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“浄化”の聖女2
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「えー、じゃあミリー、一緒に飲もう」
「一応聞いておくけど、そのお酒のアルコール濃度はどのくらいかしら?」
「確か九十六パーセントくらいって言ってたっけ」
「さっさと瓶をしまいなさい……」
何でものをラッパ飲みしているんだろうこの聖女は。
……その時、コンコン、と扉がノックされた。
「どうぞ」
「失礼します。お茶の準備が整いました。中庭までお越しくださいませ」
ドアを開けたメイドがそんなことを言うと……
「まあ、ありがとう存じますわ。ノクトール家のお屋敷の中庭といえば、四季折々の花が咲き乱れることで有名ですものね。そんな中でお茶をいただけるなんて、今日はとても幸せな一日です」
一瞬で瓶をしまい、聖女モードとなったフローラがそんなことをのたまっていた。
すごい猫被りだ。
というわけで、アイリスとフローラと一緒に中庭に移動する。
お茶を飲みながらお菓子を食べる。するとアイリスが口元にケーキのかけらをつけてしまう。本人はケーキに夢中で、そのことに気付いていない。
「アイリス、ケーキのかけらがほっぺについてるわよ」
「え? ど、どこですか?」
「じっとしてて。取っちゃうから」
「はい、せんせい」
目を閉じて大人しくするアイリス。私はハンカチでケーキのかけらを取った。
「はい、もういいわよ」
「ありがとうございます」
恥ずかしそうにニコッと笑うアイリス。
は~~~~可愛い。どうしてこの子はこんなに可愛いの? 普段ならぎゅっと抱きしめるところだけど、今はフローラがいるから我慢……いや、我慢する必要があるのかしら。フローラのために我慢なんて……
「ミリーリア、なんだかすごく変わったね」
「え? 私が?」
メイドにはこの場を離れるように言ってあるので、フローラの口調は素のままだ。フローラはぐっと親指を立てた。
「アイリスちゃんのおかげかな? なんかすごくいいと思う。ちょっと前までミリーリア、張り詰めすぎだったからね。これでも心配してたんだよ。アイリスちゃんが良い感じに癒してくれてるのかな」
「……そうね。アイリスのお陰で、最近は毎日楽しいわ」
婚約破棄されたりもしたけれど、アイリスと一緒なので今日も私は元気だ。
「一つ気になってたんだけど、フローラはどうして王都に? あなた、最近は同盟国に出張していなかった?」
「緊急で呼び戻されたんだよ。なんか王妃殿下が妙な病気にかかったとかで」
「あ……」
“浄化”の力は毒や、特定の病気を取り除くことができる。
病気の中には“浄化”でも対処できないものもあるけど、その力に特化した聖女であるフローラなら対応できる範囲はかなり広い。
王妃殿下が病気なんて、国を挙げても対処するべき事態だ。フローラが呼び戻されるのも当然の事態だろう。
「実はこれから王城に行かなきゃいけないんだよね」
「あ、そうなの?」
「その前にリラックスしていこうと思ってミリーの家に寄ったんだ。ごめんね、急に来て」
「それは別にいいわよ。友達なんだし」
「ミリー……!」
「友達だけど勢いよく抱きついてくるのはやめなさい」
「ちぇっ」
……そんなやり取りの後、フローラは屋敷を出て行った。
ミリーリアが聖女をリタイアしたことで彼女に皺寄せが言っているのは間違いないので、今後もストレス発散くらいなら喜んで付き合おう。
王妃殿下の病気については、どうなるかわからないけど……まあ、フローラなら何とかなるだろう、とも思う。ミリーリアの記憶によれば、彼女はあれでも腕は確かなようだし。
余談だけど、フローラ襲来によってアイリスにあるマイブームができた。
「せんせい、いいですかっ」
「ええ、いいわよ」
とたたたたっ。
「せんせい!」
走り寄ってきたアイリスが、勢いよく私のお腹のあたりに飛び込んでくる。
どうもフローラが私に飛びついたのを見て、アイリスはそれが羨ましくなったらしい。それを真似するようになってしまった。フローラと違ってアイリスは軽いので、もう本当にご褒美でしかない。
ありがとう、フローラ……!
「一応聞いておくけど、そのお酒のアルコール濃度はどのくらいかしら?」
「確か九十六パーセントくらいって言ってたっけ」
「さっさと瓶をしまいなさい……」
何でものをラッパ飲みしているんだろうこの聖女は。
……その時、コンコン、と扉がノックされた。
「どうぞ」
「失礼します。お茶の準備が整いました。中庭までお越しくださいませ」
ドアを開けたメイドがそんなことを言うと……
「まあ、ありがとう存じますわ。ノクトール家のお屋敷の中庭といえば、四季折々の花が咲き乱れることで有名ですものね。そんな中でお茶をいただけるなんて、今日はとても幸せな一日です」
一瞬で瓶をしまい、聖女モードとなったフローラがそんなことをのたまっていた。
すごい猫被りだ。
というわけで、アイリスとフローラと一緒に中庭に移動する。
お茶を飲みながらお菓子を食べる。するとアイリスが口元にケーキのかけらをつけてしまう。本人はケーキに夢中で、そのことに気付いていない。
「アイリス、ケーキのかけらがほっぺについてるわよ」
「え? ど、どこですか?」
「じっとしてて。取っちゃうから」
「はい、せんせい」
目を閉じて大人しくするアイリス。私はハンカチでケーキのかけらを取った。
「はい、もういいわよ」
「ありがとうございます」
恥ずかしそうにニコッと笑うアイリス。
は~~~~可愛い。どうしてこの子はこんなに可愛いの? 普段ならぎゅっと抱きしめるところだけど、今はフローラがいるから我慢……いや、我慢する必要があるのかしら。フローラのために我慢なんて……
「ミリーリア、なんだかすごく変わったね」
「え? 私が?」
メイドにはこの場を離れるように言ってあるので、フローラの口調は素のままだ。フローラはぐっと親指を立てた。
「アイリスちゃんのおかげかな? なんかすごくいいと思う。ちょっと前までミリーリア、張り詰めすぎだったからね。これでも心配してたんだよ。アイリスちゃんが良い感じに癒してくれてるのかな」
「……そうね。アイリスのお陰で、最近は毎日楽しいわ」
婚約破棄されたりもしたけれど、アイリスと一緒なので今日も私は元気だ。
「一つ気になってたんだけど、フローラはどうして王都に? あなた、最近は同盟国に出張していなかった?」
「緊急で呼び戻されたんだよ。なんか王妃殿下が妙な病気にかかったとかで」
「あ……」
“浄化”の力は毒や、特定の病気を取り除くことができる。
病気の中には“浄化”でも対処できないものもあるけど、その力に特化した聖女であるフローラなら対応できる範囲はかなり広い。
王妃殿下が病気なんて、国を挙げても対処するべき事態だ。フローラが呼び戻されるのも当然の事態だろう。
「実はこれから王城に行かなきゃいけないんだよね」
「あ、そうなの?」
「その前にリラックスしていこうと思ってミリーの家に寄ったんだ。ごめんね、急に来て」
「それは別にいいわよ。友達なんだし」
「ミリー……!」
「友達だけど勢いよく抱きついてくるのはやめなさい」
「ちぇっ」
……そんなやり取りの後、フローラは屋敷を出て行った。
ミリーリアが聖女をリタイアしたことで彼女に皺寄せが言っているのは間違いないので、今後もストレス発散くらいなら喜んで付き合おう。
王妃殿下の病気については、どうなるかわからないけど……まあ、フローラなら何とかなるだろう、とも思う。ミリーリアの記憶によれば、彼女はあれでも腕は確かなようだし。
余談だけど、フローラ襲来によってアイリスにあるマイブームができた。
「せんせい、いいですかっ」
「ええ、いいわよ」
とたたたたっ。
「せんせい!」
走り寄ってきたアイリスが、勢いよく私のお腹のあたりに飛び込んでくる。
どうもフローラが私に飛びついたのを見て、アイリスはそれが羨ましくなったらしい。それを真似するようになってしまった。フローラと違ってアイリスは軽いので、もう本当にご褒美でしかない。
ありがとう、フローラ……!
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