変態になってしまった教え子が私を愛しすぎて困ってます。大魔導師は隠居したい

リリん

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第一章

07

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 初心なベルクはそういった経験はない。

 唯一慾望を抱く相手には、今までそれが肉體的にその人を欲しているとは知らず。大人の世界を知り得たのもつい最近。

 本当につい最近だ。

 ブラシ事件後に力を使わない代わりに、會話だけを許された契約悪魔のルストから色々と⋯⋯
 そう。色々と自分の身に起こる先生に対して數々の不可解な渇きと下腹部に集まる熱意について、明かしてくれたばかりだ。

『経験値ゼロのひよっこが數あまたの女性と夜を過ごしたかに見えるベテランの高度な言い回しを理解出來るはずもない。
 これはとてもフェアじゃない言葉の綾だ、まだ純真な小僧を見越した上での皮肉の仕方。いけすかない野郎だぜぇ。』

——とっ、悪魔のルストは懇切丁寧にベルクの脳內で狀況アナウンスする。
 
 その解説を元に相手の言葉に理解したら。
 羞恥に腹が立ってさらに剣幕を上げるベルクは自分より少し上目線のザックに詰め寄る。

「俺はそんな事に興味など無い⋯⋯!! ベルちゃんと呼ばせた許可を與えた覚えも無い⋯⋯」

「ハハハッ、ベルちゃんは僕の言葉に理解してい無いと思ったけど」
「ッ無論、理解している⋯⋯! ベルちゃんと呼ぶな」
「ふ~ん、要するに⋯⋯は——『シャルと』そういう事にまったく興味がない、と言いたいんだね?」

 側で二人の口喧嘩をそろそろ止めに入ろうとするシャルルに。見えない角度で彼女の名前をベルクに唇だけ動かし、悪戯っぽく言い聞かせた。

 するとその言葉を聞いたや否や、ベルちゃんは瞳孔を開かせて激情する。

「違う!!! 俺はそういう意味で言ったんじゃない!!」
「べっ、ベルちゃん⋯⋯?!」

 突然の大声で私は目を見開きびっくりしてしまう。
 驚く私を見てベルちゃんは少し我に帰り、動揺の癖で掌を口元に覆い被す。
 心の落ち着きを取り戻そうとしたのか。少し私の側に寄り、手を握ろうしたが。それを許さない男がいた。

 「⋯⋯あれ? でも僕はてっきりそうゆう意味合いだと思っていたのだけれど? そっか⋯⋯君を子供とばかり思って、健全なる男児だと忘れていたよ。女性との睦事に興味を持つのはおかしなことでは無いよ」

 私に聞こえる音量で朗々と並べる言葉は、欠けた内容で理解すると。いかにもベルちゃんがえろす・・・の営みについて実は興味はあるけど、恥ずかしさのあまり全力でそれを否定したように聞こえる。

 女性に興味があるのは男の子にとって正常な生理的現象なのに、どうしてちょとモヤモヤして変な気分なんだろう? 

 ⋯⋯うーん、そっか! これはきっと育てた我が子の私事情を知ってしまった親なる戸惑っているに違いない。

 一人で悩んだり納得したりと。もう二人の言い争い、ザックの一方的いじめついていけない気がする。

「そうじゃないっ! 俺の意味はっ」
「大丈夫~恥ずかしがらずとも分かっているから。僕達は」

 更なる追い込みをかけようとするザックのドSぷっりはさすがというか、何というか。
 それと、勝手にあなたの枠に入れないで欲しい。私は内心突っ込む。

「俺の言いたいことはっ……俺は先生にしか⋯⋯そういう興味⋯⋯無ぃ⋯⋯と、伝えたいだけでっ⋯⋯別に彼女とは⋯⋯したく、なぃとは⋯⋯一言も⋯⋯」
 
 すると、いつでも正直で生真面目なベルちゃんは顔を真っ赤にして、此処が廊下だと忘れてしまったか。
 必死な大聲でザックに何やら全力否定したのちに小聲で恥ずかしそうに話した内容は全部聞こえなかった。

 ⋯⋯恐らく原因は、とても愉快そうにベルちゃんの狼狽姿を眺める、この男の阻害魔法により音声をぼやされたからだ。
 
 でも廊下の突き當たりまで響いてしまった否定声の大きさに。通り過ぎる生徒たちは一同歩く動作を止め「何事か?」と好奇の目線がチクチクと此方に集まり始まる。
 
 ベルちゃんは暫くこのままそっとしておこう。廊下で大聲なんて、らしくも無い事をさせられてきっと今にも死にそうなぐらい恥ずかしいだろうから……

 私はこの生徒に注目されまくる居た堪れない状況を、隣で何とも嬉しそうにキラキラ微笑む。性悪ザックに罪を全てなすりつけることにした。

「あんたのせいよ。何とかしなさい」

 両腕を胸に抱き。満足気に頷くするザックを横目で睨む。

 ( コイツ、絶対楽しんでる)
 
「どうしようかな~フフフッ、偉大なる大魔導師である我らのシャルル様にお任せして。僕はそろそろ退散しましょ~っと」

 おい、逃げるな。

 大魔導師の中でも素晴らしく偉大だけれども⋯⋯あんたも同僚でしょう? 
 『白の賢者』とか言われているのでしょうが?!

 男達の女を巡る諍いに見えるこの状況を説明するのは私? この~っ! 結局何しにきたのよあんた?!

 *

 去り際に、最後といわんばかり固まるベルちゃんにヒソヒソと何かを吹き込んで。掌をひらひらと揺らし、颯爽と去って行った。

 ようやく火照りの収まったばかりだというのに。ベルちゃんはザックの一言に再び顔から火が噴き出そうな程真っ赤になってしまった。

 ザックの背中姿非常に楽しそうにしていた⋯⋯初心の青年弄って面白がってるんだろう⋯⋯

 
  私達は先程騒ぎを起こしてしまった場所からザックと離れてすぐに移動した。色々と好奇心満載の生徒達から逃げるように。

 (いったい何にを去り際に言われたの?)

 人目の少ない森の小道に入った途端。

 ずっと無言で心ここにあらずとして距離を置き、後ろに並ぶベルちゃんは急に距離を縮めたと思えば。肩と肩を密著させる近さで今に至るまで私の顔を穴が開くほど視線を注いで来る⋯⋯

 
 明らかにベルちゃんがおかしくなってる……
 
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