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初めての治癒魔術2
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「落ち着いてやれば大丈夫よ、アイリス」
「わ、わかりました」
アイリスは深呼吸し、治癒の神聖魔力を操る。
「【ヒール】」
アイリスの呪文に合わせて治癒の神聖魔力が私の傷口に流れ込み、すぐに傷がふさがった。
……うえっぷ。
あ、アイリス、焦って多めに魔力を流したわね……魔力酔いでちょっと吐き気が。しかしアイリスが頑張ったのにここで倒れるのは駄目よ!
そう、これはアイリスが頑張って作り出したアイリスの治癒の神聖魔力! いわばアイリスの一部のようなもの!
あれね。そう考えたらわりとご褒美な気がしてきたわね。
「治ったわー!」
「みせてください」
「あ、うん」
アイリスは傷のふさがった私の手をじっと見て……安心したように息を吐いた。
「よかったです。せんせいがあのまましんじゃったら、どうしようかと」
「本当によかったですよ……主人の怪我を見過ごしたメイドなんてクビになってもおかしくないですからね……本当によかった……」
アイリスに続いてリタも安心していた。
「二人とも大げさね。ちょっと指先をナイフで刺したくらいで」
「「大(おお)げさじゃありません!」」
し、叱られた……
気を取り直して。
「アイリス、これからは人相手にガンガン試していきましょう。まずはこのお屋敷にいるメイドや執事たちの擦り傷とかささくれとかを撲滅するのよ!」
人相手に使っても(そこまで大きな)問題はないとわかった以上、あとは実践あるのみよ!
そんなわけでしばらくアイリスが屋敷の人たちの些細な怪我を治療しまくっていると――
「……」
「あら、フォード様」
廊下で銀髪碧眼の美丈夫――フォード様とばったり会った。
「おじさま……」
「……」
アイリスはちらりとフォードに視線を送るけど、フォードはガン無視。
おうおううちの天使のお話したそうな雰囲気を察していながら完全シカトとはいい度胸してるわねえ?
「フォード様、ご報告が。ここにいる――そう、ここで愛らしくフォード様を見つめているアイリスですが、聖女教育が順調に進んでいます。治癒の神聖魔力を扱えるようになりましたのよ」
さあ褒めなさい。というかせめてアイリスのほうに視線をくらい向けなさい。
「そうか。さすがは元“万能の聖女”だ。教え方がいいのだろう」
お世辞とわかる口調でそう言って、私たちの横をさっさと通り過ぎていくフォード。アイリスには一瞥も向けようとしない。
あ、あの野郎……ッッ!!!!
いいえ、落ち着きなさい私。フォードにはフォードの事情がある。アイリスに冷たく当たる理由が。原作と設定資料集を読破した私はそれを知っている。
だから決して声を荒げるなんて大人げない真似は……真似は……!
「リタ、ナイフを貸してくれる?」
「なぜでしょう。今のミリーリア様にはすごく刃物を渡したくありません」
「大丈夫よ、アイリスは治癒魔術が使えるもの」
「そういう問題ではありませんからね!?」
チッ、まあいいわ……フォードの態度が悪いのは、浄化結晶の時と合わせて二回目だし。
だが三回目はない。
「わたし、やっぱりおじさまに、きらわれているんですね……」
「そんなことないわアイリス! あなたみたいな可愛い子を嫌いな人間なんてありえないくらいの冷血人間くらいしかいないんじゃないかしら! ねえリタ!」
「そ、そうですとも! アイリス様は努力家でお可愛らしい方ですからね!」
悲しそうな顔をするアイリスを励まそうと、私とリタは手を尽くすのだった。
「わ、わかりました」
アイリスは深呼吸し、治癒の神聖魔力を操る。
「【ヒール】」
アイリスの呪文に合わせて治癒の神聖魔力が私の傷口に流れ込み、すぐに傷がふさがった。
……うえっぷ。
あ、アイリス、焦って多めに魔力を流したわね……魔力酔いでちょっと吐き気が。しかしアイリスが頑張ったのにここで倒れるのは駄目よ!
そう、これはアイリスが頑張って作り出したアイリスの治癒の神聖魔力! いわばアイリスの一部のようなもの!
あれね。そう考えたらわりとご褒美な気がしてきたわね。
「治ったわー!」
「みせてください」
「あ、うん」
アイリスは傷のふさがった私の手をじっと見て……安心したように息を吐いた。
「よかったです。せんせいがあのまましんじゃったら、どうしようかと」
「本当によかったですよ……主人の怪我を見過ごしたメイドなんてクビになってもおかしくないですからね……本当によかった……」
アイリスに続いてリタも安心していた。
「二人とも大げさね。ちょっと指先をナイフで刺したくらいで」
「「大(おお)げさじゃありません!」」
し、叱られた……
気を取り直して。
「アイリス、これからは人相手にガンガン試していきましょう。まずはこのお屋敷にいるメイドや執事たちの擦り傷とかささくれとかを撲滅するのよ!」
人相手に使っても(そこまで大きな)問題はないとわかった以上、あとは実践あるのみよ!
そんなわけでしばらくアイリスが屋敷の人たちの些細な怪我を治療しまくっていると――
「……」
「あら、フォード様」
廊下で銀髪碧眼の美丈夫――フォード様とばったり会った。
「おじさま……」
「……」
アイリスはちらりとフォードに視線を送るけど、フォードはガン無視。
おうおううちの天使のお話したそうな雰囲気を察していながら完全シカトとはいい度胸してるわねえ?
「フォード様、ご報告が。ここにいる――そう、ここで愛らしくフォード様を見つめているアイリスですが、聖女教育が順調に進んでいます。治癒の神聖魔力を扱えるようになりましたのよ」
さあ褒めなさい。というかせめてアイリスのほうに視線をくらい向けなさい。
「そうか。さすがは元“万能の聖女”だ。教え方がいいのだろう」
お世辞とわかる口調でそう言って、私たちの横をさっさと通り過ぎていくフォード。アイリスには一瞥も向けようとしない。
あ、あの野郎……ッッ!!!!
いいえ、落ち着きなさい私。フォードにはフォードの事情がある。アイリスに冷たく当たる理由が。原作と設定資料集を読破した私はそれを知っている。
だから決して声を荒げるなんて大人げない真似は……真似は……!
「リタ、ナイフを貸してくれる?」
「なぜでしょう。今のミリーリア様にはすごく刃物を渡したくありません」
「大丈夫よ、アイリスは治癒魔術が使えるもの」
「そういう問題ではありませんからね!?」
チッ、まあいいわ……フォードの態度が悪いのは、浄化結晶の時と合わせて二回目だし。
だが三回目はない。
「わたし、やっぱりおじさまに、きらわれているんですね……」
「そんなことないわアイリス! あなたみたいな可愛い子を嫌いな人間なんてありえないくらいの冷血人間くらいしかいないんじゃないかしら! ねえリタ!」
「そ、そうですとも! アイリス様は努力家でお可愛らしい方ですからね!」
悲しそうな顔をするアイリスを励まそうと、私とリタは手を尽くすのだった。
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