【リメイク版連載開始しました】悪役聖女の教育係に転生しました。このままだと十年後に死ぬようです……

ヒツキノドカ

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翌日のこと

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 翌日、目が覚めると……横には天使がいた。

「んん……んぅ……」

 銀髪碧眼の少女アイリスだ。寝息を立てながら、私の服の裾をギュッと握っている。

 な、何て可愛いの!? いきなり眠気が飛んでしまったわ! 思わず抱きしめたくなったけど、寝ているアイリスを起こしてしまうのも申し訳ないわよね。

 昨日フォードが提案してくれた通り、アイリスはノクトール家の屋敷に泊まっている。せっかくなので同じベッドで寝てもらおうと頼んだら、アイリスは神妙な顔で頷いてくれた。
 昨日のことで私が落ち込んでいると思い、励ましてくれようとしたようだ。
 やっぱりいい子よね、アイリス。……まあベッドに入るとすぐ寝落ちしていたけれど。

(特に変な感じはしないわね)

 自分の両手を見ながら再確認する。
 婚約破棄された時に、なぜか私はショックを受けていた。何となくあれはミリーリアの記憶が体に強く作用したからだと思っていたんだけど、今日まで持ち越してはいないようだ。

 私としては、フェリックス殿下の――フェリックスのことは特に気にしてない。
 何なら昨日再会するまで顔も思い出せなかった相手だし。

 でも、ミリーリアにとっては違ったみたいなのよね……
 ミリーリアはフェリックスのことを将来の夫だと考えていた。本来は聖女から妃となった者にはそこまで実務面では期待されないけれど、ミリーリアは実務面でもフェリックスを支えようとしていたのだ。
 まあ、恋愛感情というよりは責任感だったようだけど。

 けれど、そこまで尽くしていた相手にあっさり他の女性へと乗り換えられたのだ。ミリーリアの意識が残っていたら、さぞショックだったことだろう。

「……ぅあ」

 隣でアイリスが身じろぎした。

「アイリス、起きたの?」

「……」

「アイリス?」

 何だか様子がおかしい。とても苦しそうにアイリスが目をキツく閉じている。どうしたの!?

「うあああ……!」

「アイリス! 起きなさい、アイリス!」

 見ると、アイリスの体が白く発光している。これは……“治癒”の光!? アイリスは眠っているのにどうして!? まさか寝ぼけて力を使ってしまったんだろうか。
 とりあえず、アイリスの体の中に溜まっている聖女の力を外に出さないと……!

「……!」

 アイリスを抱きしめ、その膨大な力を外部からコントロールする。本来ならこんな真似は難しいんだろうけど、私の中にある“万能の聖女”ミリーリアの記憶がやり方を教えてくれる。

 私は数分かけて、アイリスの体から余分な聖女の力を放出させた。

「……せんせい……?」

「アイリス、目を覚ましたのね!」

「……」

 アイリスは怯えたように私にぎゅっとしがみついてきた。

「アイリス、どうしたの……?」

「すごく……すごく、こわかったです。からだのなかに、なにかが、ぐわっとあふれてきて……」

 アイリスの頭をよしよしと撫でて落ち着かせる。
 体の中に何かが溢れた、ね……多分さっきの“治癒”の力だろう。普段のアイリスがこんなふうに自分の力に苦しめられることはない。原因があるとすれば、きっと昨日のパーティーで精霊に呼びかけて力を使ったことだ。

「ごめんなさい、アイリス。昨日私を守ってくれようとしたせいね」

 私が言うと、アイリスは私にしがみついたまま首を左右に振った。

「せんせいは、わるくないです」

「でも……」

「わたし、つよくなりたいです。せいじょのちからをつかいこなして、せんせいを、まもれるようになりたいです」

 アイリスは幼い子供だ。聖女の力をきちんと使いこなせるようになるにはまだ何年もかかるだろう。それでも、こんなふうに思ってもらえるのは嬉しい。

「ありがとう。でも、無理は駄目よ。精霊に呼びかけても平気でいられるように、まずは力の使い方を少しずつ学んでいきましょうね」

「……はい!」

 アイリスは決意を込めた顔でコクリと頷いた。

 ……ものすっごく真剣な空気なのはわかるんだけど、やっぱりアイリスが可愛くて内心でキュンキュンしてしまったのは内緒だ。





「バル、悪いわね。ついてきてもらって」

「構いません。お嬢様の護衛は必要でしょうから」

 使用人と一緒に街中を歩きながらそんな会話をする。
 バルはノクトール家の使用人の中でも何でもできる人物だ。料理から御者、剣術までなんでもござれ。また外見偏差値も高く、執事服に身を包んだ体つきはすらっとしており、やや長めの灰色の髪は整った顔立ちに大人びた印象を与えている。うちのメイド人気ナンバーワンである。

 そんなバルは今は私の護衛である。
 カリナの動向が読めない以上、用心しないとね。フォードから預かっているペンダントも持ち歩いているけれど、あくまでこれは最終手段だし。

 ちなみにアイリスは“治癒”の暴走の件もあり、今は屋敷で休んでいる。

「ここね!」

 私が足を止めたのは、魔道具を取り扱う店である。
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