神社の周辺に出没する必要がある。いや、目的は神社周辺ではなくて神社自体?
「その通りじゃ。そしてより正確にいうなら花撫、お主が今回の標的じゃ」
「わ、私ですか?」
いや、なんで? 標的にされるような事なんて一切していない。目立つようなことも何もしてない。というか逆に何をしたのだろう。
「確かに花撫が関わっているのではない、花撫という存在が大きく関わっておるのじゃ」
私は関わってはいないのに私の存在が関わっている。全くもって理解が及ばない。
「それは一体……」
「そのままの意味じゃ。この世界において力を持っているがどこにも属さない存在、それが今の花撫の立ち位置じゃ。奴らは花撫を得るためにコソコソ神社の周辺を嗅ぎ回っておるのじゃ。その力を自分達の陣営に取り込むためにの」
どういうことなのだろう、今まで別にそれらしい前兆があった訳でもない。特にこれといって目立ったことは本当に無いし、別に普通の巫女では無いだろうか。そもそもどうして私を引き込む必要性があるのだろうか。
「……普通の巫女は霊術など使えないのじゃ」
さらっと衝撃の事実が告げられた。今まで使えて当然だったし何より周りにも使える人は沢山、たくさん……いると思うのだけれど。とういかじゃあなんで私には扱えてるのだろうか?
「じゃから、扱うだけの力が花撫にはあるのじゃ」
「なんで私なんですか?」
「……さあ、なんでじゃろうな」
わかりやすい神様である。顔に感情がそのまま出てきている。これなら心を読めなくても何かを隠しているということは誰でも分かる。まぁ、隠し事のできない性格なのだろう。それはいいことなのだけれど、しかしこの様子ではきっとこれ以上何を聞いても教えてはくれないだろう。私に言えない何かを隠しているのは確かなんだろうけど……。
「それで、そもそもなんで私が狙われるなんて事態になっちゃっているんですか?」
「うむ、まず説明しておくと三界というのは分かるじゃろ?」
「はい、現界、異界、冥界の総称ですよね」
現界はつまり今私がいるこの世界。現世だったりこの世と言われるところ。
異界は妖怪、精霊などが住む世界、とは言っても異界の種類は多種多様で完全に現界から隔離されているものから密接しているものなどがあるらしい。次いで程度に説明しておくと鈴蘭が住む屋敷も異界に該当する。そして一般的にはこの世の影に存在すると言われている。
冥界というのは言わずと知れたあの世のことで、黄泉、冥土、隠世とも呼ばれるところ、しかし隠世に関しては少し微妙なところで異界でもあり冥界でもあるような場所を指すためあまり使われることはない。現界、異界が生前の世界に対して死後の世界でそこには幽霊がいる。というか生きた人間は冥界にはいくことができない。どうも妖怪は違うらしいのだけれど真相は分からない。
「うむ、その通りじゃ。そして現界は除いた異界と冥界にはそれぞれ派閥なるものが存在するのじゃ、それぞれ妖怪、幽霊、仙人、精霊そしてその中にもいくつか派閥が内在している。大きなところは主に8つ、今その中のいくつかの派閥関係が非常に良くないのじゃ。それも綺麗に2陣営に分かれておるのじゃ」
厄介この上ないのじゃ、と首を振るアマテラス。
つまり、先日鈴蘭が言っていた周囲が妙にやかましいというのはこの事だったということである。
「ちなみに鈴蘭もそのどれかの派閥に入っているんですか?」
「いや、あやつも花撫と同じでどこにも所属しとらん」
つまり、やかましい理由は彼女がどこにも所属していないからということである。とどのつまり勧誘だ。とは言ってもこんなにくだらないことに首を突っ込みたくない気持ちはよく分かる。私も同じ立場ならというか現に関わりは避けようとしている。
悲しいことにどう頑張っても避けられそうにないのだけれど……。
「そう言えば現界には派閥がないんですか?」
それこそ、他の2つよりもかなりの数の派閥、グループが存在していると思うのだけれど。
「現界は言うまでもなく人間が大半というかほぼ全てを支配しておるじゃろ、人間という種族がひとつの大きな派閥になっているのじゃ。妖怪や幽霊がそこに入り込む隙間は少ないのじゃ」
何となく状況が理解出来てきた。つまり、そのギスギスした派閥問題を円滑にどうにかするための打開策が私という訳だ。力があるものが頂点に立てばそれだけでまとめあげることが出来る、おそらくそう考えたのだろう。
そしてなんでそれぞれの派閥が私を欲しがるのか。その理由はとても簡単に想像出来る。きっとそれは派閥をまとめあげた後にそれでも優劣が生じるから。そして誰もが誰よりも優位に立ちたいと思う。だからこそ私を自分の派閥に組み込もうと躍起になっているのだ。結局最初から何も進んでいない、でもどうやら彼らはそのことに気が付いていないのだろう。いや気づいていても引くことができない、そんな状況なのかもしれない。
「……どうにか出来ないんですか?」
「すまんのじゃ、もう少し早ければ対策が取れていたのかもしれんのじゃが……」
つまり手詰まり、未来は既に動き出し、動いた未来はどうとやらというやつだろう。
これに関しては誰が悪いというのはないような気がする。元々それぞれの派閥は仲がいい訳では無いのだ。そこに原因があるだろうしそれ以外にもきっと要因は存在している。そもそもグループが複数あれば大抵どこかは仲が良くないのはこの世界では常識である。必ず利害の対立がありそれは図らずともいじめや差別へと発展する。むしろいざこざがなく全てが円滑に進むなんてこと自体が有り得ない。そんなのただの夢物語だろう。
そしてたまたま今回関係最悪なところに私が現れたから、それを使っていざこざをなくしたい、あわよくばほかの派閥を潰してやろうと考えたのではないだろうか。でも、力に頼るしか無くなった今、どうやってもそれを止めるのは力である。それこそ戦争のなくならない根本にあるものだ。本当にややこしく面倒臭く迷惑なものである。
「それで私は結局どうすればいいんですか?」
「選択肢は3つある。1つは花撫がどこかの派閥に属すること、2つ目はどこにも属さず全ての派閥と渡り合うこと、3つ目はどこかで隠れ暮らすこと。それが主に上げられる」
避けるべきは1つ目と3つ目。1つ目はどこについたとしても二界を巻き込んだ全面戦争になる、最悪現界にすら影響が及びかねない。3つ目はそれこそ死ぬまで逃げ続けることになる。ただでさえ人間よりも寿命が長いのだ、簡単なことでは諦めないだろう。そもそもどこの派閥も諦める訳にはいかないのだろうから。
そうなると2つ目ということになるのだけれど一介の巫女に一派閥と渡り合えるだけの力はない。何と言っても二界をまとめているような派閥たちなのだ、これは詰みというやつだ。どう転ぼうが待っているのは競争という戦争のみ。これが運命の強制というものなのだろうか。
一体私はどうすればいいのだろうか。
「私抜きで随分と面白そうなことやってるんだね」
そこに颯爽と現れたのは救世主……。
***
「ふ~ん、そうかそうか……」
そうして一から鈴蘭に説明したのだったのだが。
「鈴蘭、怒ってる?」
普段の彼女からは想像もできないような不愉快といったオーラのようなものを感じる。こうモヤモヤと黒い霧が立ち込めるような感じ。
仲間はずれのようになってしまったのが問題だろうか。
「いや、そこじゃなくて、この戦争には何を言われても参加しないと思っていたけれどたった今気が変わった。私の花撫に手を出そうものなら文字通り原子レベルまで分解してやる」
いつから私は鈴蘭の所有物になっていたのだろうか。
しかし鈴蘭は冗談じゃなく物体を原子レベルまだ分解することができるから、というか本当に分解しそうだからとても怖い。今の状態なら魔王のように歪んだ笑顔で「許して欲しいのならば死んで償え」とか言ってそうである。どちらにせよ死ぬしかないとはなんとも鬼畜である。
「そんなことはしないさ。何も言わせるつもりないし。さて、まずしなくちゃいけないことがある。そう花撫の能力底上げプラス固有能力の発現だ!」
しれっとさらっととんでもないことを当然のように言い放つ。少なくとも今の状態ならかっこいいと言うのに……。
「ん? 固有能力?」
いや、能力の底上げはまだわかる、でも問題なのは後半の部分。固有能力はそれこそ仙人レベルの強さを保持しなければ発現しない。少なくとも今の私では力不足もいいところ。そもそも仙人レベルの力など手に入れようとして手に入るものでもない。
「大丈夫、素体は問題ないから1ヶ月くらいでなんとかなる」
1ヶ月修行した程度で手に入るものなのだろうか。それはそれで驚きなのだがそんな悠長なことをしていても大丈夫なのだろうか。それこそ戦争が始まったり、私の身柄が狙われたりしないのだろうか。
「それに関しては問題ない。今はどこの勢力も拮抗しているだろうからこの状態で戦争を吹っ掛けるバカはいないさ、それに狙われたら狙った事を後悔させてやるまでさ」
どうやら話はその方向で決まりそうである。そして何より今日の鈴蘭はなんか恐ろしい。もう絶対に敵に回しちゃいけないな、と何度も思った。
そして当然ながら私には拒否権はないのだ。こういう時こそ憲法が役に立たなければいけないのに……。
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