群青の部屋

Moma

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「今日は沢山買っちゃったね。ザイオンが一緒に来てくれなかったら持ちきれなかったよ。今日もありがとう、ザイオン」

いつものストアで、手を繋いだまま買い物をする羞恥になんとか耐え、部屋まで戻ってきた。ザイオンと手を離す事は何度かあったけれど、必ずまた手を差し出される。ただ買い物をして帰ってきただけだというのに、俺の心拍数はずっと上がりっぱなしだった。

それに―――生徒たちに見られてしまった。
休み明けには、今日の出来事が学園中に広まっているに違いない。”シエズナ先生が超絶イケメンと恋人繋ぎで街を歩いてた”なんて噂が。想像しただけで、胃がキリキリする。

一方でザイオンはといえば、ずっと涼しい顔をしている。生徒たちに『彼ピ』扱いされても、動じる様子すらなかった。それどころかなんだか満更でもなさそうな雰囲気すらあった気がする。

「これ位の手伝いはいつでも言って欲しい。シェズと出掛ける事も、部屋に籠ってばかりいる私にとってはいい気分転換にもなるしな」

二人で買ってきた食材を、棚や保冷庫にしまい込む。ザイオンも最初の頃は、何処に何を置いてよいのか分からずウロウロするばかりだったが、今はテキパキと動いてくれる。有難い。

「今日暑かったね。レモンソーダ作るから、ソファで待ってて」

炭酸水に絞ったレモン果汁を注いで作るだけの、簡単な飲み物だ。ザイオンも手伝う事が無いと判断したのか、一つ頷いて二人掛けのソファに座る。やっと少しザイオンと距離ができた事で、小さく溜息をついた。今日だけじゃない。もうずっとザイオンの事が気になって仕方がない。こんなに心を乱されては、さすがの俺も自分の気持ちに気付く。

"ザイオンが好き"

気付いてしまったからには、ちゃんと言葉にして伝えたい。でもどうやって?俺は告白はされた事はあるが、自分から告白なんて一度もした事がない。どんな話の流れで告白すればいい? 困った。どうしよう。
と、うっかり大きな溜息をついてしまうと、ザイオンが心配そうにソファからこちらを見ていた。

「シェズ、どうした?」

「レモン絞ったら小さな種が一杯入っちゃったなって。口に入ったらごめんね」

俺の溜息一つなんかに心配そうな顔を向けるザイオンに、申し訳なさを覚える。甘味の入っていないレモンソーダをザイオンに渡し、隣に沈み込む。ザイオンがグラスを傾け、レモンソーダを飲み始める。口元や喉仏が動く様子が、なんだか色っぽくて、思わず見つめてしまった。一度好きだと認めてしまうと、ザイオンの動作一つ一つに目を奪われる。

「シェズ? 今日はなんだかいつもと様子が違うように見えるんだが、具合が悪いとかじゃ…」

ザイオンは大きな掌で俺の頬を優しく撫で、心配そうに見つめる。掌のごつごつとした感触は、きっと剣ダコなのだろう。恐らく相当鍛錬をしたに違いない。目を瞑り、ザイオンの掌に手を重ね、頬を摺り寄せた。

「大きくて暖かい掌だね」

このままザイオンの手を離したくない。どうやって俺の気持ちを伝える? ただ好きと言えばいい?
たった二文字の言葉を口にする事が怖くて、また心がぎゅっとなる。人を好きになるってこんなにも切なく苦しい瞬間もあるんだって、初めて知った。ザイオンの気配が近づくのを感じ取り、目を開けると―――間近でザイオンの瞳が、俺を覗き込んでいた。

「シェズ…嫌ならば振りほどいてくれ…」

少し思い詰めたような声で囁かれる。ザイオンの腕は優しくて、触れられただけで心の奥が蕩けていく。唇がそっと重なった瞬間、世界が静かに色づいた。離れる刹那、琥珀色の瞳が俺を閉じ込めるように見つめ、柔らかく微笑む。

こんなの、好きになるなって無理じゃん…。

再び触れた唇は、最初の優しさよりずっと深くて、あっという間に身体ごとソファへ押し倒される。ザイオンの重みが胸に広がり、安心と熱が混じった甘い溜息が漏れた。腕を首に絡め、自らその唇を求める。

ザイオンが欲しい。
もっと、もっと、もっと…。
堰を切ったように荒々しく口内を犯され、全身をまさぐられ、呼吸すら奪われていく。

「ざ…いお……くるしっ…」

息が続かないのに、胸の奥はどんどん熱くなる。気付けば、胸元もスカートも乱されて、下着まで晒されていた。
ザイオンも同じように乱れていて――それがたまらなく愛しい。

「すまない…シェズが可愛くて、我慢出来なかった…」

まるで謝る気ゼロの声。だって掌は、まだ俺の肌を優しく、惜しむように撫でている。抗議の目を向けると、ふっと笑って頬にキスを落とされた。甘くて、胸が痛いくらい嬉しい。

「ザイオンは…男性が恋愛対象なの…?」

「違う。シェズが恋愛対象なんだ。シェズ、私の恋人になって欲しい」

その一言で心の中の曇りが一瞬で晴れた。嬉しくて、苦しくて、泣きそうになる。

「ザイ…んっ…んぅ…」

気持ちを返す前に、またキスが降ってくる。それも甘くて苦しくて息を奪うようなやつ。指先は俺の弱いところばかりを掬い上げて、全身が熱の海に沈んでいく。

「や…ま…て…んんっ……まって…」

見つめられるだけで心臓が跳ねる。でも手は止まらず、下着がスルリと剥ぎ取られる。混乱する俺を見て、ザイオンは甘く獰猛に微笑む。

「最後まではしない…でも、限界なんだ。少しだけ…我慢して…」

「ザイ…わっ…ぶっ…」

次の瞬間うつ伏せにされ、背中越しに抱きしめられた。首筋に口づけが押し付けられるたび、心臓が跳びあがる。

「シェズは、いつも甘い香りがする…愛らしい笑顔が私を救ってくれる…ずっと、私のそばにいて欲しい…」

囁きが優しすぎて、涙が溢れそうになる。背中に降るキスはどれも “好きだよ” と告げていて、胸がぎゅっと締めつけられた。

「好き…ザイオンのこと、俺も好き…」

伝えた瞬間、身体ごと抱きしめられ、腰を強く引き寄せられた。腿の間を押し広げるように、熱く硬いものが挟まれ、ゆっくりと動き出す。

「んっ…はげしっ…」

本当に抱かれているみたいで、頭が真っ白になる。ザイオンの息がどんどん荒くなり、俺の名前が甘く、苦しげに呼ばれる。

「シェズ…!」

抱き締められたままザイオンが達すると、熱い吐息が耳にこぼれた。気付けば俺の硬くなった芯はザイオンの掌に包まれている。

「やっ…ザイオン…恥ずかしい…」

掌が優しく、でも逃れられない絶妙な力で上下する。甘さが全身を支配し、息が震える。

「シェズも辛いだろう…私に任せて…」

また首筋にキス。また胸元に甘い刺激。声が漏れるのを堪えると、抱き上げられて膝の上へ。

「ダメ…シェズの可愛い声、ちゃんと聞かせて」

「っ…あ…んっ…やっ…」

「シェズ…可愛いよ…もっと…もっと感じて…」

胸元を食まれ、吸われ、嬲られる。快感が全身を駆け巡り、息が止まりそうだ。

「つよく、すっちゃ…や…あっ…あっ…」

最後はザイオンの掌に精を放ち、羞恥で顔を覆った。熱はまだ消えず、身体の奥に小さな炎が残っている。

「シェズ…嫌だった…?」

つらそうな声が落ちてきて、俺はすぐに首を横に振る。

「…はずかしい…だけ…」

それだけなのに、胸の中が、溢れそうなほど甘く満たされていく―――


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