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ホーリッツの腕輪
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「これが注文の魔道具だ」
フローラがやってきた翌日、ホーリッツが頼んでいた魔道具を届けに来てくれた。
完成したのは腕輪のような形をした魔道具。
「これを着けていれば、小型の結界が装備した者を守ってくれる。よほどのことがない限りは危険な目に遭うことはないだろう」
「よほどのことって、具体的にはどのくらいのレベルかしら?」
「まあ、そこらの魔物に破れんことは間違いない」
「それ、ものすごく作るのが大変だったんじゃない? よくこんな短期間でできたわね」
「ミリーリア様には右手を治してもらった恩があるからな。……このくらいせんと、儂の気が済まん」
そう言ってホーリッツはフンと鼻を鳴らした。
よくよく見ると目の下にはクマがある。よほど無理をして短い時間で作業を終わらせてくれたようだ。高齢のホーリッツに無理をさせてしまったのは心苦しいけど、アイリスの安全確保が早めにできたのはありがたい。
「ありがとう、ホーリッツ」
「構わんよ。今後も何かあれば儂を頼るといい」
「ええ、そうさせてもらうわ。代金はいくら?」
「いらん」
「駄目」
「……むう」
義理堅い性格なのか、お題を拒否しようとするホーリッツに多めの金額を使用人経由で渡した。こういうのはきちんとしないとね。
ホーリッツはその後腕輪の使い方や注意事項なんかを教えてくれた後、屋敷を去っていった――と言いたいところだけど、さすがに寝不足の老人を歩いて帰らせるわけにはいかないので、うちの馬車に乗っていってもらった。
アイリスといい、どうして私の周りには無理をする人が多いのか。
……元のミリーリアがそういうタイプだから、類は友を呼んでしまったんだろうか。今の私はぐうたらなほうが好みなので、無理する人は積極的に休ませていきたい。
ホーリッツとのやり取りを終えた後、自室に戻ってアイリスに腕輪をプレゼントする。
「アイリス、これはあなたのものよ」
「わあ、かわいいです!」
目をキラキラさせるアイリス。可愛い……?
腕輪は銀のリングが二つ交差したものに、魔力の籠った大粒の石が一つ、小さな石が四つついている。言われてみれば、かなりお洒落かもしれない。
ホーリッツ、あんなに堅物な雰囲気なのにセンスいいのね。失礼ながらちょっと意外だ。
「でも、おおきいですね」
確かにこのままだとアイリスの細い手首には合わないだろう。けれどホーリッツが言うには、そこは大丈夫な仕組みがあるようだ。
「アイリス、着けてみて」
「はい。――うわあ、わたしにぴったりのおおきさになりました!」
魔道具の腕輪はアイリスが着けた途端、ぴかっと光ってアイリスにふさわしいサイズに縮んだ。これは高級なアクセサリー型魔道具にまれにある仕組みらしい。
もともとは持ち主が成長しても同じものを使い続けられるように、と考案されたものだけど、魔道具職人の中でも限られた名人しか組み込めない凄い技術なんだとか。
侯爵令嬢兼聖女だったミリーリアがひいきにしていただけあって、ホーリッツの腕はかなりのものらしい。
「わあー、わあー、すっごくかわいいです、ありがとうございます、せんせい!」
ニコニコ笑顔になってその場でくるくる回るアイリス。
「…………」
「せんせい?」
「あ、うん、何でもないわ。喜んでもらえて嬉しいだけよ」
目を瞬かせながら名前を呼んでくるアイリスに、なんとか返事をする私。
はー……しんどい。可愛い。可愛い……!
ドレス選びの時も思ったけど、アイリスって実は普通に女の子らしいものが好きなのよね。お姫様っぽいピンクのドレスがお気に入りだったりとか。普段が大人しくて賢い子だから、なおさら可愛く見える。ギャップ萌えだ。
「せんせい、これ、しまっておいてもいいですか?」
「え? 何で!? 実は気に入らなかったとか……!?」
喜んでくれていたんじゃなかったの!?
アイリスはふるふると首を横に振った。
「……すごくかわいいので、きずがついてしまったら、いやです」
「ぐふっ――!」
「せんせい……!?」
くっ……! どうしてこの世界にカメラはないの!? 腕輪が壊れてしまった時のことを想像してか、少し悲しそうな顔をしたアイリスのいじらしさが半端じゃないわ!
ああ、この世界にカメラっぽい道具があれば、この世界クラスに可愛らしいアイリスの姿を永久に保存できるのに! そしてアルバムを作って数年後の楽しみにすることができるのにっ……!
いや、待てよ。
いるじゃない。
この世界にない魔道具だって作り出せそうな、凄腕魔道具職人のお爺さんが!
「アイリス、私ちょっとホーリッツに手紙を書いてくるわね!」
「は、はい」
私はホーリッツにカメラを依頼した。文章だけじゃ伝わらないだろうから、今度直接どんなものを作ってほしいか話にいこう。カメラがないなら作ればいいのよ。
数日後、教皇様に呼び出された。
アイリスと一緒にだ。
……何の用だろう?
フローラがやってきた翌日、ホーリッツが頼んでいた魔道具を届けに来てくれた。
完成したのは腕輪のような形をした魔道具。
「これを着けていれば、小型の結界が装備した者を守ってくれる。よほどのことがない限りは危険な目に遭うことはないだろう」
「よほどのことって、具体的にはどのくらいのレベルかしら?」
「まあ、そこらの魔物に破れんことは間違いない」
「それ、ものすごく作るのが大変だったんじゃない? よくこんな短期間でできたわね」
「ミリーリア様には右手を治してもらった恩があるからな。……このくらいせんと、儂の気が済まん」
そう言ってホーリッツはフンと鼻を鳴らした。
よくよく見ると目の下にはクマがある。よほど無理をして短い時間で作業を終わらせてくれたようだ。高齢のホーリッツに無理をさせてしまったのは心苦しいけど、アイリスの安全確保が早めにできたのはありがたい。
「ありがとう、ホーリッツ」
「構わんよ。今後も何かあれば儂を頼るといい」
「ええ、そうさせてもらうわ。代金はいくら?」
「いらん」
「駄目」
「……むう」
義理堅い性格なのか、お題を拒否しようとするホーリッツに多めの金額を使用人経由で渡した。こういうのはきちんとしないとね。
ホーリッツはその後腕輪の使い方や注意事項なんかを教えてくれた後、屋敷を去っていった――と言いたいところだけど、さすがに寝不足の老人を歩いて帰らせるわけにはいかないので、うちの馬車に乗っていってもらった。
アイリスといい、どうして私の周りには無理をする人が多いのか。
……元のミリーリアがそういうタイプだから、類は友を呼んでしまったんだろうか。今の私はぐうたらなほうが好みなので、無理する人は積極的に休ませていきたい。
ホーリッツとのやり取りを終えた後、自室に戻ってアイリスに腕輪をプレゼントする。
「アイリス、これはあなたのものよ」
「わあ、かわいいです!」
目をキラキラさせるアイリス。可愛い……?
腕輪は銀のリングが二つ交差したものに、魔力の籠った大粒の石が一つ、小さな石が四つついている。言われてみれば、かなりお洒落かもしれない。
ホーリッツ、あんなに堅物な雰囲気なのにセンスいいのね。失礼ながらちょっと意外だ。
「でも、おおきいですね」
確かにこのままだとアイリスの細い手首には合わないだろう。けれどホーリッツが言うには、そこは大丈夫な仕組みがあるようだ。
「アイリス、着けてみて」
「はい。――うわあ、わたしにぴったりのおおきさになりました!」
魔道具の腕輪はアイリスが着けた途端、ぴかっと光ってアイリスにふさわしいサイズに縮んだ。これは高級なアクセサリー型魔道具にまれにある仕組みらしい。
もともとは持ち主が成長しても同じものを使い続けられるように、と考案されたものだけど、魔道具職人の中でも限られた名人しか組み込めない凄い技術なんだとか。
侯爵令嬢兼聖女だったミリーリアがひいきにしていただけあって、ホーリッツの腕はかなりのものらしい。
「わあー、わあー、すっごくかわいいです、ありがとうございます、せんせい!」
ニコニコ笑顔になってその場でくるくる回るアイリス。
「…………」
「せんせい?」
「あ、うん、何でもないわ。喜んでもらえて嬉しいだけよ」
目を瞬かせながら名前を呼んでくるアイリスに、なんとか返事をする私。
はー……しんどい。可愛い。可愛い……!
ドレス選びの時も思ったけど、アイリスって実は普通に女の子らしいものが好きなのよね。お姫様っぽいピンクのドレスがお気に入りだったりとか。普段が大人しくて賢い子だから、なおさら可愛く見える。ギャップ萌えだ。
「せんせい、これ、しまっておいてもいいですか?」
「え? 何で!? 実は気に入らなかったとか……!?」
喜んでくれていたんじゃなかったの!?
アイリスはふるふると首を横に振った。
「……すごくかわいいので、きずがついてしまったら、いやです」
「ぐふっ――!」
「せんせい……!?」
くっ……! どうしてこの世界にカメラはないの!? 腕輪が壊れてしまった時のことを想像してか、少し悲しそうな顔をしたアイリスのいじらしさが半端じゃないわ!
ああ、この世界にカメラっぽい道具があれば、この世界クラスに可愛らしいアイリスの姿を永久に保存できるのに! そしてアルバムを作って数年後の楽しみにすることができるのにっ……!
いや、待てよ。
いるじゃない。
この世界にない魔道具だって作り出せそうな、凄腕魔道具職人のお爺さんが!
「アイリス、私ちょっとホーリッツに手紙を書いてくるわね!」
「は、はい」
私はホーリッツにカメラを依頼した。文章だけじゃ伝わらないだろうから、今度直接どんなものを作ってほしいか話にいこう。カメラがないなら作ればいいのよ。
数日後、教皇様に呼び出された。
アイリスと一緒にだ。
……何の用だろう?
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