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13歳の沈着。
心に残る仕事になる。
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荷車の軋む音が幾筋も重なって、工事現場の入口が明るくなった。先頭に立っていたのはミシェ姉さんだ。髪を後ろでひとつにまとめ、腕まくりをしている。荷車には穀袋、根菜の籠、肉や魚の塩蔵、香草、樽ごとの油、そして大鍋や長柄の杓子まで積まれていた。後ろには何人もの女性たちが続き、笑いながら手を振ってくれる。
「働いてる人たちに腹いっぱい食べてもらうから。炊き場はどこがいい?」
「こんなにたくさん……どうしたの?」
「うちの実家に手配してもらったのよ。足りなければまた回すわ」
名は残らないよ、と僕は念のために言う。姉さんは肩で笑った。
「そんなのいらないわ。私はここの領主の妻として当然の働きをするの。さあ、手を貸して」
勢いに押されるというより、背中を見れば自然に頷くしかない。僕は現場近くの空き地を指し示し、土工に頼んで平場を作ってもらった。大鍋を載せるかまどを四つ組み、湯沸かし用の小かまどを二つ。水竜人の若者が引水を引き、ドワーフが石を組んで火床を固める。小人たちは素早く道具の並びを整え、獣人の姉さんが荷車から材料を次々と降ろしていく。
「昼は麦と根菜の煮込み。塩は控えめ、油は軽く。肉は叩いて丸めて、柔らかい団子に。麦団子は湯がいてから湯気で蒸らす。夕方は米を炊いて、魚のほぐしを混ぜた握りにするわ」
ミシェ姉さんはもう指示を飛ばしていた。台所の段取りは僕も覚えがあるが、ここまでの規模は久しぶりだ。僕は炊き場の位置と人の流れだけを確認して、あとは任せることにした。
工事は外装に入っている。若い建築家と棟梁が並んで図を指し、左官と大工と屋根職がそれぞれの持ち場へ散っていく。白く練った石灰が壁にのり、角がやわらかく丸められる。庇の出は一手分ずつ測られ、軒先の影が歩く人の目を刺さないよう調整された。窓枠には軽い材が使われ、手すりは掌の幅きっかりに削り出されていく。以前、ヂョウギが言っていた一分の余裕も、確かに形になっていた。
労志の人々は、荷運びと道作りで大忙しだ。石を載せた担ぎ棒が往復し、砂利が均され、側溝には水が通う。ルステインからの搬入は、有志が獣人隊商を雇って引き受けてくれた。隊商の御者が手を振り、荷台の布をめくると、綺麗に束ねた材木と加工済みの金物が整然と並んでいる。ドワーフの親方がひと目見てうなる。
「いい木目だ。節が逃げてる。これなら反らねえ」
「金物も良いね。噛み合わせが素直だ」若い棟梁が感心している。
昼、炊き場から香りが立ち上がる。湯気の向こうに、団子の鍋が音を立て、根菜が柔らかく崩れていく。列が自然とできるが、誰も急がない。姉さんは一人ひとりに器を渡し、匙を追加で手渡し、子どもには少し冷ました分をよそっている。休憩に入っていたお爺様の教え子たちも並び、棒を脇に置いて素直に礼を述べた。
「師匠には後で持っていくわね。昼はとろみのあるものがいいでしょう」
「ありがてえです」若者の顔がほころぶ。
お爺様の訓練は、地元の若者を中心に着実に根付いていた。朝は整列して歩みを合わせ、昼前に棒の素振り、日が傾く頃には見張り台の昇り降りを繰り返す。口数は多くないが、動きに無駄がない。いつの間にか、彼らは自分たちで落ち葉を掃き、通り道の石を拾い、夜番のために灯具を磨くようになっていた。
午後、左官のコテが壁面を走る音に、屋根から瓦を渡す掛け声が重なる。棟梁は一枚の板を持って庇の影を確かめ、建築家は書き込みだらけの図を折って胸に戻す。二人とも若いのに、こちらの顔を見ずに済むほど現場の目が育っているのが頼もしい。僕は邪魔にならない距離に立ち、どうしても問いかけが必要な時だけ短く確認した。
道の方も伸びた。集落へ降りる坂道の段差が削られ、車輪が噛みやすい勾配に整えられる。小さな橋の手前に石の目が並び、両脇に低い垣が立つ。子どもと老人が歩いても怖くない道にしておきたい、と土工の頭が言った。夕方には、荷車が橋を渡る音が軽くなっているのがはっきりわかった。
再び炊き場。今度は大鍋の米がふっくらと膨らみ、魚のほぐし身が香りを添える。握りは小ぶりで、手に取りやすい。根菜の酢漬けが横に添えられ、温かい汁がもう一杯分だけ残されている。誰に言われたわけでもないのに、長い列は自然と左右に分かれ、物資運びの者、現場の者、訓練帰りの若者……それぞれが譲り合って受け取っていく。
「姉さん、無理はしないでね」
「してないわよ。楽しいもの。ほら、あなたも食べて」
ミシェ姉さんは笑って新しい匙を押し込み、僕の手の中に器を置いた。温度と匂いが、言葉より先に身体へ入ってくる。こういう時、僕ができるのは礼を言って食べることだけだ。
夜、炊き場を片付けた女性たちが、手分けして鍋や器を洗い、干し台に並べていく。獣人の若者が桶を運び、ドワーフが重い鍋を持ち上げ、小人たちが布を絞る。最後に姉さんが洗い場の石へ水をかけて、布で拭った。
「明日も来るわよ」
「助かる。必要な物は言って。こちらからも回す」
「じゃあ、柔らかい木の匙をもう少し。子どもと年寄り用のね」
「了解。商会に回しておく」
その夜、僕は作業帳に今日の出来事を短く記した。外装、南面の左官半分まで。庇の調整済。手すり加工、二十間分。道、橋前の段差解消。搬入、材木二台、金物一台。訓練、歩調と棒、参加二十七名。炊き場、昼三百五十食、夕三百八十食、残り少量。差し入れ、蒸し菓子多数、酒樽二。志券の受け取り、手すり半間四、文庫の本六、医の布十。
ランプを吹き消す前に、外へ出てみる。空気は冷たいが、静かだ。遠くで犬が一度だけ鳴き、川面の反射がゆらゆらと揺れている。外装の白い壁が闇の中で淡く浮かび、回廊の骨組みが影だけで輪郭を見せた。名が残らなくても、きっと心に残る仕事になる。そんな予感だけは、強く確かにあった。
翌朝は、もう次の荷車が来るだろう。道はさらに延び、壁は乾き、手すりは磨かれ、訓練の若者は昨日より少し静かに歩く。ミシェ姉さんはまた新しい献立を考えているに違いない。僕は手帳を閉じ、寝具に潜り込みながら考える。こうして人の手が集まり、食べ、働き、学び、笑って帰る。その流れが、静養の家を家にしていくのだと思う。明日も同じように、やるべきことをやる。それで十分だ。
「働いてる人たちに腹いっぱい食べてもらうから。炊き場はどこがいい?」
「こんなにたくさん……どうしたの?」
「うちの実家に手配してもらったのよ。足りなければまた回すわ」
名は残らないよ、と僕は念のために言う。姉さんは肩で笑った。
「そんなのいらないわ。私はここの領主の妻として当然の働きをするの。さあ、手を貸して」
勢いに押されるというより、背中を見れば自然に頷くしかない。僕は現場近くの空き地を指し示し、土工に頼んで平場を作ってもらった。大鍋を載せるかまどを四つ組み、湯沸かし用の小かまどを二つ。水竜人の若者が引水を引き、ドワーフが石を組んで火床を固める。小人たちは素早く道具の並びを整え、獣人の姉さんが荷車から材料を次々と降ろしていく。
「昼は麦と根菜の煮込み。塩は控えめ、油は軽く。肉は叩いて丸めて、柔らかい団子に。麦団子は湯がいてから湯気で蒸らす。夕方は米を炊いて、魚のほぐしを混ぜた握りにするわ」
ミシェ姉さんはもう指示を飛ばしていた。台所の段取りは僕も覚えがあるが、ここまでの規模は久しぶりだ。僕は炊き場の位置と人の流れだけを確認して、あとは任せることにした。
工事は外装に入っている。若い建築家と棟梁が並んで図を指し、左官と大工と屋根職がそれぞれの持ち場へ散っていく。白く練った石灰が壁にのり、角がやわらかく丸められる。庇の出は一手分ずつ測られ、軒先の影が歩く人の目を刺さないよう調整された。窓枠には軽い材が使われ、手すりは掌の幅きっかりに削り出されていく。以前、ヂョウギが言っていた一分の余裕も、確かに形になっていた。
労志の人々は、荷運びと道作りで大忙しだ。石を載せた担ぎ棒が往復し、砂利が均され、側溝には水が通う。ルステインからの搬入は、有志が獣人隊商を雇って引き受けてくれた。隊商の御者が手を振り、荷台の布をめくると、綺麗に束ねた材木と加工済みの金物が整然と並んでいる。ドワーフの親方がひと目見てうなる。
「いい木目だ。節が逃げてる。これなら反らねえ」
「金物も良いね。噛み合わせが素直だ」若い棟梁が感心している。
昼、炊き場から香りが立ち上がる。湯気の向こうに、団子の鍋が音を立て、根菜が柔らかく崩れていく。列が自然とできるが、誰も急がない。姉さんは一人ひとりに器を渡し、匙を追加で手渡し、子どもには少し冷ました分をよそっている。休憩に入っていたお爺様の教え子たちも並び、棒を脇に置いて素直に礼を述べた。
「師匠には後で持っていくわね。昼はとろみのあるものがいいでしょう」
「ありがてえです」若者の顔がほころぶ。
お爺様の訓練は、地元の若者を中心に着実に根付いていた。朝は整列して歩みを合わせ、昼前に棒の素振り、日が傾く頃には見張り台の昇り降りを繰り返す。口数は多くないが、動きに無駄がない。いつの間にか、彼らは自分たちで落ち葉を掃き、通り道の石を拾い、夜番のために灯具を磨くようになっていた。
午後、左官のコテが壁面を走る音に、屋根から瓦を渡す掛け声が重なる。棟梁は一枚の板を持って庇の影を確かめ、建築家は書き込みだらけの図を折って胸に戻す。二人とも若いのに、こちらの顔を見ずに済むほど現場の目が育っているのが頼もしい。僕は邪魔にならない距離に立ち、どうしても問いかけが必要な時だけ短く確認した。
道の方も伸びた。集落へ降りる坂道の段差が削られ、車輪が噛みやすい勾配に整えられる。小さな橋の手前に石の目が並び、両脇に低い垣が立つ。子どもと老人が歩いても怖くない道にしておきたい、と土工の頭が言った。夕方には、荷車が橋を渡る音が軽くなっているのがはっきりわかった。
再び炊き場。今度は大鍋の米がふっくらと膨らみ、魚のほぐし身が香りを添える。握りは小ぶりで、手に取りやすい。根菜の酢漬けが横に添えられ、温かい汁がもう一杯分だけ残されている。誰に言われたわけでもないのに、長い列は自然と左右に分かれ、物資運びの者、現場の者、訓練帰りの若者……それぞれが譲り合って受け取っていく。
「姉さん、無理はしないでね」
「してないわよ。楽しいもの。ほら、あなたも食べて」
ミシェ姉さんは笑って新しい匙を押し込み、僕の手の中に器を置いた。温度と匂いが、言葉より先に身体へ入ってくる。こういう時、僕ができるのは礼を言って食べることだけだ。
夜、炊き場を片付けた女性たちが、手分けして鍋や器を洗い、干し台に並べていく。獣人の若者が桶を運び、ドワーフが重い鍋を持ち上げ、小人たちが布を絞る。最後に姉さんが洗い場の石へ水をかけて、布で拭った。
「明日も来るわよ」
「助かる。必要な物は言って。こちらからも回す」
「じゃあ、柔らかい木の匙をもう少し。子どもと年寄り用のね」
「了解。商会に回しておく」
その夜、僕は作業帳に今日の出来事を短く記した。外装、南面の左官半分まで。庇の調整済。手すり加工、二十間分。道、橋前の段差解消。搬入、材木二台、金物一台。訓練、歩調と棒、参加二十七名。炊き場、昼三百五十食、夕三百八十食、残り少量。差し入れ、蒸し菓子多数、酒樽二。志券の受け取り、手すり半間四、文庫の本六、医の布十。
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翌朝は、もう次の荷車が来るだろう。道はさらに延び、壁は乾き、手すりは磨かれ、訓練の若者は昨日より少し静かに歩く。ミシェ姉さんはまた新しい献立を考えているに違いない。僕は手帳を閉じ、寝具に潜り込みながら考える。こうして人の手が集まり、食べ、働き、学び、笑って帰る。その流れが、静養の家を家にしていくのだと思う。明日も同じように、やるべきことをやる。それで十分だ。
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