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【威光】
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ぼすん。
王城からブラド様の屋敷に戻った後、私は部屋のベッドに寝転んだ。
「……【威光】スキル、ですか」
帰りの馬車の中でブラド様はリヒター様の持つスキルについて教えてくれた。
【威光】は王族など支配者の家系にのみ発現するスキルだそうだ。スキルレベルは存在せず効果は一律。
これを使うと支配する民を操ることができる。
その命令は絶対であり、ナディア王国の民である限り逆らうことはできない。
凶悪なスキルだけれど、王族とEXレベルのスキル持ちは例外的に無効化できるそうだ。中庭で私が操られなかったのはそのせいだろう。
ブラド様いわく、このスキルのせいでリヒター様はやりたい放題なんだとか。いろんな人材を自由に操れるリヒター様は、その気になれば簡単に内乱を起こすことができる。
国王様もリヒター様の扱いには手を焼いているようだ。
一応国王様の命令でスキル封じの魔道具を身に着けてはいるようだけれど、スキルが強力過ぎて完全には封じきれないらしい。
……どうりでみんなが「第一王子に気を付けろ」と口を揃えるわけですね。
中庭の一件でも実際身の危険を感じた。助けてくれたルークに感謝しないと。
そんなことを考えていると――
「アリシア、ちょっといい?」
あ、ルークの声。
扉を開ける。
「王城の件で話があるんだけど……ランドは?」
「庭で水浴びです。ここの噴水が気に入っているようで……呼んできましょうか?」
ルークは少し考えてからこう言った。
「いや、まずはアリシアだけに話すよ。場所を変えたいんだけど構わないかな」
「? わかりました」
ルークの意図が掴めないけれど、なにか考えがあるんだろう。私はルークの後について移動を始めた。
「あの、ルーク。どこに行くんですか?」
「もうすぐ着くよ」
ルークに連れられて私がやってきたのは王都北西部、やや北よりの部分だった。
このあたりはいわゆる下町のような場所で王都の中でもあまり治安がよくない。
ルークの陰に隠れるように進んでいくと、やがてルークがある建物の前で立ち止まった。
「ここは?」
「俺が昔住んでた……っていうか住ませてもらってた場所かな。剣術の師匠の家なんだよ」
「……人が住んでいるようには見えないんですが」
私たちの目の前にある木造の家はボロボロで今にも倒壊しそうだ。横手には狭い庭があるけれど、明らかに手入れされていない。
「まあ、家主が長いこと帰ってないだろうからね」
ずかずかと庭に入っていくルークの後を追う。そこにはどこかから運んできたであろう大きな石が二つ転がっていた。それを椅子代わりに私たちは話し合いの態勢を作る。
「こんなところまで歩かせてごめん。ここなら人に聞かれず話ができるだろうから」
「それは構いませんが……それで話というのは」
「俺とリヒターの話だよ。初めて会ったときのことを覚えてる? 前に俺がガロスに捕まっていたとき、身内に毒を盛られたって話をしたんだけど」
「そうですね。覚えています」
「それをやったのがリヒターだ。……あいつ、俺の義理の弟なんだ」
「えっ?」
今なんだか衝撃的な事実が明らかになったような。
「あの……それだとルークがリヒター様の義理の兄であるかのように聞こえますが」
「そうだね」
「ということは……ルークは……王族ということなのでは……」
「庶子だし、もう廃嫡されたけどね」
「ええええええええええ」
椅子代わりの石からずり落ちそうになるくらい驚いた。
王族。
王都に住んでいた人間として縁がまったくなかったと言えば嘘になるけど、それでもかすむほど遠い存在だ。
廃嫡されたとルークは言うけれど、まさか身近にそんな人がいたとは……!
「これだけだとわかりにくいから、順を追って説明するよ」
私の反応に苦笑しながら、ルークは話し始めた。
王城からブラド様の屋敷に戻った後、私は部屋のベッドに寝転んだ。
「……【威光】スキル、ですか」
帰りの馬車の中でブラド様はリヒター様の持つスキルについて教えてくれた。
【威光】は王族など支配者の家系にのみ発現するスキルだそうだ。スキルレベルは存在せず効果は一律。
これを使うと支配する民を操ることができる。
その命令は絶対であり、ナディア王国の民である限り逆らうことはできない。
凶悪なスキルだけれど、王族とEXレベルのスキル持ちは例外的に無効化できるそうだ。中庭で私が操られなかったのはそのせいだろう。
ブラド様いわく、このスキルのせいでリヒター様はやりたい放題なんだとか。いろんな人材を自由に操れるリヒター様は、その気になれば簡単に内乱を起こすことができる。
国王様もリヒター様の扱いには手を焼いているようだ。
一応国王様の命令でスキル封じの魔道具を身に着けてはいるようだけれど、スキルが強力過ぎて完全には封じきれないらしい。
……どうりでみんなが「第一王子に気を付けろ」と口を揃えるわけですね。
中庭の一件でも実際身の危険を感じた。助けてくれたルークに感謝しないと。
そんなことを考えていると――
「アリシア、ちょっといい?」
あ、ルークの声。
扉を開ける。
「王城の件で話があるんだけど……ランドは?」
「庭で水浴びです。ここの噴水が気に入っているようで……呼んできましょうか?」
ルークは少し考えてからこう言った。
「いや、まずはアリシアだけに話すよ。場所を変えたいんだけど構わないかな」
「? わかりました」
ルークの意図が掴めないけれど、なにか考えがあるんだろう。私はルークの後について移動を始めた。
「あの、ルーク。どこに行くんですか?」
「もうすぐ着くよ」
ルークに連れられて私がやってきたのは王都北西部、やや北よりの部分だった。
このあたりはいわゆる下町のような場所で王都の中でもあまり治安がよくない。
ルークの陰に隠れるように進んでいくと、やがてルークがある建物の前で立ち止まった。
「ここは?」
「俺が昔住んでた……っていうか住ませてもらってた場所かな。剣術の師匠の家なんだよ」
「……人が住んでいるようには見えないんですが」
私たちの目の前にある木造の家はボロボロで今にも倒壊しそうだ。横手には狭い庭があるけれど、明らかに手入れされていない。
「まあ、家主が長いこと帰ってないだろうからね」
ずかずかと庭に入っていくルークの後を追う。そこにはどこかから運んできたであろう大きな石が二つ転がっていた。それを椅子代わりに私たちは話し合いの態勢を作る。
「こんなところまで歩かせてごめん。ここなら人に聞かれず話ができるだろうから」
「それは構いませんが……それで話というのは」
「俺とリヒターの話だよ。初めて会ったときのことを覚えてる? 前に俺がガロスに捕まっていたとき、身内に毒を盛られたって話をしたんだけど」
「そうですね。覚えています」
「それをやったのがリヒターだ。……あいつ、俺の義理の弟なんだ」
「えっ?」
今なんだか衝撃的な事実が明らかになったような。
「あの……それだとルークがリヒター様の義理の兄であるかのように聞こえますが」
「そうだね」
「ということは……ルークは……王族ということなのでは……」
「庶子だし、もう廃嫡されたけどね」
「ええええええええええ」
椅子代わりの石からずり落ちそうになるくらい驚いた。
王族。
王都に住んでいた人間として縁がまったくなかったと言えば嘘になるけど、それでもかすむほど遠い存在だ。
廃嫡されたとルークは言うけれど、まさか身近にそんな人がいたとは……!
「これだけだとわかりにくいから、順を追って説明するよ」
私の反応に苦笑しながら、ルークは話し始めた。
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