パーティを追放された<狩人>、SSランク神器に選ばれて世界最強の弓使いになる~毎日孤児に優しくしていたら神様に気に入られたようです~

ヒツキノドカ

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『穴熊のねぐら亭』にて②

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「うおっ……【ヴェールウインド】!」

 不意打ち気味だったにも関わらず、運び屋の『魔術師』はそれを風の防壁で弾いてのけた。

「誰だてめぇ!」
「冒険者だよ。きみたちの居場所を衛兵に伝えた人間、って言えばわかる?」
「! そうか、てめえの仕業か……!」

 『魔術師』の男が僕を睨みつける。

 対して僕は戦う意志を示すように弓を構えた。

「逃げたければ僕を倒していくんだね」
「足止めのつもりか? 上等だ、てめえからぶっ潰してやるよ!」

 『魔術師』も杖を掲げて応戦の構え。

 これでいい。
 時間を稼げば衛兵たちも集まってくるだろうし、今はこの男をここに釘付けにするのが重要だ。

「【ウインドエッジ】!」

 ビュゥン!! と『魔術師』の男が杖を振るうと風の刃が撃ちだされた。

「【障壁】!」

 魔力障壁でそれを弾く。

 ……結構強いな。

 障壁から受けた衝撃をからすると、通常時のアレスの剣と同じくらいの威力だろう。

 アレスの腕力並みの魔術となると、この『魔術師』はレベル40は軽く超えていそうだ。

 さっきの不意打ちへの反応といい、かなりの実力者と言える。

「【加速】【増殖】×二十」

 反撃に『ラルグリスの弓』の力を使って矢を放つ。
 『魔術師』の男は慌てる様子もなく杖を構え、

「うざってえ! 【ヴェールウインド】!」

 『魔術師』の男が風の防壁を展開し、今度は向こうがこっちの攻撃を弾いてみせた。

「はっ、残念だったな! この魔術がある限り、お前の矢は俺には届かねえぜ!」

 勝ち誇ったように『魔術師』の男が叫ぶ。 

 確かに弓矢と風属性の魔術は相性が悪い。
 風で周囲を守られると、矢の軌道が逸らされてしまうからだ。

「……」

 さて、どうするか。
 僕は少し考えて、

「【加速】、【増殖】×二十」

 矢を斜め上方に撃ち出した。

「はっ、どこに撃ってんだよ!」

 嘲笑うように『魔術師』の男が言う。確かに矢の軌道はまったく見当違いだ。
 『魔術師』の男の頭上を増殖した矢が飛び越えていく。

 男は僕を嘲笑うように攻撃魔術を準備し始める。


 まったく同時。
 ギュンッ!! と男の後方で矢の群れが軌道を百八十度捻じ曲げた。


「ぐぁあっ!?」

 『魔術師』の男は背後から大量の矢を浴びて悶絶した。

 さっきの矢には【加速】【増殖】の他に【絶対命中】のスキルも乗せていたのだ。

 【絶対命中】を込めた矢は外れた後も標的を追尾する。
 わざと見当違いの方向に撃ったのは、相手を油断させるためである。

 まったく警戒していなかった背後からの攻撃に『魔術師』の男は前によろめく。

 同時に僕は前に駆け出した。

「ぐっ……【ウインドエッジ】!」
「【障壁】!」

 魔力障壁で風の刃を弾き飛ばす。
 そして僕は間合いを詰め、うつ伏せになっている『魔術師』の男に上から矢を突きつけた。

「動くな。動けば撃つ」
「……っ」

 勝負ありだ。
 ここからこの男がどんな魔術を使おうと、絶対に僕が矢を放つほうが早い。

「くそっ、お前、何なんだよ! 逃げたあのガキに助けでも求められたのか!? あんな化け物に同情でもしたってのかよ!」

 矢を突き付けられたまま、『魔術師』の男が喚く。

 彼が言っているのはルーナのことだろう。

「……あの子は化け物なんかじゃない」
「あぁ!?」
「自分を助けてくれた子を救い出そうと一生懸命になれる、優しい子だ。きみが馬鹿にしていいような相手じゃない」
「はっ、何言って――、」

 男の言葉が途切れた。
 顔を上げて、僕の表情を見た瞬間、言葉を失っていた。


「――何より、僕はきみたちみたいな子供を食い物にするクズが一番許せない」


「……っ!?」

 子供を標的にした犯罪者、なんて僕にとって逆鱗もいいところだ。

 そこに触れられた僕は、『魔術師』の男が顔を引きつらせるくらいの形相となっていた。

「お、お前っ、なんでそんなにキレて……」
「【加速】【増殖】×三十」
「ぎゃあああああああああああああああああ!?」

 至近距離から矢を叩き込まれた『魔術師』の男は、絶叫を上げた後動かなくなった。

 ちなみに死んではいない。

 『ラルグリスの弓』の能力で作った矢は、ある程度形を自由に変えられる。その能力を使って矢の先を平らにしておいたのだ。

 いくら外道相手でも殺したら寝覚めが悪いし。

 とはいえ、矢の威力は変わっていないのでダメージはほぼ同じ。何か所か骨も折れているだろう。

「――急いでさっきの男を探せ! まだ近くにいるはずだ!」

 そんなことを考えていると、半壊した宿の中から衛兵たちが飛び出してきた。

 どうやら無事だったようだ。
 リーダー格の衛兵が部下たちに指示を飛ばしている。

「あの魔術を見るに、敵はおそらく『暴風』のアッシュだろう! 元Bランク冒険者の手練れだ! 見つけても一人で倒そうとするな!
 足止めに徹して、すぐに増援を――」
「た、隊長!」
「何だ!?」
「す、すでにあの男は倒されているようなのですが……」
「…………、は?」

 そこで初めて、リーダー格の衛兵はこっちを見た。

 より正確には、僕の足元で倒れている『魔術師』の男を。

「え……? た、倒されている? 馬鹿な、あの『暴風』のアッシュが……? 元Bランク冒険者のあの男が……?」

 混乱するような呟きが聞こえてくる。

 どうやらこの『魔術師』はアッシュという名前らしい。
 暴風、というのは彼の二つ名だろうか。
 確かに風の魔術を使っていた。

「し、失礼。あなたがこの男を倒したのですか? 一人で……?」
「えーと、……一応」
「何ですとぉ!?」

 僕が頷くと、リーダー格の衛兵は驚愕したように目を見開いていた。
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