吸血鬼と棘荊

人の世に身を潜め、そして人とは永久に相容れぬもの。
吸血鬼は人を蔑んだ。
人は吸血鬼を忌み嫌った。

価値観の違う両者の世界は決して交わらない。

__________筈だった。

あり得てはいけない筈の間違いが、起こってしまったのだ。

吸血鬼に自身を化け物にされ、全てを奪われた在りし日の少女は復讐を誓う。
殺せ、壊せ、奪われたものを奪い尽くせ、血の一滴すら残してはならぬ。
大人になった今でも変わらない、燃え盛る業火は彼女自身を焼き尽くそうとしていた。

それは運命の悪戯か。
それとも罪なき者への罰か。
それとも彼の宿命か。

間違いから生まれ、存在すらも間違いとして否定された幼い少年。

泣くことすら知らない、幼い少年と大人になった今でもなお消えぬ憎悪にもがく彼女は出会った。

憎かった筈なのに。
全員討ち滅ぼしたとしても、許せない筈だったのに。

彼女と幼い少年は不器用ながらに手を伸ばし、そしてしっかりと手を握る。

「本当の親にはなれなくても、親以上にお前を愛してやるよ。」
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