【リメイク版連載開始しました】悪役聖女の教育係に転生しました。このままだと十年後に死ぬようです……

ヒツキノドカ

文字の大きさ
40 / 43

“浄化”の聖女2

しおりを挟む
「えー、じゃあミリー、一緒に飲もう」

「一応聞いておくけど、そのお酒のアルコール濃度はどのくらいかしら?」

「確か九十六パーセントくらいって言ってたっけ」

「さっさと瓶をしまいなさい……」

 何でものをラッパ飲みしているんだろうこの聖女は。

 ……その時、コンコン、と扉がノックされた。

「どうぞ」

「失礼します。お茶の準備が整いました。中庭までお越しくださいませ」

 ドアを開けたメイドがそんなことを言うと……

「まあ、ありがとう存じますわ。ノクトール家のお屋敷の中庭といえば、四季折々の花が咲き乱れることで有名ですものね。そんな中でお茶をいただけるなんて、今日はとても幸せな一日です」

 一瞬で瓶をしまい、聖女モードとなったフローラがそんなことをのたまっていた。

 すごい猫被りだ。

 というわけで、アイリスとフローラと一緒に中庭に移動する。

 お茶を飲みながらお菓子を食べる。するとアイリスが口元にケーキのかけらをつけてしまう。本人はケーキに夢中で、そのことに気付いていない。

「アイリス、ケーキのかけらがほっぺについてるわよ」

「え? ど、どこですか?」

「じっとしてて。取っちゃうから」

「はい、せんせい」

 目を閉じて大人しくするアイリス。私はハンカチでケーキのかけらを取った。

「はい、もういいわよ」

「ありがとうございます」

 恥ずかしそうにニコッと笑うアイリス。

 は~~~~可愛い。どうしてこの子はこんなに可愛いの? 普段ならぎゅっと抱きしめるところだけど、今はフローラがいるから我慢……いや、我慢する必要があるのかしら。フローラのために我慢なんて……

「ミリーリア、なんだかすごく変わったね」

「え? 私が?」

 メイドにはこの場を離れるように言ってあるので、フローラの口調は素のままだ。フローラはぐっと親指を立てた。

「アイリスちゃんのおかげかな? なんかすごくいいと思う。ちょっと前までミリーリア、張り詰めすぎだったからね。これでも心配してたんだよ。アイリスちゃんが良い感じに癒してくれてるのかな」

「……そうね。アイリスのお陰で、最近は毎日楽しいわ」

 婚約破棄されたりもしたけれど、アイリスと一緒なので今日も私は元気だ。

「一つ気になってたんだけど、フローラはどうして王都に? あなた、最近は同盟国シャーレインに出張していなかった?」

「緊急で呼び戻されたんだよ。なんか王妃殿下が妙な病気にかかったとかで」

「あ……」

 “浄化”の力は毒や、特定の病気を取り除くことができる。
 病気の中には“浄化”でも対処できないものもあるけど、その力に特化した聖女であるフローラなら対応できる範囲はかなり広い。
 王妃殿下が病気なんて、国を挙げても対処するべき事態だ。フローラが呼び戻されるのも当然の事態だろう。

「実はこれから王城に行かなきゃいけないんだよね」

「あ、そうなの?」

「その前にリラックスしていこうと思ってミリーの家に寄ったんだ。ごめんね、急に来て」

「それは別にいいわよ。友達なんだし」

「ミリー……!」

「友達だけど勢いよく抱きついてくるのはやめなさい」

「ちぇっ」

 ……そんなやり取りの後、フローラは屋敷を出て行った。
 ミリーリアが聖女をリタイアしたことで彼女に皺寄せが言っているのは間違いないので、今後もストレス発散くらいなら喜んで付き合おう。
 王妃殿下の病気については、どうなるかわからないけど……まあ、フローラなら何とかなるだろう、とも思う。ミリーリアの記憶によれば、彼女はあれでも腕は確かなようだし。

 余談だけど、フローラ襲来によってアイリスにあるマイブームができた。

「せんせい、いいですかっ」

「ええ、いいわよ」

 とたたたたっ。

「せんせい!」

 走り寄ってきたアイリスが、勢いよく私のお腹のあたりに飛び込んでくる。

 どうもフローラが私に飛びついたのを見て、アイリスはそれが羨ましくなったらしい。それを真似するようになってしまった。フローラと違ってアイリスは軽いので、もう本当にご褒美でしかない。

 ありがとう、フローラ……!
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】聖女の私を処刑できると思いました?ふふ、残念でした♪

鈴菜
恋愛
あらゆる傷と病を癒やし、呪いを祓う能力を持つリュミエラは聖女として崇められ、来年の春には第一王子と結婚する筈だった。 「偽聖女リュミエラ、お前を処刑する!」 だが、そんな未来は突然崩壊する。王子が真実の愛に目覚め、リュミエラは聖女の力を失い、代わりに妹が真の聖女として現れたのだ。 濡れ衣を着せられ、あれよあれよと処刑台に立たされたリュミエラは絶対絶命かに思われたが… 「残念でした♪処刑なんてされてあげません。」

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...