爆走☆UMADORU

こおえい

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第5章

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 副理事長の悪行が白日の下に晒された瞬間、厩舎は一瞬の静寂に包まれた。だが、その静寂を破ったのは、玲司れいじの怒りの声だった。
「馬を、道具だと?ふざけるな!」
 玲司れいじは俺の背から飛び降りると、副理事長に真っ直ぐ向かっていく。ごうもラセツと共に、獣のような唸り声を上げて副理事長の部下たちを牽制した。琴音ことねはユキを庇うように立ち、その小さな体で凛と副理事長を睨みつけている。そして、里央りおはすでに、最も暴れていた一頭の馬を落ち着かせ、そのたてがみを優しく撫でていた。
「この学園は、馬を愛し、共に未来を築くための場所だ!あなたのような者に、穢させるものか!」
 玲司れいじの言葉は、俺たち転生馬の心にも響いた。俺たちは馬語で叫んだ。「そうだ!」「お前なんか許さない!」「玲司れいじ、頑張れ!」
 もちろん、人間たちには「ヒヒーン!」と「ブルルル!」という声しか聞こえていない。だが、俺たちの気持ちは、確かに玲司れいじに届いているようだった。玲司れいじは、俺たちの頭を一度ずつ撫でると、毅然とした表情で副理事長に向き合った。
 副理事長は舌打ちをすると、部下たちに命じた。「構わん、全員捕らえろ!特にあの白い馬は、まだ使えるはずだ!」
 部下たちが一斉に襲いかかってきた。玲司れいじは俺の背に再び飛び乗り、俺は玲司れいじを乗せて厩舎内を駆け抜ける。ラセツとゴウは、体格差を活かして部下たちを押し返し、ユキと琴音ことねは、ユキの放つ白い光で馬たちの興奮を完全に鎮めていく。里央りおは、驚くべきことに、その場で動けないラセツを庇うように立ち、迫りくる部下の一人を鮮やかな体術でいなした。
里央りお先輩、強い!」
 ユキの感動したような馬語が聞こえる。里央りおの行動に、ユキの琴音ことねへの百合的感情が、里央りおへの憧れへと完全にシフトした瞬間だった。
 しかし、多勢に無勢。俺たちは徐々に追い詰められていく。その時、厩舎の入口から、一台の車が猛スピードで突っ込んできた。
「何事だ、この騒ぎは!」
 車から降りてきたのは、この神之守かみのもりホース学園の理事長だった。彼の背後には、数人の警備員もいる。
「理事長!これは……」
 副理事長が慌てて言い訳をしようとしたが、理事長は冷たい目で遮った。
「全て聞かせてもらったぞ、お前の悪行は。こんな卑劣な真似を許すわけにはいかん!」
 理事長は、俺たち転生馬の存在を知っていた。そして、副理事長の企みも、ある程度察していたらしい。理事長は警備員に指示を出し、副理事長とその部下たちはあっという間に取り押さえられた。

 夜が明け、騒動は収束した。学園の馬たちは保護され、副理事長は連行された。俺たち転生馬は、改めて自分たちの身に起きた「勘違い転生」の真実を知らされた。
「つまり、俺たちは、人間として未熟だから、馬になってやり直せってことか?」
 俺が馬語で尋ねると、理事長は静かに頷いた。その目には、どこかユーモラスな光が宿っていた。
「君たちは、前世で何かと未熟な点があったようだね。ある意味、神様からの課題といったところか」
 ラセツは「ふざけんな!」と怒鳴ったが、ユキは「これも運命ですわ」とどこか達観した表情だった。
 そして、理事長は続けた。
「君たちが人間として戻る道は、一つだけ。来たる神之守かみのもり杯で、最高のパフォーマンスを見せることだ」
 神之守かみのもり杯。学園最大のレース。それが、俺たちが人間に戻るための、最後の試練であり、最大のチャンスだった。
 数日後、神之守かみのもり杯の開催が決定した。学園の危機を乗り越え、俺たち転生馬と人間側のパートナーたちの絆は、以前にも増して強固になっていた。
「シュンライ、いよいよだな」
 玲司れいじが俺のたてがみを撫でる。その手は、迷いなく、そして温かかった。俺は玲司れいじの瞳をまっすぐ見つめ、「任せろ!」と心の中で叫んだ。
 ラセツも、ごうと共に厳しいトレーニングに励んでいた。「てめぇ、俺が人間になったら覚えてろよ!」と、ごうに馬語で言い放つが、ごうは「なんだよラセツ、今日はやけに気合入ってるな!」と笑うばかりだ。だが、二人の間には、確かに信頼の絆が芽生えていた。
 ユキは、琴音ことねとの練習中も、常に里央りおの姿を追っていた。
琴音ことね様、申し訳ありません……里央りお先輩のオーラが眩しすぎて……」
 ユキの百合的視線は、完全に里央りおに集中していた。琴音ことねはそれに気づいているのかいないのか、「ユキちゃんたら、里央りお先輩が大好きなのね」と微笑むだけだ。里央りおもまた、ユキの熱い視線を感じ取っているのか、時折ユキの方へ目をやり、微かに口元を緩めていた。

 レース当日。
 神之守かみのもりホース学園の特設レース場には、多くの観客が詰めかけていた。俺はゲートインを待つ間、玲司れいじの背中で深呼吸した。
「シュンライ、信じてるよ」
 玲司れいじの声が、俺の耳に響く。俺も、玲司れいじを信じている。この馬の体で、玲司れいじと一体になって走る。それが、今の俺の全てだ。
 ゲートが開く。
 一斉に駆け出す競走馬たち。俺は玲司れいじの指示に従い、完璧なスタートを切った。横にはラセツとごうが並び、その少し前にはユキナと琴音ことね、そして里央りおが乗る馬が先行している。
 これは、ただのレースじゃない。俺たちが人間としての自分を取り戻すための、そして、大切な仲間たちとの絆を証明するための、奇跡のレースだ。
 さあ、爆走しよう。俺たちの恋と友情と、そして大転生の物語が、今、最終章へと向かっていく。
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