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担い手
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「さて。事情を説明してもらえますか?」
「「はい……」」
この教会を管理する神父様に言われて僕とエルフィさんは頷いた。
場所は教会の執務室。
宝物庫で起こったできごとを報告するために、僕とエルフィさんは神父様のもとを訪れていた。
何も見なかったことにして立ち去るのも選択肢だったけど、エルフィさんいわく『ラルグリスの弓』が姿を変えたのは数百年ぶりのことらしく、無視もできないんだとか。
その『ラルグリスの弓』も、見せたほうが早いということで、僕が持ってきている。
「――というわけなんです」
「……なるほど。カイ君が触れた途端、『ラルグリスの弓』の姿が変わった。しかも弓に拒絶されなかった、ですか」
「はい。こんなことは今までありませんでした」
神父様とエルフィさんが深刻そうに話している。
神父様は考え込むようにひげを撫でながら、
「ふうむ。普段なら宝物庫に人を入れるのはルール違反ですが、『担い手』となれば話は別です。今回のことは不問としましょう」
「ありがとうございます。あと、すみませんでした……」
エルフィさんはすっかり落ち込んでしまっている。
……何だか申し訳ない。エルフィさんは僕を元気づけようとしてくれたというのに。
「僕も謝ります、神父様。勝手に入ったりしてすみませんでした」
「おや、どうしてあなたまで謝るのですか?」
「無断で宝物庫に入ったのは僕も同じですから」
エルフィさん一人に罪を被せたりしたら罪悪感で死んでしまう。
神父様は納得したようにうんうんと頷きつつ、
「なるほど。聞いていた通りの人物のようですね」
「……? どういう意味ですか?」
「カイ・エルクス君。あなたのことはエルフィから聞いていますよ。何でも孤児にも優しく、面倒見のいい素敵な男性だと――」
「わ、わあああ神父様! それは内緒にする約束じゃないですか!」
エルフィさんが真っ赤な顔で神父様の言葉を遮りにかかる。
「ああ、すまないね。そうだったそうだった」
「もう、よりによって本人の前でそんなことを」
「正しくは『一緒にいると安心する人』だったかな?」
「神父様!」
エルフィさんが声を上げると神父様はくすくす笑って言葉を引っ込めた。
何だろう。
後半は小声だったせいで神父様の言葉は聞き取れなかったけど、何だかすごくもったいないことをした気がする。
ごほん、と神父様が咳ばらいをした。
「さて、それでは本題に入りましょうか。カイ君、その『ラルグリスの弓』についてどこまで知っていますか?」
「えっと……神様が使っていた弓で、世界の危機に応じて真の姿を現す、と」
宝物庫でエルフィさんがそんなことを言っていたような。
「おおむねその通りです。その『ラルグリスの弓』は本物の神器なのです。何らかの災いが迫るとき、担い手を呼びその力を貸し与えます。
それまではエルフィのような『聖女』が手入れをするわけですね」
「……うーん」
そこまではさっきエルフィさんから聞いていた通りだ。
けど、やっぱり何というかこう――
「信じられない、という表情ですね」
「す、すみません。どうも頭が追いついてこないというか」
想像してみてほしい。
古ぼけた弓を手渡されて、それを『神様が使っていた伝説の武器です!』なんて急に言われたって、そんなのすぐに信じろっていうほうが無茶だ。
「では、まずはその弓が本物であるという証明をしてみましょうか。その弓にはいくつかの特徴がありまして、一つは『担い手と一体化する』というものです」
「……?」
「まあ、実際にやってみたほうが良いでしょう。弓に『消えろ』と念じてみてください」
言われるがまま、心の中で念じてみる。
すると左手に握りっぱなしだった弓がいきなり消失した。
「「はい……」」
この教会を管理する神父様に言われて僕とエルフィさんは頷いた。
場所は教会の執務室。
宝物庫で起こったできごとを報告するために、僕とエルフィさんは神父様のもとを訪れていた。
何も見なかったことにして立ち去るのも選択肢だったけど、エルフィさんいわく『ラルグリスの弓』が姿を変えたのは数百年ぶりのことらしく、無視もできないんだとか。
その『ラルグリスの弓』も、見せたほうが早いということで、僕が持ってきている。
「――というわけなんです」
「……なるほど。カイ君が触れた途端、『ラルグリスの弓』の姿が変わった。しかも弓に拒絶されなかった、ですか」
「はい。こんなことは今までありませんでした」
神父様とエルフィさんが深刻そうに話している。
神父様は考え込むようにひげを撫でながら、
「ふうむ。普段なら宝物庫に人を入れるのはルール違反ですが、『担い手』となれば話は別です。今回のことは不問としましょう」
「ありがとうございます。あと、すみませんでした……」
エルフィさんはすっかり落ち込んでしまっている。
……何だか申し訳ない。エルフィさんは僕を元気づけようとしてくれたというのに。
「僕も謝ります、神父様。勝手に入ったりしてすみませんでした」
「おや、どうしてあなたまで謝るのですか?」
「無断で宝物庫に入ったのは僕も同じですから」
エルフィさん一人に罪を被せたりしたら罪悪感で死んでしまう。
神父様は納得したようにうんうんと頷きつつ、
「なるほど。聞いていた通りの人物のようですね」
「……? どういう意味ですか?」
「カイ・エルクス君。あなたのことはエルフィから聞いていますよ。何でも孤児にも優しく、面倒見のいい素敵な男性だと――」
「わ、わあああ神父様! それは内緒にする約束じゃないですか!」
エルフィさんが真っ赤な顔で神父様の言葉を遮りにかかる。
「ああ、すまないね。そうだったそうだった」
「もう、よりによって本人の前でそんなことを」
「正しくは『一緒にいると安心する人』だったかな?」
「神父様!」
エルフィさんが声を上げると神父様はくすくす笑って言葉を引っ込めた。
何だろう。
後半は小声だったせいで神父様の言葉は聞き取れなかったけど、何だかすごくもったいないことをした気がする。
ごほん、と神父様が咳ばらいをした。
「さて、それでは本題に入りましょうか。カイ君、その『ラルグリスの弓』についてどこまで知っていますか?」
「えっと……神様が使っていた弓で、世界の危機に応じて真の姿を現す、と」
宝物庫でエルフィさんがそんなことを言っていたような。
「おおむねその通りです。その『ラルグリスの弓』は本物の神器なのです。何らかの災いが迫るとき、担い手を呼びその力を貸し与えます。
それまではエルフィのような『聖女』が手入れをするわけですね」
「……うーん」
そこまではさっきエルフィさんから聞いていた通りだ。
けど、やっぱり何というかこう――
「信じられない、という表情ですね」
「す、すみません。どうも頭が追いついてこないというか」
想像してみてほしい。
古ぼけた弓を手渡されて、それを『神様が使っていた伝説の武器です!』なんて急に言われたって、そんなのすぐに信じろっていうほうが無茶だ。
「では、まずはその弓が本物であるという証明をしてみましょうか。その弓にはいくつかの特徴がありまして、一つは『担い手と一体化する』というものです」
「……?」
「まあ、実際にやってみたほうが良いでしょう。弓に『消えろ』と念じてみてください」
言われるがまま、心の中で念じてみる。
すると左手に握りっぱなしだった弓がいきなり消失した。
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