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はたのれもん。

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「い、いや。ちょっと待ってくれ。それ、冗談だろ?よ、余興じゃないけど・・・」
 あまりの熱の籠りようにその気になりそうだったが、制御しておかしく言う。本来ならば、「冗談だよ」とか言って和人は笑わせてくる。
 だが、笑うどころかさらに表情が固まっていっている。
 そして、一気に和人の顔が近づく。傾き具合で、キスをするものと分かった。
「わ、ちょ、ちょっと待ってっ。それはないんじゃないか?俺だって、まだ気持ちの整理ができてない」
 右手で、和人の胸を押し退ける。これでも、必死だった。突然の豹変に状況把握が追いつかず、頭の中は混乱していた。
「な、和人。お前の気持ちは受け取っておく」
 そのように伝えるが、和人は眉間にしわをつくったまま、歯がゆそうなつらそうな顔だ。
 そのとき、右手を強く掴まれた。そのまま体を引き寄せられ、唇が重なる。
「んっ、」
 男同士でのキスなんて妙で、逆に心が弾む。
 嫌がっていないとみると、口腔内に舌が侵入してきた。それは、宗久の舌を突いたり上あごをちろちろと舐めてきたり、宗久を翻弄させようとしてくる。
「ん、ん、はぁ・・・」
 その愛撫は功を奏し、宗久を動かした。宗久も、攻撃してくる舌に応えようと必死になっていたのである。
 ところが、初めてな事に対して急いではいけない。落ち着いて責め立ててくる和人とは反対に、宗久は息が上がっていた。
「は、ん、はぁ・・・ん、」
 キスの合間に押し倒され、ネクタイを解かれる。その手つきから、どれだけ和人が自分に興奮し欲情していたかが窺えた。それが自分に向けられていると思うだけで、ふしぎと頭が沸騰してきた。
 よだれごと吸い取って、やっと唇が離れる。
 真上にいる和人を見つめるが、その目に力はなく陶然としている。キスで、全て持っていかれた気分だ。
 篭絡寸前の宗久を見て、和人に火がつく。
 和人の長い指が、宗久のシャツのボタンを外しにかかった。
「か、和人・・・?」
 へにゃへにゃと力のない手で止めようとするが、たやすく払いのけられてしまう。
 あっさりとシャツを開襟させられて、胸が露わになる。和人のようにジム通いしているわけではないから、均整のとれた体つきをしていない。けれど、ジョギングくらいはしているから、変な肉は付いていない。それでも、普段から他人(ひと)に見せるような所ではないため、キスをしたときより緊張して体が汗ばむ。
 しばらく宗久の体を眺めて、和人が乳首に吸いつく。それから、音がするほどきつく吸ってくる。
「ひぃっ、」
 咄嗟に口元を押さえたが、声が先に出てしまった。男の喉から、こんな艶めいた声が出るなんて。
 それ以上に、毎日、同じ職場で働いている同志が乳首を嬲っていることに衝撃を感じていた。そこに興奮している自分さえも、信じられなかった。
「和人、もういいだろ・・・」
 乱れていく心が怖くて言うが、舌はやめなかった。
 乳首の先端を、舌先で舐めてくる。
「んぅっ・・・気持ち悪いからやめろ・・・」
 そう訴えるも愛撫は止まらず、何もされていない左の乳首を痛いほどつねられる。
「ひぁっ!」
 痛いのか悦いのか判別がつかない。それに、何も出ない乳首を、吸われたりつねられたりするのは変な心地だ。
 その後、爪の先で乳首を引っかき、舌先でせり上げるように舐める。
「あっ・・・もう、やっ、」
 心臓が駆けている。
 キスして、乳首をいじられているだけなのに。
 けれど、高揚感があった。人の重みを感じているだけで、身体中の血が足の先まで巡っていく。
 心ゆくまで突起をしゃぶって捏ねくりまわしたあと、和人が顔を上げる。
 リミットが外れてぐしゃぐしゃになった宗久は、前後不覚に陥っていた。
「これでも冗談だって、言いたいか?」
 和人の、欲情した声。以前から憧れていた、磨き上げられた低い声。
「言わないけど・・・不自然だ・・・」
「ふぅん・・・」
 あえて言い返さず、舌なめずりする。
 悪い顔だ。
 なのに、色気が溢れている。
「でも、口で言ってもごまかせないこともあるよな?」
 和人の目が鋭くなる。その鋭さは、怒りというより興奮のほうが強かった。
 和人によってベルトを外されると、布を押し上げている下着が顔を出す。先走りが染みている。自分が感じていたことが分かり恥ずかしくなった。
 そこに対しては何も言わず、和人は下着の中へ手を突っ込んでペニスを握った。
「ヌルヌルじゃん。気持ち良かった?」
「ん、やぁっ、・・・や、だ・・・」
「いやなんだ。こんなガチガチなのに?」
 握っている大きな温かい手の平が、亀頭部分を包みこんで集中攻撃を始める。
「わ、あ、それ、だめ、」
 このまま続けたらイってしまいそうで、拒否する言葉を放つ。それが通じたのか、手は亀頭を離れ茎を扱く。
「はぁ、あ、んっ、」
 じんじんしているペニスを、強くも弱くもない手つきで握られると、腹の奥が熱くなる。
 すると、下着を脱がされる。びしょびしょに濡れたペニスは、次の刺激を待ちわびているようだった。
 和人は濡れたペニスには手をつけず、宗久の両脚を持ち上げ胸につきそうなほど押しやる。
「ん、な、何して・・・」
「今のじゃ、物足りないだろ?」
 和人の心地良い低い声が、怖がる宗久を宥めた。
 まだ緊張している宗久をよそに、和人は自分の人差し指と中指を舐めて、丸見えのアナルに塗りたくる。その行為に、宗久の体が粟立つ。
「くすぐったい?」
「そうに、決まってるだろ・・・」
「大丈夫。そのうち慣れるから」
 そう言うが、全く想像できなかった。
 ずぶっと、人差し指がナカへ入っていく。肉をかき分け、長い指が侵略してくる。
「っ、痛いってば、」
「大丈夫って言ったでしょ。そのうち悦くなるよ」
 あまり指を動かさず、くちくちと中をかき回す。
 そのうち力が抜け、二本目の指が入っていく。
「だいぶ柔らかくなったね。二本目、入ったよ」
「うぅっ・・・っ、」
 ナカがきつかった。異物感があり、正しい呼吸ができない。
「あ。これかな?」
 中指がある場所で止まり、指の腹でぎゅうっと押した。
「ひゃあっ!」
 甲高い声が出て、背中がたわんだ。
 和人は喉の奥で笑う。
「ほら、悦くなったでしょ?あ、出ちゃった?」
 宗久の腹は白濁したもので濡れていた。
「もう少しといきたいけど、がまんできなくて。挿れていい?」
「和人の気が済むなら、好きなようにしろ・・・」
 もうどうにもなってしまえと思って、申し出を了承した。
 和人はネクタイを外し床へ放り投げシャツを全開にし、スラックスを脱いだ。彼の下着も、形が分かるほど盛り上がっていた。
 下着を脱ぐと、ぶるんっと勃起した長大な肉棒が登場した。剛直な竿は、血管が浮き立っていてグロテスクである。
―でかい・・・。
 普段から見るような所ではないから、改めて見ると巨大に感じる。
 脚を持ち上げ直すと、後孔に肉棒の先が押し当てられる。宗久はどきっとして、息を詰めた。
「落ち着いて」
 磨きのかかった艶のある低音が、宗久の腰に甘く響く。
 荒い息が互いの間で交わされるなか、宗久のナカを押し開いて竿が挿入されていく。
「はぁ・・・宗久のナカ、あったかくて気持ちいい」
 ついに、うしろの孔で男を咥えてしまった。屈辱的で今すぐどうにかしたいのに、なかのものの熱量がそれを阻んだ。
「動くよ?」
 この問いに、宗久は濡れた目を返す。それが答えと捉えた和人は、まずは確かめるようにゆるゆると腰を動かした。ぬめりを伴った男根は、襞を擦って抉っていく。刺激されたことのない場所をそんな風に扱われるのは初めてなのに、ぞわっとした快感が這い上がってきていた。
 宗久の反応をみて大丈夫だと判断したのか、腰づかいが激しくなる。たちまち攪拌されて、繋ぎ目が白く泡立つ。
「あっ、あぁ、激しっ、」
「好きじゃないの?こういうの。仕事でもさ」
 それとこれは別だと言いたかった。そう言おうと思った口からは、行き場を失ったよだれと嬌声が出てくる。
「んぁっっ、ひ・・・」
「予想以上だなぁ、こんなにうねって。分かる?俺のに絡みついてんの」
 ごりごりと大きくて硬いものが、熟れて溶けた肉洞を往復する。
 力強い精力的な腰の動きに耐えられず、宗久は和人の首に手を掛けた。
「宗久、俺のことちゃんと見てよ」
「うぅっ、っ、ん、やだ、恥ずかしいっ」
 目を潤ませる宗久は、和人のことをあまり見ないようにした。目を合わせたら、どうにかなりそうだからである。
「あぁ、もう、だめっ、」
 切羽詰まった調子で訴える。
「だめ?もうイク?」
 訊かれて、首肯する。
「なら、イこっか」
「い、イクって、うわ、あ、」
 カリ先で強烈に前立腺を抉られて、目の前が白む。
「あぁっ、あ、や、イク、イっちゃうっ」
 最後の一突きで、まぶたの裏が真っ白になり、吹っ飛んだ。足の指も目いっぱいに広げ、快感を発散する。同時に、耳元で和人が低く呻いた。
―出てる・・・。
 放たれた精が腹を満たしていると分かって、中がきゅんと引き締まる。
 波が引いて、宗久は大きく胸を仰ぐ。
 まだ息が整わないうちに、和人に抱き起される。
「ちょ、ちょっと待て・・・だめ、」
 挿入されたまま動かされて、再び怒張しはじめたものが奥深く刺さる。
「何がだめなんだ?またちょっと、勃ってきてるのに?」
 和人の人差し指が、半勃ちのペニスの亀頭をくるくるとする。
「あぁっ、だめって、言った・・・」
 思わず、和人に抱きつく。和人からは、あのスパイシーな匂い。
―やばい、この匂い・・・。
 倒錯的になっているときの、この前気がついた彼らしい匂い。心が蕩けそうになる。
「宗久」
 低くて甘い、誘うような声で呼ばれるが、まだ息が荒く返事ができない。
「ここ、またドロドロじゃん」
「ひぃ、や、や、イったばっか・・・」
 割れ目に人差し指の腹を押し込まれて、孔が締まる。
「宗久、こっち見てよ」
 指の動きが止まって落ち着いた宗久は、眼前の和人と目を合わせた。それとともに、全開にしたシャツから腹筋が飛び込んでくる。
―こいつ、ジム行ってるんだっけ。
 週二でジムに通う和人。四十代には見えない腹の割れ具合に、不覚にもときめいた。おかしいだろと自責するが、もう遅い。
「動いてみてよ。こっちの足、立てて」
 左の足首を和人が掴んで立たせる。
「ほら、動いて。大丈夫だから」
 急かすように、頬張らされているペニスが押し込まれる。
「あ、ん、だめ・・・動けない・・・」
「なんで?支えてるから。ほら」
「あっ、っ、だって、」
「だって?」
 その先を聞こうと、和人が顔を覗いてくる。彼の目に、自分はどんな風に映っているのか。だらしない顔をしているのかもしれない。
 今ここで激しく抗議したら、和人はやめてくれるだろう。そうは頭の隅で思っていても、口は全く違うことを言った。
「だって・・・突き刺さってるから・・・」
 しゃべるのも息苦しい。それほど、肉棒は硬くなって成長していた。
「突き刺さってるって、何が?」
 いたずらっぽく、いじわるそうに訊かれる。
「か、和人の、これっ、」
 分かってほしくて、砕けて言うことを聞かなくなった腰を動かす。敏感な襞を竿や切っ先で抉られ、濡れた声が漏れる。
「少しでもいいから、動いてみせてよ」
 尻たぶを撫でられて、のろのろと腰を上げペニスを引き抜いていく。そして、元の場所まで戻す。
「んっ、はっ、あ・・・」
 抽送するたび、凶器のような逸物が奥へと刺さる。
「ん、ん、あぁ、」
 自分のいいところに当たるよう、腰をひねりくねらせる。
 ところが、そのうち動けなくなった。
「大丈夫?」
「もう、だめ・・・。ちょっと、休ませて」
「いいよ」
 再び宗久を押し倒した和人は、最奥を穿つ。両膝の裏を掴んで、押し広げ、感じる場所を集中的に犯す。
「あぁっ!っ、それ、したら、あっ、んっ、すご・・・」
「宗久、かわいい・・・締め付けすごいし、イキそ・・・」
 和人も興奮していることが分かって、さらに体温が上がるのを感じた。
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