吸血鬼と棘荊

弥架祇

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微睡み

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「**は、こうなることを予見して、あんなに必死になってくれてたんだね。」

俯いた青年は何も答えない。
それが、答えだ。

「有難う。
本当に、有難う。俺の、ために…
あんなに、必死になってくれて」

苦しげな顔で笑う少年に青年は躊躇いがちに手を伸ばす。
しかし、その手は少年に触れることなく虚しく下された。

「でも、これだけは言っておきたくて…」
少年は、精一杯笑う。
泣かないように。

「俺、別に後悔してないよ。
選んだのは俺。
全部、俺が決めたこと。
だから、悔いたりしない…
たとえ…皆がいなくなって、俺が一人になっても…
後悔なんて…っ…するわけ、ない」

青年は拳を握り締める。
爪が食い込むほどに強く、強く。

「皆に会えて、よかったよ。
この選択をして、よかった…」

だから、別れがきても悔いたりしない。

楽しかった。
幸せだったから…

別れのときは刻一刻と迫り続ける。

後悔なんてしてない筈なのに…
出逢いは、別れの始まりなのに
その別れがくるのが怖くてたまらない。

永遠なんて、ありえない。
少なくとも人間に、それはありえない。

それを祈る愚かな自分を笑っていいよ。
でも、一緒にいたくて。

愚かでもいい、馬鹿にされてもいい。

それでも一緒にいたくて…

「大好きだよ。バイバイ…またね」

たとえそれが偽りでも。
最後は、笑顔で見送りたい。

「また、いつか…」
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