隣の女子大生

しゅー

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夏の初めの偶然

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「榊原?」

ひなたが招いた客と聞いて、最初は大学の友達と思っていたが、意外にもそこには榊原の姿があった。

「え、え?先輩……?」

硬い表情でこちらをみつめる榊原。どうやらあっちも事情がよく分かっていないらしい。

「ま、まぁとりあえずカレーできてますから!食べましょうよ!ね?」

何も言わずに察してくれたひなたが慌ててフォローをしてくれるが、正直それどころの話じゃなかった。

「いや、ちょっと榊原……こい」
「は、はい……」

玄関の方に向かい、榊原と少し話をする。

「おまえ……どうして」
「違うんですよ!違うんですごめんなさい!」
「はぁ……?」
「知らなかったんですよ!ここが先輩と女子大生の愛の巣だって!今日はもうここで帰りますから!」
「愛の巣って言うなよ!いや、なんか理由があるんだろ?聞かせてくれ」
「はい……実は」

榊原はショッピングモールでの出来事について話をしてくれた。

「なるほどな……おまえ、財布なくすなよ」
「す、すいません……」
「まぁ、今日は食べていきなよ。もう三人分作ったんだろ?」
「はい……ありがとうございます……」

2人で部屋に戻って、みんなでカレーを食べることにした。

「へー、じゃああなたが後輩のあいさんだったんですね!いろいろ話を聞かせてもらってます」
「ひなたちゃんこそ、色々話聞かせてもらってるよ!先輩ったら、君のこと話す時めちゃめちゃ嬉しそうに話してるよ」
「お、おい榊原……」
「そ、そうなんですね」

恥ずかしそうにこちらをちらちら見ながら微笑むひなたにどきりとしてしまう。

「ちょっとちょっと、ここでイチャイチャしないでくださいよ!」
「イチャイチャしてない。てかお前がこの話振ったんだろ」
「へへ、そうでした」

にやにやと俺の顔を見つめる榊原。


食べ終わってからも、3人での会話が楽しくて、特にひなたと榊原が思いの外仲が良くなり、まるで古くからの友達のような仲になっていた。

「じゃあ、そろそろ私は帰りますね」
「おう、じゃあな」
「大輔さん、送ってあげてください、片付けておきますから。」
「わかった。じゃあ行こうか」
「はい!」

駅までの道中に、ぽつりと榊原は呟いた。

「はぁー、なんか嫌な女ですね。私」
「え、なんで?」
「だってひなたちゃん知ってたはずですよね?私が先輩のことが好きだったって……」
「あ、あーなるほど」
「お金は先輩に返しますから。もう家には行きません……」
「いや、行ってあげなよ」

俯いて、独り言のような声量で告げた。

「え?」
「あんなひなた、初めて見たんだよ。あんなに楽しそうにしてるの。本当に見てて楽しかったんだ」
「……」
「だからまたおいでよ。また一緒に飯食おうぜ。ひなたと3人で」
「……あー、はいはい、わっかりましたよ!じゃあここまででいいんで、さっさと帰ってひなたちゃんとイチャイチャして下さい!」
「な……お前なぁ」
「はは、じゃあね!先輩!」

少し目を潤ませながら、榊原は走って行ってしまった。



ひなたの部屋の扉をあけて、中に入る。

「ただいまー……うおっ」

部屋に入った途端、ひなたが向かいから俺の胸にタックルをするように飛び込んできた。

「大輔さん……」
「どうした……?」
「いえ、……もう少しこのままでいいですか?」

顔も見ずに胸に顔をうずめながら問いかけてくる。

「うん、いいけど……どうしたの?」

しばらくして、何回か理由を尋ねたところで、ようやくひなたは顔を上げて話し始めた

「なんて言うか……あいさんと話している時、いつもの大輔さんとは違う大輔さんが見れて嬉しかったんですけど……同時に、あいさんはいつも大輔さんのこんな表情が見れているんだなって。」
「あぁ……」
「私より全然親しい感じでしたし、冗談とか言ったりして……」
「でもひなたにもたまに言うよね」
「回数が全然違いました!倍くらいあったんじゃないですか?」

話すにつれてひなたが何に怒っているのか、そもそも怒っているのかが分からなくなってきた。

「なんか、ごめんな……?」
「私が悪いんですよ……勝手に嫉妬してるみたいになっちゃって」

しょんぼりしながら寂しそうに笑う彼女に、愛おしさが増していく。

「でも俺はひなたにしか見せない顔もあるよ?」
「え?それって……?」

きょとんとした顔をこちらに向ける。

そしてひなたの唇に、自分の唇を合わせる。

「んっ……」

びっくりしたように体を固めたが、少ししたら受け入れてくれたようで、しばらくの間お互いを感じ続けた。

どれだけの間唇を合わせていただろうか。お互いに惜しむように顔を離して、恥ずかしそうに微笑み会う

「こうやってキスできるのも、ひなただけだよ」
「……はい」
「とりあえず部屋で話そうよ。」
「はい……あの」
「いん?なに?」
「最近全然泊まってなかったので、今日は泊まっていきませんか?」

真っ赤な顔でそう言われて、断れるわけがなかった


「大輔さん!夏休みに入りましたよ!」
「あぁ、そっか今日からか」

ある金曜の夜、ひなたはうきうきした顔で俺に報告してきた。夏休み。そう聞くだけで懐かしさを感じる。

「沢山楽しんでね、あ、あと旅行とか行く日があったら前々から報告しておいてね」
「はい!でも今年は泊まりには行かない予定です」
「え、そうなんだ?近くに遊びに行くの?」
「はい!あそこの、夢の国に行こうかと」

夢の国と言ったら、全国的にも人気な有名なテーマパークだ

「いいね!誰と行くの?」
「えっと、あかり……大学の友達と」
「なんか青春だねぇ……」
「ふふ、大輔さん、おじさんみたいです」

ふふっと冗談のようにかけてきた言葉に少しだけ傷ついてしまう。

「まぁおじさんだからなー?」
「大輔さんはかっこいいです!」

自虐的に自分の年齢をいじると、気持ちを察してくれたのかひなたがすぐにフォローを入れてきた。

「まぁ……うん、ありがとう」
「いえ……まぁ本音なので」

榊原との一件があったあと、ひなたとの距離は前よりさらに近づいた気がする。
ひなたの部屋に泊まる日が増えて、それに比例するように体を求める回数も増えた。
本当に嬉しいし、この楽しい時間がいつまでも続いて欲しいとそう思っている。

でも心の底では、その気持ちを否定する声も挙がっている

相手はまだ学生だ。なんかあったら責任取れるのか?間違えたら犯罪にだってなるかもしれない。

ひなたとの距離が近くなるにつれて、心の底では、この関係に積極的になることができなくなっていた。

「大輔さん……?」
「……あぁ、ごめん、ぼーっとしてた」
「もう、しっかりしてくださいよね!それで、遊びに行く場所についてなんですけど、やっぱり遠出したいんです!」
「え、俺でいいの?その大学生の友達ととか行かなくて……」
「私は大輔さんと行きたいんです!できればまぁ……泊まりとか」
「うーん、そうだね……」
「?大輔さんは乗り気じゃないですか?」
「いやいや!むしろ行きたいくらいだよ!どこがいい?」
「やっぱりこの前話してた近畿の方に行きたいです!」
「やっぱりそうだよね。じゃあそこら辺に行こうか」
「はい!じゃあ新幹線のチケットとか取っておきますね」

俺の心とは裏腹に、夏の準備は着実に進む。



夏休みに入ってから、数日が経った。

高校生だった頃の夏休みは、宿題や部活、受験勉強で毎日忙しい日々を過ごしていたが、大学生になってそれらは一切なくなってしまった。あるのは予定のない毎日。

あかりとは夢の国に行く他にも遊ぶ約束を多く入れているが、やはり暇な時間が多い。

部屋の掃除とか毎日してるし、もうやりきった感あるし、なにかすることないかなぁ……

あ、そうだ。と一つの案を思いつく。

次の朝、私は学校はないが、大輔さんを送り出すために、大輔さんとご飯を食べている時、思いついた案を報告してみる。

「大輔さん、私、夏休みで暇なんです」
「うん?そうだね」
「なので、大輔さんの部屋を掃除してきてもいいですか?」
「……!げほっげほっ」
「大丈夫ですか!?」
「いや、いきなり何言い出すのって思って」

どうやら意外だったらしい。と同時に大輔さんの顔を見て、ふと思ったことは大輔さんが今の私の言葉を嫌がっているようにも見えることだ。

「迷惑ならいいんです!見られるの嫌ですよね」
「いやいや、全然いいんだよ!じゃあ鍵渡しとくね」

表情をすぐに笑顔に切りかえ、私に鍵を差し出して来る大輔さんをみて、さっきの私の予想は正しいのか確かめたくなるのをぐっと堪える。

「はい、じゃあ今日掃除しちゃいますね」
「よろしくね。ほんとにありがとう」
「はい!あ、もう時間じゃないですか?」
「そうだね、じゃあ行ってくる。」

そう言ってもう日課になった朝のキスをしてくれる。この瞬間が一日でも幸せな瞬間。不安も消えて無くなる。


大輔さんが出社して、1人取り残された私は、任務を遂行するために、掃除道具を持って大輔さんの部屋に突入します。

「おじゃましまーす……」

部屋に入ると、いつもの大輔さんの匂いが漂ってくる。カーテンは空けられているがまとめられておらず、ベッドも整っていない。
しかし普段は部屋を使わないのか、物が少なく、全体的に整っているようにも見える。

「じゃあ、はじめますかっ!」


部屋自体物が少なかったため、掃除自体は午前中で大半が終了した。

気になったのは……あっち系の本が2冊、道具がひとつ出てきたこと……もあったが、普通のノートにまとめられた日記が何冊も見つかったことだ。

開くと、今まで見たことのなかった大輔さんの男らしい文字で、数行を使い一日に着いての出来事が書かれていた。

「ふふ、大輔さんも意外と少女ですね……」

悪いと思いつつ、ページをめくると、私と出会った日からも日記は続いていた。

『4月4日
お隣さんの堺さんに酔っ払った所を助けてもらい、朝ごはんをご馳走してもらった。何かスイーツでもお返ししよう。』

『5月20日
いつも朝ごはんをご馳走してもらっているお返しに、ひなたさんと遊園地に遊びに行った。楽しかったし、ひなたさんのことが気になりはじめた。』

ここら辺からは毎日私のことと、私に対する気持ちの変化が書かれていて、見ているこっちが恥ずかしくなってきた。

『8月2日
朝から夏休みにどこに旅行に行くかひなたと話し合った。泊まることになるだろう。このままひなたと旅行に行っても大丈夫なのだろうか?』

……ん?
最後の一文で、大輔さんにどんな気持ちがあってこの一文を書いたのか分からなくなってしまった。

「……大丈夫なのだろうか?」

字に勢いがなく、迷いながら書いたように思える。それにしても、なんでこんな文を書くのだろうか?

朝の嫌な予感と重なり、不安が一気に押し寄せてくる。何も考えずに、日記の入った箱だけはその場所にそっと戻して、気を紛らわすように他の場所を整理し始める。

日記の一文が、いつまでも頭から離れない




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