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アイリスの呪いを何とかしましょう
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「私はミリーリア・ノクトール。今日からあなたの教育係を務めることになったの。よろしくね」
アイリスの部屋に入り、改めて自己紹介をする。
いやー、推しキャラの幼い頃が天使すぎて我を忘れてしまったわ。
メイドがびっくりしていたものね。今後は理性を失わないように気を付けましょう。
私が言うと、アイリスはぺこりと頭を下げた。
「よろしくおねがいします、せんせい。このたびは、ごけっこん、おめでとうございます」
「あら、ありがとう」
ちゃんと練習しました、という感じの挨拶で可愛い。
「アイリス、年はいくつ?」
「ごさいです」
「五歳なのに、しっかりしててすごいわ」
「……えへへ」
照れたようにはにかむアイリス。初対面だというのに、すでに私の心が鷲掴みにされているわ!
それにしても、原作を知っているとギャップがすごいわね。
原作世界――つまり十年後の世界では、アイリスは十五歳とは思えないほど大人びた女性だった。教会の幹部に命令を下し、教皇すら彼女には頭が上がらない。まさに若き教会の支配者という感じだった。
しかし今はどうだろう。素直で可愛い天使でしかない。
原作の私は、こんないい子をどうやって悪役聖女にしたのか……謎ね……
「けほ、けほっ!」
不意にアイリスが咳き込み始めた。
「アイリス、大丈夫!?」
「だいじょうぶ、です……いつものこと、ですから。すう、はあー……」
アイリスは何度も深呼吸して乱れた息を整える。
「アイリスお嬢様、お水です」
「ありがとう、ございます」
メイドが水を差しだすと、アイリスはゆっくりとそれを飲んでいく。
さて、ここでアイリスについてもう少し掘り下げをしておこう。
アイリスには聖女としての素質がある。
聖女は様々な力を使い、このウェインライト王国だけでなく近隣諸国からも崇められるほどの存在だ。
当然ウェインライト教――この国の国教であり、すべての聖女を管理する組織でもある――は、国中から聖女の素質を持つ人間を探している。
アイリスに聖女の素質があることは教会も知っている。
本来なら聖女候補として教会で修行しなくてはならない。
しかしアイリスは生まれつき謎の“呪い”に侵されている。そのためこの屋敷に張られた浄化の結界の外に出ることはできない。
ゆえに元聖女であり、レオニス家に嫁いだ私が教育係を任されたのだ。
ちなみにこっちの命令は教皇様から来たものである。
「ごめんなさい、おどろかせてしまって」
つらいのは自分だろうに、アイリスは私に申し訳なさそうに言ってくる。
「いいのよ、そのくらい。……もう平気?」
「はい。もうすっかり、だいじょうぶです」
そう言ってニコッと笑うアイリスだけど……顔色は悪いままだ。
どう見ても無理しているのに、それを悟らせないようにしているのだ。
け、健気すぎないこの子!?
原作のアイリスは修行によって自力で呪いを押さえられるようになり、それ以降は屋敷の結界の外でも自由に動けている。
でも、それは数年にわたる厳しい修行に耐えた後の話だ。
それまでアイリスをこのまま放置するなんて私には耐えられない……!
よし、まずはアイリスの呪いを何とかしよう。
「アイリス、聖女教育はちょっと待ってね。私、行くところができたわ!」
「え?」
私はアイリスの部屋を飛び出した。
アイリスの部屋に入り、改めて自己紹介をする。
いやー、推しキャラの幼い頃が天使すぎて我を忘れてしまったわ。
メイドがびっくりしていたものね。今後は理性を失わないように気を付けましょう。
私が言うと、アイリスはぺこりと頭を下げた。
「よろしくおねがいします、せんせい。このたびは、ごけっこん、おめでとうございます」
「あら、ありがとう」
ちゃんと練習しました、という感じの挨拶で可愛い。
「アイリス、年はいくつ?」
「ごさいです」
「五歳なのに、しっかりしててすごいわ」
「……えへへ」
照れたようにはにかむアイリス。初対面だというのに、すでに私の心が鷲掴みにされているわ!
それにしても、原作を知っているとギャップがすごいわね。
原作世界――つまり十年後の世界では、アイリスは十五歳とは思えないほど大人びた女性だった。教会の幹部に命令を下し、教皇すら彼女には頭が上がらない。まさに若き教会の支配者という感じだった。
しかし今はどうだろう。素直で可愛い天使でしかない。
原作の私は、こんないい子をどうやって悪役聖女にしたのか……謎ね……
「けほ、けほっ!」
不意にアイリスが咳き込み始めた。
「アイリス、大丈夫!?」
「だいじょうぶ、です……いつものこと、ですから。すう、はあー……」
アイリスは何度も深呼吸して乱れた息を整える。
「アイリスお嬢様、お水です」
「ありがとう、ございます」
メイドが水を差しだすと、アイリスはゆっくりとそれを飲んでいく。
さて、ここでアイリスについてもう少し掘り下げをしておこう。
アイリスには聖女としての素質がある。
聖女は様々な力を使い、このウェインライト王国だけでなく近隣諸国からも崇められるほどの存在だ。
当然ウェインライト教――この国の国教であり、すべての聖女を管理する組織でもある――は、国中から聖女の素質を持つ人間を探している。
アイリスに聖女の素質があることは教会も知っている。
本来なら聖女候補として教会で修行しなくてはならない。
しかしアイリスは生まれつき謎の“呪い”に侵されている。そのためこの屋敷に張られた浄化の結界の外に出ることはできない。
ゆえに元聖女であり、レオニス家に嫁いだ私が教育係を任されたのだ。
ちなみにこっちの命令は教皇様から来たものである。
「ごめんなさい、おどろかせてしまって」
つらいのは自分だろうに、アイリスは私に申し訳なさそうに言ってくる。
「いいのよ、そのくらい。……もう平気?」
「はい。もうすっかり、だいじょうぶです」
そう言ってニコッと笑うアイリスだけど……顔色は悪いままだ。
どう見ても無理しているのに、それを悟らせないようにしているのだ。
け、健気すぎないこの子!?
原作のアイリスは修行によって自力で呪いを押さえられるようになり、それ以降は屋敷の結界の外でも自由に動けている。
でも、それは数年にわたる厳しい修行に耐えた後の話だ。
それまでアイリスをこのまま放置するなんて私には耐えられない……!
よし、まずはアイリスの呪いを何とかしよう。
「アイリス、聖女教育はちょっと待ってね。私、行くところができたわ!」
「え?」
私はアイリスの部屋を飛び出した。
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