ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~

ヒツキノドカ

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 ひったくり犯は衛兵に連れていかれた。

 その際に事情を聞かれたが、ありのままを答えておいた。

 俺がゴーレムをその場で作り出したというと疑われたが、目の前で同じことをしてみせると信じてもらえた。

 元宮廷の特別顧問魔術師だと名乗ったら、余計に驚かれたが。

 目撃者多数だったこともあり、細かい取り調べなどは行われず三十分ほどで解放された。

「ありがとうございます、魔術師様! あなたのお陰で私の荷物が奪われずに済みました……!」

「い、いえ、あれくらい大したことはありませんよ」

「あれだけの実力がありながら何と謙虚な! どこまで素晴らしいお方なのですか!?」

 ……いや、本当に大したことしてないんで。
 単純にひったくり犯になら八つ当たりしてもいいかなーと思っただけなんで。

 荷物を奪われた男性は行商だった。

 これから馬車で隣の帝国に向かうところだったらしい。

 何かお礼がしたいと言うので、そういうことならと馬車に乗せてもらうことにした。

 王都を出発し、積み荷の上に座りながら御者台の行商と会話をする。

「魔術師様はどちらまで?」

「特に決めてないんですよね。そちらは?」

「私は帝都で商品を売ろうかと。いい革細工を仕入れましたのでね」

 となると俺が座っている木箱の中身は革細工のようだ。

 ……ややこしいので改めて説明するが、俺たちが今いるのがハルメッツ王国。で、行商が向かっている帝国っていうのが隣接するガリアン帝国だ。

 この二国は同盟国であり、少ない通行税で行き来できる。

 それにしても、行商か。

 行商なら世情に詳しいだろうし、せっかくだから聞いてみよう。

「この周辺で人の来ないような自然豊かな場所はありますかね?」

「このあたりも十分自然豊かだと思いますよ。王都から離れればそこまで人通りもありませんし」

「いえ、もっと人目につかない場所がいいんです」

 確かに王都から少し離れれば集落もまばらになる。

 だが、そこで俺がいきなり住み着いたら多分目立つ。

 山の中でこっそり暮らすだけなら目立たないと思われるかもしれないが、俺の得意分野はゴーレム魔術だ。これを使って拠点作りなんてしたら絶対に人目を引く。

 俺はしばらく人と関わらずに静かに暮らしたい。

「そういうことなら……ないこともありません。絶対にオススメはしませんが」

「? どんな場所ですか?」

「カイン大森林、という場所があります。この王国とお隣の帝国の間にまたがる樹海です。ここは自然豊かで人もいませんが……魔物が多く、危険とされています」

「……ほう」

 自然豊かで人がいない。
 素晴らしいじゃないか。

 魔物が多いというのは不穏だが、実はゴーレム魔術を使うにあたって重要な素材の中には、魔物からしか取れないものもある。俺にとっては悪いばかりじゃない。

「いいですね。教えてくれてありがとうございます」

「本当に危険ですよ? ……いえ、しかし魔術師様のゴーレムの力であれば平気なのかもしれませんね。わかりました、それでは積み荷の中から好きなものを持って行ってください」

「え? いや、悪いですよ」

 馬車に乗せてもらった上に情報ももらったのに、この上物資まで受け取るのはちょっと。

「そう遠慮なさらずに! あ、下段の布なんて丈夫で便利かと思いますよ! それに保存のきく食料なんかもありますので」

 結局俺は行商から半ば押し付けられるように、色々と物資をもらった。

 ……うーん、何か俺が得をし過ぎている気もするが。

 まあいいや。くれるものならもらっておこう。

 金はあるが、追加収入の当てはない。もらえる時にもらっておくのが合理的な判断だろう。
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